「ヴィランの襲撃!?ここは雄英だぞ、アホなのか!?」
「警報が鳴ってねえ……侵入者用センサーが反応しなかったってことだ。おそらく、ヤツらの中にそういう″個性″がいる。加えて校舎から離れたこの場所に、俺たちの授業時間を狙って現れた。バカだかアホじゃねぇ、なんらかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
轟くんが冷静に分析する。
計画された襲撃……ならば、その目的は一体……?
「13号、避難開始!電話も試せ!上鳴、お前も″個性″で連絡してみろ」
「相澤先生は!?1人で戦うんですか!?」
「緑谷、さっさと避難しろ。……忘れたのか?雄英教師は全員、プロヒーローだ」
相澤先生がゴーグルをかける。
「そのゴーグル姿……!イレイザー――」
「早く逃げろ!」
相澤先生が1人で飛び出していく。前にいるヴィランたちが攻撃の構えを見せても、躊躇いもせず。
「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったか!?ありゃ誰だ!?」
「知らねえが、1人で突っ込んでくるとは大まぬけだぜ!」
「……あれ?出ねえ――」
帯状の布を自在に操り、次々に倒していく。
「そうか、あいつは……見ただけで″個性″を消すっつう……『イレイザーヘッド』だ!!」
すごい……。でも、数が多すぎる……『イレイザーヘッド』の戦闘スタイルは相手の個性を消してからの捕縛だ。集団との正面戦闘を続けていれば、そのうち限界がくる……
「早く避難を!!」
「させませんよ」
人型の黒いモヤがこちらにすり抜けてきた。13号が、生徒を庇うように立ち塞がる。
「初めまして、我々は
「平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
「……!?」
「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ……何か変更があったのでしょうか?」
「まあ…それはそれとして、私の役目はこれ……」
黒いモヤが揺らぐ。
BOOOM!!
生徒が2人、かっちゃんと切島くんが飛び出して攻撃するが、効いていないようだ。
「ダメだ、どきなさい2人とも――」
突然、モヤが大きく広がり、私達を包んだ。ワン・フォー・オール――ダメだ、間に合わない――
「散らして、嬲り殺す……」
なすすべもなく視界が黒く覆われ、身体が浮き上がる。
霧が晴れる……水!?
ザバーン!!
水難ゾーン……ワープさせられた……!あいつの″個性″か!
「来た来た!!」
なんかいる!?大きい口に鋭い牙!!
「おめーに恨みはないけど、サイナラ!!」
10%――いや、水中だともっと必要か――調整できるかどうか――
ドスッ!!
私が動く前に、ソイツは横から蹴り飛ばされた。
梅雨ちゃん……!舌が伸びてきて私の体に巻きつき、引かれていく。近くにあった船上に投げ飛ばされ、起き上がる。
そしてもう1人、峰田くんは何故か強めに叩きつけられた。
「ッああ!!」
「2人とも無事ね」
「梅雨ちゃん、ありがと」
「ええ、でもどうしようかしら…?」
この船を囲むように、水面にヴィランたちが浮かんでいるのが見える。
「オールマイトを殺すために来たって言ってたよね」
「あんなヤツらにオールマイトは負けねえよ!!」
「……峰田ちゃん、本当にそうかしら?」
「え……?」
「……緑谷ちゃんの考えを聞かせて?」
「……うん、オールマイトがいるはずの時間割を狙って、センサー対策もしてある。轟くんの言ったとおり、これは計画された襲撃……そしてその目的であるオールマイトにも、何かしらの対策があるのかも……?あとは、ええと……生徒たちをバラバラにワープさせた先にも、人を割いて待ち構えてた。……散らして殺す……きっとそれぞれのゾーンに適した配置、さっきのヴィランも明らかに水中戦を想定した人選で――」
水中戦を想定……?そうか、だとすると――
「おいおい冗談だろ……あいつら、ホントにオールマイトを殺す気で……?」
震えてる峰田くんを無視して、梅雨ちゃんに話しかける。
「ヤツらはこの場所で、水中戦を想定していた。この施設の設計を知っていたんだ。でも、ヤツらが知らない情報がある。……だってそれを知ってたら、梅雨ちゃんをこの水難ゾーンには飛ばさない」
「……なるほど、私の″個性″……ね?」
「うん……梅雨ちゃんだけじゃなくてきっと、″生徒の個性″までは把握してないんだと思う。だから警戒して、今も水から上がってこない」
この数、そして相手の有利な水中。何か作戦を……
「作戦を立てよう、二人の″個性″を詳しく教えて?私は超パワーで、全力出すとバキバキに骨折するからセーブして使ってる」
「おいおい緑谷、作戦って……まさか戦う気かよ!?ムリだって――」
「私は蛙の特徴そのままよ、具体的には――」
「二人してムシかよー!!」
「……具体的には常人より筋力があって、跳躍したり壁に張り付いたり、舌を伸ばしたり……最長で20メートル、舌の力も強いわ。あとは胃袋を外に出して洗ったり、ちょっとピリッとする粘液を分泌したり……この二つは役に立ちそうもないわね」
「分泌……!!」
「なるほどね……峰田くんは?」
「分泌……」
「……峰田ちゃん?」
「ああ、オイラは……」
頭から球状の髪の毛?をもぎ取り、壁にくっつくけてみせる。
「超くっつく。体調によっちゃ一日経ってもくっついてる。モギったそばから新しいのが生えるけど、モギりすぎると血が出る。オイラは自身にはくっつかずに跳ねる」
「……粘着度は?」
「超くっつく」
「……うーん」
「なんだよその反応!!」
バキバキィ!!!
