デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.29 エリちゃん救出作戦

 

「もしもし、どうしました?」

「急で悪いが俺は行けなくなった」

「え……?」

「連合の捜査の方で有力な目撃情報があってな、塚内とそっちに向かわにゃならん」

「……そうですか」

 

「……おまえさんは今やるべきことに集中せい、そっちも重要な案件には変わらんだろ」

「……はい、報告お待ちしています」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「本拠地にいるぅ!?」

 

 

当日の朝、ナイトアイ事務所では作戦前の最後の会議が行われていた。

 

 

 

 

「八斎會の構成員が先日近くのデパートにて、女児向けの玩具を購入していました」

 

「そういう趣味の人かもしれへんやろ!世界は広いんやでナイトアイ!」

「いえ、そういう趣味を持つ人間ならば確実に言わないセリフを吐いていた」

 

 

 

 

 

ナイトアイがその男の言動に違和感を覚えたため、予知を発動し、保護対象の女児の所在を確認したとのことだ。

 

またナイトアイは、自身の個性について『フラッシュバックのように一コマ一コマが脳裏に映される。分かりやすく言えば、他人の生涯を記録したフィルムを見られる』と説明している。

 

 

「私の個性が衰えている都合上、多くのコマを飛ばして見ることで何とかエリちゃんの元に辿り着くことができた」

「じゃあ道合ってんのか分かんねぇのか!?」

 

「記憶力には多少自信がある、どの角を曲がるのか把握しているので問題ない」

「……不安だなオイ」

 

 

 

 

 

午前8時、作戦会議を終え、警察署前にて警察と合流したヒーローたちに、八斎會員の登録個性についてまとめたリストが配布された。

 

「緑谷、俺はナイトアイ事務所と動く、意味わかるな?」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

8時30分、八斎會邸宅の前には、大勢の警察官と20名ほどのヒーローたちが並んでいた。

 

場を仕切る刑事が、インターホンを鳴らして令状を読み上げようとした時だった。

 

 

 

「――っ危ない!!」

 

突如、常人の倍以上の背丈がある大男が、己の拳で玄関を突き破ってきたのだ。

巻き込まれた隊員が3名、空中に投げ出される。出子が空中で二人を両脇に抱えて着地し、イレイザーヘッドが残りの一人を捕縛布で救出した。

 

大男の相手を、プロヒーローの一人であるリューキュウとそのサイドキックらが引き受け、他のヒーローと警察は邸内へとなだれ込んでいく。

 

 

 

 

 

「違法薬物製造・販売の容疑で捜索令状が出ている!」

 

 

 

組総出での抵抗により、敷地内では乱闘が巻き起こっていた。

制圧は他のヒーローと警察に任せて、ナイトアイらは奥へと向かっていく。

 

 

 

 

 

「ここだ」

 

通路の途中に、掛軸と生花が飾ってある。ナイトアイはそこで立ち止まると、花瓶を脇に寄せて壁を調べ始めた。

 

「このあたりに、地下へ向かうための仕掛けがしてあるはずだ」

「その仕掛けってのは?」

「そこまでは分からない」

「オイオイしっかりしてくれよ!?」

 

 

 

「……皆さん下がって!」

 

出子の呼びかけにナイトアイが花瓶を持って距離を取ると、皆従って壁から大きく離れていった。

 

 

「30%……デトロイトスマッシュ!!」

 

花瓶が置いてあった場所を狙って拳を振り下ろす。

轟音と共に建物全体が揺れ、隠されていた地下への階段が瓦礫の中に姿を現した。

 

「からくり屋敷も形無しですねぇ」

「待て、誰か倒れている」

 

巻き込まれたのか、男達が3人ほど倒れていた。

瓦礫を取り除く出子の横から、確認のためにバブルガールとセンチピーダーの二人が駆け寄っていく。

 

「一応これでも加減したので、無事だと思います」

 

「……ええ、気を失っているだけです」

「……サー、指示を」

 

「拘束は警察に任せて我々は先を急ごう」

 

 

