デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.11 ヒーロー名、『デコ』

 

「これより、表彰式に移ります!」

 

私は治癒の疲労がひどくて立っていられなかったので、表彰台の2位の段にイスを用意してもらった。

 

「3位には常闇くんともう一人、飯田くんがいるんだけど……おうちの事情で早退になっちゃったので、ご了承くださいな」

 

そうなんだ、何があったんだろう?わざわざ早退するってことは深刻なのかも、心配だな……

 

「さあ!今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!!」

「我らがヒーロー!」「私が!」

「メダルを持って来た「オールマイト!」

 

「「…………」」

 

ちゃんと打ち合わせしといてください。

 

「常闇少年、おめでとう!強いな君は!」

「もったいないお言葉」

「ただ、相性差を覆すには・・・」

 

なんか一言あるのか、緊張してきた……

 

「緑谷少女!」

「…っはい!」

「……無茶もほどほどにな!」

「ええっ!?なんかこうもっと……!」

「……おめでとう!!」

「えへへ……」

 

頭を撫でられた。

 

「さて、爆豪少年!」

 

「1位になる、見事な伏線回収だった」

「……こんなモンじゃねえよオールマイト……次は本当のNo.1だ。俺はあんたを超える」

「素晴らしい意気込みだ……受け取れ!まずはこの1位が、君の始まりだ!」

 

「さあ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!」

「この場の誰にも、ここに立つ可能性はあった!!競い!高め合い!次代のヒーローたちは、さらに先へと登っていく!!」

「最後に一言!皆さんご唱和下さい!……せーの!!」

 

「「プルス「おつかれさまでした!」

 

「そこはプルスウルトラでしょ!?オールマイト!!」

「ああいや、疲れたろうなと思って……」

 

ホントに疲れました……

 

 

 

「今から教室でHR(ホームルーム)なんだが……緑谷、お前まともに歩けないだろ。ちょっとここで待ってろ、学校側で家まで送っていく」

「相澤先生、ありがとうございます」

「明日明後日は休校だ、しっかり休め」

 

待っていると、痩せ姿のオールマイトが私の荷物を持って来てくれた。

 

「これで全部かい?」

「はい、ありがとうございます」

「運転手さんは私の体のこと知らないから、八木さんで通してくれよ?」

 

「……オールマイト、私……″ワン・フォー・オール″のこと、かっちゃんに話してしまいました」

「ええっ!?はなしちゃったの!?」

「……ごめんなさい」

「…………」

「元々後継を探していた……今わかったんです。オールマイトが雄英(ここ)の教師になったのは、探すためなんですよね……?」

「どうして、私だったんですか……?かっちゃんなら……轟くんなら……他の誰かだったのなら、きっと……」

 

「私も″無個性″だったんだ」

「……オールマイトも……?」

 

「私の先代は、そんな私を信じて育て上げてくれた。笑顔の素敵な女性(ひと)だった」

「あの日出会った君に、かつての自分を……お師匠を重ねていた」

「……君を選んだのは、()()君に継いで欲しかったからだ」

 

「……今日は疲れただろう?とりあえず帰ろうか……」

 

 

 

 

 

「お母さん、ただいま!」

「……おかえりなさい」

 

もうヘトヘトだった私は、軽くシャワーを浴びてご飯をかきこみ、倒れるように深い眠りについた。

 

 

 

 

 

1、2、3……8人?揺らめくような、おぼろげな人影……

 

『……君が9人目だね……?』

 

『……もう少しだ、あと少しで……』

『大丈夫、君は一人じゃない』

 

 

 

 

 

「……子、出子……」

 

「……ううん?」

「出子、もうお昼だよ、起きて……?」

「お母さん……おはよ……」

 

……夢……?夢にしてはハッキリ見えた、私に向かって伸びるその手。君が9人目、つまりあの人たちは……

 

 

オールマイトに話さなきゃ……でもとりあえずご飯、お腹空いた。

 

