「私は…………私たちは、これからもずっとそばで見守っているよ」
……オールマイト……?
目が覚めた時には全てが終わっていて
私は見届けることすらできなかった
「……ようやく起きたか」
「……ここは……?」
「病院だ、見りゃわかるだろ」
丸イスに座っていたかっちゃんが立ち上がり、ドアへと歩いていく。ドアを開けたまま外の誰かと軽くやり取りして、すぐに戻ってきた。
「軽く事情聴取だとよ。まあ、俺や他のヤツの証言で、てめぇの事件当日の行動は大体追えてる」
「…それはいいんだけど、その前に……」
「あれからどうなったの……?オールマイトは……」
本当は聞く前から分かっていた、オールマイトのことは……夢の中で会って、既に言葉を交わしていた。
「……勝ってたんだ、オールマイトは……なのによ、あのカス野郎、死柄木は……!」
かっちゃんが話してくれている間、私は俯いたまま黙って聞いていた。
「……夜明け頃、意識を失っているオールフォーワンを警察が拘束した。事件についてはここまでだ、それからは――」
「待って……!」
「あの人は……?私たちが逃げ込んだヒーロー事務所の、あの人……」
「…………」
「まだ、名前も聞いてなかったのに……」
「……昨日の明け方、行方不明になっていたラグドールが保護されて、同じくこの病院に運ばれてきた。これで一応は、合宿関係者は全員無事だったことになる。そして雄英からリカバリーババアが俺とお前を治療しに来た。その日の夕方、雄英が記者会見を開いた」
「一応無事とは言ったが、ガスをまともに吸った連中はまだ目覚めてねえ。ラグドールの方は酷く衰弱していて、その上″個性″が使えなくなっているらしい。詳しい検査はこれから別の病院でするらしいが……」
「個性が……それってまさか……」
「ああ、ヤツに盗られたと考えるのが自然だ」
「デコ、テメェは奪われなかったみてぇだが……どこまで覚えてる?」
「オールフォーワンに触れられて、そしたら痛みで意識が……オールマイトが来てくれたことと、必死でかっちゃんに掴まってたことは、なんとなく覚えてるけど……」
「あの煙は自覚なしか」
「……煙……?」
「いくら考えてみても、お前以外にありえねぇんだよ……あの瞬間あの場で、あんなことをする……できるヤツは。連中に囲まれた俺たちを隠すように広がって、逃げ出す隙を作り出した煙幕。十中八九、あの白い煙はオマエが出したものだ」
「私が……?」
「…………」
「個性が複数……それじゃまるで――」
コンコンとノックする音が聞こえて、ゆっくりとドアが開いた。
「塚内さんに、グラントリノ……」
「……爆豪くん、少しだけ外してくれるかい?」
「……オイオイ、俺はあんたら二人に、事情はもう知ってるって言ったよな?」
「しかし――」
「かっちゃん、何かあったら後で話すから」
「…………」
「夢の中で、オールマイトに会ったんです。長くは話せないと言って、私に伝言を託して消えていきました」
私が続ける前に、塚内さんが疑問を口にする。
「待ってくれ、君を信用してないわけじゃないんだが……本当にただの夢だったという可能性もあるんじゃないか?」
「前にも夢の中で、歴代の継承者に会ったことがあるんです。それに、ただの夢にしては伝言の内容が具体的すぎて……」
「死柄木弔は……オールマイトの先代、志村菜奈さんの孫だそうです」
驚いて固まるグラントリノを見て、私は思わず顔を伏せ、黙り込む。
そのまましばらく、二人の会話を黙って聞いていた。
「……私も、死柄木の捜査に協力させてください」
「……ダメに決まっとる」
「でも……!私がやらなきゃいけないんです……!」
「資格すら持っとらんヒヨッコを関わらせるわけにはいかん」
グラントリノの言葉に、塚内さんも頷く。
「……つまり、資格があれば……いいんですね……?」
私の問いかけに、二人は何も答えない。
「……そうだ、塚内さんの連絡先を私に教えていただけますか?」
「……ああ、構わないよ」
「それともう一つ、オールマイトに頼まれてて」
「『サー・ナイトアイ』に会いたいんですが……グラントリノ、連絡先知りませんか?」
「今は教えられん」
「……どうしてですか?」
「今は、そっとしておいてやってくれ」
「……分かりました」
二人が病室を出て、程なくしてかっちゃんが入れ替わるように入ってくる。
「……で?何話したんだ?」
「夢の中でオールマイトに会ったことと、そのオールマイトからの伝言について」
「……そんだけか?」
「うん」
かっちゃんも責任を感じている
でもこれ以上、かっちゃんを巻き込むわけにはいかない
私がやらなきゃいけない、後継である私が
私が必ず、死柄木を捕まえる……!!
「もうじきリカバリー婆さんがそっちに着く……念を押すが、絶対に病院から出歩くなよ」
「んなこたァわーってますよ、センセー」
待合室の固定電話を置いて、担任の相澤との電話を切る。
「……やっぱまだ痛ェな……」
包帯が巻かれた手を軽く握ってポケットに突っ込み、後ろの警官に向けてうなずいた。
病院内を歩くにも、いちいち護衛が付いてきやがる。ヴィラン連合は
デコの病室に着くと、ドアの前で佇む小さな影が見えた。
「何でテメェがここにいんだ?」
「…………」
今この病院に入れるのは関係者だけのはずなんだが……
……いや、おそらくラグドールに会うためにマンダレイが連れて来たんだろう。
「中入んなきゃ見舞いになんねぇぞ」
「右腕に軽度の火傷、左腕は骨折と刺し傷、右足全体を粉砕骨折、右腿にも刺し傷、左足も骨折」
見舞いに来たガキ、洸太がデコの怪我の具合を訊いてきたので答えてやると、どんどん顔が青ざめていく。
「だ、大丈夫なのか……?そんなにひどいケガ、ちゃんと治るのかよ……?」
「ああ、治る。今日ここに来る、雄英の婆さんの″個性″で、な」
「……その人なら、ラグドールのことも治せるのか……?」
「……それは無理だ、失った個性は誰にも戻せねぇ」
……おそらくはただ一人を除いて、と心の中で付け加えた。
「アイツらのせいで、いつもこうなる……危険だって、みんな本当はわかってるんだろ……?それなのになんで、ヒーローになんて……」
「分かってるから、ヒーローなんだろ」
包帯だらけで眠るソイツを見て呟いた。
前髪に隠れていて、額の火傷は見えない。
オールフォーワンは捕まったが、まだ終わりじゃねえ……俺が必ず落とし前つけさせてやる、死柄木……!!