「こいつぁヒーロー側にいるべき人材じゃあねえ、もっと――」
「返せ!!」
飛びかかる私から逃げるように、ヤツは別の木に飛び移る。
「返せ?妙な話だぜ…爆豪くんは誰のモノでもねえ、彼は彼自身のモノ――」
「返せよクソ仮面!!!」
「全く、トークは最後まで聞いて欲しいね……『
――絶対に逃がさない!!!
「何故そんなに怒るんだい?体育祭で、ボコボコに痛めつけられてたのは他ならぬ君だろ?完全な勝利を求める彼に、もっと相応しい道を!何者にも縛られない道を我々が――」
「お前に何がわかる!!!!何も知らないくせに!!!」
「ああ、なるほど確かに……決着の後に君を助け起こしていたね。
「ッ黙れ!!!」
ことごとく避けられる……!!瞬間40%じゃ、木々を飛び移る繊細な動きについていけない……
落ち着け……アイツの″個性″はかっちゃんを攫ったときに手に持っていた、玉のようなもの……その身体能力は普通の人間だ、追いつくなら……
全身20%で、自分の動きに集中しろ!!
「あああッ!!!」
「おおっと!?参ったなこりゃ……『飛び入り参加が一名だ、振り切れそうにない。出迎えてくれ』」
目の前に、少し開けた空間……あれが集合地点か!!
ギリギリで追いつき、空中で拳を振るう。
「はああッ!!」
「あたっ!?」
ダメだ浅い……!!もう一発!!!
「なんだよ女のガキ一人じゃねえか!?楽勝だぜ!!用心しろよな!!」
「
もう二人……!!まずい、着地を狙われる……!!迎撃か回避か……いや、この体勢だと――
――空中を蹴って横に転がると、激しい炎が広がってきた。輝く蒼炎が右腕を掠める。……ちょっと焼けただけだ、まだ動ける!!
仮面のヤツはどこだ?――窪んだ地面が目に入る――
「死柄木の殺せリストにあった顔だ!なかったけどな!」
「
覆面男をキックの風圧で吹き飛ばすが、反動でフラついて思わず手を地面に付く。……コントロールがブレ始めた……
「爆豪は?」
「もちろん!エンターテイナーとしては、演出に欠けるが……」
「知るかよ」
ダメージを与えれば解除されるかもしれない、ブッ倒す!!
二人のヴィランの方へ駆け出す――
「焼け死にたくなきゃ
集中しろ、瞬間40%……SMASH!!
炎をかき消して進む――
「アチチッ!?巻き込むなって!」
かき消した炎の隙間を縫うように、仮面の男が手を伸ばす。
――触られちゃダメだ!!咄嗟に後ろへ飛んだ――
「――出子ちゃん!こんなとこまで来ちゃったんだねえ!」
「っ……!!」
右の太ももに、刺された感覚……右腕で振り払う。
「会いに来てくれたの?それとも……?ねえ出子ちゃん、私とお友達になって!!」
「どいつもこいつも!邪魔をするな!!」
「私わかるんです、おんなじだから!好きなんですよね?憧れて、近づきたくて、その人みたいになりたくって!!私とおんなじ!!」
「誰が!!!お前なんかと!!!」
……ダメだ、落ち着け!!大雑把になるな……狙うのは仮面の男だ!!
迫るナイフを避けて向きを変える、距離はだいたい……
「合図から5分経ちました、行きますよ」
辺りに黒い霧が点々と現れ、人の背丈ほどに丸く広がる。
――あいつはワープの……!!
