もう一度は世界蛇と   作:オクトモア

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 お久しぶりです。リアルが忙しくて中々書けませんでした。幕間なのにこんなに時間が掛かるとは・・・。
 このままだと説明書きが多すぎて中々進まないので、書きたいところまでカットします。自分の実力不足が恨めしい限りです。
 それでは、どうぞ


intermission ~ヨナの弱点と演奏家~

 入隊儀式から数日後、ココと護衛部隊はロシアの空港にいた。国境線近くに対空ミサイルを搬入する仕事は相手が後金で仕事をねじ込んで来ようとしたが、ココの機転で一発も撃たずに解決し人員も損耗なく終わり、今は休暇の為にドバイへと向かう飛行機を待っていた。

「ドバイかぁ……。あっついんだろうなぁ♪」

 そういうココは星形のサングラスを掛けて浮かれていた。次の仕事場はアフリカが主なので暑さに慣れる、という口実でドバイで休暇を取ったのである。

「最近は働き通しでロクにゆっくり出来なかったし、休むことも働く人間には重要なのさ~♪」

 そう嘯きながら上機嫌で皆の元へ行くと、皆は思い思いにココを待っていたが、その中で一人だけ様子がおかしかった。

「ヨナ?」

 この部隊の新人であるヨナだ。彼は少年兵でありながら歴戦の兵士のような落ち着きと実力を持っており、年が近いこともあって気に入っているのだが、その彼が顔を真っ青にしてベンチに座っていた。

「ああ……、ココ……」

 呼ばれたのでこちらを向いたヨナは、消え入りそうな声で答えた。脂汗をかいた彼の顔は明らかに引きつっていた。

「どうしたの!何か変なもの食べた?昨日のトージョの料理に当たった?」

「人聞きの悪いこと言わないでよお嬢……」

「だって生魚出すじゃん!絶対昨日の料理に何か生もの使ったでしょ!」

「一回しか出していないし昨日のグラタンに生ものの要素無ぇよ!!」

「前科があるなら怪しまれるぜぇ?ゲロっちまいなよ、トージョ」

「オッサンも煽んないでよぉ!!」

 

「……、調子が悪そうですが、大丈夫ですか?ヨナ」

 掛け合い漫才を始めた三人は放っておいてバルメはヨナに聞いた。

「ああ……、うん……」

 殆どうわ言のような答えが返ってきた。

「おいおい、大丈夫か?こりゃ病院に行った方が良いんじゃ……」

「顔色が真っ青通りこしてして真っ白だぜ」

 ワイリとアールも只事ではないとヨナの周りに集まってきた。

「大丈夫……、大丈夫だから……」

「明らかに病人ですよヨナ。今から病院にでも……」

「大丈夫だよ、バルメ……。飛行機に乗ったら治るから……」

「え?」

「空港が……苦手なんだ。人が多すぎるし、うるさくて……」

「そうなんですか?」

「駐機している飛行機も嫌なんだ……。見たくない……、飛行機のあの色……」

 

「飛行機の、色かい?」

 そう聞くのはワイリ。

「うん……。青とか赤とか白に塗装された飛行機を見ると、気分が悪くなってしょうがないんだ……」

「ありゃま。殆どの旅客機ダメじゃん」

 アールは旅客機のカラーリングを思い浮かべて呟いた。

「高い所は大丈夫なんだけど……。早く乗りたい……。何で1時間も待ってなきゃいけないんだ……」

 ミーシャを抱きながらぐったりとするヨナ。

 

「なあ、マオ」

「なんでしょう?ルツ」

「あれが工作員の類にみえる?」

「見えませんね、全く」

「だよなぁ……」

 

 ヨナの言ったことは本当だったようで、飛行機に搭乗すると顔色も良くなり機内食を二度お代わりしていた。

 

~~

 同時刻、アフリカ大陸――

 砂漠の中に点々と住居がある村に、銃声がこだましていた。 

 此処は組織の金をちょろまかして逃亡したマフィアが潜伏しており、護衛もチンピラなりに銃撃戦には慣れた連中がそろっていたが、送られてきた殺し屋二人組は瞬く間に護衛を始末した。

「ん~……。いい音だぜ」

 アロハシャツを着た何ともガラが悪そうな大男が男を一人用のソファに縛りつけながら、先程から響いている銃声―片割れが止めを刺して回っているのだ―に関心するように呟いた。

「いいか、優男さんよ。俺は芸術家で、お洒落だ。だから銃撃戦は音楽に例える。薬莢の落ちる音一つとっても、テンポがいい。イタリアから遥々火星と見分けがつかないド田舎までわざわざ出向いて……、此処何処だっけ?チナツ」

「中東。オマーンの飛び地」

 そう答えたのは全員にとどめを刺して回ってきた片割れ―テンガロンハットに白シャツにタイ、スカートの日本人の少女―だ。部屋の外から戻ってきた彼女は大きな鞄から様々な道具を取り出した。