突然、船が音を立てて真っ二つに割れた。
驚いた峰田くんが、叫びながらモギって投げまくる。
「うあああ!!」
「ストップストップ!梅雨ちゃんコイツ抑えてて!」
黒い玉がいくつも水面に浮かぶ。なるほど、これは使えるかも。
「……作戦思いついた、二人とも協力してほしい」
「けろ、わかったわ」
「んなこと言ったってよおお!!」
「……峰田ちゃん、本当にそれでもヒーロー志望?」
「うっせー!!怖くないほうがおかしいだろ!?こないだまで中学生だったんだぞ!!まだ死にたくねえよ!!せめて八百万のヤオヨロッパイに触れてから――」
「私のお尻触ったじゃん」
「私の胸も触ったわ」
「…………」
「もっかい触らせてくれたら――」
「図々しいわ!言うこと聞け!!」
「ゴハァ!!」
「――作戦は以上、用意!」
そろそろ船が沈む。
「緑谷……怖くないのかよ……?」
「……私だって怖いよ。でも、怯えてるだけじゃなんにもできない。だからきっとヒーローは、にっこり笑って立ち向かうんだ」
こんなところで終われない、私はヒーローになるんだ!!
「梅雨ちゃん、OK?」
「ええ、いつでも」
とにかく、私が目立つこと!そのためには……
「はっはっは!!
「なんだあのガキ」
「恐怖でイカれたか?」
「とうっ!!」
ヤツらが潜った。やはり有利な水中で待つつもりらしい。
10%じゃ威力が足りない……かといって腕は犠牲にできない。一か八か、肉体の限界域で調整しようにもまだ試したことがないし、何より私だけでなく二人の命も掛かってる。つまりは……
指先に意識を集中する。
「デラウェア!!」
SMASH!!
水面が深く凹んで、そこに大量のモギった玉が投げ込まれる。水が周りを巻き込み、中央でまとまってヴィランを跳ね上げた。
私は梅雨ちゃんの長い舌でキャッチされ、無事に離脱。三人で陸地を目指した。
「今朝は快便だったし、ヤツら一日はくっついたままだぜ」
「魚っぽいし、あの人たち溺れないよね?」
「よくそっちを心配できるわね」
水際で広場の様子をうかがう。依然として、相澤先生が一人で戦っていた。
「……二人とも、このまま水辺に沿って出口へ向かって」
「おい緑谷、何考えてんだ……」
「感心しないわ、無茶よ」
「今飛び出したら、二人の場所もバレる。それに……」
「手を身体中に付けたアイツ……少し離れて、相澤先生をじっくり観察してる。いつまでもあのままとは思えない」
「だからって、アナタがどうにかできるとは限ら――」
「動いた!!」
「緑谷……!!」「緑谷ちゃん……!!」
二人を巻き込まないように、まずは広場に対して平行に跳ぶ。
その間にも、戦況が変わっていく。手のヴィランと相澤先生は近接戦闘に入る。先生の肘打ちをソイツが手で止めた。直後、先生が相手を突き飛ばすように離れて距離をとる。様子がおかしい……右肘を
私は横方向に十分離れてから、広場へ向きを変えて駆け出す。
相澤先生へと、さらに二人襲いかかる。――いや、もう一人……!!なんだアイツは――やばい――叫んで知らせる……いやだめだ、間に合わない――
黒い巨体のヴィランが、先生の右腕を掴んだ。そのまま軽々と握り潰し、先生を顔から地面に叩きつける。
「先生ぇ!!」
「……ガキがなんのつもりだ……?」
私の前に、手をいっぱい付けたヤツが立ち塞がる。こちらに伸びてくる手……触られちゃいけない……
足に意識を集中して、強く踏み込む!
「……速い……な……」
相手せずに横をすり抜けて、黒いヴィランを狙う。脳みそが剥き出しの異様な風貌のヴィランは、先生の頭を押さえたまま動かない。他のヤツと雰囲気が違う、やばすぎる……!コイツには手加減なんてできない!
次は右腕に意識を集中……撃ったらすぐ逃げなければ……ぶっつけ本番だけど、腕が折れない程度をなんとなくで調整……!
「先生を離せ……!デトロイト!!」
SMASH!!!!
相手は避けようともせず、完璧にボディを捉えた。
――しかしヴィランは傷ひとつなく、先生を抑えつけたまま動いた様子がない。
「効いてない……そんな……!?」
「…………」
手応えはあった、確実に当たったはず……!なのにどうして……
うつろな表情のそのヴィランは、こちらを見ようとすらしない。
「脳無……そのガキを掴め」
「――ッ!!」
とっさに下がるが、すぐに近づかれる。コイツ、速い……!
腕が伸びてくる、この体勢じゃ避けれない……!
――急に体が引っ張られて、相手の腕が空を切る。
「俺の生徒に手ェ出すなよ」
「先生!」
相澤先生が左手だけで捕縛布を伸ばし、私を引き寄せる。
先生はどう見ても重傷だ……右腕を潰されていて、顔も血だらけ……
それに、脳無と呼ばれていたヴィラン……攻撃が効かない上にあの速さ……!
どうすれば……!?
大きな衝撃音
「効いてない……そんな……!?」
微かに聞こえた声
「――ガキを掴め」
朦朧としていた意識が覚めていく。
右腕は動かないが、まだ左腕がある。
「俺の生徒に手ェ出すなよ」
引き寄せてから、捕縛布を弛めて解く。
俺は逃げろと言ったはずなんだが……もう一度言って聞かせるか?
――いや、無駄だろうな……入試の時点でわかっていた、コイツは……
――合理的に行こう、説教は後でいい……今掛けるべき言葉は――
「俺が
「はあああッ!!!」
SMAAASH!!!!