異世界転生して騎士になった僕(男)は、メスオークどもからくっころを強要されていた。 作:寒天ゼリヰ
私、カステヘルミ・スオラハティは、妙な性癖に目覚めつつあった。
「痛かったら行ってくださいねー」
「あ、ああ……」
王都屋敷にある、私の寝室。長らく自分自身と使用人くらいしか入ってくることがなかったその部屋に、オトコが……アルが居る。ただそれだけで興奮せざるを得ない状況だというのに、この魔性の男はとんでもないことを提案してきたのである。
「あっ、あっ、もっとゆっくりやってくれ……刺激が強すぎる」
「おや、申し訳ありません」
ベッドの上でアルに膝枕をされた私は、彼に耳かきをされていた。アルの操る耳かき棒は、繊細かつ大胆に私の耳穴を蹂躙している。この男、異様に耳かきが上手い。私とて腐っても大貴族、風呂で体を洗うのも使用人に任せるような立場だ。当然、耳かきをされた経験も一度や二度ではない。
しかし、そんな私も彼の前ではまな板に載せられた魚のように無力だった。耳かき棒が微かに動くたび、くすぐったいような快感が私の脳髄を焼くのである。尋常な手管ではなかった。
「いやあ、魔力灯って便利ですねえ。夜半でも安全に細かい作業ができる」
などと言いながら、アルは私の耳をカンテラ型の魔力灯で照らす。これは光を発する魔道具で、ロウソクやオイルランプに比べて圧倒的に光量が多い。……つまり私の耳の中も丸見えということだ。正直、滅茶苦茶恥ずかしい……
「あ、アル、貴様……随分と耳かきが上手だな……? 普段からやっているのか?」
「幼年騎士団時代、幼馴染どもへの"ご褒美"でよくやってたんですよ。今でも、時々頼みに来るヤツは居ます」
手を止めたアルは、耳に息がかかるような近さでそう囁いた。背筋にピリピリと快感が走る。あまりにも距離感が近い。普通に話せばよいものを、なぜわざわざ耳元で囁くんだ? わかってやってるのか? 私を煽ってるんじゃないだろうな?
そもそも、膝枕という姿勢自体が不味いのである。彼の筋肉質な肉体が、すぐ顔の横にある。戦うことを前提に鍛え上げられた、戦士の身体だ。縋りついて何もかも任せてしまいたくなるような願望が、私の脳内にムクムクと湧き上がってきていた。
「そ、そうなのか……もしかして、ソニアも?」
「そうですね、割と頻繁に……」
ずるいぞ!!!! 私がつまらない執務に忙殺されている間に、こんな気持ちいいことをしていたのか我が娘は!!!!
「やっぱり……リラックスしていないと安眠なんて出来るものではないですから……寝る前にこうやって気分をほぐすと、寝つきもよくなるのではないかと」
相変わらずの囁き声で、アルはそんなことを言う。リラックス……リラックス? いや、確かに癒されはするのだが……むしろ興奮してこないか? これは。
「ちょっと、お耳をふーってしますね」
「あふっ!?」
そんなことを考えていたら、耳に息を吹きかけられた。思わず妙な声が出る。き、気持ちが良すぎる……。
「はい、じゃあ続き行きますね」
「ま、まってくれ! もう一回! さっきのをもう一回?」
「ええ? 仕方ないですねえ」
苦笑と共に、アルは再び私の耳に息を吹きかけた。あまりの心地よさに、尻尾に自然と力が入ってしまう。
「もう一回! いや、ずーっとふーってしてくれ!」
「もう、辺境伯様ってば」
などと言いつつも、要望にはとりあえず応えてくれるのがアルという男だ。結果、私は息だけで別の世界に行きかけた。
「お耳をいじられるのも……悪くないでしょう? 聞くところによると、耳を舐められたり噛まれたりすることを好む方も結構いるようで」
「舐めたり噛んだり!?」
な、なんて倒錯的な……というか、そんなことを耳元で囁かないでくれ! おかしな気分になってしまう! もうなってるけど!
「きょ、興味はあるな……アル、ちょっと試してみてくれないか?」
「駄目ですよぉ、辺境伯様。そんなことをしたら、寝られなくなってしまいます。これはあくまで、安眠目的の耳かきですからね」
「それはそうだが……」
どこまで私を惑わせば気が済むのだ、この男は! 私は三児の母だぞ! それが、まるで処女の小娘のように……。
「さあさあ、続きをしますよ」
「ああっ……!」
再び耳穴に耳かき棒がさし込まれ、私は情けない声を漏らすだけのオモチャと化した。……え、じゃあ、何か? 彼の幼年騎士団の同期達は、子供の時分からこんなことをされていたのか? 彼女らの性癖が心配になってきたな……。
「ここは指の方がやりやすいか……」
そんなことを言いながら、アルは私の耳の溝をなぞる。武器ばかり握っていたことがよくわかる、節くれだった武人の指だ。ああ、そんな理想の
「……これでよし。はい、右耳はおしまい」
「あっ……」
しかし、至福の時間は長くは続かない。彼が手を止めると、無意識に尻尾かくにゃりと力なく曲がった。
「もうちょっと、もうちょっとやってくれないか?」
「だめだめ、やりすぎは
そう言ってアルは私の耳にまた息を吹きかけてきた。
「あひぃ!」
「じゃあ、ひっくり返ってくださいね、辺境伯様。次は左耳です」
思わずアルの顔を見ると、彼はニヤニヤと悪戯っぽく笑っていた。私の反応を楽しんでいるようだ。……こ、この若造め! 確かに私は受け身寄りの方が好きな
いや、駄目だ! この雰囲気ならアルも受け入れてくれそうな気がするが、バレたらソニアに殺されてしまう! あの娘はやたらと聡いからな、アルに口止めをしたところで、雰囲気や気配ですぐに察してしまうだろう。
随分と酔っぱらっている自覚のある私だが、アルコールの力を借りてなおソニアへの恐怖は乗り越えられない。アルを巡って親子関係が決定的に断絶するのももちろん恐ろしいし、シンプルにあの暴力も怖い。あの娘、躊躇なく親の関節を引っこ抜きにかかってくるからな……。
アルに最初にツバを付けたのはこの私なんだぞ! なんでここまで娘に気を使ってやらねばならないんだ。別の意味でムカムカしてきたな……
「うう、分かった……」
結局、私はアルの言葉に大人しく従うしかなかった。……いや、しかし……十五歳も年下の男に好き勝手やられるのも、悪くはないな……。どうもおかしな性癖に目覚めてしまったような気がする。
ただでさえ、私は世間からは認められないような性質を抱えているんだ。そこへ新たにタチの悪い性癖を追加するのはやめてほしい。このままではアル以外では満足できない身体になってしまう。……いや、今さらか。私の