デコのヒーローアカデミア   作:かにかまとかにたま

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No.7 兎にも角にも体育祭

 

「はあああッ!!!」

 

脳無と呼ばれていたこのヴィラン……私よりもはるかに速いが、そのぶん単調な動きだ。何度もは絶対無理だが、初撃なら躱せる……。先程と同じモーションで伸びてくる腕を見切り、拳を叩き込む……!

SMAAASH!!!

 

巨体が吹き飛び、辺りに土煙が舞う。

……痛い!!……やらかした、完璧折れてる。さっきは上手く調整できたのに……!

 

「……イレイザーヘッド……なんでその負傷で動ける……せっかくの『ショック吸収』が台無しだ……」

 

ショック吸収……最初の攻撃が効かなかったのは、やはり脳無とやらの″個性″か……

 

「ほんとカッコいいぜ……生徒のためってヤツか……?」

「っ先生!逃げましょう!」

 

相澤先生はフラフラで今にも倒れそうだ。私が背負っていくしかない!

 

「ちょっと我慢してください!」

 

私も右腕が折れてる、なんとか左手だけで乱暴に先生を抱えて背負う。……痛い、左の中指も折れてるんだった……

手のヴィラン一人なら逃げ切れる、ワン・フォー・オール10%!!

 

「――死柄木 弔、ご報告が……」

「……黒霧、アイツらを囲め」

 

「なっ……!?」

 

跳んだ先に黒いモヤモヤがあちこちに出現したと思ったら、一瞬で大勢に囲まれた……!

 

「先生、あのモヤ消せますか!?」

「…………」

 

返事がない、きっともう意識が……背負ったまま10%の跳躍じゃ抜け出せない、一か八か――

 

バタン!!

施設の出入口の扉が勢いよく開く。

 

「もう大丈夫 私が来た」

 

 

オールマイト!!助かった……!

まわりを囲むヴィランが次々に倒れていく。速すぎて見えない……

――気がつくと、オールマイトに抱えられていた。

 

「緑谷少女、相澤くんを連れて入口へ……」

「オールマイト……」

 

笑っていない……その表情から、激しい怒りが伝わってくる。

 

「脳無!!来い!!」

 

脳無を呼んだ!?ぶっ飛ばしたのに、まだ動けるのかアイツ……!だとするとまずい……

 

「オールマイト!脳無とかいうヤツ、衝撃を吸収する″個性″です!黒い巨体で素早くて力も強い、きっとオールマイト対策で……まともに戦ったら――」

「緑谷少女……」

 

オールマイトは私に向かって、ニッコリと笑う。

 

「教えてくれてありがとう…だが大丈夫だ!!」

「…………」

「……君も重傷だ……私に任せて、見ていてくれ」

「……はい」

 

ズキズキとした痛みとともに、私は遠くから見ていることしかできなかった。

 

 


 

 

「ダメだ三人とも、下がっていなさい!」

「……さっきのは俺がサポート入らなきゃやばかったでしょう」

「それはそれだ轟少年!!ありがとな!!」

 

轟少年、爆豪少年、切島少年……もちろん彼らだけではない、皆優秀なヒーローの卵たちだ。しかし……

 

「しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!!」

 

だからこそ!!私がやらねばならんのだ!!何故なら私は――

 

――平和の象徴なのだから!!

 

 

矢継ぎ早に拳を撃ち込む。

 

「″無効″ではなく″吸収″ならば、限度があるんじゃないか!?私の100%を耐えるなら!!さらに上からねじふせよう!!」

 

活動限界ギリギリで、これだけ無茶するのは初めてだな……

(チカラ)を譲渡してから、私は衰える一方だ……

 

『私、あなたに憧れて、ヒーローを目指してて……』

 

「ヒーローとは!常にピンチをぶち壊していくもの!!」

「ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!?」

 

Plus Ultra!!!

