SMAAAASH!!
巨大な0ポイント
「うあああああああ!!!腕が!!足があああ!!」
なんのための1ヶ月だったんだ…!!
調整できずにボキボキに折れた右腕と両足が、風圧になびいて激痛を生む。落ちる、落ちていく……残る左腕で、やるしかない!
迫る地面を見つめ、拳を握る。引きつけて、引きつけて……ん!?あれは……?
バチン!!
さっきの女の子に空中でビンタされ、落下が止まる。
それから少しして、浮遊感が消えて地面にドサリと落ちた。
そのまま地面に横たわる。痛みで意識が飛びそうだ。どうにか歯を食いしばって顔を上げると、少し離れたところにあの女の子がいた。見た感じは無事っぽい、良かった。
あ、吐いた……
やばい、私も吐きそう……動けない、誰か助けて……
「終ーーー了ーーー!!!」
終了……良かった、助けが来る……
気がゆるんで、そのまま意識を失った。
目が覚めると、すぐ近くには小柄なおばあちゃんがいた。
「あ、リカバリーガール……お久し――」
「グミをお食べ」
「モゴ……」
「治癒は初めてだねぇ?疲労が残るから、気を付けて帰るんだよ」
1ヶ月前、この人と初めて会った日を思い出す。オールマイトの紹介で会ったんだった。
『雄英教諭の私が、志望生に関わりすぎるのも問題だからねえ……オールマイト、
『すまないリカバリーガール。ありがとう』
『よろしくお願いします!!』
『チユ〜〜〜!!』
『おおっ!ホントに治った!でもなんか、疲れが……』
『あくまで治癒力の活性化だからね、ただ治るわけじゃないんだよぉ〜。でも、全身の怪我はキレイに治ってるはずだよ』
『えっ!?』
思わず額に手を当てる。
『それは
『…………そうでしたか』
そうか……今は受験会場だし、知り合いなのは黙っといた方がいいか。
ゆっくりと起き上がる。ここは待合室のようだ……治癒を受けたらしい他の受験生が何人かいた。
「ありがとうございました」
リカバリーガールにお礼を言い、荷物を持って出ようとすると……
「あれ、かっちゃん」
「ロボットに潰されてると思ったんだがな、無傷かよ」
「バキバキに折れてたのを治してもらったの。心配してくれたんだね、ありが――」
「ああ!?雑魚は雄英受けるなって言ったよなあ!?」
「ひゃあ!?た、たぶん言われてない……」
「騒がしいねえ、早く帰んなさい」
「かっちゃん、何ポイントぐらい取れたの?」
「82ポイントだ。とにかくブッ壊してやった」
「すご……私は30くらいだと思う、数える余裕なくてさ」
「はっ、ダッセェ」
「でもさ、私0ポイントのヤツ倒したんだよ!」
「……は?」
「潰されそうな子がいて思わず――」
「あの大きさを倒しただと……?」
「あ……」
「……デコ、テメェの″個性″は……」
「……ごめん、言えない」
「……チッ」
気まずい沈黙に包まれた。ああ……1ヶ月前もそうだった……
その日私は、夕方にかっちゃんをメールで呼び出した。
『かっちゃん……私ね、″個性″が出たの』
『あ?クソつまんねえ冗談だな』
『ホントだよ、見てて』
左手のデコピンで、持っていた空き缶の一部を削り飛ばした。まだ調整がうまくいかず、中指が赤く腫れ上がる。
『いてて……ほらね?″個性″じゃなきゃ説明できないでしょ?指だけじゃなくて全身で使えるんだけど、まだ練習中』
『……ありえねえ』
『……″個性″の発現は4歳までだ、ありえねえ』
『……デコ、テメェまさか……今の今まで騙してやがったのか?』
『ッ違う!!……違うの……本当に最近、数日前で……』
『じゃあ何なんだよ!!』
かっちゃん詰め寄られる。その目を見れなくて、目を逸らしたままこう告げた。
『ごめん、言えない……』
入試の結果を待つ一週間、なんだかソワソワして、居ても立っても居られない気分だった。その気持ちを落ち着かせようと、とりあえず筋トレをする。ここ最近はオールマイトに付きっきりで見てもらっていたのだが、入試以来彼からの連絡は無い。
入試については、筆記の自己採点はバッチリ。問題は実技……合計30ポイントぐらいと言ったが、ちゃんと数えてないので合っているか分からない。合格ラインはどのくらいなのだろう?かっちゃんのポイントは基準にならなそうだし……いくら考えても、結局は待つことしかできない。
そして、通知の日がやってきた。今日も変わらず筋トレを続けて、大人しく待つ。
「
「うわあ!!」
お母さんに封筒を手渡され、自室で封を解いた。
『私が投影された!!久しぶりだな、緑谷少女!』
オールマイト!?どうして!?
『連絡できなくてすまない、手続きが忙しくてね……』
『なんと、私が雄英教師として呼ばれた!!』
オールマイトが雄英に!?
『よし、私のことはここまでだ。本題!君の合否を発表する!!』
『筆記は問題なし、さてさて実技の方は…………』
思わず息をのむ。
『…とその前に、実技試験の裏側を教えよう!!』
ちょっとぉ!!
