デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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念のため
爆豪のヒーロー名についてアニメ派ネタバレ注意


No.28 サー・ナイトアイ事務所

 

 

個性は身体機能の一つであり、肉体の成長とともに個性も成長しうる。

しかし逆に、個性が衰えることがあるのもまた事実である。その原因として老いや怪我、病気、あるいは強いストレスなどが考えられる。

 

「サー、体調がすぐれないのでしたら、お休みになったほうが……」

 

「彼は最後まで戦い続けた。ならばこそ、私もこの程度で休むわけにはいかない」

 

 

 

テレビやネットニュースでは流れない、その瞬間を捉えた映像。平和の象徴が文字通りバラバラに()()()()()衝撃的な映像は、さまざまな動画サイトにアップされては削除されてを繰り返している。

 

それを、自分だけが事前に見てしまっていたとしたら?

死にゆく彼を止めようとも、尚も歩みを止めないとしたら?

 

 

 

『これ以上ヒーロー活動を続けるなら、私はサポートしない。出来ない……したくない……!』

『見たのか……私の事は見なくてもいいって言ったはずだろナイトアイ……』

 

『このままじゃ予知通りになるんだよ!それは駄目なんだ!私はあなたの為になりたくて、ここにいるんだオールマイト!!』

『私は世の中の為に……ここにいるべきじゃないんだナイトアイ』

 

『このままいけばあなたはヴィランと対峙し、言い表せようもない程凄惨な死を迎える!!』

『…………』

 

 

 

一体誰がその絶望を理解できるだろうか。

 

 

 

『サー・ナイトアイ』の個性は″予知″。触れた人物の未来を見ることができる。

一日に一人、一時間のあいだ未来を自由に見ることができたのだが、それは以前の話、今の彼が個性を発動し続けられる時間は一日に十分程度である。

 

 

 


 

 

 

「サー、ホシに動きがありました!」

 

「現場に血痕を拭い取った形跡があり、建物の損壊も激しいことから、おそらく交渉は決裂したものかと……」

「…………」

 

「……かと思われまぁす!!」

 

ナイトアイの暗い表情を見て、バブルガールが取ってつけたかのように声を張る。

 

「内容は以上です!!」

「元気があってよろしい」

 

彼女が報告を終える頃、部屋をノックする音が響いた。

 

 

 

 

 

「おはようございます!!サー、インターンの希望生が来てますよ!!駅で会って一緒に来たんでね!!…さあ、入って入って!!」

「ミリオくん、その子って確か……」

 

 

 

「初めまして、雄英高校ヒーロー科1年A組、緑谷出子です」

 

「……バブル、ミリオ、二人は退室を」

「「……イエッサー!」」

 

 

 

 

 

 

 

「……いつか会うことになるだろうとは思っていた」

 

「心より敬愛するオールマイトだが、後継の件に関しては彼の唯一の誤りだ。その力にはもっと相応しい人物がいる」

「…それが通形先輩、ですか」

 

「貴様の体格では、いくら鍛えたところで完成には至らない。その歳では、ほとんど成長も止まっているのだろう?」

「よけーなお世話ですよ!!」

 

冗談めかして胸元を押さえる出子だが、ナイトアイは目を合わせたまま微動だにしない。

 

「……今はまだ、この力を手放すつもりはありません」

 

「駄々をこねる子供に付き合っている余裕はない。象徴亡き今、人々は微かな光ではなく眩い光を求めている」

 

 

 

 

 

「……現場で実感するがいい、誰がその力に相応しいのか」

 

「書類を」

「……は、はい、ええと……」

「返事は元気に、行動はテキパキと」

「っはい!お願いします!」

 

ナイトアイが渡された書類に目を通していると、思い出したかのように出子が口を開く。

 

 

 

「……そうだ、忘れるところでした。ナイトアイ、オールマイトからあなたへ、伝言を頼まれたんです」

「伝言だと?あの時の彼にそんな余裕は――」

 

 

 

「『直接会って謝りたかった。つらい思いをさせて、本当にすまない』……と」

 

 

 

「……そんな言葉が聞きたかったんじゃない、私はただ、あなたに……」

 

 

 

 

「……少し一人にしてくれ」

 

 

 

 


 

 

 

 

そして翌日……

 

 

「本日はパトロール兼監視……私とバブルガール、ミリオと緑谷の二手に分かれて行う。監視のターゲットは、指定敵団体の

死穢八斎會(しえはっさいかい)』」

 

