もしμ'sよりも存在が濃い兄姉がいたら……そんなIFのお話。

※小ネタの消費なので、続くかどうかは分かりません。

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ブラザー(矢澤家) and ブラザー(園田家)

その昔、この世に伝説を作ったスクールアイドルがあった。その名は「μ's」

 

最初は、順風満帆なスタートではなかったものの、数々の経験や試練を経て、彼女達は念願のラブライブ優勝を勝ち得ることができた。

もちろん、これは誰か1人のおかげではなく、9人がいたからこそ為せ得たものである。

 

 

そんなμ's成功の裏側で、その活動を陰ながら支えてくれた人々の影響も忘れてはいけない。

 

 

我が子とその仲間を優しく見守った南理事長をはじめとした保護者一同。

学校総出でμ'sを支え、時には雪積もる道を団結し、穂乃果達のために除雪した女学院の生徒達。

活躍する姉達の姿を見て、応援しながらも、自らもスクールアイドルになろうと決意した雪穂や亜里沙。

などの人が挙げられるだろう。

 

だが、そんな彼らの中には、μ'sの存在をも凌ぐ程、個性的すぎる"兄姉達"がいた。

彼らもμ'sの成功に微量ながら貢献した者達であったが、そのあまりにもぶっ飛んだ存在感から歴史の闇に葬られたという、悲しき者達でもある。

 

これからの語る物語は、そんな野郎共がくりひろげる友情と死闘(馬鹿騒ぎ)の記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふふーん♪」

 

その日、園田海未は自宅の風呂場で一日の疲れを癒していた。

少し熱めのシャワーを浴び、パラパラとタイルに落ちる水音のリズムに乗せて海未は自然と鼻歌を口ずさむ。

 

音が壁に反射する事でくぐもったエコーがかかり、自分がライブ会場にいるような感覚に陥りかける。

 

彼女は頭の中で思い描く。

会場のライトに照らされ、音楽が自身の体を震わせ、気持ちを昂らせるあの瞬間を…

温かいシャワーを浴びているからかも知れないが、体に熱が籠ってくるのを感じ始め気分が高揚してくる。

 

そしてついにそれが頂点に達した海未は、妄想の中の自分を解放した。

 

 

 

「みんなのハートを撃ち抜くぞ!ばぁんッ♡」

 

 

 

学校では冷静沈着な彼女であるが、内面にはこのような女の子らしい一面を持っており、このギャップが本当に尊く素晴らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリンッ!!

…ミンナノハ-トヲ ウチヌクゾ! バ-ン!

 

 

(ああ、やはり君は女神様だったんだね海未…)

 

 

そんな、風呂場の脱衣所にて今日も今日とて、妹の隠された一面をボイスレコーダーに収める男が1人。

その者の名は園田家"長男"「園田陸久(そのだりく)」。

彼は、手で抑えても吹き漏れる大量の鼻血を床に撒き散らしながら、真っ直ぐな眼差しで天を仰ぎそう確信するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、その後。風呂から出てきた海未ちゃんに、怒りと憎しみが籠った正義の正拳突きを喰らい、無事ボイスレコーダーも目の前で処理されかけたと。……当然の報いだ、サッサと朽ち果てろ。」

 

「なんだその言い草は!?まるで、私が悪いと決めつけられているようではないか!!いいか、先の出来事は貴重な愛妹の成長記録がこの世から無くなりかけそうになった悲しい事件なんだぞ!もっと客観的に物事を見ろ!」

 

「主観的に見ようが客観的に見ようがテメェが黒なことは揺るぎない事実だよ。つーか、早く留置所にぶち込まれて更正しろ。この害悪変態野郎。」

 

「変態だと!?それは心外だな。常日頃から妹を見守る紳士と言ってくれ!!」

 

「害悪ってところは認めんだな…」

 

 

 

とあるファミリーマンションの一室にて、矢澤家"長男"は、突如訪ねてきた親友の拗らせっぷりに深く溜息をつく。

 

 

 

先程、腐れ縁の親友こと、このシスコン野郎は、スクラップになったボイスレコーダーの修理を後生大事に胸に抱え、我が家に乗り込んできた。

 

明日も仕事のある俺にとって、この時間帯の来客は迷惑千万。陸久の姿を見るなり無言でドアを施錠しインターホンの電源を引き抜いた。

 

