「これより、表彰式に移ります!」
私は治癒の疲労がひどくて立っていられなかったので、表彰台の2位の段にイスを用意してもらった。
「3位には常闇くんともう一人、飯田くんがいるんだけど……おうちの事情で早退になっちゃったので、ご了承くださいな」
そうなんだ、何があったんだろう?わざわざ早退するってことは深刻なのかも、心配だな……
「さあ!今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!!」
「我らがヒーロー!」「私が!」
「メダルを持って来た「オールマイト!」
「「…………」」
ちゃんと打ち合わせしといてください。
「常闇少年、おめでとう!強いな君は!」
「もったいないお言葉」
「ただ、相性差を覆すには・・・」
なんか一言あるのか、緊張してきた……
「緑谷少女!」
「…っはい!」
「……無茶もほどほどにな!」
「ええっ!?なんかこうもっと……!」
「……おめでとう!!」
「えへへ……」
頭を撫でられた。
「さて、爆豪少年!」
「1位になる、見事な伏線回収だった」
「……こんなモンじゃねえよオールマイト……次は本当のNo.1だ。俺はあんたを超える」
「素晴らしい意気込みだ……受け取れ!まずはこの1位が、君の始まりだ!」
「さあ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!」
「この場の誰にも、ここに立つ可能性はあった!!競い!高め合い!次代のヒーローたちは、さらに先へと登っていく!!」
「最後に一言!皆さんご唱和下さい!……せーの!!」
「「プルス「おつかれさまでした!」
「そこはプルスウルトラでしょ!?オールマイト!!」
「ああいや、疲れたろうなと思って……」
ホントに疲れました……
「今から教室で
「相澤先生、ありがとうございます」
「明日明後日は休校だ、しっかり休め」
待っていると、痩せ姿のオールマイトが私の荷物を持って来てくれた。
「これで全部かい?」
「はい、ありがとうございます」
「運転手さんは私の体のこと知らないから、八木さんで通してくれよ?」
「……オールマイト、私……″ワン・フォー・オール″のこと、かっちゃんに話してしまいました」
「ええっ!?はなしちゃったの!?」
「……ごめんなさい」
「…………」
「元々後継を探していた……今わかったんです。オールマイトが
「どうして、私だったんですか……?かっちゃんなら……轟くんなら……他の誰かだったのなら、きっと……」
「私も″無個性″だったんだ」
「……オールマイトも……?」
「私の先代は、そんな私を信じて育て上げてくれた。笑顔の素敵な
「あの日出会った君に、かつての自分を……お師匠を重ねていた」
「……君を選んだのは、
「……今日は疲れただろう?とりあえず帰ろうか……」
「お母さん、ただいま!」
「……おかえりなさい」
もうヘトヘトだった私は、軽くシャワーを浴びてご飯をかきこみ、倒れるように深い眠りについた。
1、2、3……8人?揺らめくような、おぼろげな人影……
『……君が9人目だね……?』
『……もう少しだ、あと少しで……』
『大丈夫、君は一人じゃない』
「……子、出子……」
「……ううん?」
「出子、もうお昼だよ、起きて……?」
「お母さん……おはよ……」
……夢……?夢にしてはハッキリ見えた、私に向かって伸びるその手。君が9人目、つまりあの人たちは……
オールマイトに話さなきゃ……でもとりあえずご飯、お腹空いた。
「出子、体はもう大丈夫なの?」
「うん、バッチリ!リカバリーガールのおかげで傷も残ってないし、ぐっすり眠れて疲労も回復!」
「……そう、ならいいの……あまりにもひどい様子だったから……」
「あっ、あれはほら!あくまで試合だから!ね!?かっちゃんが悪いとかじゃ――」
「ええ、勝己くんから直接連絡があったわ。表彰式の後に電話がきてね、すみませんでしたって」
「ええ!?ウソでしょ!?」
「出子、あなたの″個性″……まだ危なっかしいけど、少し安心した……強くなったね」
「…………」
「子供のときからの夢だもんね……″個性″が出て、本当によかった。体育祭2位、おめでとう!」
「……うん」
2日後
人でいっぱいの地下鉄に乗り込む。休校の2日間、オールマイトの都合が付かなくて会えなかったが、学校に行けば会える。あの夢のことを話さないと……といっても、緊急性はないだろう、大丈夫。
「お嬢さん、お嬢さん!」
「へ?」
「ヒーロー科の緑谷ちゃんだろ?体育祭、準優勝おめでとう!」
「ど、どうも……」
「すごかったよね〜!」
「でも決勝なあ……怪我はもう大丈夫なのかい?」
「はい、もう平気で……」
「ありゃヒドかった、見てられなかったよ」
「アイツ、爆豪だったか?ありゃまともじゃないよな」
「ちょ!アレは試合ですし!大丈夫ですって!」
……朝から疲れたな、疲れをとるための休校なのに。
「遅刻するぞ緑谷くん!駆け足!」
「飯田くん!?待って待って!」
後からニュースで知った、早退の理由……
「……兄の件なら心配ご無用だ、教室へ急ごう!」
「うん……」
「早速授業なんだが、今日はちょっと特別だ」
「『コードネーム』、ヒーロー名の考案だ」
なんでも、体育祭でプロからもらったドラフト指名を元に、職場体験に行くらしい。そのためにヒーロー名が必要なのだとか。
「指名の集計結果がこれだ」
「あれ!?なんで私が1位!?」
「1位2位逆転してんじゃん」
「全国放送で女の子をあれだけボコボコにする奴とか、ビビるもんな……」
「ビビってんじゃねーよプロが!!」
「そういうプレイだったんだろ緑谷、オイラには分かる」
「峰田くんちょっと黙ってて」
「ともかくヒーロー名に関して、俺じゃその辺のアドバイスができん、そこで……」
「私の出番よ!!」
「「ミッドナイト!!」」
「みんな、しっかり考えてね?将来も背負い続けるであろうその名を!」
そして順調に授業は進み……
「爆殺王!」
「そういうのはやめた方が良いわね」
「なんでだよ!!」
かっちゃん……そりゃそうでしょ……
「ミッドナイト、次は私が!」
「はい緑谷さん!」
これしかないっしょ!!
