体育祭の翌日 午後
「勝己!学校から電話!」
「ああ?学校から?」
「……もしもしィ?」
「爆豪少年、休日にすまないね」
「……オールマイトか?」
「ああ……明日、君と二人で話がしたい」
「……何処で何時だ?」
さらに翌日
「オールマイト……なのか……?その姿……」
「やあ、爆豪少年。今日話すことは、くれぐれも内密にしてくれよ?」
「彼女、口は固いと思ったんだがね……」
「口は固えよ、必要がなけりゃ話したりしねえヤツだ」
「……私の″個性″ワン・フォー・オールは、長年に渡って受け継がれてきたものだ。長い戦いと怪我により衰えてきた私は、次の者へと譲渡することにした……緑谷出子、彼女で9代目になる」
「……初めて会った日のこと、覚えているかい?」
「忘れるわけねぇだろ」
『……コイツが″無個性″でも、か?オールマイト』
『……″無個性″……!!そうか……』
「あの日、緑谷少女が″無個性″だと私の前で言ったのは、私に止めて欲しかったからだろう?」
「…………」
「彼女をとても気にかけているようだね」
「……そんなんじゃねえよ」
爆豪はオールマイトに、自分と緑谷の間にあった出来事を話す。
「つまり、君にとっては贖罪のようなものか……」
「こんなヤツが、ヒーロー志望だぜ?笑えるよな……アイツがあの火傷を、周りに嘘ついてまで見せびらかすのも、俺に忘れるなってことだろうよ」
「何でアイツを選んだ?」
「…彼女にこそ相応しいと思ったからだ」
「だろうな……アイツは誰よりもふさわしい。だからこそ、アイツにだけは渡しちゃダメなんだよ……!!」
「…………」
「君には、彼女を支えてあげてほしい」
「…………」
爆豪は、オールマイトから贈られたノートを思い出す。初めて会った日、その後、緑谷から手渡されたノートだ。
内容は三つ、緑谷の練習メニュー、爆豪向けの改良メニュー、そしてオールマイトからのメッセージ。
『彼女が無理をしすぎないように、見守ってやってほしい』
「あの日からそのつもりだったんだろ?あの日すでに、アイツに渡すと決めてたんだろ?」
「……ああ」
「……テメェの弟子だろ、テメェで面倒みろや」
そう言い捨てて、彼は去っていった。
職場体験後 学校にて
「やあ、爆豪少年」
「何でアイツと別々なんだ、二度手間じゃねえか」
「そう言わずに、掛けてくれ」
オールマイトは語りはじめた。
ワン・フォー・オールの成り立ち、オール・フォー・ワンの存在。後継である緑谷に、訪れるかもしれない過酷な試練。
しばらく黙って聞いていた爆豪が、口を開いた。
「自分でトドメ刺しとけよクソが」
「本当にすまない……」
「で?また俺に、アイツを支えてやれとかほざくのか?」
「ああ、頼む」
「自分でやれっつっただろ!!」
「もちろんそのつもりだ。師匠として、彼女を支えるのが私の義務だ。だが……」
「いつまでも、私が一緒にいられるとは限らない」
「……ふざけてんのか……?あんたはNo.1ヒーローだろ……!!」
「それに、君にとっての贖罪なんだろう……?しかも君はあの日、彼女が″無個性″だと私に告げた。″無個性″だと知らなければ、彼女に渡そうなどとは考えなかった」
「ッてめェ……!!」
「……頼むよ、爆豪少年」
「俺はあんたに憧れて、ヒーローを目指した。誰にも負けないヒーローに憧れて……」
「…………」
「今、心の底から……失望した」
「…………」
席を立ち、彼は去っていった。
「かっちゃん、やっと来た!遅かったね」
「先帰れっつったろデコ」
「……なんか元気ないよ?」
「…………」
「やっぱり、かっちゃんにもあの話をしたんだね……」
「…………」
「心配しなくても、私は平気だよ!」
「だろうな、テメェの心配なんて誰がするかよ」
「それはなんかひどくない!?」
「うるせえ」
『……コイツが″無個性″でも、か?オールマイト』
『……″無個性″……!!そうか……』
無個性でヒーロー志望、それを聞いて私は心を揺さぶられた。彼女の目を見れば、その覚悟の程は伝わってきた。
『ヘラヘラじゃなくてニコニコだよ?失礼だなぁ。笑顔は大事!』
『世の中、笑ってる奴が一番強いからな!』
自然とその姿を重ねていた。
そして少年は否定したが、本当に彼女を心配しているのだろう。
だからこそ、彼女にはそれを捨ててほしくないのだ……私が捨ててきてしまった、その優しさを……
『私はあなたの為になりたくて、ここにいるんだオールマイト!!』
……報告くらいはしておかないとな……
「もしもし……やあ、ナイトアイ……久々の連絡なのに不躾ですまないが、話したいことがあるんだ」
『″無個性″の中学生だと!?何を考えている!?』
「彼女にはまだ伝えていない。それでも彼女は折れない、きっと誰よりも強いヒーローになる」
『志だけでは、平和の象徴は務まらない!!相応しい人間なら他にいくらでもいるだろう!!』
「会ってくれれば分かる、彼女にこそふさわしい」
『会えば分かるだと……!?話にならない、馬鹿げている!!』
プツン!!
「……本当にすまない……」