デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

29 / 33
No.26 仮免試験

 

十日余りの訓練を終えて、仮免試験会場へとやってきたA組一同。他校の生徒も集まりつつある中、A組の円陣に勝手に加わる者がいた。

 

 

 

「大変失礼いたしましたぁ!!」

 

彼は夜嵐イナサ、雄英と並び称される屈指ヒーロー校、士傑高校の生徒である。

 

「東の雄英、西の士傑……」

「へー、有名なんだ」

「テメェまさか知らねえのか?」

 

「雄英以外はあんま調べてなくて……」

「……眼中になかったってか、とんだ大物だなァ?」

「いや、そういうわけじゃ……」

 

 

 

 

 

「おっ!イレイザーじゃないか!!」

 

二人が話しているうちに、今度は別の学校の生徒たちが近づいてきた。イレイザーヘッドと知り合いであるMs.ジョークに引率され、雄英生へと挨拶を交わす。

 

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ちだ、よろしくな!!」

 

 

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね」

「不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

「中でも、神野事件を中心で経験したそちらの二人……君たちは特別に強い心を持っている」

 

「……どうも……」

 

「今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

「フかしてんじゃねえ、セリフとツラが合ってねえんだよ」

 

「……お互い頑張りましょう」

 

握手を拒否した爆豪に続いて、出子も軽く頭を下げただけで握手には応じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「まずは、この場にいる受験者1540人一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます」

「現代はヒーロー飽和社会と言われ、事件発生から解決に至るまでの時間は今、迅速になっています。よって、求められるのはスピード!」

「条件達成者先着100名を通過とします」

 

 

体に取り付けたターゲット3つを狙ってボールを当てるのが試験内容となる。ボールはひとりに6個ずつ配られ、自分のターゲットに3つとも当てられたら脱落、最後の3つ目に当てた人が倒したことになり、二人倒した者から勝ち抜きとなる。

 

 

 

 

 

 

 

「かっちゃん、また後でね」

「……ああ」

 

「みんなも頑張ってね!!」

「緑谷くん!?」

 

戸惑うクラスメイトを置いて、彼女は行ってしまった。それに続くかのように、轟と爆豪がまた別の方向へ駆け出す。

 

「君たちまで!?……仕方がない、他の皆はこっちへ!」

 

 

 

 

 

 

 

試験会場には、山岳地帯、工業地帯、市街地など様々な地形を模したフィールドが用意されている。

そんな中……遮蔽物が一切ない、区域と区域の境界にあたる場所。出子はそこで開始の合図を静かに待っていた。

 

 

 

「雄英体育祭、準優勝の緑谷だな?何故一人なのかはどうでもいい……」

 

大勢に囲まれて(なお)、彼女は焦る様子もない。

 

「身軽な動きに、近接の体術……そして何より、地面を深く抉るほどの超パワー」

「でもねぇ……スピードに関しちゃ、追えないほどの速さじゃない。これだけの数は相手にできないだろう?それに……」

「身体を壊さずに出せる威力は、それほど大きくはない!」

 

『スタート!!!』

 

 

 

「――フルカウル、30%!」

 

さらに彼女は、踏み込む一歩目を50%に上乗せし、攻撃の瞬間は腕だけを5%に落とす。そうして瞬く間に、次々に鳩尾へ拳を叩き込み、彼らをあっさりと返り討ちにしてしまった。

倒れた一人ひとりにボールを当てていく。

 

「他の子に獲られないように全員脱落してもらうけど、先に狙ってきたのはそっちだから恨まないでね?」

 

 

 

『早速一人目の通過者です!脱落者は……なんと10名!!……他はどこも膠着状態のようです』

『通過した方は控室へ移動して下さい』

 

 

 

 

 

控室に向かう途中、出子はふと振り返る。会場がわずかに揺れるのを感じて、しばらく立ち止まってまた歩き出した。

 

『さらに二人目の通過者!!一人で120人を脱落させたようです!!』

「120人はやり過ぎでしょ……」

 

 

 

 

 

「おおっ!?アンタは雄英の!さすがはトップ校、すげーっス!」

「はあ……どうも……」

 

控室にて、二人目の通過者である夜嵐に話しかけられ、出子は少し困った様子で返事をする。

 

「今回はアンタの勝ちだけど、次は負けねえっスよ!!」

「次っていっても、受験者同士で何回も競わせるとは限らないんじゃ……」

「それもそうだな!!」

 

 

 

「じゃあ、また今度よろしく!!……やあアンタ!俺は・・・」

 

次々に新しい通過者へ話しかけに行く彼を、出子は苦笑いで見送った。

 

 

 

 

 

そして通過者が定員の半分を超えたころ、轟が控室に現れた。

 

「あ、轟くん!」

「緑谷、まだお前だけか」

「そうなんだよね……思ったよりみんな遅くて……」

「…………」

 

会話が切れて夜嵐のことを見つめる轟に、出子が問いかける。

 

「……あの人がどうかしたの?」

「……アイツとは推薦入試で会ってるはずなんだが、思い出せねえ」

「うーん、そっか」

 

轟には話しかけに来ない夜嵐を不思議がる出子だったが、それ以上は何も言わなかった。

 

 

A組の中で次に控室にやって来たのは、八百万・耳郎・蛙吹・障子の4名。さらにその後、爆豪・切島・上鳴もやって来た。

 

