ポケットモンスター:エキスパンションレポート   作:224番道路

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とある考古学者のボイスレコーダー⑤

 

 

20XX/11/10 11:23 録音時間00:00:28

 

 

 

 ……11月10日、11時23分。

 

 記録者シロナ。

 

 ……戻って来た。

 ……何から話せばいいのか、全然頭の整理が追い付かない。

 

 とにかく、戻って来た。

 ……気付いたら、病院のベッドの上。

 ヒカリちゃんが連れ戻してくれたらしい。

 

 ……まだ頭がふらつく。

 細かい話は、明日、まとめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/11/11 13:00 録音時間00:01:17

 

 

 

 11月11日、13時、記録者シロナ。

 

 まずは槍の柱で何が起きたのかを話すわ。

 けど正直なところ、あまり覚えていない。

 

 何かに襲われたというわけじゃないのは、ハッキリ分かる。

 襲われたんじゃなくて……あれは……なんて言えばいいのかしら。

 ……誘われた。

 多分、そう言った方が正しいと思う。

 

 槍の柱に着いた途端、あたしは何かに誘われた。

 こっちに来いって命令される感じじゃなくて……あたしが自分から足を踏み入れた。

 まるで、好奇心を無理やり刺激させられてるような感じ。

 

 だからあたしは、あそこに……。

 ……どこに……。

 どこ、だったかしら……。

 ……分からない……。

 何か……黒い……。

 

 ……はぁ。

 ダメ、また切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/11/13 10:56 録音時間00:08:31

 

 

 

 11月13日、10時56分、記録者シロナ。

 

 ヒカリちゃんから、すごく興味深い話を聞いたわ。

 あたしの話より、彼女の話をまとめた方が良い情報になる。

 これから話すのは全部、ヒカリちゃんが体験した話。

 

 

 あたしが槍の柱で『何か』に呑み込まれた直後、ヒカリちゃんのディアルガとパルキアが、今まで見せた事もない大きな反応を示したらしいわ。

 彼女は、「2人が何かを察して、自分をどこかへ導こうとしている」と言っていた。

 そしてそれが……なぜかは分からないけれど、「あたしを助けるため」だと本能が理解したのだと言う。

 すぐにナナカマド博士に連絡を入れて、彼女はディアルガ達の導きに身を委ねたそうよ。

 

 その後の事は、ヒカリちゃんもあまり覚えていないらしい。

 自分がどうやって『あの場所』へ行ったのか。

 いつの間に自分が『あの場所』に立っていたのか。

 瞬きをした瞬間には、『あの場所』に、彼女は立っていたらしい。

 

 

 そこは、全部が黒い空間だって言ってた。

 右も左も、前も後ろも、上も下も……そもそもそういう方角や空間があるのかも分からない、『謎の場所』だったって。

 

 

 でも、自分がどこへ向かえばいいのかは自然に分かったらしい。

「ディアルガとパルキアが導いてくれた」って。

 まるで迷路の中を、決められた順序、決められたルートを歩くみたいに進んでいって。

 

 そして、辿り着いた先に、あたしが倒れてた。

 ……らしい。

 

 その後は、やっぱり『謎の場所』に来た時と同じ、どうやって戻って来たのか全然分からなかったって。

 ただ、気付いた時にはヒカリちゃんはあたしを抱いて、コトブキシティのど真ん中に座り込んでたらしいわ。

 

 

 

 

 …………。

 この話を聞いて、あたしも少し、思い出した事がある。

 あの場所……『謎の場所』に落ちた後の事。

 

 ……あの感覚を、どんな風に言葉にすればいいのか分からない。

 だから、少し曖昧な表現になる。

 もし今後、あたしか誰かがこの記録を聞く事があるのなら……まあ、ただの妄想の一種とでも思っておいて。

 

 変な事を言うかもしれないけど、あの場所には、全てがあった。

 四方八方が黒一色なのに、なぜかこの世全ての場所に立っているような気がしたの。

 一歩歩けばコトブキシティにいて、さらに一歩歩けばキッサキシティにいて、さらに一歩進めば海のど真ん中にいて、さらに一歩踏み出せば、見た事もない洞窟の中にいる気がした。

 たった数歩で、シンオウ地方の全てを……どころか、世界の全てを見渡せたような気がした。

 真っ暗で、何も見えなかったはずなのに。

 なぜか、全部を感じてた。

 

 

 

 …………。

 ……………………。

 ……もうこの際だから遠慮しないわね。

 変な思想に取り憑かれたと思われてもいい。

 でも、この直感はけっこう真実に近いんじゃないかって……少なくとも今のあたしは思ってる。

 

 

 

 

 本当は、あの真っ黒な『謎の場所』が、世界の『始まりの場所』だったんじゃないかしら。

 

 この世界はアルセウスという、一体の神が創造したらしい。

 今ではビッグバンと呼ばれてる現象。

 でもビッグバン……アルセウスが現れる前、宇宙がどうなっていたのかは全然分かってない。

「何もない空間だった」と唱える学者もいる。

 それは少し違うと、あたしは思う。

 

 多分ビッグバン以前の世界は、『森羅万象がたった一ヵ所に凝縮された世界』だったんじゃないかって思う。

 宇宙の端から端まで、過去現在未来、時間も空間も関係なく、とにかくあらゆる全部が、たった一ヵ所に小さくまとまってるだけの、点の世界。

 その一ヵ所にさえいれば、全部を味わえる。

 そんな世界。

 

 

 そこにアルセウスが「やって来た」。

 色んなものが小さい箱の中にぎゅうぎゅうに収まってるのに、そこに無理やり外から押し入ろうとした。

 

 

 だから、箱が弾けて中身が飛び出した。

 ビッグバンが起きた。

 

 一ヵ所にまとまっていた森羅万象は、その爆発で四方八方に散らばって宇宙になり、場所や空間という概念が生まれた。

 ビッグバンって名前は、そういう意味では正解だったんじゃないかと思う。

 本当に爆発だったから。

 色んなものを全方位に撒き散らす、爆発。

 

 

 ……とか、どうかしら。

 ……え、ダメ?

 

 

 ふふ、ダメみたい。

 じゃあ今のは無しにしましょう。

 聞かなかった事にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX/11/20 11:21 録音時間00:00:28

 

 

 

 11月20日、11時21分、記録者シロナ。

 

 退院したわ。もう異常無し。

 色んな人に心配と迷惑をかけた。これから謝りに回らなくちゃ。

 

 それと、ヒカリちゃんと一緒にカロス旅行に行く事になっちゃった。

 あたしもあたしで、本当は色々やる事があるけど……命の恩人だものね。断れないわ。

 

 ……この記録、何の役に立つかは分からないけど。

 でも。

 いつかどこかで、私でも、私以外の誰かでもいいけど、何かの形で役に立てれば嬉しいわ。

 

 そのためには、もっともっと色々調べないとね。

 ……それじゃあ。

 今日の記録は、これで終わり。

 

 

 

 

 

 

 

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