ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

12 / 67
第12話:六年目の祟り

 

 その日の部活でここ最近では珍しく圭一は上位に入れず、罰ゲームを受ける立場となった。

 

「くそ……ツキの寄り戻しが来たのかな……?」

 

 そうそう都合良く連勝は出来ないと言う事か。そして、一位になったのはここ最近、不調であった魅音であった。

 一位が魅音で圭一が罰ゲームを受ける立場か。魅音の側からすればどんな罰ゲームを提案するのか私にはちょっと分からない。

 魅音からすれば圭一にフラれた直後なのだ。これは飛びっきりの罰ゲームで意趣返しをするのでは。

 そんな陰険な性格ではないと知りつつも、当事者でもないのに私はゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

 

「それじゃあ、圭ちゃんへの罰ゲームだね~」

 

 くっくっく、と魅音は意地悪く笑う。圭一はフってしまった気まずさもあるのか、どんな罰が下るのか顔面蒼白だ。

 圭一のそんな様子を面白がるように魅音は視線を向けながらじっくり時間をかけてその一言を言った。

 

「今日の帰り道、圭ちゃんは梨花ちゃんをおんぶしてお家まで送り届ける事~」

「へ?」

「みぃ!?」

 

 言われた圭一より私の方が強く反応してしまった。ちょっと待って魅音。それって罰ゲームなの?

 

「み、魅音? 何を考えて……」

 

 圭一も困惑している。それはそうだ。圭一の罰ゲームなのにどうしたって私の名前が出て来るのか。それに加えて圭一におんぶだなんて……。そんな子供じゃあるまいに……いや、子供だけど、私は。

 

「罰ゲームは絶対だからね」

「圭一くん、覚悟決めなよ」

 

 念を押すように魅音は言い、レナも笑みを浮かべたまま続けて言う。

 

「そうですわね。わたくしは今日の帰りもにぃにぃの所に行くので梨花を一人で帰すのは少し不安に思っていた所ですの。圭一さんが一緒なら安心ですわ」

「いや、梨花ちゃんを送るのは文句ないが、なんでおんぶ?」

「それが罰ゲームだからですわ」

 

 ニヤリと笑みを浮かべたまま沙都子は言う。私の意向が完全に無視されているのは何故だろう。ともあれ、帰りは圭一におんぶしてもらって帰る事に決定してしまった。

 部活の罰ゲームは絶対。私だって部活メンバーだ。それくらいは分かる。分かるのだが。

 

「みぃ、圭一、申し訳ないのです……」

「いや、梨花ちゃんが謝る事はないんだが……魅音の奴も何を考えているのか」

 

 女心に疎い圭一は放っておいて私なりに考えるなら魅音は私の手助けをしてくれたという事だろうか。それにしたって圭一におんぶされるなんて。いや、嬉しくないなんて事はないんだけれども。

 

「それじゃあ、お願いしますです」

「ああ」

 

 しゃがみ込んだ圭一の背中に乗る。平気な様子で圭一は立ち上がり、そのまま歩き出す。

 

「梨花ちゃんは軽いな」

「みぃ。レディに重いなんて言ったらオヤシロ様の祟りが下るのです」

「あはは、それは怖い」

 

 私の言葉に圭一は気楽な調子で笑う。やはり圭一にとって、私は恋愛対象ではないんだなぁ、という事をその声音から実感してチクリと胸が痛む。

 まぁ、圭一はそういう男よね。レナも魅音も沙都子も。圭一とって大事な仲間ではあるが、恋愛対象というのはまた違うだろう。そういう圭一だからこそ信頼が置けている所があるのも否定出来ない事ではあるのだが。

 そんな軽口を叩きながら、圭一は私をおんぶしたまま古手神社への道を歩く。圭一の家とは反対の方向だが、圭一は文句ひとつ言う事はなかった。

 

「そういや、祟りと言えばさ」

 

 不意に圭一が真剣な様子で口を開く。なんだろう、と思いつつ、私は圭一におんぶされたままその言葉を聞く。

 

「五年目の祟りもしっかり起きたんだよな」

「みぃ……」

 

 それはあまり考えたくない事だった。

 五年目の祟りもしっかり起きてしまったのだ。圭一の活躍で北条家から追い出された北条鉄平はどういう経緯を辿ったのか知らないが山狗に捕縛され、殺されてしまい、五年目の祟りの犠牲者となった。消えたのはリナだ。

