異世界転生して騎士になった僕(男)は、メスオークどもからくっころを強要されていた。    作:寒天ゼリヰ

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第347話 くっころ男騎士とエルフ式マッサージ

「大変申し訳ありませんでした……!」

 

「まさかこのようなことになるとは思っておらず……わたしの不明の致すところであります……!」

 

 風呂から上がって早々、僕はソニアとジルベルトの二人から謝罪を受けた。場所は、公衆浴場に併設された休憩所だ。普段ならマッサージ師等が詰めている施設ではあるが、今はガランとしている。蛮族が大挙して押し寄せたという話を聞いて逃げ出してしまったのだろう。

 

「これほど多くのバカどもが詰めかけるとは……ちょっと想像すればわかることだったのに、失念しておりました。なんとお詫びすればよいのやら」

 

「いいよいいよ、見られて減るもんじゃないし」

 

 僕は燕麦ビールを片手に、軽く笑って頷いた。実際、悪い経験ではなかった。あれほどの数の美女との混浴なんて、そうそうできる経験じゃないからな。前世の世界なら、暗黒カネモチかハイパーヤリチンチャラ男にしか許されない所業だろ。

 

「名誉も尊厳も減りますよ……!」

 

「この程度で棄損されるような名誉や尊厳なんてあっても無くても一緒だよ」

 

 冗談めかしてそう言いながら、僕はビールを飲む。井戸水でよく冷やされたビールが熱い湯で火照った身体によく染みた。あー、うまい。生きてる~って感じだ。

 いっそのことこのまま飲み会でも始めたい気分なんだが、まだ仕事が残っている以上そういう訳にもいかない。悲しいね。いい加減にそろそろ羽を伸ばしたいんだが。……まあいいか。酔っぱらわない程度とはいえ、勤務中に飲酒なんて前世じゃ許されない行為だったしな。飲めるだけでも幸せと思わにゃ。

 

「ただ、流石にちょっとくたびれたよ。少し休んでから合流するから、君たちは先に戻って貰ってかまわんかね?」

 

 もうすっかり休みたい気分になっていたが、仕事はまだこれからが本番である。食料を始めとした物資を分配したり、野営地を立てたり、兵隊どもを順番に風呂に入れたり……やることはいくらでもあった。

 特に、最後のヤツが問題だった。思った以上に湯が汚れやすいこと、浴室が狭いことが判明したからな。兵士全員が湯浴みを終えるまでに、いったいどれほどの時間がかかるのだろうか? 少なくとも、一日や二日では完了しないのは間違いない。

 まあ、村人らに余計な負担がかかるということに目をつぶれば、時間がかかること自体には問題は無いがね。部隊とそれについてきた民間人たちは、長期にわたる戦闘と行軍により疲れ果てている。いい加減、養生が必要だった。嫌が応でも、しばしの間この村の郊外に逗留せねばならないだろう。

 

「……承知いたしました。護衛の騎士を残していきますので、何かあったらそちらにお願いします」

 

 不承不承と言った様子で頷いた二人は、そのまま休憩所から去っていった。……態度には出さないようにしているようだが、二人ともそうとう落ち込んでるみたいだな。後でフォローしておいたほうが良さそうだ。

 部下に気分よく働いてもらうというのは、本当に大変なものだなあ。そんなことを思いながらビールをまた飲み、周囲を見回す。それなりに広い休憩所だが、人はあまりいない。フェザリアやゼラといった幹部連中は、すでに本陣へと戻っていた。みんな、それぞれやるべき仕事が山のようにあるのだ。ゆっくり休んでいるような暇はなかった。

 

「はぁ……」

 

 僕もこんなところで油を売ってないで、さっさと仕事に戻るべきなんだが……どうにも気力がわかない。身体も精神も休養を欲している感じがある。養生のための入浴のはずが、かえって疲れ果ててしまった。

 それに、脳内にはいまだにあの肌色空間の光景がチラチラとフラッシュバックしてるしな。半月以上自家発電すらしてないんだよこっちは。いい加減溜まってるんだ。そんな状態であんな目にあったら、悶々とした気分になるのも致し方のない事だろ。

 

「……」

 

 ちょうど手近なところに寝台があったので、僕はその上にうつ伏せに寝ころんだ。おそらく、マッサージ師が施術をするためのモノだろう。風呂文化が発達したガレア王国では、この手の商売はどこでもやっている。

 

「お疲れじゃのぅ」

 

 そんな僕の背中を、ぽんと叩くものがいた。顔を見なくてもわかる。ダライヤ氏だ。

 

「まあ、いろいろあったしな……いい加減一休みしたい気分だよ」

 

