デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.20 連合の標的

『A組B組総員、プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて、戦闘を許可する!!』

 

マンダレイのテレパスが私にも聞こえた。おそらく、合宿に来た全員に一斉送信したのだろう。

 

「イレイザー!!ここは私らに任せて、生徒の保護を!!」

「マンダレイ!!洸汰くん無事です!!」

「ちょっと!?戻ってきちゃったの!?」

 

「ここは任せていいんですね!……先生!!まだ森に残っている生徒が多すぎます、私と先生で二手に分かれて探すべきです!!」

「……俺が左だ、お前は右の道から行け。無理はするな、そして必ず施設まで戻ってこい」

「はい!!」

 

「いつまで喋ってるのかしら!?行かせないわよ!!」

 

虎さんが相手をしていたヴィランが、私に向かってきた。しかし、飛んできたナイフに驚いてその足が止まる。

 

「手を出すなマグ姉!!」

「何するのよ!!」

 

よくわかんないけど助かった、今は急げ!!

私は再び薄暗い森の中へと駆け出した。

 

右の道……つまり肝試しコースの出口側から入ったから、1番目スタートの常闇くんと障子くん、2番目のかっちゃんと轟くんが近いはず。この二組からB組生徒の大まかな位置を聞いて、安否を確認しながら中間地点を目指し、施設に引き返す。

 

あの筋肉ヴィランが言っていた、『私を率先して殺す』……(ヴィラン)連合の目的はおそらく、生徒の殺害……!優先度があるらしいが詳しくは分からない。外部に開示されている情報といえば、体育祭か…?だとすると、1位のかっちゃんも優先的に狙われているかもしれない……

この森の中だと、かっちゃんは満足に戦えない……急がないと!!

 

 

 

突然、木々の間から黒い影が伸びる。咄嗟に横へ飛び退いて躱し、起き上がった。

一体何が……一瞬しか見えなかったが、とても大きい影だった――

 

「緑谷、音を立てるな」

「っ!?」

 

後ろから口を塞がれ、驚いて振り返る。しかし、そこに人影はなく、長く伸びる腕とそこに生えた耳と口があった。

 

「悟られないように小声で話せ」

「……分かった」

 

足音を立てないように慎重に歩く。伸びてきた腕の先、木の陰に隠れている障子くんと合流した。

 

「障子くんが一人ってことは、さっきの影は……」

「ああ、常闇のダークシャドウだ。俺がヴィランの攻撃から常闇を庇って負傷し、それが奴を暴走させるきっかけになってしまった」

「負傷って、怪我は大丈夫……?」

「だいぶ痛むが問題はない」

 

「緑谷……お前が来たのは、この先にいる皆を救ける為なのだろう?ここを通りたいなら、奴をどうにかしなければならない。光があれば……」

「明かり……スマホのライトなら……!」

 

ポケットに手を突っ込むが、そこにスマホは無かった。

 

「あれ!?無い!落とした!?」

 

たしかに、ここに来るまで結構激しく動いたけど……!気付かないなんて!

 

「ウガァァァ!!!」

「緑谷!」

 

ワン・フォー・オール、瞬間40%!!

SMASH!!

 

私の声に反応して攻撃してきたダークシャドウに、拳を叩き込む。

――強い……!押し負ける……!!

 

「……俺から離れろ……死ぬぞ!!」

「常闇くん!」

「……俺のことはいい!!他に……向かえ!!」

 

常闇くんがなんとか抑えようとしてこの暴れ具合じゃ、私には対抗できない……!!

一旦退いて障子くんの元へと戻った。

 

「緑谷、お前が先へ行きたいのなら……俺が道を拓こう。奴を明かりの方へ、施設か火事のどちらかへ誘導する」

「施設も火事も距離がある……それに、私だけ先に行くつもりはない、何より私は全員を救ける為に来たから…!」

 

 

 

 

 

私は後ろから迫るダークシャドウの攻撃を捌きながら、二人で森の中を走っていた。

暴走していて単調なその攻撃は、範囲と威力こそ凄まじいが、避けることに集中していれば何とか対応できる。それに、時々障子くんも複製腕を伸ばしてサポートしてくれている……私が引きつけて、その間に障子くんが周りを探る。この形が一番効率が良いはず……

 

「いたぞ!氷が見える、交戦中だ!」

 

引きつけるのをやめて、一気に駆け出した。

 

「爆豪!轟!どちらか頼む、光を!」

「やばいやばい!助けてぇ!」

 

呆気に取られて立ち尽くす二人に呼びかける。

 

「早く光を、常闇が暴走した!!」

「うわああ!!!」

 

「分かった、今炎を……」

「待てアホ」

「何で待つの!?」

「……見てえ」

 

後ろを振り返ると……

さっきまで二人が戦っていたらしいヴィランが、ダークシャドウと対峙していた。完全に解放されたダークシャドウが、木々を薙ぎ倒しながらそのヴィランをぶっ飛ばす。

 

「強すぎでしょ……」

 

轟くんが、背負っていたB組の円場(つぶらば)くんを一度下ろす。かっちゃんと二人で、暴れ続ける常闇くんへ向かっていった。

 

 

 

「てめぇと俺の相性が残念だぜ」

「……?すまん、助かった」

「常闇、大丈夫か?」

「……障子……悪かった……緑谷も……俺の心が未熟だった……」

「平気だよ、そんなに自分を責めないで」

 

