デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.5 鋭い殺意が忍び寄る

各自コスチュームを受け取り、更衣室へ向かう。

 

さすがは雄英の外注企業、届いたジャージは着心地バツグンで、手触りで分かる繊維の丈夫さ。ちなみに色は緑、下が暗めで上が明るめ。すね当てを兼ねた高めブーツは、驚くほど軽い。なるべく薄めで頼んだグローブも、しっかりフィットして指の動きを邪魔しない。

 

「出子ちゃん、ジャージなんだね」

「まあね。お茶子ちゃんは……」

「要望ちゃんと書けばよかったよ、パツパツスーツんなっちゃった……恥ずかしい……」

 

ボディラインがくっきりと……いや、この大きさが平均値なの……?

他の女子も見てみる。

 

「……?出子ちゃん?」

「……1人を除いて、レベルが高すぎる……!」

 

 (聞こえてるし……失礼だなアイツ)

 

 

 

 

 

「今から君達には、ヴィラン組とヒーロー組に分かれて、2対2の屋内戦闘訓練を行ってもらう!!」

「状況設定はこう!ヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローがそれを処理しようとしている!」

「ヒーロー側は15分以内にヴィランを2人とも捕まえる、または核を回収する!ヴィラン側はヒーロー2人を捕まえるか、時間切れまで核を守る!」

「ヒーローが核に触れた時点で回収成功、今から配るこの確保テープを相手に巻き付けた時点で確保成功となる!!」

「コンビと対戦相手は、それぞれクジ引きで!!」

 

オールマイトが持つ箱から、みんな順番に引いていく。私とペアを組むのは……

 

「お茶子ちゃん、ヨロシク!」

「うん、頑張ろうね!」

 

さて、問題は対戦相手。室内での戦闘は逃げ場が少ないため、個性によっては完封されかねない。

オールマイトが別の箱を2つ持ってくる。

 

「さあ、最初の対戦相手はこの2組!!」

「Aコンビがヒーロー、Dコンビがヴィランだ!!」

 

Aコンビは私達、Dコンビは……

 

「かっちゃんと、飯田くん……!」

「手ごわいね……」

 

「ヴィランチームは先にビルへ入ってセッティング、それから5分後にヒーローチームが突入開始!!他の生徒は、私と共に地下のモニター室へ!!」

 

かっちゃんが私達に近づいてくる。目がギラついてて、ちょっと怖い。

 

「あー、かっちゃん……ええと、授業だしほどほどにね……?」

「……デコ、テメェに″個性″があろうがなかろうが関係ねえ、ブッ潰す……!」

「聞いちゃいないや」

 

かっちゃんが立ち去って、お茶子ちゃんがこっちを向く。

 

「出子ちゃん、爆豪くんと知り合い?」

「あー、うん、幼馴染。幼稚園からの」

「『デコ』って呼ばれてたね」

「出子をそのまま読んでデコ、単純だよね」

「……そのあだ名、おでこのソレと関係ある……?あ、訊かれたくなかったらごめん……」

「ううん、全然。この火傷はちっちゃい時にストーブに触れちゃって……前髪寄せてるのは私の好み。チャームポイント的な?」

 

「……じ、じゃあ私も……『デコちゃん』て呼んでいい?」

「もちろん良いよ!……それなら私は……そうだな……チャコちゃん?」

「うーん……?」

「冗談」

 

 

 

 

 

「かっちゃんの″個性″は″爆破″。手のひらから爆破ができて、移動にも攻撃にも使える。飯田くんは足がめちゃくちゃ速い。つまり2人とも、機動力があって正面からの戦闘は文句なしに強い。だからなんとかして2対1の状況を作りたい」

 

ここで考えるのは相手の出方……かっちゃんはああ見えて冷静だから、自分より速い飯田くんを偵察に出す可能性が高い。触られたら即負けの核をフリーにしないだろうし、かといって開始からずっと2人で待ち続けるのは、精神的にも後手に回るから嫌うはず。お互い無線で連絡が取れるし、機動力ですぐに合流できてリスクも低い。

