また恋を教えて、と屋上で君は笑った。   作:和鳳ハジメ

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※本日30話、31話(最終話)の投稿です。


第30話 ルック・アット・ミー

 二人で仲良く登校、ここまではいい。

 腕を組んで歩く、それも問題ない。

 咲夜が男の様にリードして、大五郎が恋する乙女の様にべったりと。

 

(今日は大五郎くんにリードして欲しかったんだけど……いえ、そうじゃないわ。変、変よこれ)

 

 隣の彼はしっかりとくっついて、歩きづらいまであるというのに。

 その癖。

 

「じぃーー…………」

 

「――っ!?」

 

(また目を反らした)

 

 そう、咲夜と目を合わさないのである。

 少しでも視線を感じれば、耳まで真っ赤になって俯いて。

 

「ねぇ大五郎くん? どうしたのよいったい。朝から変よ?」

 

「…………、な、何でもない、今は、気にしないで欲しいんだ」

 

「………………ふぅ~~ん? へぇ、そう、そーなのぉ」

 

 ジトっと鋭い視線を受けても、大五郎は揺るがない。

 だって、仕方ないだろう。

 

(うおおおおおおおおおおおっ、心臓ばくばく五月蠅いっ!! 僕は今っ、猛烈にときめいているうううううううう!! 恥ずかしくて咲夜の顔をみれないぐらいに!! その割には一秒でも離れたくないぐらいに愛おしい!!)

 

(これは……そうね、暴走してないかしら?)

 

(ううっ、こんなんじゃあ咲夜に忘れてる事を言えない……というか伝えたら僕、尊すぎて死ぬかもしれない)

 

(――――キス、してやろうかしら??)

 

 通学路を歩く二人、咲夜は悪戯心に火がつき大五郎は歩くので手一杯だ。

 

(歩け、今は一歩一歩歩くことに集中するんだ僕!! 咲夜の首筋に顔を埋めて髪と肌の匂いを同時に堪能したいだなんて思っちゃだめだ!!)

 

(いいわねキス、ふふっ、今日の大五郎くんは何か変だし、どうなっちゃうのかしら?)

 

(ふーっ、ふーっ、……嗚呼、なんで咲夜の温もりはこんなに安心するんだ、まるで実家の布団で寝ているよう――いやそこでも咲夜と一緒に寝てるんだからもはやこの世は天国では? ――っ、冷静になれ僕!! 息を吸って吐いて、さんはいっ!!)

 

 その瞬間であった、彼の顎がぐいと掴まれ。

 

「――――ぇ」

 

「んー…………っ、御馳走様、大五郎くん!」

 

「…………っ!! ~~~~~~~~~っ!? い、いまぁっ!? なななな、なっ、何してっ!?」

 

「え、キスしただけだけど? 大五郎くんこそなんでそんなに恥ずかしがっているのかしらぁ?」

 

「わ、分かるでしょこれぐらい!! 察してお願い!! 歩けなくなるから!!」

 

「ええ~~、私ってほらボッチ長かったから分からないの。――教えてくれるかしら? それとも…………そうね、もう一度キスしたら分かるかも」

 

 にまぁ、と愉しそうな笑顔に大五郎は補食される虫の気分になった。

 食虫植物とは、きっとこういう感じなのだろう。

 蜜の匂いに惹かれ近づいてしまえば、二度と逃げられずぐずぐずに溶かされ殺される。

 

(このままじゃ、僕の心が愛で萌え死ぬ――――っ!!)

 

 不味い、非常に不味い、このままでは理性が保てなくなる。

 それだけじゃない。

 

(咲夜に――――逆らえなくなるっ!!)

