オグリキャップside···············
私にトレーナー、凱さんが着いてもう2週間程になる。
今日は、中央でのメイクデビューを控えた私と、間もなくクラシック級のシーズンが始まるフジとシャカールの特別トレーニングと称し、とある山に来ている。
「ん〜っ··········車が長かった分、空気が美味しいね」
「おお··········自然がいっぱいだな」
「チッ、こんな山奥で何すんだよトレーナー」
「よくぞ聞いてくれました。今日は、この山で山菜取りをしてもらうゾ!」
「3歳?子供と遊ぶのか?」
「違うよオグリちゃん。山菜。山に野菜の菜で山菜。立派な食材だよ」
「ご飯か!?それは楽しみだ··········!」
「でも、いいのかい?勝手に山使っちゃって」
「それは問題ない。だってここ、ウチの山だもん」
「へぇ、トレーナーさんの山か〜!トレーナーさんの··········」
凱さんは山を持ってるのか··········
山を、山?
「山だって!?」
「山って保持出来るんですか!?」
「おん。管理とか色々大変だけどネ。兎も角、今日はこの山で山菜を取って貰うよ。ウチの婆ちゃんが食いてぇ食いてぇってな」
「あはは··········流石、よく分からないね。凱さんは」
「スケールが違い過ぎるぜ··········」
「まあ、俺はちょっと用事あるんで、地元の商工会と子供達の学習に参加させてもらうだけだから、精々楽しんでこい。あ、これ付けとけよ」
これは···············蹄鉄?
「それ、ウチのスポーツ店で売ってる登山用蹄鉄の改良版なんですよ」
「ベルノ特製の蹄鉄でな。鉛を使ってる」
「重っ!?5kgくらいあるんじゃねぇか··········?」
「惜しいネ。8kgだヨ」
「これで登山かい·····?流石に脚が壊れちゃうんじゃ··········」
「大丈夫。今回のコースは急登が少なくて、葉っぱが多いから、むしろ重い方が安全さ。それに、お前らの脚はそんなんじゃ壊れないだロ?」
「あの、トレーナー。私は··········」
「あ、オグリにはこれ。特製10kg蹄鉄」
「··········!ありがとう!」ピコピコ
「マジかよ··········ったく、ロジカルじゃねぇぜ、あいつの脚は」
「私達も、負けてられないね」
「私は、サポートに回りますから。今日は山菜10kg取得が目標ですよ!」
「頑張んな。それじゃ、行ってこい!」
山菜··········山の幸··········
「必ず食べ切ってみせる!」
「どこに闘志燃やしてるの··········」
「元気でいいね〜」
「おっ、アンタらが鴫原んとこのウマ娘さん達かい?歓迎するよ!今日はガキどももうるせぇが、楽しんでってくれや!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「あらあら、若い子達はいい返事だね!それじゃ、これ渡しとこうかね!ほら、一人一つだよ!」
これは··········?
「それね、あたし達婦人会で作った山菜図鑑さね。分かりやすい見つけ方も載っけてるから、それヒントにして取りまくってね!それにしても、べっぴんさんばっかりねぇホントに!かー坊も中々やるねぇ!」
「いえいえ、ありがとうございます··········私達もトレーニングさせて貰う身ですから」
「あ、そうだ!これ!これちゃんと覚えといて!」
··········?
ツルと、ハートの葉っぱ?
「これは、自然薯の目印さね。自然薯はこの辺の名産品でね、この時期のやつはもう絶品よ!」
「ジネンジョ·····?」
「山芋の1種だ。取れる期間が短く、保存が効かねぇから中々市場に出回らないレア食材だぜ」
「物によってはキロ数万で取引されるからねぇ、採れたら大儲けさ!まあ、ここの連中は殆ど食うことが目的だけどね!」
「よく分からないが、兎に角絶品なんだな!」
今日来れない凱さんの食べる分まで、沢山採るぞ··········!
「それじゃあ、足元に気を付けて!子供たちはウマ娘の姉ちゃんの後ろに着いてけよ!」
「なら、私が最前列を行こうか。着いておいで!」
フジキセキは子供たちに好かれてるな。
「オレは最後尾でイイぜ。ガキは少し苦手でよ··········」
「シャカールはおっかなびっくりだな?」
「ああ゛!?そんなんじゃねぇよ!ただ··········」
「ただ?どうしたんです?」
「··········予測が出来ねぇもんは苦手なんだ」
成程、色んな好き嫌いがあるんだな。
「さあ、狩りまくるぞ!」
「おいおい、何だこのバケモンみたいな自然薯はヨ」
「オグリちゃんの野生の嗅覚と言うんでしょうか、1発で引き当てた見たいですよ」
「がぁ··········脚が動かねェ··········」
「ぜェぜェ、中々に辛かったね··········」
「コイツは··········2mくらいあるんじゃねぇか?」
「しかも、身が引き締まってるな。こりゃあ美味いぞ」
「凱さん!早く食べよう!鮮度が落ちる前に!」
「ハッハッハ、腕がなるヨイ」
凱さんの手料理··········楽しみだ!
だが、どうしたんだろう?
「凱さん··········?」
「オグリちゃん、行くよ!」
「あ、ああ··········」
「ほれ、出来たぞ!俺と母さんの『山の幸スペシャルメニュー』だ!」
「「「「おぉーーーっ!!」」」」
自然薯のベーコン巻き、山菜の天ぷら、なめこの味噌汁、川魚のお刺身、熊肉の唐揚げ、牡丹鍋etc··········!