偵察に来た方と2対1をしようとしても、ヒットアンドアウェイで時間を稼がれるか、撤退される。時間が減れば、あとは待つだけ。実際そうなったら勝ち目は薄い……。

つまり、私達が取るべき作戦は、『奇襲』!!一気に懐へ潜り込む!そのための侵入ルートは……

見取り図にある大きな部屋……窓の多いこの部屋が、おそらく核の置き場所。ヴィランチームはセッティングの時間内なら、好きな場所に核を移動できる。狭い部屋や通路に隠すよりも、視認しやすくて機動力を活かせる大部屋で間違いないだろう。私達が部屋に入ろうとすればすぐに気付けるし、偵察と合わせて対応力はバッチリと思うはずだ。

しかし逆に言えば、核を探す手間はほとんどかからない。階層を特定するだけだ。

 

 

開始直後、ビルには入らずに北側へ回る。

 

「デコちゃん、はいタッチ」

「はいタッチ」

 

身体がフワフワと浮き上がる。外壁の出っ張りや排水管を掴みながら、ゆっくり静かに登っていく。お茶子ちゃんの個性のおかげで、僅かな力でスイスイ動ける。上へ進みながら、間取りの1番大きい部屋を窓から覗く。

2階、3階、4階……ターゲットは見当たらない。そして5階、中から見つからないように慎重に覗く……あった!!

核兵器を模したそこそこデカイ物体と、すぐ近くにかっちゃん……飯田くんはいない、予想通りだ。

下で待つお茶子ちゃんに、手を振って合図する。お茶子ちゃんは、自分自身を浮かすのは苦手ですぐに酔ってしまうらしいが、少しならなんとか耐えられると言っていた。

軽く助走をつけたお茶子ちゃんが、重力を無視して真っ直ぐ跳んでくる。私は窓枠の上辺を両手で掴み、浮いたまま待機。数秒後、手を伸ばすお茶子ちゃんが私を掴み、さらに近づき手を回して私に抱きつく。

 

「解除……!」

 

2人分の体重が戻り、振り子の要領で窓を蹴り破る。

ガシャーン!!

かっちゃんがこちらに振り向くのが見えた。

 

「――ッソメガネ!!!戻って来い!!!」

 

短期決戦、合流される前に決める!!

手はず通りに私は左、お茶子ちゃんは右に展開する。さあ、どう出てくるか……

 

BOM!

突然かっちゃんが、お茶子ちゃんの方へ飛びかかる。

 

「なっ……!!」

「ひぃっ!!」

 

核の近くで迎撃、が安定だと油断していた。しかもそっちを狙うとは……!!

″ワン・フォー・オール″、10%……!!向きを変えて駆け出す――

 

BOM!

 

「きゃあっ!!」

 

追い付いた……!!

 

「お茶子ちゃんに何すんだバカぁ!!」

「バカはテメェだ!!」

 

BOOM!!!

 

間合いの少し外、大きな爆風で吹き飛ばされる。完全に待たれていた。

 

「ちょちょちょ!?」

「オラァ!!」

 

倒れていたお茶子ちゃんがこっちに投げ飛ばされる。個性で受け身を取ったらしく、すぐに起き上がった。

 

「いたた……」

 

また距離が空いた……次はどうする……?

 

ガタン!!

そのとき、入り口のドアが勢いよく開く。来るの早すぎでしょ飯田くん……

 

「奇襲とはやってくれたな!!だが、核は渡さんぞヒーロー共!!」

「遅えぞクソメガネ!!」

 

「……私はかっちゃんを相手する」

「……わかった!」

 

再び左右に分かれて、1対1になるように誘導する。

 

「存分に痛めつけてやるよデコォ!!」

 

かっちゃんが真っ直ぐ飛びかかってくる。私は右手に意識を込める、OFA(ワン・フォー・オール)10%……なるべく引きつけて、カウンター!!

しかし、目の前で爆破されタイミングをずらされる。何も見えない――上――後ろ!!

ギリギリで伏せてなんとか避けるが、追撃で蹴り飛ばされる。

 

「その程度かぁ!?テメェの″個性″はよォ!!」

 

また来る!受け身を取って今度は足に集中、こっちも飛び出す!

踏み込む瞬間、かっちゃんが少し驚いたように見えた。このパワーならガードしきれないはず!!右足を振り抜く――

BOM!!

 

「ッッああっ……!!」

 

痛い、痛い……!爆破で相殺された……!

