ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

13 / 67
第13話:圭一、動く

 

「え? ばっちゃと会いたい?」

 

 すぐに圭一は動いた。次の学校の日。魅音にお魎に会いたいと持ち掛けたのだ。

 早急過ぎるのでは、と思わない事もない私であったが、こういう事は後回しにするのも良くないのだろう。解決出来る問題は早めに解決しておくに限る。

 

「どうして?」

 

 案の定、魅音は不審そうに、とまではいかずとも不思議そうに圭一に問い掛ける。圭一がいきなりお魎に会ってする話なんて思いつかないのだろう。

 

「いや、説明すると長くなるんだけど……沙都子と悟史のためだ」

「沙都子と悟史の? どういう事、圭ちゃん」

 

 圭一の様子から真剣な話だと察したのだろう。魅音も真剣な顔になる。側で話を聞いていたレナも真剣な表情だ。沙都子に関しては当人に話すのは話が纏まってからの方がいいだろうと今は席を外して貰っている。

 

「今年の祟り、オヤシロ様の祟りがあっただろ?」

「……ああ。北条鉄平だね」

「そうだ」

 

 その言葉で察したように魅音は言う。鉄平が殺され、リナが鬼隠しにあった。五年目の祟りは起こってしまったのだ。その事に関して、魅音、いや、園崎はどう思っているのかは分からないが。

 山狗との戦いの最中に魅音や詩音、大石と言った近しい人たちは入江の口からこの一連のオヤシロ様の祟りの真相を聞いている。しかし、それがお魎や園崎全体に情報として行き渡っているとは考え難い。

 

「俺はよく知らないんだけど、園崎家得意のブラフ戦術ってヤツがあるんだろ?」

「け、圭ちゃん……その話をどこから」

「いや……」

 

 おそらくは圭一は以前の世界の記憶も含めてその事を把握している。この世界の記憶だけしかない魅音が困惑するのも無理はなかった。

 

「オヤシロ様の祟りで犠牲になっているのは雛見沢に敵対した、あるいは害を成したと思われる人間たちだ。だったら、来年、六年目の祟りも起こり得るんじゃないのか?」

「で、でも、それを起こしている鷹野さんたちはもういないんでしょ?」

「ううん、魅ぃちゃん」

 

 魅音の言葉に対し、レナが口を開く。

 

「魅ぃちゃんの所の人たちがお魎さんのために、園崎家のために、って『気を利かせて』、凶行に及ぶ可能性があるって事だよ。そうだよね、圭一くん?」

「お、おう」

 

 流石はレナだ。凄い洞察力の良さだ。レナは魅ぃちゃんの所の人たち、と明言するのは伏せたがぶっちゃけて言えば園崎家の配下のヤクザの人間がそういう行動を取る可能性は充分に有り得る事だ。

 これは別にヤクザの世界に限った話ではないが、気を利かせるというのは大事な事だ。特にヤクザの世界ではその重要性は大きい。ヤクザの中でも雛見沢や興宮の界隈で起こった事は全て自らの仕業、とブラフを張っている園崎ではさらに。

 園崎家のヤクザでも、ある程度の立場にいて、園崎家のブラフ戦術を知っているような者――たとえば葛西などは話が別だが、末端まで行けば園崎のブラフ戦術を知っているかどうかは怪しい。

 そのブラフ戦術に騙されてレナも(L5を発症していた事もあるが)園崎が全ての黒幕だと狂乱し惨劇を引き起こす事もあった。

 レナに言われ魅音もその可能性に思い当たったのか「あー」と返事をする。

 

「そうだね……。ウチの若い衆がばっちゃのために、園崎のために、ってやっちゃう可能性……ううん、もうぶっちゃけるなら六年目の祟りを引き起こしちゃう可能性は確かにあるね……」

「その場合、狙われるのはやっぱり北条家関係者が一番可能性が高い」

「そうだね、圭ちゃん。でも、それでばっちゃと会いたいって言うのは?」

 

 大体圭一の言いたい事は把握したようだが、魅音はその点まではまだ考えが至らないのか訊ねて来る。圭一はハッキリと答えた。

 

「魅音の婆ちゃんが今の園崎の元締めなんだろ? なら、魅音の婆ちゃんに北条家を許す、って言ってもらえばそんな気を利かせるも何も、そんな凶行に走る奴はいなくなるんじゃないか?」

「ばっちゃに北条家を許すって言わせる!? そりゃ、無理ってもんだよ!」

 

 お魎の頑固さをよく知っている魅音が声を荒げて反論する。

 確かに普通に考えればまず不可能な事だろう。お魎に北条家を許させる事など。

 

(だけど圭一なら……!)