 

 

天井を突き破り、ヴィランが彼方へ飛んでいく。

 

「やはり衰えた、全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに……300発以上も撃ってしまった」

「……衰えた?どこがだよ、クソチートがぁ……!()()()、俺に嘘教えたのか!?」

「どうした?来ないなら、こちらから行くぞ!!」

 

残りは二人、なんとかして体を動かせ……!

…ゆっくりと歩き出す。

 

 

「……来るぞ……!クソ、脳無さえいれば……!」

「死柄木、落ち着いて下さい……よく見ればダメージは確実に表れている。歩き方も不自然だ、二人で連携すればまだチャンスが……」

「……うん……そうだ……そうだな……やるか……」

「幸い、子どもたちは動けない様子――」

 

「――誰が動けねえだって?」

 

ピン!

BOOOOM!!!

 

「脳みそヤローさえいなけりゃ、テメェらクソザコに負けるかよ!!!」

 

爆豪少年……!

とてつもない規模の爆発が、ヴィラン二人を吹き飛ばす。

 

「……なんてガキだ……!」

「死柄木……残念ですが、時間が……」

「……ああ、今回はゲームオーバーだ……」

 

「今度は殺すぞ……平和の象徴、オールマイト……!」

 

 


 

 

 

「全く、師弟そろって無茶をするねえ……」

 

「私の活動時間、どのくらい残っているかな……一時間くらいはまだ欲しいが……」

「オールマイト……」

「仕方ないさ!こういうこともある!」

「……カッコよかったですよ」

 

「失礼します……オールマイト、久しぶり!」

「塚内くん!」

 

……どちら様?

 

「彼は最も仲良しの警察、塚内直正くんさ!」

「警察の方ですか、なるほど」

 

この姿のオールマイトを知っているらしい。

 

「早速で悪いがオールマイト、ヴィランについて詳しく……」

「待ってくれ、生徒は無事か?イレイザーヘッドと13号は?」

「……生徒はそこの彼女をのぞいて数名が軽症、教師二人はとりあえず命に別状はない」

 

相澤先生……

 

「犠牲が出なかったのは、三人のヒーローが身を挺してくれたおかげさ」

「……ひとつ違うぜ塚内くん」

 

「生徒らもまた戦い、身を挺した!!実戦を経験したこのクラスは、きっと強いヒーローになるぞ!!」

 

 

 

「その、脳無ってヤツ……やたら頑丈で……それに、感情が読めないっていうか……ぶん殴ったのにこっちを見なかったんです。めちゃくちゃ動きが速いのに、真っ直ぐ単調な攻撃で……主犯のシガラキ?の命令に従ってる感じでした」

 

その場で塚内さんに事情聴取を受けた。一人で飛び出したところと腕を折ったところを話すと、リカバリーガールに小言を言われたけど……

 

 

 

翌日は臨時休校、さらに翌日……

 

「お早う」

 

「相澤先生!!」

「復帰早ええ!!プロすぎる!!」

 

「俺の安否はともかく、話さなきゃいけないことがある」

 

「……雄英体育祭が迫ってる!!」

「クソ学校っぽいの来たぁぁ!!」

 

「ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

「警備は例年の五倍に強化するらしいから安心しろ……何より雄英の体育祭は……最大のチャンスだ、中止ってワケにもいかない」

 

「全国のヒーローが注目するビッグイベント!プロに見込まれればその場で将来が(ひら)ける」

「時間は有限、プロからのスカウトを懸けた……年一回のチャンスだ!」

 

HR(ホームルーム)は以上……あと緑谷、ちょっと来い」

「……え!?」

 

 

廊下に行くと、捕縛布で縛り上げられる。

 

「なんで私だけ……」

「……お前があのとき飛び出したからだ」

「でも他にも……かっちゃんと……轟くん、切島くんも後から来てましたよ!」

「単身で飛び出したのはお前だけ……加えて、生徒で重傷もお前だけだ。しかもヴィランの攻撃ではなく自分自身の″個性″で負傷している」

「うっ……」

「敵の力量を見誤った、お前が死んでいないのは運が良かっただけだ」

「……はい」

「緑谷、次に勝手な行動したら罰則だ……いいな?」

「はい」

 

