デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

5 / 33
No.4 ベストなコスチューム

 

SMAAAASH!!

 

巨大な0ポイント(ヴィラン)が、ぐらりと揺れて後ろに倒れていく。

 

「うあああああああ!!!腕が!!足があああ!!」

 

なんのための1ヶ月だったんだ…!!

調整できずにボキボキに折れた右腕と両足が、風圧になびいて激痛を生む。落ちる、落ちていく……残る左腕で、やるしかない!

迫る地面を見つめ、拳を握る。引きつけて、引きつけて……ん!?あれは……?

 

バチン!!

 

さっきの女の子に空中でビンタされ、落下が止まる。

それから少しして、浮遊感が消えて地面にドサリと落ちた。

そのまま地面に横たわる。痛みで意識が飛びそうだ。どうにか歯を食いしばって顔を上げると、少し離れたところにあの女の子がいた。見た感じは無事っぽい、良かった。

あ、吐いた……

やばい、私も吐きそう……動けない、誰か助けて……

 

「終ーーー了ーーー!!!」

 

終了……良かった、助けが来る……

気がゆるんで、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

目が覚めると、すぐ近くには小柄なおばあちゃんがいた。

 

「あ、リカバリーガール……お久し――」

「グミをお食べ」

「モゴ……」

「治癒は初めてだねぇ?疲労が残るから、気を付けて帰るんだよ」

 

1ヶ月前、この人と初めて会った日を思い出す。オールマイトの紹介で会ったんだった。

 

 

『雄英教諭の私が、志望生に関わりすぎるのも問題だからねえ……オールマイト、()()()()()()君からの頼みということで。今日だけだよ』

『すまないリカバリーガール。ありがとう』

『よろしくお願いします!!』

 

『チユ〜〜〜!!』

『おおっ!ホントに治った!でもなんか、疲れが……』

『あくまで治癒力の活性化だからね、ただ治るわけじゃないんだよぉ〜。でも、全身の怪我はキレイに治ってるはずだよ』

『えっ!?』

思わず額に手を当てる。

『それは()()()()()跡だろう?私の″個性″ではそれ以上治らないのさ』

『…………そうでしたか』

 

 

そうか……今は受験会場だし、知り合いなのは黙っといた方がいいか。

ゆっくりと起き上がる。ここは待合室のようだ……治癒を受けたらしい他の受験生が何人かいた。

 

「ありがとうございました」

 

リカバリーガールにお礼を言い、荷物を持って出ようとすると……

 

「あれ、かっちゃん」

「ロボットに潰されてると思ったんだがな、無傷かよ」

「バキバキに折れてたのを治してもらったの。心配してくれたんだね、ありが――」

「ああ!?雑魚は雄英受けるなって言ったよなあ!?」

「ひゃあ!?た、たぶん言われてない……」

 

「騒がしいねえ、早く帰んなさい」

 

 

 

「かっちゃん、何ポイントぐらい取れたの?」

「82ポイントだ。とにかくブッ壊してやった」

「すご……私は30くらいだと思う、数える余裕なくてさ」

「はっ、ダッセェ」

「でもさ、私0ポイントのヤツ倒したんだよ!」

「……は?」

「潰されそうな子がいて思わず――」

 

「あの大きさを倒しただと……?」

「あ……」

「……デコ、テメェの″個性″は……」

「……ごめん、言えない」

「……チッ」

 

気まずい沈黙に包まれた。ああ……1ヶ月前もそうだった……

 

 

 

 

 

その日私は、夕方にかっちゃんをメールで呼び出した。

 

『かっちゃん……私ね、″個性″が出たの』

『あ?クソつまんねえ冗談だな』

『ホントだよ、見てて』

 

左手のデコピンで、持っていた空き缶の一部を削り飛ばした。まだ調整がうまくいかず、中指が赤く腫れ上がる。

 

『いてて……ほらね?″個性″じゃなきゃ説明できないでしょ?指だけじゃなくて全身で使えるんだけど、まだ練習中』

『……ありえねえ』

 