「デコ出しヒーロー、『デコ』!!」
「親しみやすくてイイじゃない!!」
「やったあ!」
「でも、オデコの火傷跡……自分から名乗るからには、この先訊かれ続けるわよ?今訊いてもいいかしら?」
「はい!……これは小さい時に熱々のストーブにぶつけちゃって……当時からピンで留めてて、前髪が防いでくれなかったんですよ〜〜!!」
「エピソードトークまでバッチリ、大丈夫そうね!!」
「ありがとうございます!」
「…………」
「…………」
「さて、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中で、指名がなかった者は、予めこちらからオファーした受け入れ可の事務所の中から選んでもらう」
「以上、今週末までに提出しろ。次の授業遅れんなよ」
貰った指名リストを眺める。
「多すぎない!?」
2000件越えって!?わざわざ指名してもらったから、目を通さないと悪いし……でもこの数じゃ……あと2日しかないんだけど……
私の次に多いかっちゃんと轟くんに聞いてみよう。
「かっちゃん!この数、どうしよう?」
「知るかよ、つーかなんで俺より多いんだテメェ」
「そんなこと言われても……それより、どこにするの?一つ一つ調べるの大変だし……」
「ンなもんテキトーに、有名で強えヤツのとこ選びゃあいんだよ!!」
「うーん、そういうもんかなあ〜」
「轟くん、この数だと選ぶの大変じゃない?」
「緑谷悪いな、俺はもう決めた」
「え……」
「本気で強くなるなら、ここしかねえよな」
「……エンデヴァー事務所……そっか、そうだよね……」
二人は参考にできなかった、どうしよう……
「デコちゃん、もう決めた?」
「ううん、まだ」
「私は決めたよ!ガンヘッドのとこ!」
「え、バトルヒーローの!?お茶子ちゃんはもっとこう、13号先生のようなヒーロー目指してるのかと……」
「そうなんだけど……爆豪くんと戦って思ったんだ。強くなればそんだけ可能性が広がる!デコちゃんみたいに格闘術を使えれば、もっといろんなことができると思って!」
みんな色々考えているんだなあ……
いや、私も考えてるけど、その考えに合う指名先を探すのが大変というか……
放課後、荷物をまとめて立ち上がる。帰ってこのリストから詳しく調べないと……
「私が来た!!」
「わっ!オールマイト!?」
「ちょっとおいで」
そんなに急いでどうしたんだろう……あ!
「私も話したいことが!」
「そうか、丁度良かったな!」
「まずはこちらから、君に追加で指名が来ている」
「追加で?オールマイトかわざわざ伝えに来たということは……」
「ああ、特別な指名だ……その方の名は『グラントリノ』。かつて雄英で一年間だけ教師をしていた、私の担任だった方だ。彼はお師匠……先代の盟友で、ワン・フォー・オールのこともご存知だ」
「なるほど……あ、そうなんですよ!!ワン・フォー・オールのことで――」
「ヘイストップ、話の途中。……その指名なんだが、君には他にも沢山指名が来ているし……もちろん君が行きたいところを優先していい」
「いえいえ、せっかくですし行きますよ。というか多すぎて困ってたので、むしろ助かりました」
「そうか、ならよかった……いやしかし、私の指導不足なのだろうか……まさかあの方が……正直怖ぇよ……」
え、オールマイトが怯えてる……いったいどんな人なんだ……
「……ともかく、次は……君の話を聞かせてもらえるかい?」
「いや、ちょっとしたことなんですが……」
私はオールマイトに、2日前に見た夢についての話をした。
「……間違いない、夢じゃなくて面影……ワン・フォー・オールの面影さ。しかし……話しかけてきた、と?」
「ええ、どうかしましたか?」
「私も夢を見たことがある、お師匠もあると言っていた。しかし、そこに意思は無く、話しかけてくることはない。
「……そうなんですか……」
「『君が9人目、あと少し、君は一人じゃない』……彼らの激励、と素直に受け取って良いだろう。このチカラは、何があろうと君の味方だ。……ただ、『あと少し』……なんのことだろうな……」
「オールマイトにわからないなら、お手上げですね」
「そうだ、8人の人影……女性の方が一人だけいました。あれがオールマイトのお師匠さんですね?」
「……ああ……」
「キレイな人でした……優しい笑顔で……」
「……嬉しいよ」
「あの人を私に重ねていた、なんか照れますね……今は何をなさっているんですか?」
「……既に亡くなっている……」
「……すみません……」
「いや、いいんだ」
「『ロマンだよ……道半ばで
「ロマン……ですか……」
それでもやっぱり、オールマイトは淋しそうだった。