デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.10 爆豪勝己:オリジン

 

「……どうだい、動かしてごらん?」

 

右腕を曲げて伸ばして、少し力を込める。もう一度曲げて伸ばして、軽くジャブ。

 

「痛くない、大丈夫そうです。よし、それじゃあ次も出ていいですか?」

「全くしょうがない子だね……これ飲んでからにしなさいな」

 

リカバリーガールから、よく見るあのゼリー飲料を手渡された。

 

「次はアンタだよ、……チユ〜〜〜!!」

「…………」

 

イマイチ感情が読み取れない表情の轟くんが、無言で治癒を受ける。……私、謝らなきゃ……

 

「……折っちゃってごめん」

「……試合だ、やられた方が悪い」

「……ひどいこと言って、本当にごめん」

「……ああ」

 

「アイツを許すことなんてできねえ……でも、もっと大事なこと、思い出したんだ」

「緑谷、ありがとな……。……勝てよ」

「……うん、行ってくる!」

 

「ちょっと待ちなさい」

「ええ!?今いい感じの流れで――」

「身体を壊しすぎだよ。今回はよくても、何度もぐちゃぐちゃに損傷するとキレイに治癒しなくなる。酷い場合、腕を動かせなくなるかもしれない。アンタ、肝に銘じておきな……」

「……はい……」

 

「……腕一本すっかり治癒して、まだ動けるとは……体力バカだね」

 

 

 

 

出張保健室を出て歩いていると、こちらに向かってくる人影。ゆらめく炎と、その威圧感……生で見ると迫力が違う。

 

「先程の試合、よく見せてもらった」

「エンデヴァー……」

「素晴らしい″個性″だ。パワーとスピード……特にパワーは、オールマイトにも匹敵する。よく似た″個性″だ」

「……そうですかねえ?」

「……この試合も、次への糧となる。今回は君の勝ちだったが、いずれ焦凍はオールマイトをも超えるヒーローに――」

「――エンデヴァーさん!」

 

「やっぱり、息子さんが勝ったら嬉しいですかね?」

「……当然だ、焦凍はいずれ――」

()()()()()()()()()嬉しいですよね?」

「……何が言いたい?」

「私も、私を応援してくれる人が喜んでくれると思うと、とっても嬉しいです」

 

「……保健室はあちらです……それでは!私は次の試合があるので!!」

「…………」

 

絶対険悪ムード、あとはしーらないっと。

 

 

 

「ベスト4おめでとう、緑谷少女。相変わらず無茶をするね」

「オールマイト、ありがとうございます!……ホント、誰に似たんでしょうね?」

「ははは……君には敵わないな」

 

「君、途中わざと攻撃やめただろ?」

「……なんのことでしょう?私にはさっぱり……」

「いや、君がそうしたかったならいいんだ」

 

「……見ていてください、オールマイト」

「……ああ、頑張っておいで」

 

 

 

長かったステージ修復も終わり、競技が再開された。私の次の相手となる、飯田くんvs塩崎さん。ぶっちゃけ塩崎さんの勝ちだと思ってました。

 

「塩崎さん場外、飯田くんの勝利!」

 

『なんっって速さだ飯田ああ!!誰かこの男を止めてくれええ!!』

 

「はっや!!!どうしよ!?」

 

思ってたより何倍も速い。観戦席から見てあれじゃあ、反応するのは多分ムリ。常にあの速さで駆け回られたらどうしようもない……持続時間はどのくらいだろう?さすがにあのトップギアは長くもたないはず……塩崎さんと違って私は近接のパワーがあるから、場外へ投げる前に意識をトバしに来るか?そうなると体格を活かした蹴り……それをどう凌ぐか……」

 

「緑谷、声に出てるぞ」

「え?」

「お茶子ちゃんが引いてるわ」

 

後ろに座ってた峰田くんと梅雨ちゃん。まじか、自覚なかった…ごめん。

 

 

 

かっちゃんと切島くんの試合が始まるとこだけど、そろそろ控室に向かおう。そう思って客席を出ると、試合終わりの飯田くんに会った。

 

「緑谷くん、気が早いな……見てから行かないのか?」

「……まあね」

「……悪いが勝たせてもらう」

「こちらこそ悪いね。飯田くんが負けるとこ、君のお兄さんに見せちゃうから!」

「……兄は仕事中だそうだ」

「……ごめん」

「…でもいいんだ、勝ってNo.1で報告するさ」

 

 

 

 

 

『準決勝!!緑谷出子vs飯田天哉!!』

『パワーとスピード!勝負を制するのはどっちだ!?』

 

自然体で構えて待つ。

 

『スタート!!!』

「レシプロバースト!!」

 

ガードを高く!!