「か、凱さん!こんなに沢山食べていいのか!?」
「おう。遠慮なくおあがりよ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて··········」
「「「「「いただきます!」」」」」
「ん〜!この自然薯フワフワでサクサク!ベーコンとの相性最高だね!」
「この山菜の天ぷらもいいな!草食ってるはずなのに香りと塩気が混ざって超美味い!」
「この唐揚げも最高れす!ザックリ揚がってるのに中はお肉が柔らかくて臭みもありません!」
「··········ん!おかわりだ!いくらでも行ける気がするぞ、凱さん!」
「フフフ、それは嬉しいねぇ。どんどんお食べよ」
「母さん、あんま甘やかすなよ?オグリはホントに一升なんてもんじゃないぞ」
「あら?五升じゃ足らなかったかしら?」
「俵並かヨ」
しかし、ホントに何処までも食べれそうだ··········
「はいココで、更にお米が進むおかず投入でーす!」
「これは··········とろろか!?」
「自然薯と白だし、酒、白胡麻、胡椒を入れてニンニクを1さじ入れてある特製スタミナMAXとろろよ!」
こ、これは··········!!?
「と、止まらない!米がどんどん無くなっていく!」
「トレーナー!おかわりだ!おかわりジャンジャン持ってこい!」
「ハイハイ〜」
「ふぅ··········おなかいっぱいだ」
「くっ·····腹が割れる··········」
「こんなに沢山食べたのは久しぶりだね··········」
「全員お腹パンパンですね」
「今日はよく寝るぞ、コイツら」
「フフフ、可愛らしい娘達ね。誰が凱のお嫁さんになってくれるのかしら?」
「お嫁さん???」
「バッ、母さん!何聞いてんだよ!」
「あら〜?私はもう誰かとお付き合いしてるものかと··········え〜?もしかしてまだ独身なの?もう23なのに?」
「普通は23のヤツは独身だよ!ったく、俺はまだ若いんだよ。てか恋人作るためにトレーナーなった訳じゃないし、コイツらにも迷惑だろ··········」
「迷惑では無いよ、凱さん」
「ああ。凱さんはとってもいい人だ。何だか、ずっと私達の事を思ってくれている気がする」
「まァ、アンタがいなければオレはずっとあの場所から動けなかったからな。そういう意味じゃ助かってるよ」
「なんと言うか、オグリちゃんの付き添いで来た身ですけど、なんだかんだ女の人に優しくて、でもトレーニングの仕方は斬新で、尊敬できます」
「も〜··········恥ずかしいンだよなこーゆーの··········」
凱さんが照れてる··········!珍しいな。
「あー!いいから風呂入ってこい!この辺りからは温泉が出るから、しっかりほぐしとけよ!」
「「「「はーい!」」」」
フフ、いい物を見た気分だ·····♪
「ったくアイツら··········」
「そうだ、凱。あの事はもう話したの?」
「··········いや、まだだ。今はアイツらをレースに集中させたい。アイツらが頑張ってる中では、痙攣とかもあんまり見せないようにしてる。次のレース、特にオグリはメイクデビューだ。この辺りで田舎に帰るウマ娘も少なくない··········」
「ふ〜ん··········でも、悔いは残しちゃダメよ。少なくともクラシック級が終わる前には話しておいたほうがいいわ」
「うん。そうするよ」
「····················タオルを忘れてしまった」
「もう、早く取ってきなよ。私達、先に入ってるからね」
「うん。先に入っててくれ」
たしか、リビングに荷物が··········
あ、凱さんとお母さんか。
··········?何か話して、
「それにしても、本当に大変ね··········」
「まあ、そんな気ぃ落とすなよ。今に始まったことじゃないだろう」
「そうだけどさ··········いやホント··········グスッ··········」
「ほら、泣くなよ母さん」
「うう、ごめんねぇ··········丈夫な体に産んであげられなくてぇ··········ヒック··········」
「ちょっと酒入ってたか··········ほら、気にすんなって」
「うう、だって··········」
「今度こそ死んじゃうかもしれないのよ?」
··········え?
「··········マイナスな考え方はやめようよ。今度こそ助かるかもしれないんだからサ」
「··········そう、ね··········ごめんなさい。私も悪酔いしちゃった」
「おう」ウマピョイ!ウマピョイ!
「その着信音、いい加減変えた方がいいわよ。女の子が寄り付かないわ」
「ウチのメンバーがこれ踊るまでは変えない。··········ワリ、ちょっと出てくる」
··········トレーナーは··········勝手口か··········
「あら、オグリちゃん。どうしたの?」
「!!??い、いや、覗き見するような事は、決してなくて··········ただ、その···············」
「それを言うなら覗き聴きでしょ?そう··········あの子まだ話してないって言ってたものね··········私の口から言うことは何も無いわ。あの子が話すまで、オグリちゃんはオグリちゃんのやるべき事をしなさい。でも、時々あの子を、凱を気遣ってあげて」
私は、私に出来ることは··········
「···············わかった。私、絶対に勝つよ」
「そう。その意気ね!じゃあ、さっさと入っちゃいなさいな」
「··········!はい!」
私の、私と凱さんの目的のために、勝つ!