初心者指揮官奮闘記   作:コケタ

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空港を出て何者かに襲撃されたクルツ大尉たち、MP40らの助けにより窮地を脱する。本社に辿り着いたクルツ大尉を待っていたものとは。


転進

30/11/2058 1310 G&K本社

ずぶ濡れになりながらも本社に辿り着いた。銃声を聞いてか、歩いている人はおらず追撃もなかった。ビルに入ると、受付嬢は俺たちをみて、短い悲鳴を上げた。

「クルツ大尉だ。急で申し訳ないが応急処置キットをくれ。治療室があれば案内してほしい。」

「い、今持ってきます。治療室はないので救急車をよびます。」

頼んだ、と告げヴァルターの様子を見ているMP40に声をかける。

「どんな具合だ。」

「弾は貫通していますが、血が出すぎています。すぐに止血して、病院に後送しなければいけません。」

ヴァルターの周りには既に血だまりができていた。

「隊長、目が見えません。あたりが真っ暗なんです。しかも、寒気が止まらないんです。」

そういってヴァルターは、気を失った。

「もうしゃべるな。今暖かくしてやるからな。」

彼の服もまたずぶ濡れで、彼から体温を奪っていった。着ていた制服を脱がせると、彼の腹部に小指くらいの細さの穴が二か所開いていた。そこからは、絶え間なく赤黒い血が流れだしていた。傷口を抑え少しでも血が外に出るのを防ぐ。

「応急処置キットもってきました!!」

そこには、受付嬢ではなく、兵士がたっていた。

「クラウス2曹です。前の部隊では衛生兵でしたので応急処置はできます。今さっきの子に毛布を取ってもらいに行ってます。とりあえず止血しますので、手伝ってください。」

そういうと彼はてきぱきと処置をこなし包帯状止血帯をヴァルターの被弾箇所に突っ込みそこをガーゼで覆い反対にも同じ処置を施すと最後に包帯を巻いた。包帯を巻き始めたころにさっきの女性が毛布を持って戻ってきた。クラウス2曹は彼の体を毛布で包み体温を下げないようにしている。

「出来ることはやりました。救急車が早く来てくれるといいんですが。」

そうクラウス2曹はいった。おそらく自分にできることはもうないだろう。血まみれになった自分の手を見ながら、今までを振り返る。襲ってきたやつらを倒してすぐに救急車を呼ぶべきだったか。そうすれば今頃は病院でしっかりした処置を受けていたかもしれない。だが、追撃が来たら?もう一度襲われていたらきっとヴァルターは助からないし救急隊員にも危険が及ぶ。呼ぶに呼べなかった。危険を承知で呼ぶべきだったか?!

「クルツ大尉は最善の選択をいたしましたわ。あとはヴァルター少尉に賭ける他ありません。」

Gew43の言ったことに救われた。そしてもう何年も部隊を指揮してきたのに、こんなにも動揺しているということに未熟さを痛感した。長たるもの落ち着いていなければ部下も浮足立ってしまうだろう。

外から救急車のサイレンが聞こえ救急隊員が入ってくる。ヴァルターをストレッチャーに乗せると彼らは救急車へと向かった。自分も救急車に乗り込もうとするが、MP40に止められる。

「クルーガー代表がお呼びです。」

救急車に乗りたい気持ちを噛み殺し、了解、と返事した。

 

エレベーターに乗り地下3階へと向かう。地上7階、地下3階というこのビルの一番下の階が司令部兼社長室というわけだ。エレベーターの中の空気は重く、誰も口を開こうともしなかった。エレベーターはすぐに地下3階へと到達した。エレベーターを出てすぐにセキュリティールームがあり社員証の提示と武器を一旦武器庫に預けることになる。警備員に社員証を見せ、武器を預けると先に通された。その先には、コンクリートと鉄でできた、とても分厚い扉があった。扉がMP40の操作により開けられる。重厚な扉の先にはクルーガー殿とヘリアントス上級代行が待っていた。

「クルツ大尉をお連れしました。」

「よろしい。君は外で待っていてくれたまえ。」

MP40は綺麗に敬礼すると外に出て扉を操作した。扉が、ズシン、と音を立てて閉まるとともにクルーガー殿が口を開いた。

「まずは、来てもらって早々にこんなことになってすまん。」

クルーガー殿は申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ、奇襲は予想できたものではありませんので誰の責任でもないと考えます。しいて言えば、周辺警戒を怠った小官の責任であるかと。」