 

 なんて愚か、大五郎は自らの愛の津波で溺れかけているのだ。

 これに対抗するには。

 次の刹那、大五郎は咲夜の頬に己の手を添え。

 

「目、閉じてよ」

 

「はい、どーぞッ」

 

「………………んっ」

 

「んッ、…………えへへッ、ようやく大五郎くんからしてくれたわね」

 

「…………」

 

「……? ちょっと大五郎君?」

 

「ご、ごめん限界っ!! 先に学校行ってるからぁあああああああああ~~~~~~~~~~~っ!!」

 

「へ? あ、ちょっと大五郎くんッ!?」

 

 止める隙もなく、大五郎は猛然と走り去って。

 後には、ぽかんと手を伸ばした咲夜が残される。

 

「…………あー、だめだめ、これは――ダメね私」

 

 はぁ、と悩ましい溜息と共に苦笑して、咲夜は歩き出す。

 急ぐことはない、行き先は同じで席も隣なのだ。

 そんな事より。

 

(うわぁッ!! うーーわーーッ!! えぇ~~ッ、なんて、なんて――――なんて愉しいの大五郎くんッ!!)

 

 あんな新鮮な反応、まるで恋する乙女の、汚れを知らぬ純情な、でも勇気を振り絞ってとても可愛い反撃してみたとかそんなの。

 

(うふふふふふッ、あははははははッ、もう一度、そうよもう一度、またキスを、ええ、今度は長い時間の、いひひひッ、そうね授業中とか愉しいかもしれないわねッ!!)

 

 心が震える、正直に言おう。

 

(嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼――――私は今、ときめいている)

 

 言い換えるならば。

 

(恋、してるのかも)

 

 世界が色鮮やかに感じる、でも、でも、でも、後もう少し足りない。

 

(だって、……恋する乙女ですもの。王子様からのアプローチを望んでも良いでしょう?)

 

 だから、決めた。

 

(でもその王子様が寝ぼけてるなら、お姫様からキスして目覚めさせるのも良いわ、ええ、今日はそうしたい気分ですもの)

 

 くつくつと笑いが浮かんでくる、とても素晴らしい気分だ。

 

(ねぇ大五郎くん、私――貴方に期待して、いいのよね?)

 

 足取り軽く、授業時間が待ち遠しいと咲夜は歩いた。

 一方、その少し後である。

 学校の校門にたどり着き、後ろを振り返って咲夜の姿ない事を確認し胸をなで下ろす大五郎。

 

「――――対策を、練らなきゃっ!!」

 

「よぉ、おはようさん大五郎! 今日は一人か? 俺としては水仙さんの姿も見たいのだが」

 

「いやお前彼女いるんじゃねぇか輝彦。よっ、おはようさん大五郎。最近にしては珍しいなお前一人だなんて」

 

「おはよう輝彦にトール!! 丁度良いところに!!」

 

 ぱぁと顔を上げて振り向けばそこに、希望という名の幼なじみ達の姿が。

 しかも、二人だけじゃない。

 

「三人とも、わたしも忘れないでよ??」

 

「えっちゃんもおはよう!!」

 

「ははっ、ワリィな絵里」

 

「おはようさんだ、えっちゃん。――そういえば最近よくトールと一緒だな。つき合ってるのか?」

 

「「だれがこんなのと!!」」

 

「うーん、素直じゃないねぇ。……いやそんな事よりもっ!! ちょっと相談があるんだ皆! あー、そうだねとりま上履き穿いて鞄置いたら屋上に来て欲しい!!」

 

 三人の幼馴染み達は、戸惑いつつも首を縦に振って。

 そして屋上である。

 大五郎は前置き無しに、説明を始めて。

 

「大変なんだ、咲夜と目を見て話すのが恥ずかしすぎて。このままでは結婚届をだされてしまうんだ」

 

「はい解散、教室に戻ろうかトールに輝彦」

 

「えっ!? マジで帰ろうとしてるっ!? いや待ってマジで待って助けてお願いプリーズぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「ああもうっ、わたしの足を掴むなぁっ!!」

 

「ふむ、懐かしいと思わないか輝彦?」

 

「そうだなトール、まるであの頃が戻ってきたみたいだ。頭が良いはずの大五郎がバカみたいな理由で助けを求めてくる、ああ、懐かしい……」

 

