デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.3 夢へ羽ばたけ、入学試験!

 

「そういえばかっちゃん、オールマイトからのノートって何書いてたの?」

「教えねー、気になるなら渡す前に覗けよ」

「いやあ、なんだか悪いかなって」

 

6月、砂浜にはたまにかっちゃんが来るようになった。

 

「ねえ、休憩中だし……組手でもしない?」

「頭イカレたか?言ってることメチャクチャだぞ」

「……?下は砂だから怪我しにくいよ?」

「そこじゃねぇ」

 

なんだかんだ言いながら、2人とも立ち上がる。

 

「″個性″は?」

「うーん、かっちゃんのためにもなるように、″アリ″で」

「……ああ」

「…私からいくよ!」

 

開始の間合いは約2メートル、まずは詰める!かっちゃんが右手を振りかぶる、しっかり見て……来る!

牽制の爆破を低姿勢で躱し、そのまま足払い!軽く跳ねて避けられた。次の爆破が来る、避けるには……上体はまた低く、腰の捻りを活かしてハイキック!これは腕でガードされた。あっ……

足を掴まれた。

 

「終いだな」

「おおっ!」

 

急に手を離されて、バランスを崩す。

″個性あり″のときは、かっちゃんに掴まれたらそこで終了。実戦になったらどのぐらいの火力で爆破するのかな……?

 

「避けると思って蹴ったのに……」

「ああ、痛え」

 

かっちゃんは、ガードに使った左腕をさする。

 

「次、″個性なし″だ」

「…そりゃどうも」

 

わざわざ個性なしを提案してくるのは、完璧主義が過ぎる。

 

まずはもう一度、挨拶がわりのハイキック!身を引いて躱される。

 

「ワンパターンだな」

「はあっ!」

 

そのまま距離を詰めて、左ストレート!軽く避けられて、右の拳が飛んでくる。ギリギリで倒れ込むように躱して、地面に手を付き左の蹴り!これも避けられて再び距離が空く。

 

「かっちゃんも右ばっか、人のこと言えないよ。今の左のキックはどう?」

「右に比べてキレが足りてねえ、見てから避けれる」

 

今度はあちらから仕掛けてくる。かっちゃんは″個性″の癖なのか、上半身に意識を割きがちだ。そこを突ければ!そう考えていたのに……

かっちゃんは強い踏み込みから、飛び蹴りを放ってくる。冗談じゃない!女の子相手に打っていいものじゃないでしょ!?

ど真ん中、両腕でガードするが、弾き飛ばされる。

 

「いったぁ……加減してよぉ……」

「加減したぞ、折れてねえだろ」

 

砂だらけでかっちゃんに引き起こされる。

 

「ヴィランにも手加減してもらうか?」

「むう……」

「今日はもう帰るぞ」

「また今度相手してね?」

「……気が変わるまで叩きのめしてやるよ」

 

 

 

 

 

9月

 

「八木さん、ちゃんと鍛えてます?最初会った時からあんまり変わってませんよ?」

 

痩せたその男性は何度も訪れるので、すっかり仲良くなってしまった。名前は八木、普段は事務仕事をしているらしい。

 

「いやあ、育ち盛りの少年少女を基準に考えちゃダメさ」

「それにしてもですねぇ……見てくださいよこの筋肉!もう恥ずかしくてミニスカ履けませんよ!」

「ははは……ほらほら、作業が止まってるよ?」

「いやあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

1月下旬

砂浜のゴミはほぼ全て片付いていた。結局オールマイトは一度も現れなかった。それでも会いたくて、砂浜でトレーニングを続ける。

そしてさらに数日後……

 

 

 

「やあ、すっかりキレイになったね」

「八木さん、お久しぶりです!」

 

その日、砂浜には滑らかな水平線が広がっていた。

 

「待ってましたよ、見に来てくれて嬉しいです」

「私を待ってたのかい?」

「ええ、あんなに何回も来たのは八木さんだけですよ」

「そうかそうか」

 

「まあでも本当は、他にも見てほしい人がいたんですけど……」

「……そういえば、修行のためだったね。その人のことかい?」

「そうなんですけど……もういいんです。あとは私次第、やれるだけやってみます」

 

 

 

「そんな君にサプライズ!!」

「え?どうしたんですか急に」

 

八木さんは、辺りをキョロキョロと見回す。

 

「誰もいませんよ?」

「…私が来ていた!!マッスルフォーム!!!」

 

突然その身体が倍以上に膨れる。

 

「ええっ!?オ、オ……ええっ!?」

「説明しよう!!」

 

 

 

 

 

「ええと、整理すると」

「痩せてるのが本来の姿で、力んでるときがみんなの知ってるオールマイト」

「この事実を知っているのはごく一部の関係者だけ、平和の象徴であり続けるためにも他言は無用」

「5年前の戦いで重症を負って弱ってしまい、ヒーローとして活動できる時間がかなり減ってしまった」

「……ってことですか?」

「ああ!」

「……ヒマだから定期的に見に来てたんですね」

「1日3時間しかヒーロー活動できないからね!ヒマさ!」

 

