異世界転生して騎士になった僕(男)は、メスオークどもからくっころを強要されていた。    作:寒天ゼリヰ

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第373話 くっころ男騎士と誘惑

 宰相と辺境伯の配慮により、数日間の休みをもらうことが出来た。それ自体は、たいへんに有難いことである。なにしろ僕はエルフェニア遠征からこっちまともな休みほとんど取っていない。いくら若いとは言ってもそろそろ心身ともに限界が近づいてきていた。いい加減しっかりと休養を取るべきであろう。

 ただ、正直なところいきなり休みをもらっても困ってしまうのが、社畜という生き物である。いや、会社勤めではないので公僕という方が正しいのだろうが、まあそれはさておき。問題は、休暇を貰ってもそれを使って何をするのか、というアイデアが出てこない点であった。

 

「はぁ……」

 

 領主屋敷の中庭で、僕はため息をついた。例の騎士様との飲み会はそれなりの夜中まで続いてしまったため、今朝は少し寝坊してしまった。まあ、休みだから別にいいんだけど。

 深酒をしたと言っても流石に二日酔いなどにはなっていないので、とりあえず日課の立木打ち(丸太を木刀でシバきまくる鍛錬だ)をこなし、かいた汗を水浴びで流して、朝食を食べた。で、今は食後の日向ぼっこ中というワケ。うーん、暇。

 

「どうしたもんかねぇ……」

 

 完全に暇を持て余している。王都に住んでいた時は、こういう余暇には猟銃を担いで森に出ていたものだが……残念ながら、このリースベンに住んでいた大型動物は、エルフやアリンコどもによってほとんど喰いつくされているのである。手ごろな獲物と言えば、せいぜい小鳥くらいか。

 鳥打ちは鳥打ちで奥深いんだが、正直僕の趣味じゃないんだよな。やっぱり狩猟の醍醐味は、自分よりもデカい獲物を狙うビッグゲームだ。だが、リースベンに居る限り、その手の獲物を狙う機会は存在しない。せっかく領主といういちいち狩猟権を買わなくてもいい立場になったというのに、大変に残念な話である。

 

「……」

 

 狩猟を封じられたとなると、取れる手段はだいぶ少なくなってくる。剣や銃の鍛錬に充てるか、あるいは本……兵法書の類でも読んで過ごすか、だ。まあ、一日中寝て過ごす、という手もあるがね。せっかくの休みにそれは勿体ないだろ。前世の経験上、身体がおっさんになっていくとどんどん休日に動き回るのがつらくなっていく。若いうちに休みをエンジョイしておかなきゃ損ってものだ。

 ……とは思っていたんだけどな。こちとら人生二周目で、身体は若くとも精神がスデにおっさんだ。いざ休みとなった瞬間、なにやら気力が萎えて何かをする気が失せてしまった。結局ベンチに腰を下ろし、ただただボンヤリして時間を浪費する羽目になっている。良くないよなあ、こういうの。

 

「アル様」

 

 何とも言えない心地で冬場特有の柔らかな陽光を浴びていると、後ろから声をかけられた。振り返ってみると、そこにはソニアとダライヤ氏がいた。ソニアの方は疲労困憊な様子だが、ダライヤ氏は満面の笑みを浮かべている。

 ……ダライヤ氏と直接顔を合わせるの、だいぶ久しぶりだなあ。彼女から求婚を受けてからこっち、意識的に避けてたんだよ。結局、彼女を無視する形でソニアらと結婚することになっちゃったしさ。

 ただ……ソニアとダライヤ氏の態度の違いを見ていると、何やら嫌な予感がムクムクと湧いてくる。このロリババアはアデライドらが説得してくれる手はずになっていたはずなのだが……これは、まさか……。

 

「あ、ああ。やあ、おはよう」

 

「……おはようございます」

 

「おはようじゃ!」

 

 ソニアは明らかに元気がないし、ダライヤ氏は露骨に上機嫌である。うわあ、やばいよ。

 

「ええとその……一体、どうしたんだ? ただ挨拶をしに来ただけではない様子だが」

 

「実は……」

 

 なんとも言いにくそうな様子で、ソニアは昨夜の会議の経過を説明してくれた。要するに、宰相・辺境伯連合軍はロリババアを相手に実質的な白旗を上げたらしい。

 まあ、案の定といえば案の定である。このロリババアは尋常ではない知恵者であり、いかな宰相とはいえ容易に勝てるような相手ではないのだ。相手をナメた状態で論戦を挑めば、こうなることは目に見えていた。