「責任の問題ではない。私は心配なのだよ。特に君の副官だ。彼は大丈夫かね。」

「以前クルーガー殿に救助されたとき彼は今よりひどい状態でしたが復帰しました。きっと彼ならば大丈夫でしょう。」

「そうか。一応彼の周囲には護衛を送った。治療中に襲撃。なんてことはないだろう。」

「その話は一度置いておいてくれ。今から、今回呼び出した理由を説明する。」

ヘリアントス上級代行は切り出した。

「君は、人形についてどれくらい知っている?」

人形。人形とは、中国北蘭島にて発生した、北蘭島事件により全世界で膨大な数の死者が発生した際の労働力不足を解消するために実用化された‘自律人形‘。これを軍事転用した戦術人形。

「…そういうことだと聞いて…」

「そうではなくグリフィンとしての人形だ。確か君のいた北方にも何部隊か送っていたはずだが。」

先日窓から見えた少女たちのことだろう。

「特には知りません。精々後方支援がいいところではないでしょうか?前は人間との混合部隊があったと聞いていますが単純な命令しか理解できずに辟易していたと聞きましたが。」

ヘリアントス上級代行は誇らしそうに口を開いた。

「それは第1世代戦術人形だろう。我々が昨年より試験的に導入し配備が決定した第2世代戦術人形。彼女らはすごいぞ。複雑な命令を理解し、戦闘技術も高く、どんな環境でも使える。」

MP40やGew43も第二世代なのだろう。確かに聞いていた人形とは大きく違った。

「ですがそれが私とどんな関係があるんですか?」

ヘリアントス上級代行はニヤリと笑った。

「よく聞いてくれた。それが今回君を呼んだ理由だ。」

人形が俺を呼んだ理由か。戦闘訓練の相手にでもなればいいのだろうか。

クルーガー殿が言った。

「君には、人間と人形の混合戦闘部隊と人形だけの戦闘小隊の指揮を任せたいと思っている。」

私が?指揮?人形の?おそらく今までの人生で一番関連がないだろう。人形なんかに頼らず、泥をすすり、血を流して土を這ってきた俺が人形部隊の指揮官など務まるのだろうか。

「なぜ小官なのかお聞きしてもよろしいですか。」

「うむ。それは貴官が最も信頼できる兵士の一人だからだ。」

この上なく栄誉なお言葉をいただいた。

「身に余る光栄です。その話もう少し詳しく教えてください。」

「機関ならばそういうと思った。へリアン、彼に詳しい説明を。」

ヘリアントス上級代行は、私に大きな封筒を差し出してきた。

「これがあなたに貸与される人形です。」

封筒の中に5枚の紙が入っており、人形の詳細が記してあった。そこにはMP40とGew43の名前もあった。

「この他にも、L.O.P社の依頼をこなせば開発中の人形の先行配備も可能とのことだ。ここまでの話を聞いてどうだね。この仕事やってみないか?」

俺は考えずに即答した。

「拝命させていただきます。」

この仕事を受けることにした。そのあと聞いた話は、俺の部隊はすでに新しい基地に向かっているということ、その地域の情勢や勢力図について、人形の運用にあたって大切なことなど様々なことを話した。

 

「今日はありがとう指揮官。明日からは慣れないことも続くだろうがサポートはしてやる。シャキッとやってくれたまえ。」

了解いたしました。と敬礼をした。相手の返礼を確認し分厚いドアへと向かう。

操作パネルで操作し、またズシンをいう音とともに扉が開く。

外ではMP40とGew43が待機していた。MP40が扉を操作し、再び扉が閉まる。

「改めまして指揮官様、私精一杯がんばります!」

「今日から私の優雅な戦いをご覧に入れますわ!」

「よろしく頼むよ、2人とも。」

 

帰りのエレベーターは行きとは違いにぎやかであった。ヴァルターが意識を取り戻し、安定した容体であることが伝えられたからであった。エントランスに出るとぺしゃんこにされた車のトランクから回収されたバッグが4つ置いてあった。また、クラウス2曹もそこにいた。

「クラウス2曹、感謝します。あなたのおかげで部下は、一命を取り留めました。」

「いえ、自分はやるべきことをやったまでです。実は自分今日で異動でして」

「そうでしたか、またどこかで会えるといいですね。」

「そうですね。では、クルツ大尉もお元気で。」

そういって彼は、立ち去った。

彼らの再開は、意外にも近いと知らずに

 




さらに長くなりましたが、文量はどうですかね?よろしければお教えいただけると幸いです。
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