痩せたオールマイトが、自嘲気味に笑う。

 

「どうしてそんな秘密を、私に?」

 

当然の疑問だ。どうして今、それを私に……

 

「……ここからが本題だ。私のこのチカラを、君が受け継いでほしい」

「……受け継ぐ??」

 

「私の″個性″は、聖火のように代々受け継がれてきたものなんだ」

「受け継がれる″個性″……?そんなものが……?」

 

冗談を言っているようには見えない。でも、それが事実だとして……

 

「どうしてそんなに大事なものを、私に?」

「元々後継を探していたんだ。それであの日、君と初めて会った日に、君の決意を聞いてビビッときたのさ!この子ならもしかすると、ってね。そして、さらなるトレーニングと課題で、ヒーローとしての心構えを確かめさせてもらった」

 

まさか、オールマイトから直々に試されていたとは……

 

「見てほしい人、ね……可愛らしいとこあるじゃないか」

「お恥ずかしいです……」

 

「君の決意、言葉だけでなく行動で示してもらった。″無個性″でヒーローを志し、ヴィランにも立ち向かった君にこそ!受け取ってほしい!」

「…………はい!ありがとうございます!!」

 

「この″個性″の名は、『ワン・フォー・オール』」

「ワンフォーオール……」

 

みんなのために……

 

「この″個性″を貧弱な身体で受け取ろうとすると、負荷に耐えられずに全身が爆散してしまうんだ!HAHAHAHA!!」

「ええっ!?」

「実例は無いから安心したまえ、それに君の肉体は十分に仕上がっている……いや十分は言い過ぎだな、五分くらい?」

「じゃあ半身吹き飛ぶんですか……」

 

「さて……冗談はこれくらいにして、さっそく授与式だ!!緑谷出子!前へ!」

 

ホントに冗談なんですよね……?

 

「これは受け売りだが……」

「え……?」

「最初から持っているのと、認められ譲渡されたのとでは本質が違う!」

「…………」

「誇っていい、緑谷少女!これは君自身が勝ち取ったチカラだ!」

「…………はい」

 

オールマイトが、自分の髪の毛を一本プチっと引き抜く。

 

「さあ!これを食え!」

「ええ……いきなりセクハラですか、師匠……」

「DNAを体内に取り込めれば何でもいいのさ」

「はあ……」

 

 

 

「今日はもう遅い、″個性″については明日詳しく指導しよう!」

「学校休みだしちょうどいいですね」

「受験まで残り1ヶ月、それまでに力をコントロールせねばな!……今日、家のモノ壊すなよ?」

「え、待って不安です……大丈夫ですよね!?」

「……先に軽く説明しておくと、その″個性″を使うときは、ケツの穴をグッと引き締めて心の中でSMASH!と叫ぶんだ」

「セクハラやめてくださいって」

「まあだから、心を穏やかに過ごせば暴発はしないってことさ。じゃあ明日の朝6時、再びここで会おう!」

 

 

 

 

 

1ヶ月後 2月26日 実技試験当日

 

「建物でっか〜!見てかっちゃん!」

「はしゃぐなアホ」

 

なんかハイテクっぽい門の先に、そびえ立つ雄英校舎が見える。

軽やかな足取りで、会場へと向かった。

 

 

 

「受験生のリスナー諸君、俺のライヴにようこそ!さっそくだが、実技試験の概要をサクッとプレゼン!アユレディ!?

YEAHHHH!!」

 

「いえー!……あれ?」

 

誰一人レスポンスせず、私だけ浮いてしまった。

 

「うるせえ」

「かっちゃん、本物の『プレゼント・マイク』だよ?」

「知るかよ、黙って聞いてろ」

 

「試験は、10分間の『模擬市街地演習』!!持ち込みは自由だ!」

「会場は各自指定の場所へ向かってくれ!!」

 

「あれ、会場別だね」

「ったりめえだろ」

 

「演習会場には、それぞれ1〜3ポイントの3種類の仮装(ヴィラン)が多数配置されている!そいつらを行動不能にして、より多くのポイントを得るのが君達の目的だ!!」

「もちろん、他人への攻撃や過度な妨害はご法度だ!ヒーローとしてな!!」

 

「だってよかっちゃん」

「…………」

 

「……質問よろしいでしょうか!!」

 

メガネの男の子が手を挙げる。

 

「プリントには、3種ではなく4種のヴィランが記載されています!これは資料に不備があるということでしょうか!?それと……」

「ついでにそこの君!」

「うぇ!?」

「先程からボソボソと…気が散る!!軽い気持ちで来たのなら、即刻帰りたまえ!!」

「…はーい、気をつけまーす」

 

「怒られちった」

「それをやめろっつの」

 

「オーケーオーケー!ナイスなリスナーのナイスなお便り、お答えしよう!!4種目のソイツは0ポイント!言わばお邪魔虫さ!各会場に1体、大暴れのステージギミックってわけよ!逃げた方が身のためだぜ!?」

「ご返答有難う御座います!」

 

「概要は以上、最後にリスナー諸君へ我が校の『校訓』をプレゼントしよう!」

「かの英雄ナポレオンは言った、『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」

「″Plus Ultra″!!更に向こうへ!!健闘を祈る!」

 

 

 

「ここが個別の会場!?広ーい!!」

 

敷地内に街があるなんて!しかも他にもあるんでしょ!?

