デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.16 信念とは何か

 

「何度も壊すと腕動かせなくなるって言ったの、忘れたのかい?」

「ごめんなさい……でも今回は右じゃなくて左腕なので大丈夫ですよ!……たぶん」

 

試験直後の私とかっちゃんは、リカバリーガールの治癒を受けていた。

 

「何が大丈夫なんだい全く……」

「――リカバリーガール、二人の様子は……?」

 

モニター室に、痩せたオールマイトが入ってくる。

 

「オールマイト、あんたその姿……」

「いいんだ、彼も既に知っている」

「……あまり言いふらすもんじゃないよ」

 

「二人とも無事さ、あんたにしちゃあ上手く加減できたほうだね」

「そうですか……」

 

「爆豪少年、君は――」

「話しかけんな、テメェみてえな奴は知らねえよ」

 

「認めねえ……俺が憧れたのはオールマイトだ」

「ちょっと!?かっちゃん!!」

「治癒は終わったんだ、行っていいだろババア」

「……フラフラじゃないか、校舎の方で休んどきな」

「……ああ」

 

「ホント失礼ですいません、後で言っときますから!……待ってよかっちゃん!」

 

 

 

「随分と嫌われたねえ、何したんだい?」

「……必要なことなのです」

 

 

 

 

 

翌日のHR《ホームルーム》、相澤先生が教室に入ってくる。

 

「おはよう、今回の期末テストだが……残念ながら赤点が出た。したがって……」

「林間合宿は全員行きます!」

 

「そもそも目的は強化合宿だ、赤点連中は別途で補習させるからな。筆記は全員合格、実技で芦戸・上鳴・切島・佐藤、あと瀬呂が赤点だ」

「合宿のしおり配るぞ、しっかり読んどけ」

 

 

「明日休みだし、A組みんなで買い物行こうよ!」

 

「爆豪おまえも来い!」

「行ってたまるか、かったりぃ」

「なんで!?行こうよかっちゃん!」

「行かねえよ!」

 

 

 

 

 

「かっちゃんホントに来なかった……」

 

大型ショッピングモールに来た私たちは、各自で欲しい物が違うため自由行動をすることになった。ボーッとしてるうちに、みんな散らばっていってしまったようだ。

 

「デコちゃん、なんか欲しいものある?」

「……服とかかな……」

 

お茶子ちゃんと二人で見て回ることにした。……とりあえず行こう。

 

「どんな服が欲しいの?」

「うーん、私そういうセンスないからさ……お茶子ちゃんに選んでもらおうかなって」

「私だってオシャレは分かんないよ」

「大丈夫、私よりは絶対上」

「なにその自信……」

「いやあ、昔こんなことがあってさ……」

 

『かっちゃん!この服どう?自分で選んだの!』

 

予想していた反応『ははっ!ダッセェ』

実際の反応『……デコ、やめとけ』

 

『……え?』

『やめとけ』

『…………』

 

「……結構ショックだった」

「その服、超気になる……」

 

「おっ!君たち雄英の子だろ?サインくれよ!」

 

「ええっ!?サインだなんて急にそんな……」

「やっぱりそうだ……君たち二人とも、アレだろ?あの…爆豪って奴にボコボコにされてたよな?」

「お詳しいですね」

「私のことまで……」

 

サインか……でも、有名になるってことはそういうことなんだろうなあ……

 

――致命的な油断……そして平和な日常はいつだって、ヤツらの気まぐれで崩れ去る――

 

「緑谷さん、だっけ?保須事件でヒーロー殺しに遭遇したんだよな?」

「そんなことまで……」

 

お茶子ちゃんの肩にその手が乗る。

 

「また会えるなんてなァ、しかも偶然こんなところで!」

「――お前は――」

「動くなよ?大声を出すのも禁止だ……俺は話がしたいだけなんだ、緑谷出子」

 

「俺が五指で触れたものは、塵となって崩れる。人間なら1分と経たずに全身が塵と化す。死にたくなければ……そして死なせたくなければ、大人しく付いてこい」

「――デコちゃん、私はいいから――」

「オイオイ落ち着けよ、ヒーロー志望はこれだから……お前を壊したら次は周りの人間だ、状況をよく考えろ……これだけの人ごみの中だぜ?人質は大人しく黙っててくれ」

 

「緑谷、俺がその気で動いたとして……捕まるまでに何人殺せるだろうな?」

 