 

「かっちゃん!やっと来た、遅かったね!」

「……糸目男とイカレ女がダル絡みしてきやがった。……それよりデコ、てめぇ本物か?」

「……どゆこと?」

「……なんでもねぇ」

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな通過できて良かった!!」

 

通過枠残り20人の時点で雄英A組は11人も残っていたのだが、終盤で合流に成功し、なんとか全員通過を果たした。

 

 

 

 

 

『次の試験がラストです!通過した100名の皆さん、まずはこちらをご覧ください』

 

モニターに、先程のフィールドが映し出される。直後、凄まじい爆発が立て続けに起こり、一帯はガレキの山に変わってしまった。

 

「っ……!」

『皆さんにはこの被災現場で、救助演習を行ってもらいます』

 

映像を観ていた出子が、口元を抑えてうずくまる。

 

「……そんなんでヒーロー務まんのか?」

「……ごめん、大丈夫……大丈夫……」

「……しっかりしろよ、今は怪我してねぇだろ」

 

 

 


 

 

 

『ヴィランによるテロが発生!建物倒壊により傷病者多数!』

 

二次試験開始の合図で、100人の受験者たちはフィールドに散らばっていく。

そして爆豪ら3人は、山岳地帯にて要救助者を発見した。

 

 

 

「腕を怪我したの!」

「助けてくれ!」

 

「うるせえ!!自分で助かれや!!」

「はああ!?」

 

「自己流貫きすぎだろ!」

「すげえ大怪我してるかもしんねえだろ!」

 

「自力で歩けてるやつが大怪我なわけねェだろが!!ナメてンのか!?そんなに構いたきゃテメェらで勝手にやってろ!!!」

 

そう吐き捨てると、爆豪は真上に飛び上がる。

 

「爆豪!?どこ行くんだよ!?」

 

「避難先が安全とは限らねぇだろアホ」

「アホ言うなって!!オイ!?」

 

彼は周囲を見渡した後、そのまま飛び去ってしまった。

 

 

 


 

 

 

BOOOM!!

 

開始から少し経ったころ、突然大規模な爆発が起こった。立ち込める黒煙の中から姿を現したのは、ヒーロー番付10位の『ギャングオルカ』と、そのサイドキックたち。オルカの個性は『シャチ』で、その名の通りシャチの特徴を備えている。

 

 

「――ギャングオルカ!!」

「何ッ!?」

 

爆発で壁に空いた穴、そこから現れたヴィラン役の彼らの元には、早くも出子が到着していた。

会場へと散開するサイドキックたちをすり抜け、ギャングオルカへと向かっていく。

 

『ヴィランが姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補者はヴィランを制圧しつつ、救助を続行してください!!』

 

「シャチョー!!」

 

部下が撃つセメントガンを軽々と避けて、彼らには目もくれずにさらに距離を詰めていく。

 

オルカの超音波攻撃を拳の風圧でタイミングよく相殺し、そのまま上段蹴りを放った。オルカはその場から動かずに腕でガードする。彼女が再び体勢を整えて、すさまじい気迫と共に拳を握りしめたそのとき……

 

 

 

「……合格だ」

「……うぇ!?」

「他の者の評価に差し支える、あとは救護に回ってくれ」

 

そう言うと、動きの止まった彼女を掴んで投げ飛ばした。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

「是非とも続けたかったが……ハンデ込みではとても相手になれん」

「さて……」

 

 

 


 

 

 

ヴィランの元へ駆けつけたが、言い争いを始めてしまった轟と夜嵐。二人の連携が取れずに風に流された炎が、近くにいた真堂の方へ向かっていく。

 

 

 

「――何してんだテメェらァ!!」

 

 

 

ギリギリのところで、爆豪が彼を連れ去った。

真堂を片腕で抱えた爆豪は、もう片手の爆破で飛び続ける。そして、思うように身体を動かせないらしい彼を見てつぶやいた。

 

「えらく元気そうじゃねェかフサ髪よぉ」

「うるせえなぁ!!隙うかがってたってのによ、あの二人のせいで台無しだ!!」

 

「最初からその調子でこいっての」

 

二人が地面に降りると、真堂は向かってくる部下たちの方向へと個性を発動し、地面がひび割れる。

 

「足は止めたぞ、奴らを片付けろ!」

「指図してんじゃねえ!!」

 

言い返しながらも、爆豪はその言葉の通りに向かっていく。集まりつつある他の受験者も加わり、足並みが崩れたヴィランたちを打ち倒していく。

 

 

 

一方で轟と夜嵐は、二人とも超音波の攻撃を受けながらも土壇場で協力体制に入り、ギャングオルカを炎の渦に閉じ込めた。

しかしオルカは、悠々と衝撃波でそれをかき消し、轟と夜嵐に向き直る。

 

「で?次は?」

 

――BOOM!!

 

「次は俺が相手してやるよ、No.10!!」

「ほう……」

 

 

 

――ビビーーッ!!!

大音量でサイレンが鳴り響く。

 

 

 

 

『救助が完了しましたので、試験終了となります!!』

 

 

 

 

 

「はあァァ!?ざけんなクソ!!こっからだろオイ!?」

 

『集計後に合否を発表しますので、着替えてお待ちください』

 

不満げな爆豪をよそに、アナウンスは淡々と終了を告げた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。