「5km南のビルで爆発との通報です!!」
「5キロか……他のヒーローが先に着くだろうが……行こう、付いてきてくれ!!」
「はい!」
逃げ込もうとしたその事務所から、今まさに現場へ向かうところだったヒーローたちが飛び出してきた。先頭のリーダーらしき男性が、私たちに声を掛ける。
「――こんな時間に、迷子かい?すまないが中の受付に――」
「すぐにでも追ってくるかもしれねえ!!中に
「匿う……?」
「先輩!女の子……足が……!」
「っ!?」
ただならぬ気配を感じたのか、そのヒーローたちは立ち止まった。
「お嬢ちゃん、ひどい怪我じゃないか!!…大丈夫だ、すぐに病院に――」
「護衛は何人だ!?距離は!?」
「護衛……!?も、もちろん我々の中から付き添いで――」
「足りねえよ!他からも集めろ!」
「…!君たちは、雄英体育祭のときの……!」
「――ッ!今はンなこと――」
「かっちゃん!」
肩を叩いて呼びかける。
「かっちゃん落ち着いて、ちゃんと説明しないと……中に入ろう、ここは目立つから」
ソファに横たえられて、私はおとなしく会話を聞いていた。
「…俺たちは雄英高校1年A組、ヒーロー科の生徒だ。
「他に拐われた生徒は?」
「いない、俺たちだけだ」
「そうか……ありがとう」
「……付近のヒーローと警察に要請を、『敵はヴィラン連合、雄英生徒を保護した。事件現場だけでなくこちらの応援も頼みたい』……こう伝えてくれ」
「先輩、住民の避難はどうしますか?」
「避難誘導は目立つ、奴らの狙いである二人がここに匿われていることがバレたら元も子もない。ひとまず応援を待とう」
「了解です!」
「……さすがはプロって感じだね……指示も的確で……」
「……あんなん普通だろ」
足がズキズキと痛い……さっきまではそれほど痛くなかったのに……
それに、足だけでなく全身がだるいような気も……
「――二人とも、すぐに他のヒーローも駆けつける。そうなればもう安全だ」
「ありがとうございます……」
「病院へ行けるのは警察が到着してからになるだろう。もう少し辛抱していてほしい、ごめんね……」
「いえ、大丈夫です……」
ほどなくして、次々にヒーローたちが集まり始めた。事務所の外では周囲の警戒と住民の避難が行われ、中では私たちを囲むように6名ほどのヒーローが立っている。
その中の二人が、何やら話しているようだ。付近のヒーロー同士、知り合いなのかな……?
「これだけ集まれば充分だろ、早くあの子を病院に連れてやろうぜ」
「いや駄目だ、相手はヴィラン連合……『ワープ』の″個性″を持ったヤツがいる、知っているだろう?警戒に越したことはない。それに、もうすぐ警察も到着するはずだ」
「ワープってんなら、なおさら留まるのはマズくないか?」
「敵の数はそれほど多くない、我々で対応可能だ」
「……お前の管轄だ、従うよ」
「かっちゃん、大丈夫だよね……?」
「……俺を閉じ込めたヤツはお前が倒して、もう一人近くにいたヤツもかなり勢いよくブッ飛ばしてたからな。戦力はだいぶ削れてる……なにしろ森ん中でコソコソ狙ってきた連中だ、こんだけ守られてりゃあ安全だろ」
「――っあああッ!!!!」
「デコ!?おい!?」
頭が……痛い……痛い!!!割れそうなほどに痛い――
あまりの痛みに頭を押さえて、
「な、何があった!?」
「わかんねえよ!!おいデコ!!どうした!?しっかりしろ!!」
周りの声は聞こえず、意識が朦朧とする。
逃げなければ……!早く!!今すぐに!!ここから――
……頭痛が少しだけおさまり、ゆっくりと目を開いた。足を動かせないので、両腕で体を支えて上体を起こす。
……かっちゃんと、指揮してたヒーローの人……それともう一人……
それ以外に何も見当たらなかった。
「二人に当たらないように撃ったからだろうね……完全に一網打尽とはいかないか」
「いったい何が……これは……?私の事務所はどこに……」
「すまない、用があるのは君じゃないんだ」
――血が噴き出し、そのヒーローは目の前で倒れた。
「それにしても、不思議な感覚だ……見えていないのに、人影だけがはっきりと浮かび上がって視える」
救けなきゃ……
血が……血を止めないと……
「デコ……!やめろ、動くな……!」
「……ごめん……なさい……ごめんなさい…………私が、全部私が……ぁ……」
「かわいそうに……身も心もボロボロじゃないか。……さて、これだけ弱っていれば、あるいは……」
「やめろ!!クソッ!!近づくな!」
重々しいマスクを付けたスーツの男が、デコに向かって近づいていく。
何なんだコイツは……!!ふざけてやがる……!!
「爆豪くん、その子のことは僕に任せてくれ。君には
辺りに黒いモヤが現れて、その中から死柄木たちが現れた。
弔……死柄木のことか……!!じゃあアイツは……アイツの正体は……
「オール・フォー・ワン……テメェが……!!」
ヤツを含めて7人、完全に囲まれた……どうする……どうすればいい……?
……増援がくるはず……それまでどうにか……
「彼に言われたとおりに、街へ脳無を放ちました。死柄木……」
「ああ、手短に済ませよう……」
「ッ……!!」
「単刀直入に訊こう、俺の仲間にならないか?爆豪勝己くん」
問いかけには答えず、様子をうかがう……
視線の先に、マスクの男がしゃがみ込んで手を伸ばすのが見えた。
「――そいつに手ェ出したらブッ殺すぞ!!!!離れろクソ!!!!」
ヤツが倒れているデコの頭を掴み、悲鳴が聞こえた。
「やめろ……!!デコ!!!……ッ
BOOOM!!
爆発はモヤに防がれた。
「邪魔すんじゃねえ……!テメェらもブッ殺してやる!!」
「……なんだよお前、そういう感じか……じゃあ体育祭のアレは何だったんだよ……アイツを自分で散々痛めつけてたろ……」
「弔くんには少し難しいのです、好きってどういうことなのか!ステキです、私も――」
「もういい……気に入らない……いらないよお前」
――先程までとは違う、明確な殺気が向けられる。
依然として囲まれたままで、爆破も通用しない。
……ここまでなのか……?俺は……こんなところで……
「じゃあな、ヒーロー志望生……」
SMASH!!
地面に衝撃が走り、連中がバランスを崩す。俺は爆破で飛び上がって周囲を見渡した。
応援が来たのか?今のは誰が……?
――いや違う、ウソだろ……そんな……
「……お前がやったのか……?」
窪んだ地面の中心に降り立つ。
倒れたまま動かない。左腕が折れている。
「先生、そっちは任せろって言ったよな……?」
「いやあ……すまない、まだ動けるとは思わなかった」
「デコ……まだ意識はあるか……?聞こえてたら俺に掴まれ、一か八か脱出する」
聞こえていないなら 一人で戦うだけだ
「――もう大丈夫だ君達、私が来た!!」