もう一度は世界蛇と   作:オクトモア

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日に日に書くのが上手くなっているのか不安ですが、頑張ります。


砲金はまだ錆びていない ~3~

 高速のランプからHMMVWが上がってきたのは、セダン2台を撃破して暫くたったころだ。

「ココ!9時方向に装甲車!!」

「新手?!」

 

 すると相手は思い切り体当たりをしてきた。いくら装甲を追加したとはいえ乗用車と軍用車では分が悪く、車は横にスリップして私は後部座席へ転がり落ちた。ココは何とか車を持ち直したが、エンブレムを見たのか忌々しそうに

「ボスホート6…、あのオッサンめ…」

と呟いた。どうやら内務省の特殊部隊らしい。町中にあんな物騒なものをを引っ張り出すとは、分かっていたが相手も本気だ。

私は急いでルーフから半身を出して発砲する。窓や車体に当たるが貫通しない。徹甲弾を支給してくれていたが、殆ど弾かれる。銃座はついていないが、相手に撃たせないよう牽制の意味を込めた銃撃を加える。

 

後方でも銃声が聞こえる。夜はまだ長くなるようだ。

 

~~

 

高速から降りると、相手は少し距離をおいて何もしてこなくなった。

「ヨナ、向こうの二人は追手の排除に成功したって」

「…」

「ヨナぁ、さっきさ、ココって呼んでくれたよね?もう聞き逃さないんだから。アレいいなあ、これからもさぁ――」

 こんな時に何故か惚気だした。確かに相手からは何もないが、今じゃなくてもいいだろう?そう思っていると相手がハッチから大きな測距儀みたいなものでこちらを覗いているのが分かった。まさか――

ハッとした俺は惚気ているココに取り出した手榴弾で屋根を叩きながら叫んだ。

「ココ!ココ!!」

 頭を引っ込めたやつが取り出したものを見て確信した。あの肩に担いだ円筒に大きな照準器、間違いない。あのミサイルが発射されたら猛スピードで突っ込んでくるし、撃ちっ放しなので射手を排除しても避けられない。ならばやることは―

「伏せて、ジャベリンだ!!!」

そういうや否や、安全レバーを先に外した手榴弾を投げた。手榴弾は見事に装甲車の前に跳ねていき、本体から発射されてロケットモーターに点火してすぐのミサイルの下で炸裂した。爆風に煽られた上に破片を喰らったミサイルは僅かに逸れて路上駐車していた乗用車に突っ込んだ。ミサイルが突っ込んだ車は一瞬浮き上がったが、巨大な火球が瞬く間に車体を飲み込んで吹き飛んだ。爆風で大きく煽られた車を立て直したココが、

「街中でATGM撃つんじゃあないよ!!」

と絶句していた。

 

 ルーフから装甲車を見失わないようにしていると、頭にポコンと軽いものが当たった。何かと思って手に取れば白い犬のぬいぐるみだった。首元に青いリボンを結び、爆風で空高く飛ばされたのを気にも留めていないキョトンとした表情がとても可愛らしい。

「アハハハ」

 つい笑い声を上げてしまった。緊張の中でふとした弛緩が可笑しかったのだ。綺麗にして名前も付けなくちゃ。こんな小物を持って行っても構わないだろうか。いろんな所に連れていけるぞ、どうやって持っていこう――

「次弾発射まで、あと20秒!!!」

少し逸れた意識を、ココの喝が現実へと引き戻す。ぬいぐるみは車内に落としてカラシニコフを構える。今は目の前のミサイル野郎だ。

「次なんてないさ」

 そう、次なんてない。種が割れれば対処の仕方は幾らでもある。ハッチのほんの少し上を照準する。向こうの助手席から牽制射撃が飛んでくるが無視する。弾は近くを飛んでいくがそれだけだ。

そうすると装填を終えたジャベリンを持ち上げた射手が頭を出した。狙い通りに出てきた頭に照準を合わせて――

 

タン

 

と一発だけ撃った。弾は真っ直ぐミサイル野郎の眉間に吸い込まれ、ピンク色の霧が後頭部から発生した。脳を直接刺激されて体がビクン!と跳ね、下向きに―つまり車内に―向いていた筒からバックブラストが噴き出した。何かの拍子で作動した対戦車ミサイルは車内から装甲車を粉々に吹き飛ばした。

 

~~

 

 ココと私は無事荷物がある港に着いた。待ち伏せされていると思ったが、どうやら撤退したらしい。いったい何の判断があったのか分からないが仕事はやりやすいのはいいことだ。カラシニコフを横抱きにしてココを警護する。

「ねぇ、ココ」

「なんだい、ヨナ?」

 雇われの身ではあるが、この上司に質問があるので聞いてみた。

「何故、ココは武器を売るの?」

 彼女は巨大な武器運送会社HCLI社のヨーロッパ・アフリカ兵器輸送部門の一角を担う巨人だ。そのイデオロギーを知りたかった。彼女の信念、目的、精神の在り方を。このファルクラムの近代化改修キットが齎すものを、彼女はよく知っている。見境なく売りつけ金儲けしか頭にないチンピラ――前世では、そんな奴らも我々の殺害対象だった――ではない。武器を売る理由だけでは分かるはずはないが、その一端を知っておきたかった。

「私が武器を売る理由、それは――」

彼女は、倉庫の明かりをつけ、恭しくコンテナを指し示してこう言った。

 

「世界平和のため」

 

雇われて何だが、深淵のような上司だなと感じた。

 

追記:ぬいぐるみの件は了承してもらった。その際鼻血を出さんばかりに興奮していたのがだいぶ気持ち悪かった。

 

 




ココが気持ち悪かったのは、ヨナが上目遣いにもじもじしながらお願いしたためです。
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