30/11/2058 1018 G&K本社のある都市
降っていた雪も雨に変わり地上に構造物も増えてきた。遠くには摩天楼の明かりが見える。パイロットの言っていた前線は想像していたものよりも大きく、外の風景も夜中のようである。一緒に呼び出された副官は、シートの上で横になり寝息を立てていた。
足を伸ばしシートを蹴り上げるようにしてヴァルターを起こす。
「いてっ。何するんですか。」
「外を見ろ、もうじき着く。」
「いやぁ、本社に来るのなんて久しぶりですよ。」
普段グリフィン&クルーガー本社に行くことは、ほとんどない。戦闘部隊の1隊員となればその機会もさらに少ないはずだ。
「そういえば、俺も久しぶりだな。用事が終わったら羽を伸ばすとするかな。」
戦闘地域にはない文化的な生活がここにはあるのだ。暖かいシャワーに、工夫された料理、そして砲撃を気にせずに眠れる柔らかいベッド。本社勤務の連中は今一度誰のおかげで飯が食えてるかを考えてほしいものだ。
「部隊も移動を開始している筈なので一泊は難しいかと。」
「会議が長引いたとでも言っておけば大丈夫だろう。たまに休憩したって誰も咎めんだろう。」
だといいですけど。と言ってヴァルターは窓のほうを見る。先ほど遠くに見えた摩天楼もすぐそこまでに近付いている。
「空港まで、あと3分です。」
パイロットの言葉を聞き、荷物を軽くチェックする。大きなバッグが2つに社員証兼軍人手帳を内ポケットに入れ、護身用の拳銃が1挺とマガジンが2本。使うことがなければいいのだが。
軽くチェックを済ませてまた外を見渡す。大きなスラム街の上空を通り抜け、ヘリパッドについた。
「降下開始します。ベロを嚙まないように注意してください。」
無事地上へ着陸すると、スーツ姿の男たちがヘリのドアを開けた。
「こちらで車がお待ちしております。傘は、我々がさしますので…」
「いや結構。軍人は傘を差さないのだよ。最ももはや俺のような奴だけだと思うがね。」
「わかりました。ひとまず車にご案内いたします。」
ヘリから降りパイロットに礼を言うと、バッグ2つをスーツ姿の男に持たせると、エントランスとは逆の方向に向かう。
すぐに黒に輝くセダンが見えた。
「こちらにどうぞ。」
「では失礼する。」
そういって俺と副官は車に乗り込んだ。
「出発します。」
ドライバーがそういった。黒塗りのセダンはゆっくりと加速し空港を出る。大通りを3回曲がり赤信号で止まったところでヴァルターが口を開いた。
「つけられてますね。」
空港を出てスラム街を通り過ぎたあたりから、1台のセダンがぴったりとくっついて来ていた。
後ろの様子を窺うが、スモークガラスで相手の人数はおろか、顔すらも見えない。
拳銃をホルスターから引き抜き、スライドを引いて初弾を装填する。ヴァルターも同じくそうしていた。
赤信号が青に変わり、車が発進する。信号を通り過ぎ道に入った時だった。
突如左右の路地から車が突っ込んできた。
「衝撃に備えろ」
そう言葉を発した瞬間左右から突っ込んできた車と衝突した。運転席と助手席は完璧に潰れてしまい、ドライバーの生存は絶望的である。
相手は一台の車に4人乗っていたようで、12人が降りてきた。
「合図で飛び出すぞ。」
「いやいや無茶ですって。」
「相手が油断していることを祈るんだな。よしいくぞ!」
思い切りドアを蹴飛ばすと、2人見えたので撃ち殺す。素早く車から降りると後ろの敵に狙いを定めて引き金を引く。パンパンと景気よく飛び出した弾丸は、2人の脳漿をまき散らしながら道路へと消えた。自分の意識の外の右の車の陰から飛び出してきた男に腕をつかまれ銃を奪われてしまった。そのままみぞおちを殴られ跪いてしまう。自分たちが乗っていたセダンの下の隙間から、腹を抑えて地に伏せたヴァルターの姿が見えた。はっきりとは見えないが、出血量からして腹に2,3発貰ったんだろうと観察する。万事休すか。そう思った瞬間、俺に蹴りを浴びせようとしていた男が目の前で銃声とともに倒れこんだ。頭には、大きな穴が開いていた。あちら側でヴァルターに近づいていた男たちと、こちらにいたもう1人の男が合流し周りを警戒し始める。するとさっきとは別の方向から、少しゆっくりめな発射速度の銃声が聞こえ、2人が銃弾を浴び倒れ込む。俺は痛みを感じながら、ゆっくりと自分の銃が落ちているほうに這っていく。そうしてる間に残っている一人が仲間のほうに駆け寄って奴の視界から自分は消えただろうと思って拳銃に手を伸ばす。今まで使い込んできたグリップを握りしめ、左手を軸にふらふらと立ち上がる。その時ちょうど奴と目が合った。奴はアサルトライフルの銃口をこちらに向けようとしたが、俺のほうが一瞬早く引き金を引く。
急いで反対側に回り込み、ヴァルターの容態を確認する。
「2発もらっただけです。平気ですよ。」
そういって立ち上がったヴァルターは足元もおぼつかないようであったが、拳銃はしっかりと握りしめていた。
「幸いあと1キロもいけば本社だ。そこまでは歩けるな。」
はい。と返事してすぐに崩れ落ちそうになる彼の肩を自分の肩と組みゆっくりと歩き出す。
先ほどの銃声がした方向からバシャバシャと足音がした。
「大丈夫ですか?!」
俺は、言葉を失った。
髪は金髪ショートで、黒を基調とした制服を身にまとった身長160センチあるかもわからない少女が100年以上前のサブマシンガンを手にこちらによってくる。俺は彼女が戦術人形であると、遅れて理解した。
「誰か!!」
迷わずに拳銃を向け誰何する。敵を撃ったからとは言え、彼女もまた敵かもしれない。
「グリフィン所属MP40です。今手を貸します。」
そういうと彼女はヴァルターの肩を持とうとしたので止め、周囲を警戒するように命令した。
「11時方向からもう一人人形が来ますが彼女もグリフィンの人形なので発砲はしないでください。」
すぐに、先ほどMP40と名乗った人形と同じような制服を着た少女が現れる。
「グリフィン所属Gew43です。援護いたしますわ。」
そういってMP40を先頭に俺たち、その後ろにGew43が続く陣形を作る。
「ヴァルター少尉、本社はすぐそこです。お気をしっかり持ってください!」
先頭のMP40が声をかけた。
「こんな美人に囲まれてるなら死んでもいいかも。」
「馬鹿言うな。お前にはまだ付き合ったもらわなきゃ困ることがたくさんあるからな。わかったならしっかりしろ。」
雨の中10分進んだ頃に本社のビルが見えてきた。ヴァルターが助かると信じてMP40らとともに本社のビルへと飛び込んだ。
2話をご覧いただきありがとうございます。1話より少し長くなってしまいましたが、読み辛くははなかったでしょうか。よろしければ評価と感想のほうよろしくお願いします。本編では、MP40とGew43が登場しましたね。第2世代の初めのほうの人形かはわかりませんが、恐らくそうだろうという妄想でこのストーリーは組み立てられております。話半分ではありますが、後書きはここでいったん終わりとさせていただきます。よろしければ3話の更新を楽しみにしていてください。それでは!!