が、しかし。

いつの間にか作られていた、合鍵によりドアを突破され、瞬く間に俺の居室に座り込み土下座かましてくる始末。どうやら俺は、コイツの妹に対するネバネバしい執念を甘く見ていたようだ。

 

 

 

「もうこの際だ。何故テメェがこのマンションの合鍵を持っているのか…という疑問は捨て去ろう。で、俺は何すりゃいんだ?まさか、そのスクラップを蘇生しろとか言うんじゃねぇーだろうな。」

 

「わかっているなら話が早い。私…ゴホン、ゴホン、園田家の重要文化財保存のために力を貸してくれ!!金ならいくらでも払う!!」

 

「いくら積まれたとて、俺は犯罪の片棒を担ぐつもりはねーよ。」

 

「そんなこと言わないでくれ"(あい)"!!お前にまで見捨てられたら私は誰を頼れば良いのだ!?」

 

「電気屋だろうな。」

 

 

 

んな漫才まがいの事をやっていると、ガラガラガラと隣の間仕切り戸が開く。そこには、顔面きゅうりまみれの化け物が不機嫌そうな顔をしてこちらを見据えていた。

 

 

 

「おー"にこ"か。どうした、腹でも減ったか?」

 

「違うわド阿保。さっきからマジでうっさいのよ。これ以上騒がしくするならその口縫い合わせるわy……って!?陸久さん!?!?」

 

「やぁ、久しぶりだね。にこさん。またしばらく見ないうちに綺麗になったね。」

 

「まぁやだもう!!お上手なんだから///」

 

「お、そうだな。例えお世辞でも、顔面をきゅうりで覆ってる女を綺麗だと言えるのは流石だと思うわ。」

 

 

 

ぎゅぅぅぅう!!

瞬間、俺の太腿に激痛が走る。

ふと見ると、にこの足が腿の肉をこれでもかと踏みにじり、とんでもねぇ形相で俺の事を睨みつけていた。

 

 

 

「まぁお従兄様ったら。折角陸久さんがきてくださってるのに、お茶菓子の一つでも出さないなんて失礼だわ。今、ご用意いたしますね。

(次、揚げ足とるような真似してみろ。今度は貴様のキ○タマ踏み抜くぞゴラァァ!!)」

 

「………お、おう。」(汗)

 

「そんなお構いなく。にこさんも明日早いだろうから無理をなさらずに。」

 

「いえいえ、遠慮しないでください。では!」

 

 

 

そう言うや否や間仕切り戸を勢いよく閉め、にこは意気揚々と台所へと向かって行く。

 

 

 

はぁ…全く、コイツ(陸久)が来るといつもこうだ。

 

あまり表沙汰にはなっちゃいないが、コイツは「園田流」と呼ばれる日本舞踊(歌舞伎も含む)の正当継承者であり、「歌舞伎界に颯爽と現れた光源氏」と、一部メディアではカルト的な人気を誇る歌舞伎役者でもある。

 

女形と男形どちらをやらせても、映える中性的な顔立ちに加え、3ヵ国後(日本語・英語・イタリア語)を自在に操り海外公演もそつなくこなす語学力にコミュ力。

また、日本舞踊以外にもフェンシングに精通しており、一時期は国体選手でもあった。

 

こんな、とんでもスペック引っさげた奴が女にモテない筈なんてなく、陸久と出会って惚れなかった人間を見たことがない。

 

 

 

ちなみに、それらの長所を捻り潰せる程、厄介な短所である

 

「病的なシスターコンプレックス」

 

を患っている事を知る者は……少ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

俺達は、にこがルンルン気分で部屋に持ってきた茶菓子を頂きながら、壊れかけのボイレコに悪戦苦闘していた。

 

何せ、外装のプラスチックがひしゃげて内部の金属類と噛み合ってしまったらしく、なかなか蓋を開けられないのである。

 

このままでは埒が開かないので、プラモデル用のノコギリでバラそうとしたところ、目から血涙を流した陸久が「それだけはやめてくれぇ!!」っと暴れ始めたので、チマチマチマチマとマイナスドライバーで地道にこじ開ける作戦へと移行した。

 

 

 

「いちいち注文が多んだよオメェは!こんな事やってたら夜が明けちまうわ。」

 

「安心しろ哀。私は一向に構わん!」

 

「あ゛?」ビシッ!