 

 

 

 

 

 

地下の道を進む途中、通路を塞ぐ壁を難なく破壊した一行だったが、そこで更なる妨害を受けてしまう。

 

「道がうねって変わっていく!!」

 

八斎會本部長であり、物体に入り込んで操る個性を持つ入中が、個性ブースト薬の使用によって地下そのものに入り込んで道を作り変えてしまったのだ。

 

「こんなん相当身体に負担かかるはずやで……イレイザー消せへんのか!?」

「本体が見えないとどうにも――」

 

一行が焦りを隠せない中、ルミリオンがひとり前に出た。

 

「どれだけ道を歪めようとも、目的の方向さえわかっていれば、俺は行ける!」

 

「先に向かってます!」

 

 

 

 

 

「――私も行ってきます!!」

「――っ緑谷!?」

 

壁の中へと消えていったルミリオンに続いて、出子が飛び出す。

 

「はあっ!!」

SMASH!!

 

塞がれた通路をこじ開けたものの、すぐにその穴を埋めようと周りの壁が膨らんでいく。

 

「――緑谷!!お前また――」

「――イレイザーヘッド!!」

 

「保護が最優先!!」

 

 

彼女はそう言い返すと、狭まる通路をギリギリでくぐり抜けていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ルミリオン・デコの二人が先行し、サンイーター、ファットガム、レッドライオットが離脱。

 

現在地下を進んでいるのは、サーナイトアイ、バブルガール、センチピーダー、イレイザーヘッド、ロックロックのプロヒーロー5名と、数名の警察官である。

 

 

 

 

「壁が迫ってくる!圧殺されるぞ!!」

 

「本締めはそう何箇所も締めれねえ!!仮締めしとくから各自で踏ん張れ!!」

「こんちきしょおぉぉお!!」

 

一行を押し潰そうと迫る壁を、ロックロックが自身の個性で固定して防いでいる。しかし強度が足りていないのか、数名が壁を素手で押す様子が見られる。

 

「パワーあるヤツが一人でも残ってりゃあなぁ!?イレイザー!!」

「わかってる!」

 

彼は迫る壁や天井を見回すが、入中の姿は見当たらない。

 

「このままじゃジリ貧だぞ!!ナイトアイ!!」

 

「……ファットガムの見立て通りなら、個性ブースト薬の副作用で向こうの消耗も激しいはず……このまま耐えていれば、(ある)いは……」

 

「このまま耐えるだと!?正気か!?」

「サー!もう限界ですぅう!!」

 

 

 

 

 

――突然、迫っていた壁が引いて戻り始める。

そして間髪入れず、天井から壁が降りてくる。

 

「うおッ!?」

「ロック!!」

 

イレイザーヘッドとロックロックの二人は、転がり込むように避けて立ち上がった。

壁は一行を分断して、隙間なく二人を閉じ込めている。

 

「……無事か!?」

「やかましい!もともと誰のせいで――」

 

――背後に迫るナイフを、ロックロックが手のひらで受ける。

 

 

 

「お前は!?ヴィラン連――」

「ロック!!」

 

いきなり現れたトガヒミコへ向けて彼が拳を振り抜く瞬間、ロックロックの背後に迫るもう一人の影を、イレイザーの捕縛布が絡めとった。

 

「渡我被身子!!」

 

引き寄せる瞬間、トガがピンと張った捕縛布に手をついて飛び上がり、空中で軌道が変わる。

イレイザーヘッドの頭上を通り過ぎると、ゆるんだ拘束から脱出すると同時に、その背中にナイフを突き立てた。

 

 

「イレイザー!!」

 

ロックロックの足元では、偽物のトガがドロドロに溶けて消えていく。

 

「……バイバイ」

「オイ待て!!」

 

詰め寄る間もなく、トガは降りてきた壁の向こうへと去っていった。

 

 

 

 

「ゴクドーさん、分断ヘタクソです。一人ずつにしてもらわないと奇襲の意味がありません。……こんなとこ、来るんじゃなかった」

 

 