――やはり速い――目で追えない――

ドスッ!!!

 

「っ……!!」

「何っ!?」

 

逃がさない!足を抱え込み、もう片方の手で――

 

「ミズーリスマッシュ!!」

「ぐっ!!」

 

「ダメだよ飯田くん、女の子相手でも頭狙わなきゃ」

 

『飯田、立ち上がれないーっ!!肉を切らせて骨を断つ!緑谷、決勝進出!!』

 

紳士な飯田くんのことだ、そう来ると思っていた。高めのガードも、わざと甘くしてボディを誘い、蹴りを食らってからスムーズに手を動かすため。

でも正直、超効いた。鈍い痛みが内部に響いてる……こんなの頭に食らったら頭骨割れる。

 

「……兄さん……」

「…………」

 

 

 

 

 

決勝戦の開始を控室で待つ。

……やっとここまできた……オールマイト、見ていてください。継いで欲しいと言ってくれて、本当に嬉しかったんです。憧れだったヒーローに、やっと手が届く……

私は必ず――

 

バァン!!

 

「ひゃあ!?」

「あ?」

 

「あれ!?何でてめぇがここに……あ、ここ2の方かクソ!!」

「びっくりした……かっちゃん部屋間違えたの?珍しいね、もしかして緊張してる?」

「してねえわ!!テメェなんざにするかよ!!」

 

「……ババアが治せる程度に加減はするが、手加減はしねえ。覚悟しろよ?」

「……うん」

「俺が勝ったら……デコ、分かってんな?」

「…………」

 

『俺が勝ったら、てめぇの″個性″について教えろ』

 

「……うん、わかってるよ」

 

オールマイトの秘密、勝手に賭けてごめんなさい。でも、それでも私は……

 

 

 

 

 

『さあ!いよいよラスト!!雄英1年生の頂点が決まる!!』

 

「よく来たなあ?ブッ殺されによォ!!」

「笑っていられるのも、今のうちだよ!」

 

『決勝戦!緑谷vs爆豪!!今……!!』

 

かっちゃんには今まで、数えきれないほど相手してもらったけど……たぶんきっと……

これまで一度たりとも、本気で相手してもらえてない。

 

『スタートォォォォ!!!!』

 

かっちゃんへの対策なんてない、とにかく攻める!!

ワン・フォー・オール、全身10%!!

あっちは爆破で加速して向かってくる。

 

間合いの外でかっちゃんが右手を構える、牽制かフェイントか――

BOOOM!!

 

『先制の大爆破!!緑谷に直撃ィ!!』

 

――なんだその範囲!!避けようがない、吹き飛ばされた!

まずい、来る!!着地――いや、反撃!!

空中で身を捻り、上に向けて蹴りを繰り出す。かっちゃんは爆破でさらに上へ回避。当たらなくても、着地までの時間稼ぎにはなった。

反転して手で着地、間髪入れずに横へ飛び退く。

BOOOM!!

姿勢を戻してすぐに切り返す、今度はこっちが着地を狙う!煙で見えないけど、それは向こうも同じ……見えた!!このあたり!!!

 

横に大きく振った右足が空を切る。

――姿勢が低い!!そんなのけぞった体勢で何を――

 

「っぁ……!」

 

右のアッパーが私の鳩尾に突き刺さる。あの姿勢でこの重さ、体幹が強すぎる……

 

BOOM!

 

左の爆破で横に突き飛ばされた。地面を転がり、起き上がる。

 

『目まぐるしい攻防が続く!!爆豪が有利かあ!?』

 

「その程度かあ!?オイ!!」

「まだまだぁ!!」

 

避けきれないなら突っ込む!!飛ばされないように踏ん張れ!!そのためには……

全身20%だと、維持に意識を割きすぎて動けない……

足に集中、20%!!タイミング合わせて踏み込め!!

 

BOOOM!!

 

「――っああ!!」

「ッ!?」

 

潜り込んだ!全身10%――前傾姿勢じゃ蹴りは無理――

右ストレート!!顔面入る!!

