デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.12 職場体験へ

 

『グラントリノ』……聞いたことない名前だけど、オールマイトの元担任で、お師匠さんの盟友……絶対すごい人だ、そうに決まってる。

 

「……わあ、建物ボロすぎ……」

 

「お邪魔しまーす……」

 

扉を開けた私の目に映ったのは……

赤く染まり、床に倒れ伏す人の姿。

 

「うわああああ死んでるうう!!!」

「生きとる!!」

「うわあああ!!」

 

「あ、これケチャップだ、よかった……」

「誰だ君は!?」

「雄英から来ました、緑谷出子です!」

「何て!?」

「緑谷出子です!」

「誰だ君は!?」

「……こんにちはおじいちゃん!!気軽にデコちゃんって呼んでね!!」

「飯が食いたい!」

「はーい、今用意しますよ〜!」

 

こりゃダメだ、とりあえずオールマイトに報告を……

 

「……ワン・フォー・オール、何%まで扱えとる?」

「……え?」

 

「うーむ、女っ気のないコスチュームだの……」

「余計なお世話ですよ!てか何勝手に開けてるんですか!」

「おお、こりゃいいマントだ!」

「え!?私それ知らないですよ!?」

 

説明書、説明書……あった!

 

「ええと……『味気ないのでマントつけときました、是非どうぞ!!』……まあ、そういうことなら……」

「ほうら、着替えてきなさいよ」

「はーい……」

 

というか、グラントリノさん普通に話せるじゃないですか……

 

 

 

膝裏の辺りまで靡く黒緑のマント。思ったより動きに影響はない、着けてても大丈夫そうだ。

 

「……よし、早速撃ってきなさいよ!」

「撃てって言われても……」

「小娘、俺を年寄りだと思ってみくびっとるなァ」

「こむ……」

 

プシュッ!!

――消えた――後ろっ!!

 

「ぐっ……!」

 

間に合わなかった……!

 

「反応は悪くないが、まだまだ甘い……」

 

全身10%……!!

 

「はあっ!!」

「遅い!!」

 

目で追えない、速すぎる……!!右、上、左!!いつ仕掛けてくる……!?多分また後ろ……

――ここだ!!

 

「っダメか…!!」

「分析と予測、なるほどなァ……だが、それじゃあ足りん」

 

二度も背後を取られた、とても敵わない……

 

「自分より速い相手、目で追えないなら無理に追うな」

「……?」

「やってみりゃすぐにわかる」

 

プシュッ!!

 

速い!!……無理に追うな……?いったい……

 

――そうか!これなら、見失う瞬間を……!

次も後ろなら、視界から外れるそのタイミング……

 

「っここだ!」

「……そういうこった」

 

あれ、来てない……後ろの壁に張り付いてる……

 

「点で追えないなら線で捉える、視界から外れて後ろを取りにくるその瞬間だけは見逃すな」

「でも、後ろ取られ続けたらどうすれば……」

「そりゃ負けだろ」

「ええ……」

 

「とし……オールマイトのヤツ、こういう具体的なアドバイスはしとらんだろ?」

「……言われてみれば……」

「だからアイツは素人なんだ……」

「ええ……」

 

「小娘、さっきの%が限界か?」

「無意識で使えるのはそうです、さっきのが10%……20%を全身で維持すると上手く動けなくて……肉体の限界はもうちょっと上のはずです」

「……オールマイトのヤツは初めから自在に使いこなしていたからな、先は長いぞ」

「うへえ……やっぱり長期のトレーニングですよね……」

 

「だがな……時間も敵も、お前が強くなるのを待ってはくれん」

「…………」

「ワン・フォー・オールを、もっと身体に馴染ませろ」

「必要なときに必要な出力を。体育祭で、ほとんどできていたはずなんだが……それがどういうことか、自分で考えてみろ」

「メシ買ってくる、掃除して待っとれ」

 

 

 

 

 

さて……掃除終わったし、ちょっと練習を……

コスチュームは脱いで閉まってある。見せる相手がいないなら着てる必要ないし。

とりあえず、馴染ませる……全身20%!!

 

「はっ!!」

 

ブワッ!

カーテンが大きくはためく。

 

「ええっ!?」

 

狭いとこで20%試すの初めてだったんだけど、素振りだけで思ったより風圧が!

