「ワンツー、ワンツー!」
「まだまだいけるな小娘!!」
「イエッサー!!」
「だらしないぞ貴様らァ!!コイツを見習え!!」
「「イエッサー……」」
「声が小さい!!」
「「イエッサー!!」」
″個性″を伸ばすといっても、増強型の個性の場合は素の肉体強化が不可欠だ。というわけで私は、B組の
「よォし、順番に撃ってこい!!」
「「「イエッサー!!!」」」
「20%スマッシュ!!」
虎さんの″個性″は″軟体″。私のパンチを、身体を折り曲げるようにして躱す。
「甘いわ!!」
「痛あ!」
ガードの横をすり抜けるようにグニャグニャの腕が飛んでくる。拳はしっかり硬い……
「次!」
「ビーストモードですぞォオオ!!ウガァァ!!」
「動きが固ァい!!」
「ぬおおっ!?」
「ノリ怖えよ……」
「ボサっとするなァ!次は貴様だ!」
「……イエッサー!!」
「さあ皆!!最高のカレーを作ろう!!」
自分たちのメシは自分たちで作れと言われ、はり切る飯田くん。災害時の避難先で炊き出しを行うのも救助の一環、という解釈らしいが、たしかに一理ある。
「爆豪、爆発で火ィつけれね?」
瀬呂くんがかっちゃんに声を掛けた、それはまずい――
「つけれるわクソが!」
「ストォップ!!!」
「邪魔すんなデコォ!!」
「そんな繊細な使い方できないでしょ!?」
「できるわ!!バカにすんなテメェ!」
「小さいとき、花火に火つけようとして暴発させてたじゃん!!」
「んなことした覚えはねえ!!!」
「……これでいいか?」
「おう、轟サンキュー」
「いただきます!」
自分たちで作ったカレーは、中々美味しい。半分ほど食べたところで、水をとってこようと立ち上がると、離れたところにいる洸汰くんを見つけた。彼は森の方へと歩いていく……ご飯食べないのかな?
私は席に戻って残りの半分をかき込み、新しい皿とスプーンを用意した。
施設から程近く、見晴らしのいい高台にやってきた。
「洸汰くーん、お腹すいてるでしょ?これ食べなよ」
「てめぇ何故ここが!」
「えっとね、足跡を追ってきたの。まだご飯食べてないでしょ?」
「いらねえよ!お前らとつるむ気はねえ。俺のひみつきちから出てけ」
秘密基地……かわいい……
「″個性″を伸ばすって張り切っちゃって、気味悪いんだよお前ら……そんなに自分の力をひけらかしたいのかよ」
「…………」
洸汰くんはヒーローのことをそんなふうに思っているのか……
二年前に殺害された、夫婦のヒーロー……
「ご両親のことも……『ウォーターホース』のことも、そう思ってるの……?」
「っマンダレイに聞いたのか!?」
「……うん」
「……頭イカレてるよみーんな」
「馬鹿みたいにヒーローとかヴィランとか言っちゃって殺し合って、″個性″とか言っちゃって……ひけらかしてるからそうなるんだよバーカ」
「…………」
ヒーローだけじゃなくて、超人社会そのものが嫌いなんだ……
私はこの子に、なんて言えばいいのだろう……
「――やっぱガキだな」
「……何だお前!」
「かっちゃん!?なんでここに!?」
いつの間にか後ろにいたかっちゃんが、洸汰くんに近づいていく。
「……俺の″個性″は″爆破″だ、掌から爆発を起こせる」
BOM!
「小規模なら軽い火傷で済むが……至近距離、本気で爆破すりゃあ……大抵の人間は死ぬ」
「っ……!」
「何を言い出すのいきなり!?」
「こんなモン、人に向けていいもんじゃねえ……ガキでも分かるそんなことが、分かんねえクズ共が世の中にはいンだよ」
「そのクズ共から、お前はどうやって身を守る?ひけらかしてたから死んだ、そう思ってんなら……一生コソコソ隠れて生きてろ」
「何だとてめぇ……!」
「ちょっとそんな言い方ないでしょ!」
「自分の好きなようにしろよ。お前がどう思おうと、何をしようと……どっちにしろヒーローは戦うだけだ」
「…うるせえ!!出ていけよ!!」
「洸汰くんごめんね、かっちゃんは――」
「お前も出てけ!うざったいんだよ!二度と来るな!」
「……ごめん、カレー置いとくね……」
「ご両親のこと……君も誇りに思える日が来るって、信じてる」
「うるさい……どいつも……こいつも……」
私は前を歩くかっちゃんに駆け足で追いついた。
「あんな言い方、余計に傷つけるだけだよ!」
「現実を受け入れられなきゃ、いつまでもガキのままだ」
「かっちゃんも洸汰くんのこと、どうにかしてあげたいって思ったんでしょ……?ならもっと、優しさとか気遣いとか――」
「ハハッ、気遣いだァ?笑わせんな、あのガキが気に入らねえだけだ」
「気の利いたセリフなんざ言えるかよ。テメェの言う通り、俺はいつだって壊すだけ、傷つけるだけだ」
「……そんなことないよ……」
最近のかっちゃんは、何かが変わった気がする。期末試験のときも少し変だったし……となるとその前の時期、職場体験のあたりで何かあったのかな……?
