異世界転生して騎士になった僕(男)は、メスオークどもからくっころを強要されていた。 作:寒天ゼリヰ
戦線に異変が発生したのは、伯爵軍陣営に傭兵団が到着した当日だった。
「
伝令が血相を変えて指揮壕に飛び込んでくる。僕の心臓は跳ね上がった。
ガレア王国の
「今さら
騎士の一人が呟く。この戦争が始まって以降、
「新手の傭兵団が保有している個体かもしれん」
「そりゃ、相当の金満傭兵団ですね」
とはいえ、今はそんなことを考えている余裕はない。敵は二騎、こちらは一騎。放置していればあっという間に
「何にせよ、こちらの
一応、こういう時のための作戦は周知してある。僕は命令を出しつつ、傍らにおいていた騎兵銃を引っ掴んだ。
「第二種待機中の騎士は予備指揮壕に集合! 急げ!」
そう言ってから。僕も予備指揮壕へ急いだ。騎士たちも、あちこちの塹壕から集まってくる。
予備指揮壕は、土塁に囲まれたそれなりに広い壕だ。メインの指揮壕が使われている今は天幕ひとつ立っておらずガランとした印象を受ける。そのド真ん中で、僕は騎士たちに方陣を組ませた。
「対空戦闘用意!」
叫びつつ、腰のポーチから金属製の小さな物差しのようなものを二つ取り出す。それらをそれぞれ、騎兵銃の
「対空射撃は実戦じゃ初めてですね。うまく行きますか?」
「お前たちならやれるさ」
これらのパーツは、対空射撃用の照準器だ。歩兵銃を用いた対空射撃は、前世の世界における第二次世界大戦やベトナム戦争でさかんに行われていた記録がある。それによって撃墜された航空機も一機や二機ではない。
といっても、僕たちが使っているのは単発式の先ごめ銃だ。連射能力など皆無に等しいこの手の銃で対空射撃をしたところでどれだけの効果があるのかは不安だが、ほかに対空攻撃の手段などないので仕方がない。剣と魔法の世界と言っても、自動追尾式のマジックミサイルみたいな便利な魔法は存在してないからな。
「来ました!」
見張りが叫ぶ。北の空に、
対空照準器を取り付け終わると、ニップルへ雷管を被せる。ハーフコック状態だった
「もう一度青色信号弾!」
打ち上げ花火発射機めいた軽臼砲から発射された信号弾が、空中で青い光を発する。それを見た
「引き付けるぞ、早まるなよ!」
遠距離で撃ったところで絶対に当たりはしない。僕は部下たちに注意しつつ、
あっというまに、彼我の距離は羽音がはっきり聞こえる距離まで近づいた。対空照準器を通してその様子をながめつつ、僕は小さく息を吐く。まだだ、まだ早い。
「……狙いは先頭の
「ウーラァ!」
風切り音を残して、
「撃て!」
反射的に僕は叫んだ。銃声の多重奏。一頭の
「相手は
命令を出しつつも、視線は残る一騎へ向けられていた。突然僚騎を失った
悲鳴じみた咆哮が、戦場に響き渡る。さすがの
「騎手が生きているようなら回収しろ! 所属をはっきりさせたい」
そう命令する僕の頭上から、パラシュートのついた通信筒がひらひらと舞い降りてきた。
「敵陣に攻勢開始の兆候あり? やっぱりか!」
今回は何とか手早く敵航空戦力を始末できたが、また
「ここは歩兵隊に任せる。騎士隊は総員、持ち場に戻れ!」
しかし、ここにきてまた攻勢か。愚直に突っ込んで来ても無駄なことは、向こうもよく理解しているはず。いったいどう言う手を使ってくるつもりだろうか? 自分も指揮壕に急いで戻りつつ、僕は思案した。