オールマイトの拳が素手で受け止められて、その衝撃が広範囲に広がる。
「来ると思っていたよオールマイト……しかし、ずいぶんとラフな服装じゃないか」
「非番だったからな、貴様こそ何だそのマスクは?」
「二人を救け出し、そして今度こそ貴様を捕らえる!
「覚悟するのは君の方さ」
――ヤツの腕が不気味に膨れ上がり、見えない力によってオールマイトは吹き飛ばされた。直線上の建物が巻き込まれて崩れていく。
「オールマイトォ!!!」
「さてと……弔、ここは二人を連れて逃げるんだ」
「……先生、悪いが爆豪はもう必要ない……すぐにでも殺して、ヒーロー社会への見せしめにしてやる……」
「……好きにするといい……だが――」
再び飛びかかったオールマイトだったが、またしてもオールフォーワンに阻まれる。激しくぶつかり合う二人をよそに、死柄木らが俺たちに狙いを定めた。
俺の爆風が届かない距離感で、周囲に点々と黒いモヤが現れる。反応する間もなく、一瞬で囲まれた。
「――今行くぞ!!」
「させないさ」
こちらに向かおうとしたオールマイトが地面に叩きつけられた。そのまま投げ飛ばされて、オールフォーワンが追撃を仕掛ける。オールマイトが反撃するが、軽々と躱されてしまう。
――何が『もう大丈夫』だって……?なんだその情けねぇツラは……!!
そんなんじゃねえだろ!!あんたは……俺が憧れたのは……!!
「――オールマイト!!!」
「こっちは任せろ!!だから……勝て!!勝てやオールマイト!!!」
足引っ張ってたまるかよ、なぁそうだろ!?
「オール……マイト……?」
「デコ、自力で掴まれ!!両手空けねえと逃げ切れねえ!!」
折れている左腕を自分の肩に乗せ、右腕は脇の下を通させる。
「っ……!!」
「今は我慢してくれ!!」
「させませんよ、この包囲網から逃げられるとでも……?」
「……おとなしくソイツを渡して、殺されてくれ」
「黙れやカス共……!逆境を乗り越えるのが、ヒーローなんだよ……!!」
今までのような、ヤケクソの爆破には無駄が多い……
最大火力の爆風を、なるべく拡散させずに推進力へ変える。完璧じゃなくていい、少し方向を絞るだけ……それだけで劇的に変わるはずだ。
ワープ野郎の反応を上回る速度で飛び出す……振り切るまで何度もだ……!!
あとは隙を……
考えている間にも、包囲は少しずつ狭くなっていく。
……ダメだ、隙なんてねえ……
逃げるにしろ牽制するにしろ、最初の一手が一番警戒されている……俺の行動を見てから対応するつもりらしい……
なら、爆発の煙で姿を隠すか……?いや、周囲までは広がらねえ……無駄撃ちになるだけだ……
「……身元が判るように一部は残してやる、安心して死ね」
「テメェが死ね……!」
こんなとこで、くたばってたまるか……!
「……黒霧、やれ」
「しっかり掴まってろよ……!」
――突然、辺りに白い煙が立ち込める。
「ッ!?」
――何だ、この煙は!?
まさか、森に居たガス使いか!?だとすると、吸ったらまずい…!
死柄木とワープ野郎以外の4人のうち、どいつが……?
いや待て、なぜ今このタイミングで――
――胸部を締め付けられる痛みで我に返る。
BOOOM!!
爆破で斜め上に飛び出した。煙が周囲に広がっていく。
次の爆破で横に飛ぶと、その風圧で煙が掻き消えて、後ろにヤツらの姿が見えた。
ここだ、集中……!!
BOOM!!
目の前に現れた黒いモヤをギリギリですり抜ける。
もっと速く……!!
BOM!BOM!
まだだ……!!
そのまま夢中で飛び続けた。
……気が付いたときには更地を抜けていて、崩れかけの建物に囲まれていた。
手の痛みが限界だった俺は、瓦礫の隙間を見つけて、ほとんど落下するかのように降り立った。
「……痛ってえ……!!」
掌がズタボロだ、痛え……!
いままで強く締め付けていた腕の力が緩んで、背中を滑り落ちる感触があった。
「デコ!?おい!?」
完全に意識を失っている。
「もっと遠く、安全なとこまで……!もっと人手が――」
「――いたぞ!こちらに2名!」
「……うち1名は重傷だ、担架出せ!」
救急隊員らしき人物が、何人かこちらに向かってくる。
向かいは大通りのようだ……隙間からでも多くの警察官の姿が見えた。
「――今行くぞ!!」
「させないさ」
「それにしても、やはり弟子は師匠に似るものだね……後先考えずに、愚かにも一人だけで飛び出して来てしまう。君も、あの子も……結局一人じゃどうにもならないというのに」
「あの女もそうだった……先代継承者、志村菜奈……君を逃す為に、無様に死んだあの女さ」
「黙れ……!!!」
「しかしあの時とは違って……二人を逃すことすら叶わずに、君はここで死んでしまうわけだが」
「ッ…………!!」
「――オールマイト!!!」
「こっちは任せろ!!だから……勝て!!勝てやオールマイト!!!」
「……ああ、勝つさ……!必ず!!」
貴様だけは、この私が……!!
『限界だーって感じたら思い出せ、何の為に拳を握るのか』
『オリジンってやつさ!そいつがおまえを、限界の少し先まで連れてってくれる!』
たとえ残酷な運命が定まっているとしても、あと少し……この一瞬だけでいい
ワンフォーオールよ、私に力を……!
『皆が笑って暮らせる世の中にしたいです』
「UNITED STATES OF――」
SMASH!!!!
窪んだ地面の中心に黒い霧が漂い始め、その中から人影が現れる。
「おいおい先生、なんて
「でもなァ……今度は殺すって言ったもんな、オールマイト……言ったからには、最後までやり遂げないとな……」
「さあ、何か言い残すことは……?」
「志村菜奈という女性を知っているかい?」
「誰だよ」
「……そうか……」
……ならいいんだ……
知らないならそれで……
ナイトアイ……最期に、君に直接謝りたかった……つらい思いをさせてしまって、本当にすまない――
「……全然スッキリしないな……」
「まあいい、記念に一つ貰っていくか」
「……先生、あんたの自業自得だぜ?さっさと緑谷を殺していればよかっただけだ。俺はあんたの様にはならない」
「じゃあな、しばらくはバカンスを楽しんでくれ、先生」