 

 

 

おっと、ドライバーを握る手に力が入ってしまったようだ。ボイレコから嫌ぁな音が聞こえたが、まぁ。気のせいだろう。

 

 

 

「ちょちょ、ちょっと待て哀!もう少し力を抜いてゆっくり、丁寧にやろうじゃないか。

あ!(唐突)そういえば…今日はやけに少し静かだな。妹さんに弟さんはどうしてるんだ?」

 

「(無理矢理に話題逸らしやがったなコイツ…)ん?ああ、にこは、さっきはあんな風だったけど部活で相当疲れてるはずだからなー。もう寝てんだろ。あとのチビ達は俺とストイック特撮ごっこやったから疲れ果ててリビングで爆睡してるよ。」

 

「そうか…いや、待て。その"ストイック特撮ごっこ"ってなんなんだ?」

 

「あーほら、特撮って独特の殺陣ってあんだろー。アレを実際にごっこ遊びに導入したもんでな。主に俺がやられ役だから、飛んだり跳ねたり受け身とったりして劇中さながらの躍動感や臨場感を出すんだよ。そのついでにチビ達にも体の捌き方とかやらせててなー。終わった頃には双方ともに息切れ起こしてぶっ倒れてるって代物さ。」

 

「少なくともそれは、幼児童がやっていい遊びでは無いぞ。」

 

「ハハハ、まあーな。でも意外とアイツらには好評なんだぜ。……っと、お!空いたぜ!………あ。」

 

「どうしたん……………あ……。」

 

 

 

 

 

哀の濁声を聞き陸久がレコーダー中身を確認すると、そこには外のカバー以上に粉々に破壊された基盤が、ズタズタにされた配線と共に絡まっていた。

 

そして哀は、主人の不始末により無残に散ったボイレコを憐みながら、そっとドライバーを置き時計を見る。

 

 

 

「午後22時41分、ご臨終っすね。」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛んっゔお゛ん゛!!」

 

 

 

無慈悲な死亡宣告を受けた陸久は、最愛の妹の声がこの世から消失した事実に耐えられず、気味の悪い悶え声を出しながらその場に気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、音ノ木坂女学院に入学するためには、性別を変えるしか……哀、俺と一緒にタイに旅行へ行かないか?」

 

「やべぇなお前。」

 

 

 

腐れ変態のあの壮絶な悶死を見届けた俺は、意識が飛んだ奴を適当に放置して風呂を頂いてきた。

気分爽快、あとは寝るだけだと布団に入ろうとする俺に向かって、いつの間にか覚醒していた陸久が開口一番に放った言葉がこれである。

しかも、心底真面目な顔をして。

 

一体、どう間違ったら人間はこの様になるのであろうか?

妹と一緒に居る為ならば、男の尊厳さえも綺麗さっぱり切り捨ててやるというその潔さは、一周回って尊敬に値する。

 

 

 

「別に俺はお前の性別がどうなろうが知ったこっちゃねぇーけどな。方法や過程をかなぐり捨てたDIO(ディオ)ニズムに身を任せて行動するのはアホのやる事だと思うぞ。」

 

「それをアホと言うならば言うがいい。私の大切な海未の記録がこの世から消滅したんだぞ!!」

 

「だからといって、ヤケクソで自分をTS化しようとすんなよ。それに形あるものはいつか壊れる。諸行無常の教えの通りだ。」

 

「とは言ってもな!貴重な実用用のデータが吹き飛んだ事には変わりないぞ!」

 

 

 

ギャーピーうるせーな。これ以上居座られるとご近所迷惑になりかねん。先にこの野郎を玄関外へ投げ飛ばしてから寝よう。

 

……ん?待て、"実用用"?