『……″個性″の発現は4歳までだ、ありえねえ』

 

『……デコ、テメェまさか……今の今まで騙してやがったのか?』

『ッ違う!!……違うの……本当に最近、数日前で……』

『じゃあ何なんだよ!!』

 

かっちゃん詰め寄られる。その目を見れなくて、目を逸らしたままこう告げた。

 

『ごめん、言えない……』

 

 

 

 

 

入試の結果を待つ一週間、なんだかソワソワして、居ても立っても居られない気分だった。その気持ちを落ち着かせようと、とりあえず筋トレをする。ここ最近はオールマイトに付きっきりで見てもらっていたのだが、入試以来彼からの連絡は無い。

入試については、筆記の自己採点はバッチリ。問題は実技……合計30ポイントぐらいと言ったが、ちゃんと数えてないので合っているか分からない。合格ラインはどのくらいなのだろう?かっちゃんのポイントは基準にならなそうだし……いくら考えても、結局は待つことしかできない。

そして、通知の日がやってきた。今日も変わらず筋トレを続けて、大人しく待つ。

 

出子(いずこ)、出子!来たよ!!」

「うわあ!!」

 

お母さんに封筒を手渡され、自室で封を解いた。

 

『私が投影された!!久しぶりだな、緑谷少女!』

オールマイト!?どうして!?

『連絡できなくてすまない、手続きが忙しくてね……』

『なんと、私が雄英教師として呼ばれた!!』

オールマイトが雄英に!?

『よし、私のことはここまでだ。本題!君の合否を発表する!!』

『筆記は問題なし、さてさて実技の方は…………』

思わず息をのむ。

『…とその前に、実技試験の裏側を教えよう!!』

ちょっとぉ!!

『あの試験の採点方法は、(ヴィラン)P(ポイント)だけじゃない!!もう一つの要素が、審査制の救助活動(レスキュー)P(ポイント)!!』

『まとめていくぞ!君の実技試験、結果は!!ヴィランPが35P!レスキューPが41P!合計76P!!文句なしの合格だ!!』

『雄英へようこそ、緑谷少女!!』

 

 

 

 

 

オールマイトと連絡が取れたので、海浜公園で待ち合わせをする。

 

「お久しぶりです!オール――」

「ノンノン、そうじゃないだろう?」

「……八木さん、お久しぶりです」

「うん、合格おめでとう」

「突然ですけどあの試験、レスキューポイント高すぎません?」

「ヒーロー科だ、レスキュー大事さ。あと私は観戦だけで、採点には関わってないからな?」

「そうなんですね」

 

 

「″ワン・フォー・オール″、基本はセーブしたまま使えたんですけど、焦ったらメチャクチャになっちゃいました」

「うん、身体を壊すのは褒められることじゃないからね。とはいえ嬉しかったよ、君が迷わず飛び出してくれて。私が見込んだとおりだ」

「ありがとうございます。でも当分、100%は封印ですね。ところで、今私の体って何%までなら耐えられますかね?」

「うーん、正確にはわからないな……少しずつ上げて探ってみないと……ようは慣れろ、さ」

 

「そういえば、問題が発覚したんですよ!!」

「なんだい?」

「雄英の制服、ミニスカです!!フトモモが!!」

「いいじゃないか。筋肉は努力の結晶、恥ずかしがることはない」

「…オールマイトって、やっぱり女性の好みも筋肉なんですね」

「……誤解だ」

 

 

 

 

 

入学初日の朝、準備で大忙しだ。

 

「スカートやっぱ短いよ!どうにか伸びないかなあ!?せめてヒザ丈で!」

「出子、遅れちゃうよ?」

「うわあ!?」

鏡を見ながら、いつも通りに前髪をピンで留める。

「よし!お母さん、行ってきます!」

「うん、いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

教室の前で、少し立ち止まる。どんなクラスかなぁ?