私の方が速い

周りに被害が出る前に仕留めきれる

逃せばいずれ他の場所で被害が出る

今動けば犠牲になるのは一人だけだ

 

 

 

「――っ……話って何……?」

「……座って話そうか」

 

 

 

 

死柄木に連れられベンチに座った。お茶子ちゃんを間にして、その肩に手を回したまま続ける。

 

「俺が聞きたかったのは『ヒーロー殺し』についてだ。何故世間はアイツに注目する?俺がやった雄英襲撃も、保須で放った脳無たちも、全部奴の踏み台にされた」

「何故、誰も俺を見ない?俺もアイツも、気に入らないものを壊してただけだろ?」

 

「……その認識で合ってるよ、平気で人を傷付けるただの犯罪者だ」

「もう少し誠実に答えてくれよ、俺とアイツは何が違うんだ?」

「何が違うって……?」

 

「ヒーロー殺しは逃げなかった……応援が駆けつけても」

「強い意思があった……必ず目的を達成するという意思が……アイツが私を助けたのも、信念に基づいて行動していたから……信念の先にある理想の為に」

「オールマイトを殺すって息巻いて、結局そのまま帰っていったお前とは違う」

 

 

「信念か……アイツにも言われたな」

「つまりは、自分で言ったことはやり遂げるってことだろ?俺は今まで何を悩んでいたんだ……!」

「……ありがとう、話せて良かった」

 

「オールマイトを殺す、その先……あやふやな正義とかいうやつを、俺がこの手で壊してやるよ」

 

死柄木がお茶子ちゃんを乱暴に立たせる。

 

「っ!!」

「ッこの!!」

「お前は座ってろ」

 

「充分離れたら解放するさ、そんなに怖い顔するなよ。話がしたいだけって言ったろ?間違っても追ってくるなよ?」

 

二人が人ごみの中に消えていく……

程なくして、お茶子ちゃんが帰ってきた。

 

「お茶子ちゃん!怪我は!?」

「……大丈夫だよ」

「無事で良かった……本当に……」

「私、デコちゃんに助けられてばっかりだ……足手まといばっかりで……」

「っそんなことないよ!そんなこと……」

 

 

 

 

 

警察への通報でショッピングモールは一時閉鎖され、ヒーローと警察によって辺りが捜索されたが、死柄木は見つからなかった。

そして私たち二人は、警察署で事情聴取を受けた。

 

「色々ありがとう、もうすぐ君の母親が迎えにくるよ」

「塚内さん、お茶子ちゃんは……」

「彼女は一人暮らしのようだからね、さっき警察の方で送っていったよ。実家の両親には連絡済みだ」

「……私、動けませんでした……もっと何かできたはずなのに……」

「そんなに自分を責めないでくれ、犠牲者が出なかったのは君たちの冷静な対応のおかげだ。それに、全ての責任は我々警察にある」

 

 

 

「緑谷少女、塚内くん!」

「オールマイト?どうしてここに?」

 

「塚内くんと個人的な話があってね。……そばにいてやれなくて、すまなかった」

「いえ、オールマイトが謝ることでは……」

 

「……オールマイト、人質を取られたらどうするべきですか?」

「……難しい質問だ……一番は人質を取られないこと、すでに人質を取られていたら、犯人の要求に大人しく従う。ヒーローである以上は、見捨てることはできない」

 

「あまり気負いすぎないほうがいいよ、オールマイトは参考にならない。人質なんて通用しないからね」

「ええ、ですから……」

「君は適切な対応をしてくれた……死柄木は警察が必ず捕まえてみせる。だから君は、君の目標に向かってくれ」

「……はい」

 

塚内さんは、私とオールマイトの関係を知っている。私がワン・フォー・オールを継いだことを……

 

「出子、出子!」

「お母さん……」

「無事で良かった……」

「……うん」

 

警察の車で送ってもらう、その道中……

 

「二人とも無事みたいで、本当に良かった……」

「……お母さん、私……」

「どうしたの?」

「……やっぱり何でもない……」

 

 

 

 

 

夏休み前、最後の登校日。

 

「……とまあそんなことがあって、ヴィランの動きを警戒し、合宿先を急遽変更します。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

「集合場所、時間は変更なしだ……お前ら遅刻すんなよ?」

 

とりあえず、合宿が中止にならなくてよかった。滅多にない機会だし、やっぱり楽しみだなあ……

 

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