ナイトアイが一枚の写真を取り出す。

 

「若頭の『治崎』という男が、妙な動きを見せ始めた」

「最近、あのヴィラン連合とも接触をはかったみたいなの」

「ヴィラン連合と……」

 

 

「ともかく、今回狙うのは犯罪行為の証拠……証拠がなければこちらは動けん。くれぐれも気取られぬように」

 

 

 

 

 

 

 

「そういやさ!お互いヒーロー名聞いてなかったよね!」

 

「『デコ』です!」

「目立ってるよね!!」

 

「俺は『ルミリオン』!」

「オシャレでカッコいい!」

 

 

こうしてパトロールをしていた二人であったが、途中ふと出子が横道の方を向く。

――小さな人影が飛び出してきた。

 

 

「――わっ!っと、大丈夫?」

「っ……!」

 

「急に飛び出したら危ないよ?でも怪我しなくて良かっ……」

 

抱き止めたその女の子を見て言葉を切る。

手足に巻かれた包帯、伸びっぱなしでボサボサの髪、何も履いていない裸足の少女。

 

「ダメじゃないかヒーローに迷惑かけちゃあ。帰るぞ、エリ」

 

暗い路地から声がした。

 

 

 

 

「うちの娘がすみませねヒーロー、遊び盛りでケガが多いんですよ。困ったものです」

「……それは大変ですね、私も小さい頃はよくケガをしたもので……」

 

出子はその男の方をチラリと見て、すぐに少女へと視線を戻す。

代わりにミリオが話を続ける。

 

「その素敵はマスクは八斎會の方ですね!ここらじゃ有名ですよね」

「マスクは気になさらず……汚れに敏感でして」

 

「どこの事務所所属なんです?」

「まだ学生ですよ、所属だなんておこがましいくらいで……」

 

「では我々、昼までにこの区画を回らないといかんので!行こうか!」

 

 

「……いかないで……」

 

出子の表情は陰になっていて見えない。

 

「あの……この子のことで、何かお困りなのでは?」

「……と、言いますと?」

 

「なんだかこの子が怖がってるみたいで……」

「……叱りつけた後なので」

 

「……子育ては大変ですよね!」

 

 

 

 

「……ごめんね……あとで必ず……迎えに行くから……」

 

 

 

 

 

「もしよろしければ、お近くのヒーローにご相談くださいね」

 

出子が顔を上げて、抱いていた少女を離す。

 

 

 

「……お気遣いどうも、さあ行くぞエリ」

 

 

 

 

 

「……俺たちも行こうか」

 

 

 

 


 

 

 

 

二日後……

 

「切島!爆豪!おまえら、ネットニュースにヒーロー名のってるぞ!」

 

新米サイドキック烈怒頼雄斗爆誕!

初日から市民を背負い単独敵退治!

 

空飛ぶベストジーニスト!!

新人サイドキックの名はダイナマイト!

 

「『大・爆・殺・神 ダイナマイト』だ!勝手に略しやがって!!」

 

「だせェ」

「記事書いた人に感謝だな!」

「あ゙あ゙!?」

 

睨み付ける爆豪をよそに、瀬呂と上鳴が続ける。

 

「大きく写ってる切島に比べて、爆豪はベストジーニストのオマケって感じだし……それにこの写真じゃ、ダイナマイトってよりかロケットエンジンだな」

「つまり噴射し終えたら用済み?」

「ブッ殺すぞ!!」

 

「…………」

 

同じくニュースになっていた蛙吹・麗日二人の話題も含めて盛り上がるクラスの中で、出子はひとり静かに自分のスマホをぼんやりと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、サー・ナイトアイ事務所にて

 

 

「……それでは、情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

 

死穢八斎會(しえはっさいかい)の捜査のために集まった多くのヒーローたちの前で、ナイトアイが現状を語り始めた。

 

調査のきっかけとなった強盗団の事件、ヴィラン連合との接触を始めとする勢力拡大を狙う動き、そして協議の内容は核心に近づいていく。

 

八斎會と接点があると思われるグループを拘束した際のことである。個性を一時的に強化する違法薬物の他に、今回初めて確認された″個性を壊す弾丸″。

その中身には、人間の血や細胞が入っていたという。

 