『あの試験の採点方法は、
『まとめていくぞ!君の実技試験、結果は!!ヴィランPが35P!レスキューPが41P!合計76P!!文句なしの合格だ!!』
『雄英へようこそ、緑谷少女!!』
オールマイトと連絡が取れたので、海浜公園で待ち合わせをする。
「お久しぶりです!オール――」
「ノンノン、そうじゃないだろう?」
「……八木さん、お久しぶりです」
「うん、合格おめでとう」
「突然ですけどあの試験、レスキューポイント高すぎません?」
「ヒーロー科だ、レスキュー大事さ。あと私は観戦だけで、採点には関わってないからな?」
「そうなんですね」
「″ワン・フォー・オール″、基本はセーブしたまま使えたんですけど、焦ったらメチャクチャになっちゃいました」
「うん、身体を壊すのは褒められることじゃないからね。とはいえ嬉しかったよ、君が迷わず飛び出してくれて。私が見込んだとおりだ」
「ありがとうございます。でも当分、100%は封印ですね。ところで、今私の体って何%までなら耐えられますかね?」
「うーん、正確にはわからないな……少しずつ上げて探ってみないと……ようは慣れろ、さ」
「そういえば、問題が発覚したんですよ!!」
「なんだい?」
「雄英の制服、ミニスカです!!フトモモが!!」
「いいじゃないか。筋肉は努力の結晶、恥ずかしがることはない」
「…オールマイトって、やっぱり女性の好みも筋肉なんですね」
「……誤解だ」
入学初日の朝、準備で大忙しだ。
「スカートやっぱ短いよ!どうにか伸びないかなあ!?せめてヒザ丈で!」
「出子、遅れちゃうよ?」
「うわあ!?」
鏡を見ながら、いつも通りに前髪をピンで留める。
「よし!お母さん、行ってきます!」
「うん、いってらっしゃい」
教室の前で、少し立ち止まる。どんなクラスかなぁ?
ドアを開けようとする前に、後ろから声が聞こえた。
「あ…あの!ええと、試験のときの、超パワーの女の子だよね?同じクラスだね!」
「お、ゲロってた子だ」
「ちょ、覚え方!……麗日お茶子です、よろしくね!」
「お茶子ちゃん、よろしく!私は緑谷出子!」
「出子ちゃん、あの時はありがとう!」
「いやあ私こそ、浮かせてくれなきゃヤバかったし……とりあえず教室入ろっか」
「うん」
ドアを開けて、元気よく挨拶する。
「おはよう!!」
返事はなく、教室内はなんとも言えない雰囲気。まあ初日だし……お、いたいた。
「おはようかっちゃん」
「話しかけんなクソデコ」
「つれないなぁ」
かっちゃんの真後ろの席に着く。お茶子ちゃんは廊下側の席みたいだ。
チャイムが鳴り響き、どこからか声がする。
「授業を始めるぞ」
なんだこの人……寝袋に入ったままだ……
「A組担任の相澤消太だ」
「お前ら、今すぐ体操服に着替えてグラウンドに出ろ」
説明とか無いんすか……?
グラウンドにて、個性アリでの体力テストが行われた。最下位は除籍すると脅され、皆一様に気合いが入っている。
体力テストか……10%でも見違えるような記録が出せそうだ。
「もうお終いだ……」
二つほど競技を終えたころ、一番背の低い男の子が一人、うつむいていた。近づいて話しかける。
「どうしたの?」
「……オイラの体格じゃ、大した記録が出せねぇ。″個性″を生かせる競技も一つ二つぐらい……除籍は決まりだ……」
「まあまあ、途中で諦めたら後悔するよ…?頑張ろう!」
「ゔゔゔ……」
笑いかけると、急に飛び付いて来た。
「あ″り″か″ど″お″お″お″〜」
「わあ、どうしたの――ってケツさわんなぁぁ!!」
「ゴハァ!!」
「クソッ、なんだこいつ」
心配して損した。
結局、除籍はウソだったらしい。さっきのチビが泣いて喜んでいた。
私は持久走で、
下校時間、かっちゃんを探すが見当たらない。もう帰ったみたいだ。お茶子ちゃんと2人で歩いていると、メガネのあの人を見つけた。
「やあ!足めっちゃ速い人!私は緑谷出子、よろしくね!」
「麗日お茶子です!」
「ぼ…俺は飯田天哉だ」
「緑谷くん、君はあの試験の詳細に気付いていたのだろう?素晴らしい判断の速さだった」
「え、気付いてなかったよ」
「なんだって!?知らずにアレに立ち向かったのか!?」
「すごかったよねあのパンチ!それにジャンプも!」
「えへへ……」
2日目、午前は普通の科目、昼に大食堂で昼食。そして午後の授業、ついに始まるヒーロー基礎学!
「わーたーしーがー!普通にドアから来た!!」
「ヒーロー基礎学とは!ヒーローの基礎を学ぶ課目だ!」
「今日行うのは、戦闘訓練!!」
「そしてこちらが、君達にあらかじめ送ってもらった要望に沿って製作された」
「君達のオリジナルコスチュームだ!!」
「早速着替えて、グラウンドβに集合!!」
「格好から入るってのも、大切なことだぜ!!少年少女!!」
「自覚するのだ!今日から自分は……」
「ヒーローなんだと!!」
『お母さん!コスチュームのデザイン要望、こんな感じでどうかな?』
『…………』
『…………』
『……これを着るの……?』
『…………』
『……出子、ジャージにしとこう?』
『……うん……』