とりあえず軽くストレッチをして備える。他の受験生たちを観察していると、先程のメガネの男子を見つけたので、話しかけてみた。

 

「あ、あの!ええと……さっきはごめんね、お互い頑張ろう!」

「何なんだ急に君は、何か企んでいるのか?」

「いやいや違いますよ、そんなに警戒しなくても……」

「お互い頑張ろう、だって?これは試験だぞ?そんなことを言う奴は怪しむに決まって――」

 

「ハイスタート!!」

 

突然、声が響き渡った。一拍遅れて、皆一斉に走り出す。

完全に油断していた。

スタート位置よりだいぶ後ろで待っていたため、集団より遅れている。大丈夫だ、焦らなくていい。よし、まずはみんなが道路に分かれるタイミングで仕掛ける!

私は自然と、この1ヶ月の特訓を思い出していた。

 

 

 

 

 

『まず最初は思いっきりだ!!君はまだ、″個性″の使い方を知らない!目覚めさせ、体感するんだ!さあ!この壁に向かって、拳を振り抜き!!叫べ!!』

『はああああああっ!!』

SMAAAASH!!!

『……いああああっ!!ったいたい痛い痛い痛い!!腕がああぁ!!』

 

 

 

『うーん困ったな!!特別に治癒してくれるのは今日だけ。なんとか一度だけでも、100%ではない抑えたチカラを体感して欲しいのだが……何度も治し過ぎると緑谷少女が死んでしまう!!』

『デコピンなら1回で8本分の練習ができます、やりましょう!』

 

 

 

『もう治して貰えないからな、慎重に……!君自身でイメージするんだ……!』

『ふつふつと沸き上がるイメージで、溢れないように少しずつ……』

ボスッ!

『……これ発動してます?』

『……してないね』

 

 

 

『結構コツ掴んできましたよ!でも、この出力のままで良いんですか?』

『ああ、身体が壊れないように余裕を持たせて、まずは″個性″を使うことに慣れるんだ』

『ちなみにこれ何%ぐらいですか?』

『10%ってところだね』

 

 

 

 

先頭集団が交差点に差し掛かる。深く息を整え、下半身に意識を集中させる。力が湧き上がってくるのを感じて、跳んだ!

彼らの頭上を飛び越え、着地して走り出す。そして、仮想ヴィランが現れた。

 

「まずは1ポイント!デトロイトォ!」

SMASH!!

 

真正面から拳を叩き込み、打ち倒す。

大丈夫だ、ワンフォーオールの調整はできている。それに、1Pヴィランは動きが直線的で狙いやすい。

次に現れた2Pヴィランは、4足の胴体に長い頭と尻尾でリーチはそこそこだが、ガシャンガシャンと移動が遅く隙だらけ。尻尾の動きを見切って撃破した。

そして3Pヴィラン、重量級で見るからに硬く、ミサイルらしきものを背負っている。もしかしてあれ、ヒトに向けて撃ってくるの……?

撃ってきた!!

遠くからの発射だったため、難なく躱す。追尾も無く、目で追える速さで少し安心した。2発、3発と躱してそのまま駆け寄り、タイミングを見極めて飛びかかる。この高さなら、すぐには射角が取れないはずだ。縦に1回転してかかと落としを食らわせた。

倒せたが、空中での姿勢制御がまだ甘い……蹴りに使う足に″個性″を使うという意識で精一杯だった。

それから先は合計ポイントを数える余裕がなく、身体の使い方とワンフォーオールの調整に集中する。あらかた倒してから周りを見る余裕が生まれた。

 

あのメガネの人が、とんでもない速さで移動していた。そのスピードをのせて放つ蹴りで、ロボットを粉砕する。

ひとりの少女の周りに、いくつも仮想ヴィランが浮いていた。少し疲れた様子の彼女が手を合わせると、落下してバラバラになる。

ここらにはもう標的がいない、移動しよう……そう思った時だった。

ガラガラガラ!!!ゴゴゴゴ!!

とてつもない轟音が響く。立ち上がったその巨体は、周りのビルよりもさらに高い。

あれが0ポイントヴィラン!?いくらなんでもデカすぎでしょ!?

蜘蛛の子を散らすように、受験生たちが我先にと逃げていく。

私も行かなきゃ、逃げつつ他の敵を探さないと!合格ラインは見当もつかないし、そもそも今自分が何ポイントか分からん!

――走り出そうとしたその時、後ろから声が聞こえた。

 

「いったぁ……」

 

さっきちょっとフラついてた女の子だ。ガレキに足を取られている。

運んで逃げて、間に合うか……!?いや違う!確実なのは……!

 

両足に力がみなぎるのを感じて、跳んだ――

 

「はああああああ!!!」

 

オールマイト!!″ワン・フォー・オール″!!私にチカラを!!

 

「デトロイトォォオオオ!!」

 

SMAAAASH!!!

 

 

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