 

「おいイレイザー」

 

「そこまで深くはない……そっちは?」

「手のひらに穴開けられただけだ、ありがたいことにな」

 

 


 

 

『やっちゃってくださいよ乱波の兄貴ィ!』

 

 

イレイザーヘッドとロックロック、ナイトアイと警察ら、そしてセンチピーダーとバブルガールの3組に分断された一行。

壁の近くで、センチピーダーが呟く。

 

「向こう側の声が聞こえる、壁はあまり厚くないな。分断したところを叩くつもりなのだろう」

「つまり、ここにも新たな刺客が!?」

 

「甘く見てると痛い目見ますよ!!さあかかってこい!!」

「……少し静かに」

「え?」

 

「……何やってんすか……?」

「…………」

 

センチピーダーは、頭を壁にピッタリと近づけている。いや、正確には、自身の触角をしきりに壁に触れさせることで様子を窺っているようだ。

異形型の『ムカデ』の個性を持つ彼は、ムカデの胴体のように長い両腕に加えて、ムカデの特徴でもある触覚と大顎も備えている。

 

 

『これだからヤクザは絶滅寸前になるんだよ!』

『どうせきっと、寝たきりの組長さんがしようもなかったんでしょうね』

 

 

 

『キエエエァ!!!』

 

響き渡る奇声とともに、周囲の壁や天井が滅茶苦茶にかき回され始めた。分断していた壁も消え、一行は傾く床を滑りながら互いの姿を視認する。

 

「サー!」

 

不安定な足場の中、センチピーダーがナイトアイの元へと駆け寄っていく。

 

「今ので正確な位置が分かりました!――」

 

センチピーダーが耳打ちすると、ナイトアイはすぐに指示を出した。

 

「センチピーダー、私とイレイザーを投げ飛ばしてくれ!」

「しかし、それでは高さが足りな――」

「イレイザーは布の端をロックロックに!」

 

声を聞きつけて寄ってきていたイレイザーヘッドが、瞬時に意図を察して指示に従う。

 

センチピーダーが両腕を伸ばし、その長い腕で二人を巻き取ると、先にイレイザーヘッド、次にナイトアイという順番で空中へと力任せに放り投げた。

 

常人よりも力強いとはいえ、当然ながら入中の潜む天井までは届かない。

 

空中でイレイザーが、更に上へと捕縛布を飛ばす。

捕縛布の先端がたわんで、重力に負けて落下を始めようとした瞬間……

 

「施錠!」

 

まるで時が止まったかのように、波打つ捕縛布がそのままの形で固定された。

その捕縛布に飛び乗ったナイトアイが、即席の足場を駆け上がっていく。

 

十分に近づいたところで、彼は両手に二つずつ、合計四つの押印を同時に投げつける。

 

押印は四隅を正確に撃ち抜き、周囲が崩れて入中が姿を現した。イレイザーの抹消で個性を消されて、落下し始めた入中に、ナイトアイがとどめの押印を放った。

 

両腕を目一杯に伸ばしたセンチピーダーが、入中を受け止める。

イレイザーとナイトアイが、固定された捕縛布を伝ってゆっくりと地面に降り立った。

 

 

 

「サー!?ご無事ですか!?」

 

「……らしくない、危ない橋を渡ってしまった」

「橋ってよりか階段だったがな」

「入中がヴィラン連合の二人に気を取られていなければ、あそこまで近づけなかっただろう……即興の作戦とはいえ、あまりにも……」

 

「そう、ヴィラン連合だ!まさか現れるとは……!」

 

刑事がその名に反応を示す。

 

「指名手配中のヴィラン連合を、我々としては無視できん……!」

「…………」

 

 

 

 

「連合の方は警察に任せりゃいい!俺たちの目標は何だ!?」

 

「それによ、あんたら……先に行ったガキどもが心配でたまらねえって顔してるぜ?」

「「…………」」

 

 

 

こうしてプロヒーロー5名は、拘束された入中と警察を置いて、奥へと再び駆け出していった。

 

 

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