「そこの男二人ぃ!! 懐かしがってないで助けなさいよ!! せめてこのバカをわたしの足から引き剥がしてっ!!」

 

 トールと輝彦は顔を見合わせ、絵里を助けに入る。

 そして大五郎が落ち着いた所で、詳しく話を聞き出すと。

 

「大五郎はこれを期に結婚とか責任という重石を乗せておいた方が幸せだと思うけど……、まぁ咲夜も半分ぐらいしか本気じゃないだろうし」

 

「話を聞く限りそうみたいだな、となるアレしかないと思うんだがトールはどう思う?」

 

「お前もそう思うか輝彦、絵里はどう思う?」

 

「わたしもアレしかないかなぁって」

 

「いや三人ともアレって何?? 僕さっぱり分からないんだけどっ!?」

 

 アレ、それは一体何なのだろうか。

 というか、非常に生温かい視線でみないで欲しい。

 

「ちょっと大五郎、あんた忘れちゃったワケ? 小学生の頃、藍にときめき過ぎて顔を見られないとかホザいてたじゃない」

 

「…………あー、そういえばそんな事も?」

 

「あの時のお前は、頭に紙袋を被って速攻で藍に破られてたよな、んでもって輝彦が面白がって何枚もお前に紙袋渡してさ」

 

「いやトール、お前だって紙袋をどっからか持ってきて渡してただろ」

 

「懐かしいわねぇ、というか同じ事を繰り返してるあたり。大五郎は恋愛耐性低いわよね実は」

 

「お前、あっちゃんと水仙さんに感謝しろよ。マジで今後二度と出逢えないぞ、そしてオレ達の様にラブラブになれ!!」

 

「そういえば輝彦、お前の恋人をいい加減に俺にも紹介しろ。なんで俺だけ知らないんだよ」

 

「あー、それはだな」

 

 絵里が呆れ半分で笑い、輝彦がタジタジをなる中。

 大五郎は心から三人に感謝の念を送る。

 

(……僕は、こんなにも恵まれていたんだな)

 

 その為にも、咲夜に立ち向かわなければならない。

 彼女が大五郎に言ったこと、その答えが見つかったのだから。

 でも今は。

 

「あ、そうだトール。輝彦の彼女ってトールの妹のみみりあちゃんだから」

 

「――――――――は?」

 

「ちょっ!? おい大五郎テメェなに勝手にバラしてるんだよぉ!?」

 

「わたしが聞いたところによると、みりあちゃんが猛烈アタックして射止めたみたいよ? と、ところで提案なんだけど、二人のデートをわたしと一緒に後を付けないかしら?」

 

「えっちゃん。……いや、絵里。お前はなんて素敵な女の子なんだ…………乗ってやるぞその提案!! 俺はみりあを守る!! 輝彦今から貴様は敵だぁ!!」

 

「うーん混沌としてきたね、じゃあ僕はみりあちゃんに連絡しておくから。じゃあまた後で、紙袋探さなきゃね」

 

 わいわいと騒がしい三人を放置して、大五郎は

紙袋を手に入れに購買部へ。

 端的に言うと昭和からの産物ではあるが、購買は未だ茶色で無地の紙袋を各種取り扱っているのだ。

 大五郎は咲夜に見つかる事なく、大きな紙袋を複数枚ゲット。

 口と目をくり抜くと、その足で職員室で根回し。

 

(――――これで、条件は全てクリアされたよ。後はどうやって咲夜にあの事を伝えるかだ)

 

 普通に伝えれば良い、素直に考えたらそれしかないだろう。

 だが、大五郎は己を理解している。

 ――きっと、彼女の声を聞くだけで胸がときめくだろう。

 ――きっと、彼女の視線を感じただけで体が緊張で熱くなるだろう。

 ――これ以上ない程、に水仙咲夜という存在が好きなのだ。

 拳を握りしめ、大五郎はホームルームが始まる直前に教室に入り。

 

「ッ!?」

 

「――――ふっ」

 

 瞬間、交差する視線。

 そのまま始まるホームルーム、明らかに異様な光景。

 なにせ、紙袋を被った生徒が堂々と座っているのだ。

 それを、担任教師は注意せず。

 

(な、何をしたというの大五郎くんッ!? どうして先生は注意しないワケッ!?)