ドアを開けようとする前に、後ろから声が聞こえた。

 

「あ…あの!ええと、試験のときの、超パワーの女の子だよね?同じクラスだね!」

「お、ゲロってた子だ」

「ちょ、覚え方!……麗日お茶子です、よろしくね!」

「お茶子ちゃん、よろしく!私は緑谷出子!」

「出子ちゃん、あの時はありがとう!」

「いやあ私こそ、浮かせてくれなきゃヤバかったし……とりあえず教室入ろっか」

「うん」

 

ドアを開けて、元気よく挨拶する。

 

「おはよう!!」

 

返事はなく、教室内はなんとも言えない雰囲気。まあ初日だし……お、いたいた。

 

「おはようかっちゃん」

「話しかけんなクソデコ」

「つれないなぁ」

 

かっちゃんの真後ろの席に着く。お茶子ちゃんは廊下側の席みたいだ。

 

チャイムが鳴り響き、どこからか声がする。

 

「授業を始めるぞ」

 

なんだこの人……寝袋に入ったままだ……

 

「A組担任の相澤消太だ」

「お前ら、今すぐ体操服に着替えてグラウンドに出ろ」

 

説明とか無いんすか……?

 

 

 

 

 

グラウンドにて、個性アリでの体力テストが行われた。最下位は除籍すると脅され、皆一様に気合いが入っている。

体力テストか……10%でも見違えるような記録が出せそうだ。

 

 

 

「もうお終いだ……」

 

二つほど競技を終えたころ、一番背の低い男の子が一人、うつむいていた。近づいて話しかける。

 

「どうしたの?」

「……オイラの体格じゃ、大した記録が出せねぇ。″個性″を生かせる競技も一つ二つぐらい……除籍は決まりだ……」

「まあまあ、途中で諦めたら後悔するよ…?頑張ろう!」

「ゔゔゔ……」

 

笑いかけると、急に飛び付いて来た。

 

「あ″り″か″ど″お″お″お″〜」

「わあ、どうしたの――ってケツさわんなぁぁ!!」

「ゴハァ!!」

「クソッ、なんだこいつ」

 

心配して損した。

 

 

 

結局、除籍はウソだったらしい。さっきのチビが泣いて喜んでいた。

私は持久走で、OFA(ワンフォーオール)の全身10%常時発動を試してみのだが、ギクシャクとした動きになってしまってうまくいかなかった。まだまだ練習が必要だ。

 

 

 

下校時間、かっちゃんを探すが見当たらない。もう帰ったみたいだ。お茶子ちゃんと2人で歩いていると、メガネのあの人を見つけた。

 

「やあ!足めっちゃ速い人!私は緑谷出子、よろしくね!」

「麗日お茶子です!」

「ぼ…俺は飯田天哉だ」

 

「緑谷くん、君はあの試験の詳細に気付いていたのだろう?素晴らしい判断の速さだった」

「え、気付いてなかったよ」

「なんだって!?知らずにアレに立ち向かったのか!?」

「すごかったよねあのパンチ!それにジャンプも!」

「えへへ……」

 

 

 

 

 

2日目、午前は普通の科目、昼に大食堂で昼食。そして午後の授業、ついに始まるヒーロー基礎学!

 

「わーたーしーがー!普通にドアから来た!!」

 

 

「ヒーロー基礎学とは!ヒーローの基礎を学ぶ課目だ!」

「今日行うのは、戦闘訓練!!」

「そしてこちらが、君達にあらかじめ送ってもらった要望に沿って製作された」

「君達のオリジナルコスチュームだ!!」

「早速着替えて、グラウンドβに集合!!」

 

「格好から入るってのも、大切なことだぜ!!少年少女!!」

「自覚するのだ!今日から自分は……」

 

「ヒーローなんだと!!」

 

 

 


 

 

 

『お母さん!コスチュームのデザイン要望、こんな感じでどうかな?』

『…………』

『…………』

『……これを着るの……?』

『…………』

『……出子、ジャージにしとこう?』

『……うん……』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。