 こちらもレナの父親への美人局が失敗した後、山狗に捕縛されたのだろう。死体は見つかっておらず鬼隠しにあったと村では言われているが、殺されているのは間違いがなかった。

 また一人、死んで、一人、消えた。オヤシロ様の祟りは村の人間の間では継続中という事だ。

 

「オヤシロ様の祟りって、結局、鷹野さんたちの陰謀なんだよな?」

「……そうね。一年目、二年目には鷹野たち山狗は関与していないようだけど、三年目からは鷹野たちの関与があるわ」

 

 ここは猫を被らず、真面目に話す場面だろう。そう思った私は素の口調で圭一と話す。

 

「それじゃあ、六年目は起きないのか?」

 

 それは危惧する所であろう。普通に考えれば鷹野たちがいなくなった今、来年、六年目の祟りが起きるとは考え難い。……のであるが。

 

「それは分からない。これまでの祟りで被害にあったのは村に害する者たちだった。……なんてぼかしても仕方がないわね。北条家関連の人間が祟りに遭う事が多かった」

「それじゃあ……」

「鷹野たちはもういない。だけど、園崎の人間が何か勘違いして祟りを遂行してしまう可能性はあるわ」

 

 園崎家のシステムが裏目に出る形だ。これまで園崎家は実際の力以上の力を持っている風に見せかけて村で何かが起こったらそれも園崎の意図していた事、と見せかける事で村中に影響力を実際以上に保って来た。

 分かり易く裏目に出た例としてはそのせいで園崎が全ての黒幕と勘違いしてしまった大石などがいるが、来年もそんな園崎への『配慮』から祟りを起こそうとする人間が出てもおかしくない。

 そうなれば対象に選ばれるであろう人間は……。

 

「それだと沙都子と悟史が危ないな」

 

 圭一の言った言葉はズバリ的を射ていた。相変わらず、普段はともかくここ一番では抜群の頭のキレを発揮する男だ。

 村の敵と言える存在の多くが既に死んだか消えるかしている中、標的として村の敵として未だに認識されている北条家の生き残りである沙都子と悟史が狙われる可能性は高い。

 それだけは何としても避けたい事であった。

 

「北条家への村八分は未だに継続中よ……それを何とかしないといけないのは私も分かっている事なんだけど……」

「それじゃあ、行動に移さないとな」

 

 ハッキリした声で圭一は言う。行動に移す? どうすると言うのか。私は先が気になり、圭一に続きを促す。

 

「北条家を村八分にしているのは魅音には悪いが園崎の影響が大きいんだろう? それなら園崎に北条家を許すって言わせればそれも収まるんじゃないのか?」

「……そうね。でも、それは難しい事よ? 園崎家の現当主・お魎に直々に北条家を許すと言わせるくらいじゃないといけないわ。そんな事が……」

「出来るさ」

 

 圭一は断言した。それがどれほど難しい事か、分かっているのだろうか。だが、圭一は前の世界でやり遂げた。園崎お魎をも動かして沙都子の解放を成し遂げる快挙をやってのけた。

 この世界でも圭一はそれをやってくれる。そんな根拠もない予感が脳裏をよぎる。

 

「……貴方なら本当に難なくやってのけそうね」

「は、当たり前だぜ、梨花ちゃん。俺を誰だと思っていやがる。この前原圭一様に不可能はない!」

 

 不思議だ。どれだけ困難な事でも圭一ならば当たり前のように達成してみせる。そんな気がする。

 この力があったからこそ昭和58年の6月の牢獄を突破する最大の力となったのだろう。

 

「それでどうする気?」

「当然、魅音の婆ちゃんに直談判する。北条家を許して欲しいってな!」

 

 堂々と言ってのける圭一。仮にもヤクザの頭目であるお魎の元に押しかけて直接、北条家を許すという言葉を引き出そうと言うのか。

 なんて無謀。なんて無茶。それでも圭一ならば、あるいは……。

 

「ふふ……圭一の背中は広くて、暖かいのです」

「そ、そうか? 自分の体躯にはあまり自信はないんだが……」

 

 圭一ならばやってのけてくれる。また私に奇跡を見せてちょうだいね、圭一。そう思いながら、私は圭一の背中の感触を堪能するのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。