 

「それで……その、何と言いますか。この女の言うことには、自分であればアル様の伴侶としてふさわしい振る舞いができると」

 

「うむ、その通りじゃ。ワシの永きに渡る生においても、オヌシほどの傑物は見たことがない。当然、その伴侶も尋常な女では務まらん……」

 

 ダライヤ氏はそんなことを言いながら、僕の隣に腰を下ろした。そして手をぎゅっと握って、にこりとほほ笑む。

 

「エルフにしろ竜人(ドラゴニュート)にしろ、たくさんの人間がオヌシを支えにしておる。じゃが……支えにされるばかりでは、どのような英傑でもやがては折れてしまう。肝心なのは、支え合いじゃよ。ワシならば、オヌシの助けになれると思うてな」

 

「……」

 

 なんとも悔しそうな表情を浮かべたソニアが、ダライヤ氏とは逆側に腰を下ろした。スオラハティサンドイッチ・ハーフの格好である。

 

「事実……今の私では、アル様の支えになるには器量が足りません。むろん、修業を怠る気はありませんが……。しかし、一人前になるまでにはやはり時間が必要です。その間を埋めるためにも……即戦力がいるのならば、その力を借りるのも手の一つではないかと思ったのです」

 

「ソニア……」

 

 この頃のソニアは、明らかに己の無力さを嘆いている様子だった。そうして悩んだ結果が、僕がダライヤ氏とも婚姻関係を結ぶ……という選択なのだろうか?

 

「この女は、自分がアル様にふさわしい女であることをアピールしたいと申しております。 申し訳ありませんが、ダライヤを今日一日一緒に過ごしていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「いや…しかしそれは……」

 

 別にロリババアのことは嫌いじゃないし、むしろ好きな方だからな。そりゃあもちろんイヤな気はしないが、それはあくまでこちらの都合。ソニアからすれば、まったくもって面白くない事態ではなかろうか?

 

「僕は君に自分から結婚を申し出た立場だぞ。それが舌の根も乾かぬうちに別の女と休日を過ごすなど……」

 

「いいえ、アル様。私のことはお気になさらず」

 

 ソニアは首を左右に振って、僕の膝に手を乗せた。

 

「わたしが一番欲しいものは、あなたの笑顔なのです。それを手に入れるためには、蛮族の力を借りることにも躊躇はいたしません。肝心なのは、あなたがどう思うか……なのです」

 

「……」

 

「ダライヤが嫌いだというのなら、そう言ってください。問答無用でこのわたしが蹴りだします。きっと面倒なことが起こるでしょうが、責任をもってわたしがすべて対処いたします。アル様のお手は煩わせません。そして、アル様自身がこの女が必要だと思ったのであれば……」

 

 強い目つきで、ソニアはダライヤを睨みつける。ロリババアはそれをどこ吹く風と受け流し、僕に艶っぽい視線を向けた。うわあ、バチバチだ。やべえよ……。

 

「遠慮なく、そうおっしゃってください。わたしは否とは絶対に申しません。どうぞ、アル様。自分自身の心にお従いください」

 

 ンヒィ……なんかすごいことになって来たな。どういうシチェーションなんだ、これは。幼馴染とその母親と上司の三人と婚約した挙句、さらに彼女ら公認でロリババアに手を出しても構わないと。いくら何でも状況が異様すぎるだろ。僕は無言で、己のほっぺたをつねった。普通に痛いわ。幸いにも……いや、残念ながら、これは夢ではないようだ。ワァ……。

 

「……わかった。お言葉に甘えさせてもらおう」

 

 僕の理性は「いや駄目に決まってるだろ! さっさとロリババアにお断りを入れなさい」などと言っていたが、己の口から飛び出したのはクズとか言いようのない発言であった。いやだってしょうがないだろ! だってよ、腹黒スケベロリババアだぞ、好きになるなって方が無理だろ!! うおん、すでに婚約者が三人だか四人だかいるというのに、なんということだ。母上、申し訳ありません。やはりアルベールはカス野郎だったようです……。

 

「では、今日一日よろしくな?」

 

 それを聞いたダライヤ氏はニッコリと笑って、僕の腕に抱き着いてきた。その薄いが柔らかい胸の感触が、僕の理性を侵食する。ええい、このロリババア……! わかってやってやがるな……!

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