ポケットモンスター:エキスパンションレポート 作:224番道路
20XX/8/24 10:17 録音時間00:03:19
8月24日、10時17分、記録者シロナ。
今、業者の人達が洞窟の解体工事を進めてる。
カンナギの洞窟の壁は、内と外の二重構造になっている。先日の地震で外側の壁の一部が壊れたのだけど、変に残していてもまた崩れる危険性があるから、外側の壁は、もう全部壊してしまおうという話になった。
ちょっと名残惜しいけれど……仕方ないわね。元々あった壁画も壊れちゃったし。
業者の人達には、「くれぐれも内側の壁画には傷を付けないで」と念を押しておいた。
元シンオウチャンピオンとしての力とコネも見せつけて来たから、しっかり言う事を聞いてくれるとは思う。
壊しやがったらどうしてくれようかしら。
……昨日からずっと考えていたけど、やっぱり壁画の意味は分からないままだった。
何のために何を描いたのか。あの変な『球体』は何を表していたのか。
そして、なぜ隠さなければならなかったのか。
わざわざ覆い隠すように壁を作るくらいよ。よっぽど見られたくなかったのか。
……でも……だったら普通、「壁を作って隠す」んじゃなくて、「壁画そのものを壊してしまおう」って思わないかしら。
壊さなかった。でも隠さなくちゃいけなかった。
あるいは、壊せなかったから隠すしかなかった。
……やっぱり全然分からない。
進展がある事を願う。
20XX/8/24 11:10 録音時間00:01:44
同日11時、シロナ。
急いで記録してる。洞窟の中よ。何これ……。
外側の壁は全部壊したけど、その内側からまた壁画が出て来た。
っていうよりこれ……。
洞窟の外周全体が絵になってる。
全部よ。余すところなく全部。
洞窟の中をぐるっと壁画が取り囲んでる。
『球体』だけじゃなかった。もっと細かく色んなものが……一応全部写真に撮ったから、後で文書データにも載せておく。
……これは、ポケモン? 人間?
……違う、何か変。
ポケモンにも人間にも思えない『何か』の絵がある。
生き物だと思うけど……。
…………。
一旦切る。
20XX/8/24 18:00 録音時間00:05:56
8月24日、18時00分、記録者シロナ。
今回の発見を、簡単にまとめておくわ。
一つ目、洞窟内の壁画。
洞窟の外周をぐるっと取り囲むように現れた壁画は、あれで1枚の大きな絵だった。
真ん中に、あの謎の『球体』。
そしてその真下に、『球体』に向かって首を垂れる人達の図。
さらに衝撃的だったのは、その左右に広がる絵よ。
……あれはどう解釈したらいいのか、未だに分からない。
『球体』の真下で拝む人間達。
それを左右から挟むように描かれていたのは、間違いない……これはディアルガとパルキアよ。
しかも一体ずつじゃない。
壁画には六体ずつ、計十二体のディアルガとパルキアが描かれていた。
加えて、ディアルガとパルキアの絵は一体一体が微妙に違う。
似ているけれど、全く同じ外見の個体じゃない。
それぞれ別個体的な特徴をもったディアルガとパルキアが描かれてる。
……これが何を表現しているかは分からないけど、考察は後にする。
二つ目、壁画の中に古代文字を発見した。
書かれている内容はまだ分からない。あたしが見た事のない文字よ。
過去に読んだどの文献にも載ってなかった。
……シンオウ大学に、古代文明を研究してるヒオウ先生がいた。
明日、連絡してみようと思う。
三つ目、これが最も大きな発見かもしれない。
壁画には、おそらく当時の人々が暮らしていた町の景色が、少しだけ描かれていた。
けれどこれは……信じられない。
でもすごく「似てる」。
これはあたしだけの所感じゃない。今回の調査に協力してくれた研究員たちも、みんな同じ感想を口にしていた。
壁画に描かれた、古代の町の風景。
でもこれ、多分だけど……。
背の高いビルがいくつも並んだ、大都市の風景……。
……だと思うわ。
……本当に、多分だけど。