せっかく掃除したのに……!!

というかこの建物、そもそもホコリっぽい。日頃の掃除サボってるでしょ。

 

「メシ買ってきたぞ……ん?なんじゃこりゃ」

「……あはは……おかえりなさい……」

「……もっかい掃除だァな」

 

 

 

 

2日目

 

「おはよう!」

「おはようございます!」

 

「まずは朝飯だ!」

「何食べるんですか?」

「昨日買ってきた冷凍たい焼きだ」

「朝食たい焼きですか!?」

「俺は甘いのが好きなんだ!」

「ダメですよおじいちゃん!バランスよく栄養摂らなきゃ!」

「年寄り扱いするな!」

「年齢関係ないですよ!私ちゃんとしたもの買ってきますからね!!」

 

 

 

 

無事に健康な朝食を終えて、トレーニングが始まった。

 

「さて、とりあえずは……20%までを自在に扱うのが短期目標だ」

「20%ですか……昨日の感じだと、家の中ぐちゃぐちゃになっちゃいそうで……」

「必要なときに必要な分だけ、まだ分からんか?」

「え?」

「さあ、遠慮せず撃ってこい!」

 

……全身10%!!

 

「はあっ!」

「遅い!」

 

ここだ、右腕に集中、20%――わっ!?

足を払われてすっ転んだ。

 

「足が解けてちゃ意味ねえな」

「……なるほど……」

 

今まで、一部に集中すると他の全体が解けてたのか。

 

「必要なときに必要な分を……そもそも全身の強化は常に必要で、攻撃の瞬間に一部を上乗せする……」

「全身のイメージと一部のイメージ……別々に切り替えていたから間に合わないんだ……!」

 

「やっと気付いたか……ほれ、まずは立ったまま10%で構えて、20%で振る!」

「……はっ!……はっ!」

 

「……やっぱりできとるじゃないか……動きながら撃って馴染ませるぞ、来い!!」

「結局実戦形式ですか!?」

「見るだけなんざ、俺でなくともできるわな……広いとこ行くぞ、ついて来い!!コスは置いとけ!」

「……はいっ!!お願いします!!」

 

 

 

 

職場体験3日目 16時

 

「……そこそこ慣れてきたな」

「いや、まだまだです!」

「…おやつの時間だ、一回帰るぞ」

「なんでですか!?」

「たい焼き食うの!!お前が朝食たい焼きを禁止したから!!」

「……もう、しょうがないですね……」

 

「それだけじゃねえ、身だしなみ整える時間がいるだろ」

「……え?」

「職場体験だ、着替えて仕事に行くぞ」

 

 

シャワーを浴びて髪を乾かし、前髪をピンで留める。ついでにたい焼きも食べてから、コスチュームに着替える。……マント着けるの、やっぱり恥ずかしい。

 

「行き先は渋谷だ」

「渋谷!?この格好でですか!?」

「よく似合っとるぞ、なあに折角のデビューだ……それと、都市部の方が揉め事も多くて仕事が多いわけよ」

「そりゃあそうですけど……」

 

「渋谷までは、甲府から新幹線ですか?」

「うん」

 

保須市を横切るな……飯田くん……

職場体験、出発時を思い出す。

 

 

『飯田くん!』

『……緑谷くん、麗日くん、どうかしたかい?』

『……気をつけてね……』

『……ああ』

 

『デコちゃん、不安だよ……』

『……うん……』

 

飯田くんの職場体験先、ノーマルヒーロー『マニュアル』事務所のある、保須市。

そしてそこは……飯田くんのお兄さん、『インゲニウム』が襲われた場所でもある。ニュースによると、一命はとりとめたがヒーロー活動は続けられないそうだ……

犯人は、ヒーロー殺し『ステイン』。過去に17名ものヒーローを殺害し、23名ものヒーローを再起不能に陥れた、凶悪犯だ。

飯田くんは何も言ってくれなかったけど、わざわざその場所を職場体験先に選んだということは、もしかしたら……

 

心配だ、連絡してみよう……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

笑った顔がそっくりだ……俊典(としのり)、お前も分かりやすいなァ。ちと騒がしいのは、むしろお前に似とる。

さて、生半可な扱いはできんな……

 

「……よし、早速撃ってきなさいよ!」

 

 

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