合宿三日目
「回原くん、宍田くん、おはよう!今日も頑張っていこう!」
「元気すぎ……」「ですな……」
トレーニングを続けていると、相澤先生が全員へ向けて
「気を抜くなよ、皆もダラダラやるな」
「何をするにも、
「何の為に汗かいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」
原点……
オールマイトのような、最高のヒーロー!
「クソがあああ!!」
BOOOOM!!!
「おりゃああ!!」
「どうした小娘、ペース上げたいのか?」
「イエッs――」
「「NO!!」」
「……無理にペースを上げても、雑になって逆効果です!」
「……そうだな、このまま励め!!」
「「イエッサー!!」」
「……イエッサー!」
「ちなみに皆!今日の晩にクラス対抗の肝試しをするから、楽しみにしててね!」
日が暮れるころ、私は再び洸汰くんの元に向かった。
「洸汰くん!今日は肉じゃがだよ、よかったら食べてね!」
「来るなって言っただろ!」
「……ここに置いておくね?」
私にはこんなことぐらいしかできないから……
それ以上何も言わず、振り返って施設に戻った。
「お腹もふくれた、皿も洗った、お次は……」
「肝を試す時間だー!」
「……大変心苦しいが、補習連中はこれから俺と補習授業だ」
補習の五人が相澤先生に引きずられていく。かわいそう……
「……脅かす側先攻はB組、A組は二人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中にある自分の名前の札を取ってきて、一周してこの広場に帰ってくること!」
「早速くじ引きでペア決めよー!!」
二人一組なら、頼めば代わってくれるかな……?
……あれ、クラス20人で5人補習……
いや大丈夫、引かなければいいだけ……!
「――私が余ったああ!!」
自分が一人だと、気軽に代わってって頼めないよ……
ふてくされてしゃがみ込む。
「青山、オイラと代わってくれよ……」
「オイ尻尾……代われ……!」
「俺は何なの……」
「オイデコ、そんなに行きたきゃ俺と代われ」
「……そうじゃない……」
「あ?」
「それじゃ、あちきは中間地点で待ってるねー!!」
『ラグドール』の″個性″は″サーチ″、一度見た相手の位置や情報を100人まで常に知ることができる。誰かが迷ったりはぐれたりしたときのためにも、適任なのだろう。
「よーし、肝試しスタート!!」
さっき出発したのが5組目のお茶子ちゃんと梅雨ちゃん。残りはもう2組とついでに私。
「何この焦げ臭いの……」
「黒煙……?」
皆の視線が、煙の上がる方へと向く。まさか山火事が……?
「――なっ何!?」
その声に振り返ると、ピクシーボブが引き寄せられるように離れていくのが見えた。
ピクシーボブが、頭から血を流して倒れる。そばには二人の見知らぬ人影が……
「何で……何でヴィランがいるんだよォ!!」
「っピクシーボブ!!」
――飛び出そうとしたところを虎さんに制止された。
「やばい……!」
マンダレイが呟く……
――洸汰くん!!
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!我ら
敵がこの二人だけとは思えない、どう動くべきだ……?優先順は……?
「虎!
「皆行って!!良い!?決して戦闘はしない事!委員長引率お願い!」
「承知致しました!…行こう皆!」
「……先に行ってて!」
「緑谷くん!?何を言ってる!?」
「マンダレイ!!私、知ってます!私が行きます!」
「緑谷!!」
マンダレイは一瞬だけ私を見たが、何も言わなかった。
ワン・フォー・オール、全身20%……!この広場からはそう遠くない、すぐに着く!
私は木々の中へと駆け出した。
高台の下にたどり着き、ひとっ飛びで上に登る。
「洸汰くん!!」
「――っ!……お前か……なあ、何なんだよこれは……!」
上から見渡すと、火事の様子がよく見える……普通の火じゃない、煌めくような青い炎だ。それと、立ち登る黒煙とは別に、木々を囲んで漂うピンク色の煙……
「とにかく避難を――」
――こちらに近づく大きな人影。
「資料にあったヤツと、知らねえガキがひとり……」
「――洸汰くんつかまって!!」
「え……」
「早く!」
両足に集中、瞬間40%!!
高台から飛び降りた――
「逃がすかよ!俺と遊ぼうぜ緑谷ァ!!」