また恋を教えて、と屋上で君は笑った。   作:和鳳ハジメ

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第25話 それ逆じゃない!?

 

 

 恋人関係になった、それは不本意ではあるがワクワクしている自分がいる。

 こちらの親に挨拶済みで、外堀を埋められたのは痛恨の極みだ。

 だが――この状況は如何なものか?

 

「ふふふーん」

 

「なんでこうなってるんだろう僕……?」

 

 とても腑に落ちない、そして視線が痛い。

 現に、学校に近づくにつれ視線の数が増えて。

 

「ねぇ見てあれ……」「す、水仙さんがっ!?」「あの噂は本当……」「でもなんであんな感じに?」「逆よね?」「ええ逆……むしろらしいと言えばそうなのかもしれないけれど」

 

「野郎共……わかってるな?」「いやここは静観だ、我らが姫の気持ちを優先するんだ!」「は? 許せるのかあれ?」「いやでも相手は……アイツ良い奴だし」「え、誰?」「お前知らねぇの?」「でもさ」「ああ」

 

「「「「なんで逆なんだ?」」」」

 

(それは僕も言いたいなぁ、でも聞いてくれないよなぁ……すっげー楽しそうだし)

 

 隣で機嫌良さそうに鼻歌まじりの咲夜に、文句など言えようか。

 腕を組む、そこまではいい。

 しかし何故、咲夜は男らしく大五郎の腰を抱きよせ、大五郎はなよっと彼女の腕にしがみつく格好なのだろうか。

 

「やっぱ逆ではこれ? 僕がそうやって、へへ、コイツはオレのマブだぜってやるんじゃないの?」

 

「マブってまた古い言葉を……、ま、諦めなさい私は大五郎くんを愛していない訳だし? むしろ私を新たな依存先にしようとしていた貴方にとってピッタリな感じでしょ」

 

「うぐぐっ、反論できない!!」

 

「今まで腕を組んで歩くってどう感じるんだろうって思ってたのだけど、……ふふッ、こんなに優越感を感じるものなのね」

 

「ふつう、愛しさとかそういうものじゃない??」

 

「私たちってそういう関係かしら?」

 

「恋人なのに?」

 

「恋人ですから」

 

 納得するしかない、トホホと嘆いた瞬間であった。

 ぬぬっと二人の前に立ちふさがる者、ひとり。

 高い背、筋肉質の体、見覚えのある顔。

 彼女にとってはクラスメイトで、彼にとっては大切な幼馴染みで親友の片割れ。

 

「や、やぁ輝彦、今日も良い朝だねぇ」

 

「おはよう、升留院くん。――ああ、今日からは輝彦くんと呼んだ方がいいかしら? 私、大五郎くんの恋人になったのよ」

 

「…………」

 

「えっと、輝彦?」

 

「………………」

 

「ちょいちょい輝彦? 黙ってたら分かんないんだけど?」

 

 彼は怖い顔で沈黙し、心なしか目が潤んでいる気がする。

 

(うっわー、うっわぁ……!! もしかして怒ってる? 怒ってるよね多分! だって輝彦は彼女ともども水仙さ――いや咲夜のファンクラブに入ってるし! 絶対連行されて異端審問にかけられる流れだよねこれ!?)

 

 逃げるべきか、それとも咲夜を盾に説得するか。

 大五郎の体が強ばった瞬間だった、輝彦はぬっと手を延ばし二人の手を取り。

 

「めでたいぞおおおおおおおおおおお!! うおおおおおおおおおオレは今!! 心からの安堵と喜びを覚えているッ!! ファンクラブの一員として、そして親友として!! おめでとうと言わせてくれマイフレンドおおおおおおおおおおお!!」

 

「あれそっち!? てっきり咲夜を汚すものは許さないとかそういう感じかと……」

 

「バカを言うな……ファンクラブはあくまで水仙さんを応援し遠くから愛でる集まりだ、その中から抜け駆けした者は許さんが大五郎はそもそも加入していないし…………それに、だ」

