ポケットモンスター:エキスパンションレポート   作:224番道路

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とある考古学者のボイスレコーダーⅢ

 

20XX/8/25 21:54 録音時間00:06:09

 

 

 

 8月25日、21時54分、記録者シロナ。

 

 ヒオウ先生に会って、話をしてきた。

 カンナギの壁画の話をしたら、自分の仕事を後回しにして会いに来てくれた。ありがたいわ。

 一つ発見があったから、ここに記録しておく。

 

 

 どうやらあの壁画に書かれていた文字は、過去に一度、別の場所で発見された事があるらしい。

 全く同じ形の文字があったから間違いないって、ヒオウ先生もおっしゃっていた。

 

 

 あの文字は古い学者の間で『始祖の文字』と呼ばれていて、一時期すごく話題になったそうよ。

 最初に発見されたのは四十年くらい前。

 ホウエン地方の流星の滝の一ヵ所に、古びた壁画と一緒に書かれていたって。

 壁画の劣化具合から、これまで発見されてきたどの古代文字よりも古いのではないかと考えられた……だから、『始祖の文字』。

 

 でも、誰もそれを研究する事ができなかったらしい。

 流星の滝の壁画は経年劣化が激しくて、ほとんど解析不能。加えて『始祖の文字』もその一ヵ所でしか発見されていなかったからサンプル不足で、研究を断念せざるを得なかったとか。

 

 

 ますますカンナギの壁画の重要度が上がってきたわ。

 もしかしたら、今までにないレベルの発見かも。

『始祖の文字』の解読は、ヒオウ先生が請け負ってくれる事になった。あたしはあたしで、別の角度から壁画を解明しようと思う。

 何か参考になる資料、持ってるかしら。……はああぁぁ……その前に部屋を片付けないと。

 

 

 ……あの壁画、本物のディアルガに見せたら、何か分かったりするのかしら。

 ヒカリちゃん、今どこにいるんだろう。

 呼んだら来てくれるかしら。

 忙しくなければいいけど。

 

 …………。

 

 ……あ。

 今日はもう終わり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/8/26 16:18 録音時間00:06:56

 

 

 

 8月26日、16時18分、記録者シロナ。

 

 探してみたけれど、あたしの部屋に参考になりそうなものは見つからなかった。

 探したの忘れて、また部屋を散らかす羽目になるのも面倒だから、一応記録しておくわね。

 ……前にヒカリちゃんに片付け手伝ってもらったのに、また散らかしちゃった……。

 どうしよう……。

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

 ……違和感とか、疑問とか、直感とか、そういうのを忘れないためにこの記録をつけてるから。

 だから一応、この変な感覚も記録しておくわね。

 

 

 

 あたし、あの壁画、どこかで見た気がする。

 でもどこで見たのか全然思い出せない。

 二日前くらいからずっと、変な既視感があったの。

 ぼんやりと、これって見た事あるような気がするって思ってたの。

 ……いつ?

 

 壁画……。壁の奥にも壁があって、そこに壁画が描かれてて……。

 壁画っていうより、このシチュエーションというか、いつだったか同じような事を調べてた気がするの。

 ……いつだったっけ。

 ただのデジャヴ?

 ……全く同じってわけじゃないけど。

 同じようで同じじゃない、似たような事を体験した感じ……。

 

 ダメ、分かんなくなる。

 今日はもうやめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/8/28 13:18 録音時間00:07:17

 

 

 

 8月28日、13時18分、記録者シロナ。

 

 まだ進展はないけれど、気になった事があったから記録しておく。

 

 そう言えばあの壁画にも、ギラティナとアルセウスは描かれてなかった。

 やはりあの二体は、シンオウ神話の中でも少しだけ特殊な立ち位置にいるのかも。

 これまで色んな神話を調べてきたけど、その中でアルセウスとギラティナの名前が明確に出て来たのは、ミチーナで聞いた神話以外になかった。

 ミチーナはカンナギ以上に神話と関わりの深い町だから、そこにしか記録がないのかも……。

 

 …………。

 

 今日の記録は、とにかく気になる事を言っていくだけにするわ。

 事実も妄想も関係なくね。

 

 

 

 

 

 歴史や神話を学び始めてから、ずっと疑問に思っていた事がある。

 

「神様はなぜ、人の前に現れるのか」。

 

 神様……ここではディアルガとパルキアに限定しておく。

 彼らはなぜ人間の前に姿を現すのかしら。

 そもそも現れていいものなの?

 時間と空間を司る、ひいては世界創造と深く関わるほどの存在が、人間の世界に干渉する事なんてあり得るの?

 

 その疑問は、ギンガ団の一件でさらに膨れ上がった。

 神様が、一時的とは言えアカギに……人間の手で制御されそうになった。

 それどころか、最終的にはモンスターボールの中に収まり、一人のポケモントレーナーと共に道を歩む事になった。

 

 ヒカリちゃんの持ってるディアルガ、彼の力は本物だわ。この目で見たから間違いない。

 時間を操る力……。

 でも、本当にあれが神様なの?

 世界を創った神様が、人間と肩を並べるなんてあり得るの?

 

 

 …………。

 ここからは、本当にただの、あたしの妄想。

 

 

 人間の前に現れるディアルガ、パルキア……そしてギラティナとアルセウスも。

 彼らは実は、「本体じゃない」のかもしれない。

 ……って、ずっと前から疑ってる。

 

 彼らは神様本体じゃなくて、『神様が人間界に干渉するために使う、アバター、分身、あるいは幻影のようなもの』じゃないかと思ってる。

 

 神様そのものは、ずっと天の上にいて。

 人間と接触する必要に駆られたら、そういう『対人間用の自分の代わり』を用意して、地上に降ろしてるだけなんじゃないかって。

 それが、神話の中で語られるディアルガ、パルキア、ギラティナ、アルセウスの正体で。

 今、ヒカリちゃんのモンスターボールの中にいるものの正体なんじゃないかって。

 

 

…………。

 

 

あたし……。

あたし前も似たような事言わなかったっけ。

……え?

 

 

 

 

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