「出子、体はもう大丈夫なの?」

「うん、バッチリ!リカバリーガールのおかげで傷も残ってないし、ぐっすり眠れて疲労も回復!」

「……そう、ならいいの……あまりにもひどい様子だったから……」

「あっ、あれはほら!あくまで試合だから!ね!?かっちゃんが悪いとかじゃ――」

「ええ、勝己くんから直接連絡があったわ。表彰式の後に電話がきてね、すみませんでしたって」

「ええ!?ウソでしょ!?」

 

「出子、あなたの″個性″……まだ危なっかしいけど、少し安心した……強くなったね」

「…………」

「子供のときからの夢だもんね……″個性″が出て、本当によかった。体育祭2位、おめでとう!」

「……うん」

 

 

 

2日後

 

人でいっぱいの地下鉄に乗り込む。休校の2日間、オールマイトの都合が付かなくて会えなかったが、学校に行けば会える。あの夢のことを話さないと……といっても、緊急性はないだろう、大丈夫。

 

「お嬢さん、お嬢さん!」

「へ?」

「ヒーロー科の緑谷ちゃんだろ?体育祭、準優勝おめでとう!」

「ど、どうも……」

「すごかったよね〜!」

「でも決勝なあ……怪我はもう大丈夫なのかい?」

「はい、もう平気で……」

「ありゃヒドかった、見てられなかったよ」

「アイツ、爆豪だったか?ありゃまともじゃないよな」

「ちょ!アレは試合ですし!大丈夫ですって!」

 

 

 

……朝から疲れたな、疲れをとるための休校なのに。

 

「遅刻するぞ緑谷くん!駆け足!」

「飯田くん!?待って待って!」

 

後からニュースで知った、早退の理由……

 

「……兄の件なら心配ご無用だ、教室へ急ごう!」

「うん……」

 

 

 

「早速授業なんだが、今日はちょっと特別だ」

「『コードネーム』、ヒーロー名の考案だ」

 

なんでも、体育祭でプロからもらったドラフト指名を元に、職場体験に行くらしい。そのためにヒーロー名が必要なのだとか。

 

「指名の集計結果がこれだ」

 

「あれ!?なんで私が1位!?」

「1位2位逆転してんじゃん」

「全国放送で女の子をあれだけボコボコにする奴とか、ビビるもんな……」

「ビビってんじゃねーよプロが!!」

 

「そういうプレイだったんだろ緑谷、オイラには分かる」

「峰田くんちょっと黙ってて」

 

「ともかくヒーロー名に関して、俺じゃその辺のアドバイスができん、そこで……」

「私の出番よ!!」

「「ミッドナイト!!」」

 

「みんな、しっかり考えてね?将来も背負い続けるであろうその名を!」

 

 

そして順調に授業は進み……

 

 

「爆殺王!」

「そういうのはやめた方が良いわね」

「なんでだよ!!」

 

かっちゃん……そりゃそうでしょ……

 

「ミッドナイト、次は私が!」

「はい緑谷さん!」

 

これしかないっしょ!!

 

「デコ出しヒーロー、『デコ』!!」

「親しみやすくてイイじゃない!!」

「やったあ!」

「でも、オデコの火傷跡……自分から名乗るからには、この先訊かれ続けるわよ?今訊いてもいいかしら?」

「はい!……これは小さい時に熱々のストーブにぶつけちゃって……当時からピンで留めてて、前髪が防いでくれなかったんですよ〜〜!!」

「エピソードトークまでバッチリ、大丈夫そうね!!」

「ありがとうございます!」

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 

 

「さて、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中で、指名がなかった者は、予めこちらからオファーした受け入れ可の事務所の中から選んでもらう」

「以上、今週末までに提出しろ。次の授業遅れんなよ」

 

貰った指名リストを眺める。

 

「多すぎない!?」

 

2000件越えって!?わざわざ指名してもらったから、目を通さないと悪いし……でもこの数じゃ……あと2日しかないんだけど……

私の次に多いかっちゃんと轟くんに聞いてみよう。

 