 

 してやられた、そう思うと同時に咲夜の精神は高揚する。

 

(…………――――燃えてきたわ、ええ、これは私への挑戦とみなす。覚悟しなさい、…………キスを、ええ、授業中にその紙袋を引っ剥がしてキスしてやるから)

 

 ならば今すぐにでも、と咲夜が手を伸ばそうとした瞬間であった。

 担任教師が、ようやく大五郎の紙袋に触れる。

 

「最後にひとつ、神明はどうやら青春真っ盛りだそうでな、恋人に見つめられると授業に集中できないから今日だけでも紙袋をかぶるそうだ。――皆、そういうワケだから邪魔してやるなよ、なんと神明は他の先生どころか校長まで集めて演説して説き伏せたんだからな。あー、皆にも聞かせたかったよ、あの青春宣言を……――――」

 

(何をしているのよ大五郎くんんんんんんんんんんんんんんんんんッ!?)

 

(くくくっ、手段を選んでなんて……いられないんだ!!)

 

 咲夜は戦慄した、彼のコミュ能力の高さではない。

 これにより、授業中にキスする難易度を上がったからだ。

 

(――――咲夜、君が授業中にキスして僕のメンタルを揺さぶろうとするなんてお見通しだったんだよ)

 

(やられたわッ、これで各教科の先生は大五郎くんを、引いてはその隣の私まで注意を払うこととなるッ!!)

 

(誰が見ていて、君は動けるのかい咲夜。そうだ、君は動けないだろう)

 

(迂闊には動けない、――でも、まだ勝機は残ってる)

 

 ギラリと飢えた獣のように光る咲夜の眼孔、それを察知した大五郎は驚きつつも冷静に受け止めて。

 ――授業が始まる、そんな中で二人は読み合いを始めた。

 

(諦めていないね、なら何時仕掛けてくる? 危険なのは眠くなる古典、そして体育のサッカーの時、そして昼休み直前)

 

(……隙がある授業で勝負をかける、ええ、そんな事はしないわ)

 

(休み時間に紙袋を破ってストックを尽きさせる、これもあり得るな)

 

(チャンスは一回にしましょう、そこに全てをかける)

 

 嗚呼、なんて楽しいんだろうと二人は奇遇にも同じタイミングで笑った。

 これはきっと、恋人として第一歩であり、二人なりの愛の逢瀬。

 愛を生み出す、恋人になる、その準備の第一歩。

 ――授業は続く、二人はお互いだけを考える。

 

(仕掛けてこない? 何か僕の予想できない策があるのか? 何を狙っている? …………キス、してこないのか?)

 

(そう、何もしない。これこそが大五郎くんの心を揺らす一番の方法。だから焦らすわ、ギリギリまで焦らす)

 

(いや違う、咲夜は僕にキスするつもりだっ!! …………でも、うーん、自信が無くなってきたぞぉ? これ外れてたらただの恥ずかしいヤツだよね? え、本当に僕の考えすぎ? いやでも、油断させる計画――――ありえる、うん、それすっごいあり得るっ……のかなぁ??)

 

(分かるわ、大五郎くんは迷ってる。ええ、だからこそ、ここで――――)

 

 咲夜は動いた、彼へ一瞬微笑んでみせて。

 そして教科書を教師への壁に、口紅をご機嫌で塗る。

 

(~~~~~~っ!? やる気満々じゃないか!! くそっ、今まで動かなかったのは油断させる為か!! 来るっ、隙を見せたら一瞬でキスされる!!)