 僕は珍しく本音を吐露した。周りにいる部下は、休憩室の出入り口を守っている数名の騎士のみ。この距離であれば、小声なら届くまい。……まあ、ダライヤ氏も今となっては部下には違いないので、あまり愚痴めいたことをいうのは憚られるのだが。しかしまあ、相手は四桁の年寄り。少しくらいは甘えたっていいだろう。

 

「どれほど強靭なモノでも、張り詰めるばかりではいずれ壊れてしまう。時に弛緩する、というのも大切なことじゃよ」

 

「まあ、そうだろうね。とはいえ、仕事は待ってくれない訳だが……」

 

 ため息を吐いてから、僕は枕元においたビールをちらりと見た。この格好でアレを飲むのは、なかなか難しそうだ。起き上がればいいわけだが、その気力も湧いてこなかった。

 

「というか、ダライヤ殿。怠けている僕が言うのもなんだが、君はこんなところでゆったりしていて大丈夫なのか? 我々の勢力の中では、君が一番多くの部下を抱えているはずだが」

 

「居ても居なくても同じじゃよ、ワシなど。この頃のあ奴らは、ワシのいうことなど何も聞いてはくれん。みな、すっかりオヌシに心酔してしまった様子でのぅ? 口うるさい年寄りのいうことなど聞けるか! と言わんばかりの態度よ」

 

「あ、そう……」

 

 話の内容の割には、ダライヤ氏は嬉しそうな様子だった。背負い込んでいた責任が勝手に僕の方に移っていったんで、喜んでいるのかもしれない。……そうは行かんぞクソロリババアめ。隠居なんぞぜったいに許す気はない。僕にこれほどの苦労を背負わせたのだから、貴方もそれ相応の責任は受け持ってもらう。

 

「ま、そういう訳でワシは手すきなんじゃが……だからと言って、一人遊び惚けているわけにもいかんじゃろう。そこで、お疲れの総大将殿をねぎらいにきたわけじゃ」

 

 そう言ってダライヤ氏は、僕の背中にまたがってきた。そしてその小さな手で、僕の背中をぐいぐいともみ始める。

 

「……マッサージってこと?」

 

「そうじゃ。聞いた話では、この部屋は按摩(あんま)のための場なのじゃろう? ワシも伊達で年を食っているわけではないからのぅ。手慰み程度じゃが、その手の技術ももっておる」

 

「へぇ? ……んっ、こりゃいいな。それじゃあ悪いが、お任せしようかな」

 

 腰や背中を揉むダライヤ氏の手つきは、確かにかなりこなれたものだった。痛いともくすぐったいともつかない独特な感覚が僕を襲う。なかなか気持ちがいい。

 

「うむうむ、お任せあれじゃ。……フウン、しかしなかなかこれは……凝っておるのぅ」

 

 僕の尻あたりに座りながら、ロリババアは全身を使ってマッサージをしてくる。童女のような高い体温がこちらに伝わってきて、なにやらヤバいサービスを受けている気分だった。

 

「アーイイ、これはイイ……」

 

 ダライヤ氏の自信ありげな言葉は嘘ではなかった。戦闘や行軍で溜まった疲れが、ロリババアの老練な手つきで氷解していく。大変に気持ちがいい。たまにカリーナもマッサージしてくれるんだが、正直そちらより遥かに上手かった。

 

「んふ、んふふふ。そんな声をあげて、()いヤツじゃのぅ……」

 

 護衛の騎士の方をちらりと見つつ、ダライヤ氏はそう言った。そしてそっと僕の耳元に口を寄せ、囁いてくる。背中にロリババアの薄い胸がペタリと密着し、大変に危険な感じだ。

 

「ところで、この機会にちょっと相談しておきたいことがあるんじゃが」

 

「……というと?」

 

 こっちが緩んでる隙になんかブチこんでくる気だなコイツ。そう直感して、思考にかかっていた霧がスッと晴れていく。このロリババアは油断できる相手ではない。夢見心地で交渉すればケツの毛までむしられそうだ。

 

「そう警戒する必要はないじゃろうに……まあいい。相談したいことというのは、我らの将来についてじゃ」

 

 ちょっと心外そうな様子で、ダライヤ氏はそう囁く。……こいつ、見た目は童女なのになんでこんな色っぽい声を出せるんだろうか? 不思議でならん。

 

「将来……と言ってもな。現状では大したことはできん。とりあえず本格的な集落作りは春が来てからじゃないと難しいから、まずは冬営地の準備を……」

 

「それはエルフの将来について、じゃろう? ワシが言っているのは、もっと個人的なコトじゃよ」

 

 ニィと笑って、彼女は僕の耳たぶを蠱惑的に引っ張る。そしてその耳元へ更に口を寄せ、息を吹きかけるように囁いた。

 

「そう、個人的な……ワシとオヌシの将来について。……率直に言おう。ワシと結婚せぬか?」

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