 

 

 

「おい、陸久。テメェまさかとは思うが、海未ちゃんのデータをオタクで言う「観賞用」「保存用」「実用用」の3分割にして持ってんのか?」

 

「惜しいな。それに「布教用」を加えた4分割体制で隈なく保存しているぞ。ちなみに、保存用と観賞用のデータはリアルタイムでPCに落ちるようにセッティングしている。今回のボイレコは生声を抑えたハードと言うだけで希少価t………ん?どうしたんだ哀。そう胸倉を掴まれるとこそばゆいじゃないか。」

 

 

 

ほぉ…つまり、このシスコンは、バックアップがあるくせに、希少価値とかいうクソどーでもいい理由で俺ん家に来たと。

そのおかげで、妹にゃ殺意の眼差しを向けられ、挙句、俺の貴重な睡眠時間を削られたわけね。

 

…………………なるほどぉ。

 

 

 

「ちょ、哀。どうしたそんな怖い顔をして…目が据わってるぞ!?」

 

「いやぁー、なんか今ので眠気吹っ飛んじまったわ。あ、そういや最近ここら辺物騒だよなぁ?家まで送ってってやるよ。ゼハハハハハハ。

………………………………………………………………………とりあえず表出ようぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

チュンチュンと軒先でさえずる雀の鳴き声で、私は目を覚ましました。

 

昨日夜中に悪質なストーカーを退治した時の疲労が体から抜け切ってないようで、少し気だるいですね。

 

ふわぁ…っと欠伸を一つ。いつもより重い体を引きずりながら、洗面所に向かおうとすると、枕元の携帯に通知音が鳴り響きました。

 

こんな朝っぱらから誰でしょう?

穂乃果にしては随分早いですし、ことりか真姫あたりでしょうか。

 

 

 

ポチポチ

…………へぇ…………………………ふーん。

なるほど、そういうことですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタスタ…

 

 

ガラガラ……

 

 

 

 

 

プラーン

「ん゛、ん゛ん゛ぃ(う、海未ぃ)!!!!」

 

 

 

 

 

道場の扉を開くと、そこには猿ぐつわを噛まされ悶える愚兄が、荒縄で縛られて梁の下にぶら下がっていました。

 

愚兄は私の姿を見るなり、目から涙、口から涎を撒き散らし体を左右上下にくねらせ始めます。

 

 

 

気色悪い。

思わず出そうになった本音をどうにか飲み込みました。そうです、いかに相手が見るに耐えない存在であっても、言葉の暴力で傷つけていい理由にはなりません。

 

 

 

ですから。

私は道場の脇に立てかけてある竹刀を持つと、愚兄の横っ腹目掛け胴を放ちました。

 

バシィィィイン!!っという心地よい音と共に、「ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」っという濁音が聞こえますが、多分、気のせいでしょう。

 

ちなみにここで1つ豆知識ですが、武術とは自らを守るため、理不尽な悪に抵抗するための術です。

よって、今私はその悪に対して己のか弱い力を奮っているだけ。決して私怨の籠った暴力などではありません。

 

 

 

「お兄様。今朝のLINEについて少々問いただしたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」

 

「ん゛ん゛っ!?(LINEっ!?)」

 

「ええ、先程、『海未へ、昨晩の音声データはしっかりとバックアップを撮っていたので安心してくれ。私の作業には一切の手抜きはない。p.s.明朝、道場で待っているぞ♡』という、吐き気を催す文字列を拝見させていただきました。で、そのバックアップとは何処に?」

 

「ん゛、んんん!んんんんんんんん、んん、んんんんt…(し、知らん!そんなことよりも、早く、私を助けt…)」

 

「あくまでもシラを切るつもりですか。いいでしょう。では、正直に申したいと言うまで打ち込み一万本。よろしくお願いします。

 

「ん、んんぃ!?んんんんんんんんんんん……ん゛ん゛ん゛ぉぉん゛///(う、海未ぃ!?そんなことされたら私は……お゛お゛お゛ぉぉん゛///)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

LINEの偽造工作は流石にやりすぎたかなー?と、矢澤家長男が様子を見に園田家を訪れた。

が、時すでに遅く。

 

 

道場には、一心不乱に竹刀を振る修羅と化したJKが1人。そして、最愛の妹からの怒涛の責めを受け、満更でもない、いや、むしろ嬌声を上げている罪深き親友。

 

 

自分が火にガソリンを注ぎ生成した、この混沌たる地獄から目を逸らすように、矢澤哀は静かに道場の扉を閉じるのであった。

 

 

 

 




ひさびさにラブライブ!のss書いてみた。
モチベが保てれば続けるかも…

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