 

(そう思うわよね、でも…………私は動かない)

 

(来る、いつ動く、リップを塗ったのならこの時間に動く筈。タイミング……先生が黒板に向いた瞬間、あるいはクラス全員の隙をつく何かを――)

 

(うふふふッ、考えて、そう私の事をずぅ~~っと考えなさい大五郎くん、でも正解にはたどり着かないでしょうね。――――私と貴方では覚悟が違う)

 

 じりじりと時間が過ぎていく、そしてその最初の授業が終わり、古典、体育と続いていき。

 ついに、昼休み前の最後の授業。

 それも終わりが見えてきて。

 

(くそっ!! なんて卑怯なんだ咲夜!! これ見よがしにお化粧を直したり、爪を磨いて手入れして僕にこっそり見せびらかしたり!!)

 

(手の上で転がすってこういう事を言うのね、――嗚呼、大五郎くんを翻弄するのって、なんて楽しいのッ!!)

 

(お、落ち着けよ僕、神明大五郎は油断しないんだ、例え相手が藍でも咲夜でも全力で行く……――うん?)

 

(ええ、ではそろそろ行きましょうか。これっきりの奇襲、今後、大五郎くんと戦う時は私の全てが計算されてしまうでしょう。でもだからこそ、――ここで勝っておくのよ)

 

(ま、待って、いやでもそんな可能性……ある、ある? …………来るのか、来るのかい咲夜??)

 

 その可能性に思い至り、大五郎は目を丸くして咲夜を見た。

 すると咲夜はにっこりと笑い、ガタっと勢いよく立ち上がる。

 授業中だというのに大胆な行動、大五郎は思わず硬直。

 刹那、びりびりびりぃ、と大きな音。

 ――誰もが思わず振り返り、注目する中。

 

「…………ん、ごちそうさま大五郎くん」

 

「――――…………~~~~~っ!? は、はあああああああああああっ!?」

 

「ああ、気にしないで皆。大五郎くんが青春で紙袋を被っているように私も青春しただけだから」

 

 キス、堂々と誰にはばかる事無く咲夜は大五郎にキスをした。

 それを、クラス全員教師までもが目撃して。

 彼女はさも当然と言わんばかりの顔で、満足そうに席に戻る。

 後には、顔を真っ赤にし頭を抱え机に突っ伏した大五郎の姿が。

 

(ぬぅぅぅぅぅぅぅんっ!!)

 

(ふッ、ちょろいもんよ)

 

 そんな二人の光景に、クラスメイト達は成程と曖昧で暖かな笑顔で拍手。

 

「もおおおおおおおお!! なんで拍手するのさっ!! というか先生まで拍手しないでよ!!」

 

「好意はありがたく受け取るものよ大五郎くん?」

 

「恥ずかしぃ……、穴があったら入りたい……、ううっ、なんでこんな事になってるんだよぉ……トホホ」

 

 そして鳴り響く授業終わりのチャイム、すると大五郎は逃げるように立ち上がって。

 否、逃げようとしているのだ恋バナが気になる大勢のクラスメイトから。

 しかし、彼の制服の裾をしっかり咲夜は握っていて。

 

「あら、愛しのカノジョを置いて逃げるの?」

 

「戦略的撤退って言ってくれないかな、どうやら君への愛が大きすぎて気恥ずかしさがまだ勝ってるんだ」

 

「意気地のない彼氏ね」

 

「何とでも言ってよ、あ、これ放課後までに読んでおいて。僕、午後の授業はサボるからさ」

 

「悪いカレシ、不良さんだわ」

 

 咲夜の声を背に、顔を真っ赤にしたままの大五郎は足早に教室を出て行く。

 彼女はそれを微笑んで見送ると、渡されたノートの切れ端に目を落とした。

 

『放課後、屋上で待ってる』

 

 なるほど、と咲夜は幸せそうに笑った。

 それから後の時間は、隣に大五郎がいなくても機嫌が非常に良い彼女の姿があって。

 そして、放課後である。

 

「……逃げずに来た事は誉めてあげるよ咲夜」

 

「あらあら、来たわよ意外と丁寧な字を書く大五郎くん」

 

 咲夜が屋上に赴くと、そこには仁王立ちで満面の笑みを浮かべる大五郎の姿があったのであった。

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