門藤一也は、想うのだった。
中学時代の後輩であり、元アイドルである、
桃井愛莉に、不思議と恋心を抱いていた。
その理由は、イジメを受けていた愛莉を、
助けたこともあってか、
愛莉から、ヒーロー視されていた。
それ以来、学年が違うせいか、
一也が内気なこともあってか、
話す機会が、全くなかった。
そして、今でもなお、絵名に情けないと思われつつ、
一也は落ち込んでいた。
「俺には、愛莉ちゃんと話す資格なんか…」
「無いって言いたいわけ?」
そこには、D組にいる、東雲絵名だった。
一也は絵名とも、仲が良く、
一也が一年遅れて、この神山高校夜間定時制に入学してきたので、
実質、同級生である。
「真二くんを、見習いなさい!
アイツの方が、よっぽど、しっかりしている!
それに比べて、一也は…目も当てられないわ。
情けない。中学時代と比べてね」
「絵名ちゃん、ひどい…」
「だって、本当のことだもん、
これじゃあ、いつまで、たっても、
愛莉に話しかけることなんてね、一生ないね」
「じゃあ、どうしたら…」
「会いに行くのよ」
「えっ?本気で言っているの?」
「当然よ、それで、二人きりで、話してみて、
愛莉のことが、好きなんでしょう?」
「まぁ…」
「じゃあ、愛莉のことは、どれくらい知っているの?」
「絵名ちゃんと、仲良しで、
3月19日生まれで、宮益坂女子学園高等部の二年生で…
確か、ネコアレルギーだった!それに、三姉妹の真ん中で、
後、料理がめちゃくちゃ、美味いし!上手!
それに、和菓子が、好物だったかな?
アイドル研究も好きだって、言っていたし…」
「よっぽど、愛莉のことが好きなんだね」
「う、うん…」
と、絵名は一也が愛莉を思っている事を確信した。
「その、愛莉が、一也に会いたいって、
言っている」
「本当に!?」
「本当よ、明日、指定された、この公園に行ったら、
会えるから、行ってみたら?」
「わかった!行ってみる!」
こうして、後日、一也は愛莉に会いに行った。
「あっ、一也くん!」
「あ、愛莉…ちゃん」
「会いたかったわよ、一也くん。ずっと、ずっと」
「本当に!?ホントにホント!?」
一也は、思わず、興奮した。
「だから、本当だってば!
さぁ、デートに行くよ、時間は待ってくれないから」
「あっ、うん…わかった!
俺が愛莉ちゃんの事、エスコートしてあげるから!
期待してもいいよ!」
「う、うん…そんなに、期待はしていないから…」
「そ、そんなぁ…俺は、愛莉ちゃんとデートする資格なんか…」
「そんなこと、言っているから、
いつまで経っても、進展しないのよ!」
「そう…だね…」
「絵名から、聞いたよ?
高校受験、一年浪人して、落ち込んだって」
「あっ、うん…色々あってね」
「だから、過去はともかく、今を生きないと!」
「わかった!よーし!頑張るぞ!」
何がともあれ、二人でデートに出かけた。
「一也。まさか、絵名と同じ学校に通っているなんてね」
「たまたまだよ…一年遅れで入学しただけだし…
それに、あんな出来事があったからな…」
「あんな出来事って…?」
「俺が中坊の時、初めて大会に出場した事だ。
俺はその時、ファーストとして、野球部に入っていたし」
「じゃあ、大会が出られないかもしれないのは?」
「他校の不良と喧嘩していたからだ。俺も巻き込まれていた」
「それで、あたしと絵名が人質に…」
「あぁ。俺や他の先輩たちが狙いだっただろうな」
「あの時は死にかけたわ。絵名も言っていたわ」
と、一也の証言で、絵名と愛莉が人質になっていた事を思い出す。
「俺は野球の試合をほったらかしにして、
絵名と愛莉を助けた」
「だから、初出場となった大会で惨敗に…」
「俺はもう野球は出来ないけど、これで良かったのか?」
「良かったと思う。あの時は一也くんがいなかったら、
本当に今の絵名やあたしは、きっといなかったわ」
「そうだったのか…」
野球を取るのか?絵名と愛莉を取るのか?
一也は迷いもなく、あの時は、絵名と愛莉を選んでいたのだった。
「一也も少しは自信を持つべきだわ」
「本当に!?」
「お調子者ね…」
「ははは…」
と、一也は少しだけ自信を持っていた。