「かっちゃん!この数、どうしよう?」

「知るかよ、つーかなんで俺より多いんだテメェ」

「そんなこと言われても……それより、どこにするの?一つ一つ調べるの大変だし……」

「ンなもんテキトーに、有名で強えヤツのとこ選びゃあいんだよ!!」

「うーん、そういうもんかなあ〜」

 

「轟くん、この数だと選ぶの大変じゃない?」

「緑谷悪いな、俺はもう決めた」

「え……」

「本気で強くなるなら、ここしかねえよな」

「……エンデヴァー事務所……そっか、そうだよね……」

 

二人は参考にできなかった、どうしよう……

 

「デコちゃん、もう決めた?」

「ううん、まだ」

「私は決めたよ!ガンヘッドのとこ!」

「え、バトルヒーローの!?お茶子ちゃんはもっとこう、13号先生のようなヒーロー目指してるのかと……」

「そうなんだけど……爆豪くんと戦って思ったんだ。強くなればそんだけ可能性が広がる!デコちゃんみたいに格闘術を使えれば、もっといろんなことができると思って!」

 

みんな色々考えているんだなあ……

いや、私も考えてるけど、その考えに合う指名先を探すのが大変というか……

 

 

 

放課後、荷物をまとめて立ち上がる。帰ってこのリストから詳しく調べないと……

 

「私が来た!!」

「わっ!オールマイト!?」

「ちょっとおいで」

 

そんなに急いでどうしたんだろう……あ!

 

「私も話したいことが!」

「そうか、丁度良かったな!」

 

 

 

「まずはこちらから、君に追加で指名が来ている」

「追加で?オールマイトかわざわざ伝えに来たということは……」

「ああ、特別な指名だ……その方の名は『グラントリノ』。かつて雄英で一年間だけ教師をしていた、私の担任だった方だ。彼はお師匠……先代の盟友で、ワン・フォー・オールのこともご存知だ」

「なるほど……あ、そうなんですよ!!ワン・フォー・オールのことで――」

「ヘイストップ、話の途中。……その指名なんだが、君には他にも沢山指名が来ているし……もちろん君が行きたいところを優先していい」

「いえいえ、せっかくですし行きますよ。というか多すぎて困ってたので、むしろ助かりました」

「そうか、ならよかった……いやしかし、私の指導不足なのだろうか……まさかあの方が……正直怖ぇよ……」

 

え、オールマイトが怯えてる……いったいどんな人なんだ……

 

「……ともかく、次は……君の話を聞かせてもらえるかい?」

「いや、ちょっとしたことなんですが……」

 

私はオールマイトに、2日前に見た夢についての話をした。

 

 

 

「……間違いない、夢じゃなくて面影……ワン・フォー・オールの面影さ。しかし……話しかけてきた、と?」

「ええ、どうかしましたか?」

「私も夢を見たことがある、お師匠もあると言っていた。しかし、そこに意思は無く、話しかけてくることはない。()()はただの記憶に過ぎないはずだった」

「……そうなんですか……」

 

「『君が9人目、あと少し、君は一人じゃない』……彼らの激励、と素直に受け取って良いだろう。このチカラは、何があろうと君の味方だ。……ただ、『あと少し』……なんのことだろうな……」

「オールマイトにわからないなら、お手上げですね」

 

 

「そうだ、8人の人影……女性の方が一人だけいました。あれがオールマイトのお師匠さんですね?」

「……ああ……」

「キレイな人でした……優しい笑顔で……」

「……嬉しいよ」

「あの人を私に重ねていた、なんか照れますね……今は何をなさっているんですか?」

 

「……既に亡くなっている……」

「……すみません……」

「いや、いいんだ」

 

 

 

「『ロマンだよ……道半ばで(たお)れたとしても、ワン・フォー・オールの中でまた逢える』……お師匠の言葉だ」

「ロマン……ですか……」

 

 

それでもやっぱり、オールマイトは淋しそうだった。

 

 

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