 

 しかし、圭一は以前の世界でやってのけている。園崎お魎を動かして、村全体をも動かして、北条家を、沙都子を村八分から救っている。だから、今回もきっと出来るはずだ。

 

「俺なら言わせて見せる。だからなんとか取り次いでくれないか?」

 

 しっかりと圭一は魅音の目を見て、言う。流石に魅音もこの要求を突っぱねるのはやり辛い。しかし、ここで私は圭一に助言をする事にした。

 

「圭一。まずは外堀を埋めるという手もあるのです」

「外堀を埋める? どういう事だ、梨花ちゃん」

「味方を増やす、という事なのです。喜一郎ならボクが頼めばきっと協力してくれると思うのです」

 

 雛見沢御三家、園崎家・古手家と並ぶ最後の一つ、公由家。その頭首であり、雛見沢村の村長を務める公由喜一郎。彼は私の事を実の孫のように(彼にも孫娘がいると聞いた事があるが)可愛がっている。

 かつてのダム戦争で対立した事もあってダム誘致派であった北条家の忘れ形見である沙都子には微妙な感情を抱いているのは確かだが、私が頼みこめばおそらくは味方に引き込む事は充分出来る。

 お魎を説得する上で喜一郎がこちら側に付いてくれているというのは大きい事だ。

 私も、もう躊躇わない。繰り返す昭和58年の6月で学んだのだ。自分に出来る事を精一杯やる。早々に諦めて投げ出す事をせず、自分の力の全てを出し切る。それが幸せへの道だと思うから。

 

「村長さんなら魅ぃちゃんのお婆さんとも歳が近いし、その言葉を魅ぃちゃんのお婆さんも無下には出来ないね」

 

 私の提案にレナが賛成の意を示す。圭一も頷く。

 

「そうだな。村長さんにも協力してもらおう。俺たちが目指すのは園崎だけが北条家を許すんじゃなくて、村全体が北条家を許す事だ。沙都子のためにも、今はリハビリ中の悟史が安心して出て来れるようにするためにもそれは成し遂げないといけない」

「圭一くんなら出来るよ」

 

 熱意を燃やす圭一にレナが微笑みかける。むー、この二人もやっぱりいいコンビね……。私も負けてられないな。

 

「公由のお爺ちゃんかぁ。確かにお爺ちゃんの言う事ならばっちゃも相手にしないって事はないと思うけど……それでもばっちゃに北条家を許させるなんて出来るかなぁ……」

 

 魅音は弱気を示す。このヘタレが、と内心で思ってしまうが、ダム戦争から始まるここ数年のしがらみですっかり北条家敵視で凝り固まってしまっている村を、お魎を誰よりも知っている立場を考えれば一概にそうも言えないか。

 だが、だからこそ、この村のしがらみを断ち切ってくれる新しい風が必要だと以前、魅音は言ったではないか。圭一が転校してくる前に。その新風こそが、圭一なのだ。

 

「魅ぃ。今こそ、村の悪しき風習を変える時なのですよ」

「……そうだね。なんとかばっちゃと顔を会わせる機会を作れるようにおじさんも取り計らってみるよ」

「悪いな、恩に着るぜ、魅音」

 

 魅音も決意したようだ。これで私たちのするべき事はその機会より前に喜一郎の説得か。お魎を説得するのに比べれば遥かに楽な事だが、彼もなんだかんだで頭の固い年寄りであり、北条家にお魎程ではないが敵対心を抱いている身だ。楽に事が運ぶと油断していると足元をすくわれるかもしれない。

 

「よし! それじゃあ俺たちは村長さんと後は詩音にも話をしないとな。葛西さんも味方に付いてくれれば頼もしいぜ」

「そうだね、圭一くん。魅ぃちゃんのお母さんも味方に付いてくれるといいね」

 

 なんだか二人で盛り上がっている圭一とレナ。うーん。やっぱり、私も負けてられないな……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。