「……先生」

「……どうした」

「……無事でよかったです」

「……授業始まるぞ」

 

 

 

昼休み

 

「やっぱテンション上がるなあ!!」

「プロへの近道だ、ワクワクするぜ!」

 

「みんなノリノリだね……」

「緑谷くん、君は違うのかい?ヒーローになる為在籍しているのだから、燃えるのは当然だろう!?」

「そりゃあそうだけど……」

 

体育祭は当然見たことある、でもあれは……

 

「デコちゃん、飯田くん……頑張ろうね体育祭……!!」

「お茶子ちゃん、顔がやばいよ」

 

そういえば、お茶子ちゃんはどうしてヒーローを……?

 

 

「究極的に言えば、お金」

「なんか意外だね」

「恥ずかしい……飯田くんとか、家業を継ぐっていう立派な動機なのに……」

「生活の為の目標、立派じゃないか!」

 

「とにかく、私はヒーローになってお金稼いで、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」

 

ヒーローを目指す理由、か……

 

 

 

「――緑谷少女がいた!!……ごはん、一緒しないかい?」

「……?はい」

 

 

「デコちゃん、相澤先生に続いてオールマイトまで……モテモテ?」

「麗日くん、それは流石に違うだろう……。彼女の個性はオールマイトに似ているし、気に入られているのかもな」

 

「…………」

 

 

 

 

 

「活動限界が一時間前後!?」

「ああ、無茶しすぎたよ……まあいいんだ、それより体育祭だ」

 

「あと二週間、それだけあればかなり仕上がりそうです。全身常時発動と出力の調整、どっちを優先するべきですかね?」

「10%でも全身で使いこなせば見違える動きができる、オススメは前者だ。それに調整ができたと思っても、動きながらだと上手くいかない可能性もある。というか君、腕折ったばっかりだろ」

 

「ともかく練習方針より、話したいことがあって呼んだんだ」

「……なんでしょう?」

 

「活動時間のこともあって、私が平和の象徴として立っていられる時間は……実はそんなに長くない」

「……はい……」

「ヴィランの中に、それに気付き始めている者がいる」

 

「君に″力″を授けたのは、″私″を継いで欲しいからだ!」

「全国の注目を集める体育祭!その舞台で」

「君が来た!ってことを、世の中に知らしめて欲しい!」

 

「ええと、その……継いで欲しいという言葉、すごく嬉しいです……でもなんていうか……」

「みんなそれぞれ本気でヒーローを目指してる……体育祭で成功を収めるのは、ごく一部の人だけで……」

 

「緑谷少女……みんな本気だから、さ」

「みんな本気だから、本気で競い合う。常にトップを狙う者と、そうでない者……そのわずかな気持ちの差は、社会に出てから大きく響くぞ」

 

 

 

 

 

 

二週間はあっという間に過ぎ、体育祭当日。A組控室で待っていると……

 

「……轟くん?どうしたの?」

「緑谷、お前オールマイトに目ぇかけられてるよな……そこ詮索するつもりはねえが……お前には勝つぞ」

「私!?えーと、うん。わかった」

 

「緑谷、なんだよその返事!」

「轟くん、直球だねえ!」

「…………」

 

 

「でも私だって、負ける気はないから」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

体育祭前日 夕方

 

『何だデコ』

『いい機会だと思ったから……かっちゃん、ちょっと見てて!』

 

ワン・フォー・オール、10%!全身に意識を行き渡らせる。

 

『ほっ!』

『はあっ!』

 

軽く飛んだり跳ねたり、素振りしたり……

 

『どうかな?』

『マシにはなったな』

 

 

『体育祭、ガチで殺るぞ』

『それはダメだよ……』

 

 

『俺が勝ったら、てめぇの″個性″について教えろ』

『なっ……!?』

『″個性″について……知らない、分からないじゃなくて()()()()……だったな?』

『…………じゃあ私が勝ったら?』

『二度と聞かねえ』

『……わかった、約束する』

 

 

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