「治崎の個性はオーバーホール、対象の分解と修復が可能です。そして治崎には娘がいる。この二人が遭遇した時には、手脚に夥しい量の包帯が巻かれていた」

 

 

 

 

 

「こいつらが子ども保護してりゃ一発解決だったんじゃねーの!?」

「……街中での突発的な戦闘は被害が大きくなる。それに相手は一人ではなく組織です。あの場で動くのはリスクが大き過ぎた」

「そりゃあ立派なご意見だ」

 

「全ては私の責任だ、二人を責めないで頂きたい」

 

 

 

 

「今度こそ必ず、エリちゃんを保護する!!」

「……それが私たちの目的になります」

 

 

 

 

 

少女の居場所を特定でき次第作戦決行、その為に再び調査を行うというナイトアイに対し、慎重すぎるのではないかという意見が挙がる。

 

 

 

「どういう性能かは存じませんが、未来を予知できるなら俺たちの行く末を見ればいいのでは?」

 

「……それは出来ない」

 

「……例えば、その人物に近い将来」

「死……ただ無慈悲な死が待っていたら、どうします」

 

 

 

サー・ナイトアイは、オールマイトの元サイドキックである。彼の発言と表情から、その場にいる者のほとんどが、「ナイトアイはオールマイトの死を事前に見てしまっていたのではないか?」という思考に行き着くのは自然な事だった。

 

 

「私の予知は、占いとは違う」

 

「ご協力よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

会議後、雄英インターン生が集まる別室に相澤が訪れる。

 

「先生!」

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ」

 

そして、相澤は自分の生徒へと、インターン中止を提言する予定だったと告げる。

 

「連合が関わってくるとなると話は変わってくる。特に緑谷、お前はな」

「…………」

 

相澤は、出子がグラントリノと塚内に、自身をヴィラン連合の捜査に加えるように頼んだことを知らない。

しかし、彼女が連合に執着していることは察しているようだ。

 

「今回はあくまで、エリちゃんという子の保護が目的、それ以上は踏み込まない」

「……はい」

 

「切島、麗日、蛙吹、お前たちもいいな?」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雄英の食堂にて

 

「……食うならさっさと食えや」

「……え?……あ、うん」

 

目の前の食事に手も付けず一人で座っていた出子は、隣の席にやって来た爆豪に向けて小声で話しかけた。

 

「……今日はジーニストさんのとこ行かなかったんだ」

「そう何日も行けるかよ、アイツの顔見るだけでイライラする」

「ええ……」

 

「インターン、テメェは結局ほとんど行ってねえらしいな?」

「……うん」

「どうせ何かやらかしたんだろ」

「……詳しいことはほら、守秘義務とかあるから……」

「あっそ」

 

「……そうだ、代わりにかっちゃんの話聞かせてよ」

「あ?……ああ……」

 

 

 

 

 

「俺のヒーロー名聞いてアイツ、『考え直さないか?』だとよ。ふざけやがって」

「私もそう思うよ」

「は?」

 

 

 

 

 

「現場に着いてすぐ、アイツが俺を(ほど)いて飛び降りてった。俺は見せ場を奪ってやるつもりで飛び出したんだが……」

「勝負はほんの一瞬で、付け入る隙なんてなかった。ジーパン野郎はいけ好かねぇが、実力は圧倒的……アイツの間合いに入ったら、誰だろうと一瞬で()()だ」

 

「ベタ褒めだね」

「……ちげぇわ客観的な評価だ」

 

「アイツ、事あるごとに俺をグルグル巻きにしやがんだよ、クソムカつく」

「光景が目に浮かぶね……ふふっ」

「笑い話じゃねぇンだが?」

 

 

 

 

 

「撮影!?ジーニストさんと一緒に!?」

「ああ」

「何て雑誌?」

「……覚えてねぇ」

「絶対ウソだ!かっちゃん、写り方とか意外と気にするタイプだし!」

「うぜえ」

 

「ねぇ教えてよー!」

「絶対ェ教えねー」

 

 

 

 

 

 

「――あれ!?もうこんな時間!?授業始まっちゃう!!」

 

「あとで私のことも話すからね!」

「別に聞きたかねーわ」

「まあまぁそう言わずに……そのときは、またかっちゃんのことも聞かせてね?」

「……ヒマだったらな」

 

 

 


 

 

 

そして、会議から二日後の深夜、インターン生含む会議出席者に連絡が入った。

決行は翌朝である。

 

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