「いや、俺の責任だ……怒りに任せて″個性″を解き放ってしまった……本当にすまない……」

「そういうのは後だ、とお前なら言うだろうな。……緑谷、どうするつもりだ?」

 

「みんなに聞きたいことが……他のB組生徒がいた場所、大体でいいから覚えてる?中間地点より後の区域だけでいいから」

 

私が何をしようとしているのか察したのか、轟くんが口を開く。

 

「待て緑谷、中間地点付近はラグドールがいる……プロに任せて俺たちは避難するべきだ。それにこの先はガスが漂っていて進めねぇ……」

「ガスはもう消えてるみたいだよ?」

 

森の中へと続く道、その先にガスらしきものは見えない。

 

「なにしろ木ィばっかだ、正確な場所は覚えてねえが……どいつも道沿いにいた」

「そっか、ありがとかっちゃん」

「デコ、俺が案内してやる」

「っダメ!」

「……どういうつもりだテメェ」

 

「……森の中だとかっちゃんは大きい爆破ができない、身軽な私ひとりでいい。みんなはこのまま施設に向かって」

「一人で行くだと!?危険すぎる!緑谷、忘れたのか!?俺たちは資格すらない学生の身だぞ!」

 

轟くんが強い口調で言い放つ。……でも、それでも私は……

 

「……俺はその気になりゃ飛べる、木より高けりゃ燃え移ることもねえ……ついてくなら機動力のある俺だ、文句は言わせねえぞデコ」

「……分かった、二人で行こう」

「オイ待て!!お前ら――」

 

静止を振り切って、私たちは先へと進んだ。

 

「轟!待て!常闇の為にも、お前は我慢してくれ!」

「っ……!!クソッ!!」

 

 

 

 

 

「確かこの辺りだ、道の右から……逆からだから左側だな」

 

茂みをかき分けて、誰か倒れていないか探す……

高台から見下ろしたとき、ガスはかなり広がっていた……今は消えているが、この辺りにいた人は確実に吸ってしまっているだろう……

 

「一人いたぞ、こっちだ」

 

暗くて、誰なのかまではわからない……先に近づいたかっちゃんに問いかける。

 

「どう……?」

「特に怪我はしてねえ、呼吸もある」

 

髪を結んでる男子、ごめん名前知らないや……後でちゃんとB組全員覚えておこう。

 

「私が背負うよ」

「いや俺が背負う、テメェは周り見とけ」

「でも――」

 

 

 

――咄嗟に振り返って腕でガードする――

鋭い何かが左腕に突き刺さった。

 

「っ!?」

 

――間合いは2メートルぐらい、踏み込め!

放った蹴りは躱された……私の腕に刺さったものが抜けて、それに繋がった管が戻っていく。

 

「デコ!!」

「……少ない!上手くいかないことばかりです!」

「誰だ!」

 

……何のことだ……?少ないって……

いや、それよりも……あの身のこなし、捉え切れるだろうか?

 

「トガです、緑谷出子ちゃん!また今度会おうね!」

「……待て!」

 

「デコ!深追いすんな!」

「っ……でも……」

 

既にそのヴィランの姿は消えていた。

 

「逃がしたら、他を狙うかもしれない……!」

「……落ち着け、腕の傷は?」

「……大丈夫、動かせる」

 

「まだ進むか?それともコイツを連れて戻るか?」

「……まだまだ残ってるはず、行かなきゃ」

 

 

――ドサッ!

突然、人が……いや、かっちゃんが背負ってた男子が降ってきた!崩れ落ちながらも何とか受け止める……

 

「ちょっとかっちゃん!?どういうつもり!?ケガ人を放り投げるなんて――」

 

…………いない…………

 

「かっちゃん……?どうしたの……?」

 

そんな……さっきまで普通に話してたのに……

受け止めた男子を地面にゆっくりと横たえて、立ち上がる……

 

 

 

「――彼なら、俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

――木の上、仮面の男が立っている――

 

「こいつぁヒーロー側にいるべき人材じゃあねえ、もっと――」

「返せ!!」

 

私は真っ直ぐ飛びかかった――

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「蛙吹!麗日!」

「あ…相澤先生!」

 

距離があったため、捕縛布は避けられた……だが、二人から引き離すことはできた。

 

「……先生に怒られるのはイヤなので、バイバイ」

 

……見るからに未成年じゃねえか、どうなっている?(ヴィラン)連合……子供まで仲間に引き入れているとは……

その女は俺を見るなり、森の中へと姿を消した。

 

「お前ら無事か?怪我はどうだ?」

「私は腕を、梅雨ちゃんは舌を切りつけられて……」

「ケロ……痛むけど大丈夫だわ」

 

「……このまま真っ直ぐ施設に向かえ、ヤツらに見つからないように……」

「先生は……」

「……先へ向かう、動けない生徒がいるかもしれん」

 

優先度……合理的に……動けるこの二人よりも保護すべき生徒がいるはずだ。

 

「充分に気を付けろ、急いで行け!」

「「はい!」」

 

再び道の先へと駆け出した。

 

 

 

 

 

「血が採れてません……ガスの届く端っこに行って、倒れてる人から貰いましょう!」

 

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