――痛っ!!同時に右の頬を殴られる。

 

『男女平等パンチ炸裂ゥ!!』

 

次は左で――

 

「っ……!」

 

爆破で勢いをつけた拳で左の頬を殴られる。私の拳は浅い……

そのまま襟を掴まれて、払おうととっさに左足を振り上げた。かっちゃんの右腕を蹴り上げ、お互いの姿勢が崩れる。

 

――振り上げた足を、横から左手で掴まれた。

BOM!

 

「っ〜〜!!」

 

飛び退いて距離を取る。

 

『掴んで爆破!?やりすぎだろ!?』

 

「……足吹っ飛ばすわけにもいかねェからな、表皮が焼けただけだ。まだ動けるかは知らねェが……」

「っ……動ける!!」

「じゃあ避けてみろよ!!!」

 

BOMBOMBOMBOM……

 

そんなのあり!?爆破の勢いを乗せて、空中で回転してる!!

もうさっきまでのように速くは動けない、迎え撃つしかない!

右……いや、左腕に意識を集中……20%でも足りない、腕が壊れないギリギリ……以前『脳無』に撃ったあのとき!!何%かわからないけど――

ワン・フォー・オール……!!

 

「ハウザーインパクトォ!!」

「デトロイトォ!!」

 

BOOOOOM!!!

SMAAASH!!!

 

 

風圧で爆炎と煙を消しとばす。

……フィールドには依然、二人の姿があった。

 

『今年の1年、ホントにどうなってんだよオイ!!?』

 

「うううっ……!!」

「……クソが……!」

 

左腕、折れてはいない……痛いけど動ける!!

かっちゃんが自分の手を気にしてるのを見逃さなかった。特大火力が使えないなら、勝機はある!!

 

「あああっ!!!」

 

痛みをこらえて飛び出した――

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『オールマイトって、やっぱカッケーよな!どんだけピンチでも、最後は絶対勝つんだよなあ!』

 

ガキの憧れなんて単純だ。

 

『オールマイト、かっこいいー!わたしも、オールマイトみたいなヒーローになる!』

『デコ、おまえがオールマイトみたいに?ナマイキなこというなよ!』

 

本当に生意気なのはどっちだ?

俺には出来て、アイツには出来ない。それが当然だと思っていた。

 

『私……ヒーローになりたい……!かっちゃんみたいに、強くなりたい……!!……なれる、かなぁ……?』

 

その表情(かお)を鮮明に覚えている。俺は怖くなって逃げ出したくて、それなのに……

怒りも憎しみもない、ただ縋るようなその目をやめてほしくて、その手を取って無責任な返事をした。

 

『なれる……かもな……』

 

俺がそうさせたのか?あの日のあの一言だったのか?

 

『はああ!?緑谷!?』

『ムリムリ!お前″無個性″だろ!?』

『勉強出来るだけじゃヒーロー科は入れねえぞ!』

 

持っているお前らが、なんでそうやって笑っていられる?()()()()()()()()だけのお前らが……

何でわざわざ雄英なんだ?他のヒーロー科なら、こいつらを見返してやれるんじゃないのか?

 

『かっちゃん……私ね、″個性″が出たの』

 

今までのテメェは何だったんだよ……!!

 

『俺が勝ったら、てめぇの″個性″について教えろ』

『……わかった、約束する』

 

 

 

――その表情(かお)を鮮明に覚えている――

 

「……泣くぐらいなら降参しろよ」

 

 

 

何度も向かってくるソイツを何度も返り討ちにした。途中から実況も観客も、何も言わなくなった。

ゲロを吐いて倒れたソイツがついに立ち上がれなくなり、主審ミッドナイトの声が響く。

 

「緑谷さん行動不能!よって、爆豪くんの勝ち!!」

 

誰も何も言わない。

泣き腫らしたソイツが手を伸ばす。

 

「わたし、あなたに追いつきたくて……!やっとここまでこれたのに……!!」

「……治してもらいに行くぞ」

 

手を握り返した後、ソイツをゆっくりと抱え上げた。

 

『……今年度、雄英体育祭1年!優勝は!!A組爆豪勝己!!!』

 

 

 

出口を抜けて、会場の歓声が遠ざかっていく。

 

「かっちゃん……私の″個性″、オールマイトに貰ったの……」

「……そうか……よかったな……」

 

 

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