ブーツはボロボロだが足はついてる、よかった……。しかし、とてもじゃないが立ち上がれない。

 

かっちゃんが、潰れた左の籠手を外しながら私に近づく。

 

「てめぇのせいで壊れたじゃねえか」

「私の心配してよ……」

「どーせあのチビババアが治すだろ」

 

確保テープでぐるぐる巻きにされる。

 

 

 

「ムリやってこんなん!ちょちょ……うっぷ……」

 

吐き気に耐えて、飯田くん相手に善戦していたお茶子ちゃんだったが、2人がかりであっさり捕まった。

 

『ヴィランチーム、WIN!!』

 

私は担架に乗せられて、ロボットたちに保健室まで運ばれていった。

 

 

 

 

 

放課後、何人か教室に残り、訓練の話題で盛り上がった。

 

「緑谷、麗日!お前らよくやったよ!」

「相手が悪かったよな、爆豪が強え」

「女の子2人にも容赦ないもんねー!」

「かっちゃんは昔からあんな感じだよ」

「知り合いなのね」

 

 

「そういえばかっちゃんは……?」

「先に帰ってたよ」

「私を保健室送りにしておいて……」

 

スマホを開いてみる。

 

『話がある 玄関に来い』

 

 

 

「……話って?」

「……テメェの″個性″、実戦で使い慣れてねえだろ。力む部位で次の動きがバレバレだ。″個性″で少しパワーとスピードが上がってもあれじゃ意味ねえ」

「なんだ、アドバイスか」

「……まともに使えるようになってから再戦だ雑魚」

「……とりあえずかっちゃんの勝ちでいいじゃん」

「よくねえよ!」

「ひゃあ!?」

 

「意味ねぇんだよ!まともに扱えてねえヤツに勝っても!」

「わかったわかった……」

 

話があるというから、また私の個性について聞かれると思ったけど……少し違ったようだ。

 

 

 

 

 

次の日もいろいろあった。委員長を決めたり、雄英に侵入者騒動があったり、飯田くんが非常口になったり、飯田くんが委員長になったり。

侵入者に関しては、犯人は分からなかったらしい。私は現場を見てないからよくわからないけど……そんなに気にしなくても大丈夫じゃないかな……。

 

さらに次の日……

 

「今日のヒーロー基礎学は、俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制でみることになった」

「今回は、人命救助(レスキュー)訓練だ。コスチュームは各自の判断に任せる」

 

相澤先生に連れられて、バスに乗り込む。道中、みんなの″個性″の話になった。

 

 

「プロとして人気を得るには、やっぱ″個性″の見栄えは大事だよなー。派手で強い轟や爆豪とかさ」

「爆豪ちゃんは感じ悪いし人気でなさそ」

「んだとコラ!出すわ!!」

「女だろうと構わず爆破、クソ鬼畜系ヒーロー爆豪!!」

「殺すぞ……!!」

「かっちゃんがイジられてるの、なんか新鮮で面白いね」

「馬鹿にしてんのかデコ!!」

「ひゃあ!?」

「車内で立ち上がるな爆豪くん!!離したまえ!!」

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ……」

 

 

 

待っていたのは、スペースヒーロー『13号』。オールマイトは遅れて来るらしい。

 

「授業を始める前に、僕からいくつか……」

 

「僕の″個性″は、″ブラックホール″。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「これは、簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にも、そういう″個性″がいるでしょう」

 

「…………」

「…………」

 

「超人社会は、″個性″の使用を厳しく制限することで、一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる″個性″を、個々が持っていることを忘れないで下さい」

「この授業では、人命救助の為にどうやって″個性″を活用するか学びます。君たちの力は、人を傷つける為にあるのではない、救けるためにあるのだと心得て帰って下さいな」

 

 

救けるために……このチカラで……

身が引き締まる思いで、私は拳を握った。

 

 

 

「――っ(ひと)かたまりになって動くな!!13号、生徒を守れ!!」

 

突然、広場に黒い霧が広がり、中から続々と人が現れる。

 

「相澤先生、何がなんだか……」

「動くな!!あれは(ヴィラン)だ!!!!」

 

 

 

「なんだよ……オールマイトいないのかよ……」

「子どもを殺せば来るのかな……?」

 

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