ポケットモンスター:エキスパンションレポート 作:224番道路
レポートNo.112
本日、被験体が無事、実験可能段階に入りました。
後は出て来る結果次第となります。
どうか良き結末に至りますよう、わたくし、誠心誠意お祈り申し上げております。
追伸
あなたに体を預ける前に、一つだけ忠告です。
すでに死んだ人間に忠告というのもおかしな話ですが、しかし、長年多くの悩みや未練を抱える霊をこの身に降ろし、成仏のお手伝いをさせていただいている『イタコ』の私からの忠告です。
あまり、己を責めないことです。
この世に縛られ続ける霊の多くは、己で己を縛っています。
あなたが解放されるとするなら、それはあなたがあなた自身を許した時、ただその時だけです。
ご健闘、お祈り申し上げております。
お前には感謝している。
ハクタイの森で彷徨っていた俺を見つけてくれた事にも、そんな俺に協力してくれた事にも。
だがこれは、俺の責任だ。
俺の一族の責任であるのと同時に、俺の責任でもある。
だからこれは、やはり俺が償うべき罪だ。
お前の言いたい事は分かっている。
心から気遣ってくれているのも、お前の体を通してよく分かる。
だがこれは、俺の責務だ。
彼を救わなくてはならぬのだ。
必ず成功させる。
とある船乗りたちの会話
「……長いな」
「しゃーねえ、シンオウじゃ時々ある」
「本当だったんだな、あの噂。ただの言い伝えだと思ってた」
「俺もだ。……医者もお手上げって話だろ?」
「そうらしい。可哀想になあ、一人息子だってのに」
「過去には死んだ奴もいるらしい。マズいよな」
「マズくたって、俺らにゃ何もできねえ。祈るしかねえ。あの子が悪夢から覚めるのを」
レポートNo.113
五回目の実験、今のところは順調だ。
被験者に選んだ子供は、悪夢を見ているが、体は正常に機能している。
現在俺は、医者に成りすまし、子供に特定の薬品を投与している。
このまま上手い具合に悪夢が体に慣れていけば、本格的に悪夢ワクチンが完成する。
前回の実験、イッシュ地方に住む少女には、悪い事をしたと今でも思う。
薬品の中に含まれていた成分の中に、より深く眠りに落ちる性質のものが多量に含まれていた。そのせいでより深く彼の力を受け、死なせてしまった。
この罪も、俺が背負おう。
永遠の地獄にも堕ちよう。
だからそのために、この実験はなんとしてでも成功させなければならない。
悪夢ワクチンが完成し、これをシンオウ地方を初めとした全ての人とポケモンに接種できれば。
そうすれば、悪夢を見はすれど、必要以上に苦しむ者も、死ぬ者も出なくなる。
世界中の生き物が、彼の力への抵抗力を身につけさえすれば。
そうすれば、もう一度、彼が受け入れられる。
もう二度と、彼は苦しまずに済む。
新月島に、閉じこもらずに済む。