「そうそう。金をかっぱらった阿呆共だが、さぞ気合が入っていると考えた俺は伝説になる演奏が出来ると思った。だが――」

 そう言うと溜息を一つ、つまらなさそうに吐いた。

「ガッカリだ。釣られた魚でももう少し抵抗する。つまらねえし締まらねえ演奏になっちまったんじゃねえかこのど阿呆が」

 チナツと呼ばれた少女は鞄から工具を取り出して何かを組み立てていた。

「おい、チナツ」

「?」

「聞きたいことあったんだろ?この野郎に」

「……。いい」

「そういうなって、自分の中で沸き上がった質問は聞いておかねえと後悔するぞ?」

 それを聞いたチナツは、何かを組み立てていた手を止めて縛られている男に向き直った。

「逃げられると、何故そう思ったの?その甘い考えはどこからきたの?」

 そう聞いた彼女の眼を覗き込んだ彼は、彼女の青みを含んだダークブラウンの瞳に背筋が凍り付いた。

 其処には何の感情もなく、何か無機質な物を見るような目がこちらを覗き込んでいた。

「オーケストラ……」

 そう呟くだけで精一杯だった。

 

「まあ、クソつまらん演奏もチャラになるような素晴らしいアンコールがあるんだよな?」

「……」

 先程のつまらなさそうな表情から一転、大男は如何にも楽しそうな声を上げた。チナツが組み立てた装置が出来たのだ。

 奇妙な装置だった。ロシア製セミオートショットガンのストックが取り外され、トリガー部分に電子式のキッチンタイマーと金属製のレールを取り付けたものだ。

「師匠」

「おう」

 そういうと大男―師匠というらしい―は拘束された男の両足を上げてダクトテープと余っていたロープで膝を抱えるような体勢で縛り上げ、壁際へ移動させてから左右を大きな家具で固めた。これで左右にズレることも後ろへ倒れることも出来なくなった。彼女はというと、テーブルの脚部にショットガンの銃口を縛られた男に向くように高さを調整してからダクトテープと死体を使ってしっかりと固定してズレないようにした。

「何だと思うよ、裏切者」

 そう大男は問いかけた。

「あれはな、お前さんを出来るだけ苦しんで死なせるようにって依頼にチナツが考えた楽器だよ」

 そう大男が囁く間、チナツは固定されたショットガンに拡張マガジンを装着していた。

「今この体勢で撃たれても、お前の急所は両足が守ってくれるから拳銃の弾位なら早々は死なんさ。でもな……」

 チナツがチャージングハンドルを引いて弾を装填する。そして銃口が脛からズレていないか再度確認した。

「410ゲージ*1の細かい散弾を14発同じ所に撃ち込んだら、どうなるんだろうな?」

 そして彼女はトリガー近くに付いているタイマーを2分にセットした。

「終わったよ」

「そうか、んじゃ行こうぜ」

 そう言うと大男はサングラスを掛け、仕事道具が入った鞄を肩に掛けた。様々な銃を撃つつもりだったらしく、重い金属音がガシャリと響いた。その点チナツの鞄はしぼんでいた。

「オーケストラ!手前等!!ぶっ殺してやる!!」

 どうしようもなくなったことを悟ったのか、縛られたソファごと揺らしながら喚いた。

「手前等!!ぶっ殺してやるからなぁ!」

「出来ないこと言うんじゃねえよ、演奏が聞こえなくなるだろ?」

 そう言いながら部屋から出ていく師匠に、チナツは無言で後ろへ着いていった。

 

 あの銃には仕掛けがあって、少しの振動で撃発出来るようにシアに細工を施してあった。そこにゼンマイと電子機器を組み合わせると毎分50発のテンポで彼の折りたたまれた脚部に散弾が撃ち込まれるのだ。散弾は最初に脛に撃ち込まれ、次に太もも、最後は腹部へと達するが、その時点で彼が死んでいるかは不明だ。わざわざ小さい口径の散弾を選んだのは出来るだけ苦しみを長引かせるためで、これを12ゲージ*2でやると音は素晴らしいがお楽しみは直ぐに終わってしまう。

 

 ドン、ドンという等間隔の銃声と共に撃たれるたびに絶叫が響き渡ったのは、タイマー通りに2分後だった。

「中々良い声で歌うじゃねぇの。ちったあ見直したぜ」

「……」

 そう言う師匠に、チナツは見えないようにしているが顔を顰めた。

「早く終わっちまったから、近場でもう一仕事やっとこうぜ」

「……、あるの?」

「春先は俺達殺し屋の稼ぎ時だ。頭が痛くなる問題は暑い夏に持ち越したくないからな」

「へぇ…」

「ところでチナツ」

「……?」

「何でパンツ穿いていないんだ?」

「……秘密」

 

 既に銃声も絶叫も聞こえない、静かな砂漠を二人組は町を目指していった。

 

続く

 

 

 

*1
直径10.4mm

*2
直径18.4mm




 CCAT社の皆様、お許しください。こうでもしないと唯でさえ遅筆なのがもっと整理がつかなくなってしまうので・・・。また別の機会に書けるよう頑張ります。
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