仮面の男とツギハギ顔の男、二人の方へ飛び出した。
「ご覧下さい、こちらが今回――」
「いいから行くぞ」
遠い……間に合わない……嫌だ、嫌だ……
お願い行かないで……
あなたがいないと私……わたしは……
――
――ワン・フォー・オール、100%――
「っだよ今の……」
「何がエンターテイナーだ、落とすな……っ!?」
……視界が黒く染まり、闇の中へと溶けていく……
「やばいってやばいって!やばいってこいつぅ!!」
少し前……
背中から触手がいくつも生えた怪物が、二人の生徒を襲っていた。その先端には、チェーンソーやドリルが付いている。
「八百万!!生きてるか!?おい!!頼む走れ、追いつかれる!!」
「すみません
「――そのまま走れ!!!」
背中の触手が力なく垂れ下がる。直後に足を絡め取られ、その怪物は大きな音とともに地面に倒れた。
「泡瀬!!このままでいい、すぐに地面に縫い付けろ!」
「俺!?マジですか!?」
「背中のは動かん、急げ!!」
「っはい!!」
「また脳無か、全く……」
「相澤先生……どうやってここまで……?」
「お前はもう喋るな、頭部の出血が酷い」
「B組の
「そうでしたか……申し訳ありません、
「ガスマスクを創ったのはお前だろ?よくやってくれた……もう休め」
「泡瀬、八百万を運べるか?」
「……もちろん!」
「俺は保護に戻る、施設まで頼んだぞ」
(やはり俺一人じゃ反対側まで手が回らん……緑谷、そっちはどうなっている……?)
――一手でも間違えれば殺される――
右足がブラブラと頼りなく揺れているのを感じた。
暗闇に包まれたままで拳を構える……位置はなんとなくわかる、視界が開けた瞬間に撃つ……
周りを巻き込むから、咄嗟に炎は出せないはず……いや、それに賭けるしかない……
先に狙うのは……
黒いモヤの隙間から光が見えた。40%――
SMASH!!
仮面の男に拳を叩き込む。ツギハギ顔の男の握り拳が開かれて、かっちゃんが飛び出した。乱暴に掴んで自分の後ろに引き寄せる。
――部屋の中で、蒼い炎が噴き出す様子がスローモーションのように見える……戦闘態勢に入る他のヴィランたちも……
どうせ折れてる足だ、腰の捻りで思いっきり振る。でも周りの建物まで壊すといけない、80%ぐらいで……
――SMAAASH!!!
衝撃によって、部屋の半分が吹き飛んだ。
まだワープのヤツが残ってる、すぐに脱出を――
かっちゃんの体を左腕でしっかりと抱え、右手を床に突いてバランスを取る。同時に怒号が飛び交っていたが、内容は分からなかった。ヤツらが反応できないほどのスピードで……
今度は左足に集中、100%――
窮屈な姿勢から無理矢理に外へ飛び出した。
――建物から飛び出したその先、空中に黒い霧が広がっていく。
BOOOM!!
爆発で横に逸れて躱し、それでも勢いは止まらずに飛び続ける。別の通りに降りて、ヤツらのアジトは見えなくなった。
「何考えてんだ!?ああ!?」
「だって……だって……!!」
私を背負ったまま、かっちゃんは夜の街の中を飛び回る。
「もう二度と……会えないかもって……」
「……
「デコ、手ェ空いてるならスマホ出せ」
「……無くした……」
「……何やってんだよ……」
夜でもまばらに人通りがある……地面に降り立つと、かっちゃんはポケットからスマホを取り出して、ロックを解除してから手渡してきた。
「最寄りのヒーロー事務所か警察署はどこだ?」
「先に通報は……?」
「迎えにきてもらうより行ったほうが早ぇだろ」
「……分かった、ちょっとだけ止まって……」
「……とにかく遠くへ逃げるか、なるべく安全なとこに逃げ込むか、なら……ヒーローを頼るべきだ」
「……うん……」
現在地情報は……
神奈川県横浜市、神野区……?
「横浜だァ?」
「……あったよヒーロー事務所、三つ先の角を左に……」
そうだ、現在地情報を送っておこう……
A組のグループトークと、あとは……
履歴の一番上、オールマイトの名前が目に入った。
「駄目です死柄木、逃げられました」
「クソッ!!またあのガキだ……!!緑谷……!!」
「一番速ぇMr.コンプレスはのびちまってるぜ!?俺たちじゃ追いつけねえよ!俺が行こうか!?」
「私が行きます!もっとお話ししたいのです!」
「あくまで目的はスカウトなのよね?誘う前に逃げられちゃったわよ?」
「……お前ら静かにしろ……」
「先生、逃げた二人の居場所は分かるのか?」
「……かもしれない……」
「……仕方がない……コレは
「こんな言い方したくないが……甘やかし過ぎじゃないのかね?」
「……可愛い弟子の頼みさ」
「弔、代わりに僕からも頼みがある」