 

「それに? とうか何で泣いてるの?」

 

「オレは嬉しいんだ、あっちゃんの事を乗り越えて新たなる一歩を踏み出した事が。……ずっと、ずっと心配してたんだ大五郎……お前はずっと寂しそうな顔をしていたからな」

 

「…………そっか、気づかれてないと思ったんだけどね」

 

「ああ、お前がそう強がってたからな。オレ達は以前と同じように接して、いつかは立ち直ってくれると待っていたんだ。――何も出来ない不甲斐ないオレ達を許してくれるか、大五郎……」

 

 半泣きで語りかける輝彦に、咲夜はそっと大五郎を解放して。

 大五郎は彼の手を両手で包み込む、ああ、自分はなんて愚かだったのだろうか。

 

「許すも何も……僕は輝彦達はそうやって変わらない態度で居てくれたから、今の僕があるんだ。――ありがとう輝彦!!」

 

「大五郎!!」「輝彦!!」「大五郎!!」「輝彦!!」

 

 二人は堅く抱き合って、咲夜は思わず拍手した。

 すると、何事かと伺っていた周囲の生徒達も一緒になって拍手を始め。

 

「おめでとう!」「おめー!」「お幸せに!」「友情と新しい恋人達に乾杯!!」「今日は宴じゃあ!」「いや俺ら関係なくねでもめでたい!!」「くぅ~~朝っぱらか友情とは泣かせてくれるぜ!!」「いやお前大袈裟すぎ、でもおめでとう!!」

 

「よかったわね、大五郎くん」

 

「うん、――――ああ、僕はこんなにも恵まれていたんだね。よし、それじゃあ一緒に学校に行こう!!」

 

「オレはお邪魔じゃないか?」

 

「同じクラスなのに、何を水くさい事を言ってるのさ。それに咲夜とはいつでもイチャイチャ出来るからね!!」

 

「くうううううううっ、流石は親友!! そして水仙さん!! 是非とも! 是非とも大五郎を宜しく頼む!! 結婚式には絶対に呼んでくれぇ!!」

 

「大袈裟だなぁ、じゃあ行こっか。咲夜もそれで良いよね」

 

「ええ、私も構わないわ」

 

 彼らは仲良く登校、クラスの皆からも祝福され。

 そして、授業中の事である。

 咲夜は教科書で隠し、スマホで絵里にメッセージを送る。

 

『朝はありがとう、上手く情報を流してくれたみたいね』

 

『これぐらいはね、……それで、上手く行きそうなの?』

 

『上手くいかせるわ、大五郎くんの心を折る為にも』

 

『……そう言われると何か悪役っぽい感じがするよ咲夜? せめて幸せ目一杯大作戦とか、そういうのにしない?』

 

『あからさまだと、バレないかしら?』

 

『バレたところで、大五郎に逃げ場ナシってね。――二人が本当の恋人じゃなくても、わたしはお似合いな二人だと思ってる。おめでとう』

 

『…………私はそれになんて返せば良いのかしらね』

 

『素直にありがとう、で良いんじゃない?』

 

 そう、登校中に輝彦が来たのは、彼が二人が恋人になったと知っていたのは咲夜の仕込み。

 大五郎が思うより前に、戦いは始まっていたのだ。

 

(さて、放課後は次の一手を打ちましょうか。――ええ、攻撃に転じる隙すら与えないわ大五郎くん!!)

 

(あ、何かイヤな予感がする!! 逃げる? いやでも……くそっ、事態を打開するには口説くしかないの!?)

 

 そして放課後、二人はいつもの様に屋上で落ち合い。

 

「ちょっと頼みがあるの大五郎くん、今日はこのまま私の家に来てくれない? 大丈夫、誰もいないから心配しないで、男手が欲しいのよ」

 

「…………なるほろ?」

 

 大五郎は不信感にかられつつ、頷いたのであった。

 

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