ポケットモンスター:エキスパンションレポート   作:224番道路

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とある考古学者の記憶③

 

20XX/11/11 14:45 録音時間00:09:36

 

 

 

 11月11日。

 今は……14時45分。

 記録者シロナ。

 

 ……なんで起動したんだっけ。

 意味ないのよね、これ、録音しても。

 どうせ忘れてるもの。

 …………。

 まあいいわ。ただの儀式みたいなものだし。

 

 

 

 何も思い出せなくなった。

 そもそも覚えていないから、本当に「思い出せない」のかも分からないけど。

 三日前の録音で、「テンガン山に行こうとしてた記憶はある」って言ってたけど、今、それすら思い出せなくなっちゃった。

 ……病気かしら、あたし。

 アルツハイマー? この歳で?

 

 でも録音した事だけは覚えてるのよ。

 ただ、9月1日にテンガン山に行こうとしてたらしい記憶が、全く思い出せない。

 じゃあ9月1日は実際には何をしてたのか思い出そうとしても、それも思い出せない。

 記憶が丸ごと、何かに食べられたみたいにポッカリ穴が開いてる。

 ……まあ二ヶ月以上前の出来事なんて、あたしじゃなくたって普通に忘れるかもしれないけど。

 

 残った手掛かりはヒカリちゃんと、研究に協力してくださってたらしいヒオウ先生だったけど、二人も何も覚えてないって言ってたし。

 これで完全に手掛かりゼロ。

 このボイスレコーダーを除いて。

 

 

 

 …………。

 研究者として、探究者として、こういうの悔し過ぎるけど。

 もう諦める。

 カンナギタウンの壁画の件、もう考えるのはやめる。

 

 そもそもこのボイスレコーダー以外の記録がどこにも残っていないもの。

 写真データも文書データもない。実物の壁画もいつも通りだし。これ以上探りようがない。

 だから……本当は嫌だけど、諦める。

 切り上げる時はスパッと切り上げないと、未練がいつまでも続く。

 新しいものに向かっていけなくなるから。

 

 

 

 8月からの音声記録、このボイスレコーダーからは消すわ。変な未練が生まれないように。

 データ自体はパソコンにでも移して保管しておく。

 もし何かを思い出せたら、またすぐに調査できるようにはしておく。

 

 ……それでも何も思い出せなくて。

 何も思い出せないまま、いつか未来、数ヶ月後とか数年後、何かの拍子にこの音声記録を見つけて。8月から続く壁画の話を聞いたとしたら。

 そして、聞いてもやっぱり何も思い出せなかったら。

 

 その時は……まあ……うん。

 ゾロアにでもつままされた、ちょっと不思議な出来事だと思ってちょうだい。

 

 

 

 そういうわけだから。

 今日は11月11日、今は14時58分、記録者シロナ。

 今日で音声記録を終わりにします。

 おつかれさま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/11/19 11:15 録音時間00:07:44

 

 

 

 11月19日、11時15分、記録者シロナ。

 

 すごいものを見つけたわ。

 まあ見つけたのはあたしじゃなくて、とある遺跡マニアなんだけど。

 

 何かとんでもないものが見つかるかもしれないから、一応音声記録を残すわね。

 日付と時間はリアルタイム。進展があったその日その時間を指す。

 音声データは、あとで文書の方にもまとめておく。

 

 

 

 本題に入る。

 ズイの遺跡に、今まで発見されなかった新しい部屋を見つけたの。

 

 発見したのはさっきも言ったけど、とある遺跡マニアの人。

 穴掘りとか洞窟掘りが好きっていうちょっと変わった人なんだけど、214番道路から岩山を掘り進んでたら、なんとズイの遺跡の一室に繋がったのよ。

 

 でもこの部屋、ズイタウンからはどうやっても入れない構造なの。

 出入口が一つもない部屋。

 遺跡マニアの人がピッケルで壁をぶち抜くまで、ここは完全な密室だった。

 どうしてそんな部屋を作ったのかしら……。

 

 

 実は、ここを発見したのは相当前らしいわ。

 遺跡マニアの人は、8月末だって言ってた。

 だけど、この部屋を発見したのはあくまで個人の趣味だった事。加えて、そのすぐ後にシンオウ地方で異常現象が多発して、遺跡どころじゃなくなったから、特に公表はしなかったそうよ。

 

 発見者本人曰く、とあるトレーナーと競争してたって。

 アンノーンを全種類捕まえるのが先か、岩山を向こう側まで掘り抜くのが先かって。

 しかもその競争相手、アンノーンを全種類捕まえたらしいわ。

 

 

 本当はそのトレーナーとも会ってみたいのよねー。

 アンノーンは28種の形状が発見されてるけど、その全部を揃えたトレーナーなんて聞いた事もないわ。

 ……会いたい。ぜひ。

 でも遺跡マニアの人、トレーナーの名前を聞いてなかったから分からないって言うし。

 

 

 

 ……いやー、会いたいわー。

 遺跡の新しい部屋も発見したし。

 まだまだ見た事ない冒険が待ってる気がする。

 

 なんだかワクワクしてくるわね!

 

 

 

 

 

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