ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第20話:夏休みの予定は?

 一学期の終業式が終わり、ついに夏休みがやって来た。今日は部活も行われず、みんなでエンジェルモートに集まって今後の予定を話し合う事になった。詩音もバイトをしている日なので暇そうならば会話に入って来てもらおうかという目論見だ。

 

「なんだか、わたくしの知らない内に皆さんが奔走されていたようですね……」

 

 まず沙都子がそう声を発する。北条家を許すとのお魎の言葉。それが御三家会議で発せられた事は既に村中の噂になっていた。

 特に年寄り連中はこの手の話題に敏感だ。さらには気になる噂は一晩で村中に広まる雛見沢。園崎が北条家を許したなどという事はあっという間に広まって当然であった。

 私たちから沙都子に直接この話をした事はないが、沙都子もどこかで耳にする事があったのだろう。私は沙都子と一緒に暮らしているが、四六時中一緒にいるという訳ではない。

 

「とりあえずお礼を申し上げておきますわ。皆様にはお世話になったようですわね」

「みー、別に構わないのです、沙都子」

 

 少し恥ずかしそうに不器用に礼を言う沙都子に私は笑顔で語り掛ける。他の面々も同じだ。

 

「ああ、俺たちがやりたくてやった事だからな」

「沙都子ちゃんは気にする必要はないよ」

「これもおじさんたちが付けないといけないケジメってヤツさ」

 

 圭一、レナ、魅音。みんな笑みを浮かべて返す。沙都子は私たちが気にするなと言っている以上、過度に気にするのも悪いと思ったのか普段の調子に戻った。

 

「をーっほっほっほ! それでは皆さん、夏休みの予定をたっぷり、話し合おうではありませんか」

「それなのですが、ボクはみんなと一緒にプールに行きたいのです」

 

 真っ先に私がそう口にする。あの御三家会議の後、圭一には既に話してある事だ。

 プール、水泳。みんなの感覚でも一年ぶりくらいかもしれないが、私の感覚ではもっと長い。繰り返す世界の終盤は羽入の力も衰えてきて、昭和58年の6月の始めの方にまでしか遡れなくなっていたので泳ぐという行為自体をするのが物凄く久しぶりなのだ。

 まさかカナヅチになってないわよね、私。泳ぎは自転車の乗り方とかと同じ長期記憶だと聞いた事があるから大丈夫だろうか。

 

「それはいいね、梨花ちゃん」

 

 真っ先にレナが賛同を示す。魅音もくっくっく、と不敵に笑う。

 

「みんなで水泳対決だね。圭ちゃん。まさかカナヅチなんて事はないよね?」

「バカにするな、魅音。俺はしっかり泳げるぞ」

 

 挑発的な目で魅音に見られ、圭一が反応する。圭一がカナヅチの世界もあったような気がするのだが、記憶が朧げだ。嘘を言っている様子はあの御三家会議の後では見られなかったので少なくともこの世界の圭一は普通に泳げると見ていいだろう。

 

「へぇ、皆さんでプールですか。いいですね~」

 

 そこに注文したメニューを持って来た詩音が口を挟む。テーブルの上にアイスティーだのパフェだのを並べながら、楽し気な笑みを浮かべる。

 

「詩ぃも一緒にどうですか? ボクたちは拒みはしないのです」

「私としても是非ともご一緒したいんですが、バイトのシフトの都合次第ですかねー」

「詩音さんは夏休みでもアルバイトで大変ですわね」

「いえいえ、それ程でもないですよ、沙都子。むしろ、お姉の方が受験勉強しなくて大丈夫なのかって心配なんですけどね」

 

 笑みを浮かべてつつも詩音は魅音に視線を向ける。魅音は痛い所を突かれた、と言うように黙り込んだ。

 

「……リ、リフレッシュは必要だからね」

「そのリフレッシュがいつまで続くのか……。まぁ、私は別にお姉の事なんてどうでもいいんですけどね」

 

 そこまで話した所で他のスタッフが詩音を呼び、詩音は「それじゃあ、また後で」と言って私たちのテーブルから離れて行った。

 

「と、とにかく、プールね。それでまずは予定決定でいいんじゃないかな」

 

 気を取り直すように魅音はそう言い、他の面々も異論はないので頷く。魅音の受験の合否が心配になる所であったが。

 

「うん。レナとしてもそれでいいんだけどね、魅ぃちゃん」

「なんだい、レナ。何か提案でも?」

「せっかくなんだし、水着を新しくしたいなぁ、って思って」

 

 その言葉にハッとする。水着を新調か。それはいいかもしれない。というか、ウチにスクール水着以外の水着ってあったかしら。この外見ならまだスクール水着で一般のプールに行ってもおかしくはないかもしれないが、どうせなら普通の水着を用意する事もやぶさかではない。

 その方が圭一に効くかもしれないしね。スクール水着姿は部活の罰ゲームで何度か見られて既に圭一にとっても見慣れたものになっているだろうし。

 

「レナ。それはいい提案なのです」

「わたくしたちも水着を買うのですか? そんなお金の余裕がありますかね……」

 

 私が乗り気になった所で沙都子が現実的な事を言う。確かに水着はややお金が張るが……。

 

「ん~、しょうがない。梨花ちゃんと沙都子の分はおじさんがお金を出してあげるよ」

「魅ぃ、それは悪いのです」

「いいって、いいって。大した額じゃないし」

 

 大金持ちの園崎家からすればそうかもしれないが、あまり仲間同士でお金を払ってもらうというのもどうだろうかと思った。

 しかし、魅音は気にした様子もない。

 

「いいじゃねえか、梨花ちゃん、沙都子。この際だし、魅音の厚意に甘えちまえよ」

「そう言って圭一はボクたちのエッチな水着姿が見たいだけなのではないですか?」

「なっ……そんな事はないって」

 

 笑みを浮かべて圭一をからかうと圭一はちょっと頬を赤らめた。ふふ、脈あり、かしらね。何故かレナも顔を赤くしている。

 

「圭一くんにエッチな目で見られるのはちょっと恥ずかしい、かな、かな」

「レナまでそんな事を……。俺は聖人君子の誉れ高い身なんだ。そんなゲスの勘繰りはやめてくれ」

「聖人君子の誉れ高い割には部活の罰ゲームではしゃいでいるようだけど?」

 

 レナに対して毅然と言い放った圭一だが、魅音にまた痛い所を突かれる。

 

「まぁ、みんなで圭ちゃんを悩殺してやるってのは悪くないね」

「悩殺されたりなんかしないからな。絶対に」

 

 圭一はそう言い張るもののどうなる事か。萌えの伝道師としてペラペラ口が回る事は知っているが、実際に女の子に手を出す事はしない事も知っている。どちらの顔が顔を出すのだろう、と少し気になった。

 

「これも部活なのです。圭一を一番、興奮させた人が勝ちなのですよ」

 

 なので、面白がって私もそう話題に便乗する。圭一はさらに困った顔になった。レナと沙都子はやや赤い顔。魅音は平気そうにしているが、表向きそう振る舞っているだけで内心はドキドキしている事に間違いはない。

 魅音もしっかりと女の子である事を私は知っているから。ある意味、詩音以上に。

 

「ま、まぁ、俺をどうこうするかはさておき、水着を新調するってのは悪くないな」

「わたくしたちはともかく男の人の水着なんてどれもあまり変わりませんでしょう?」

「それもそうだが……」

 

 沙都子に突っ込まれて再び圭一が答えに窮する。全部、一緒と言ってしまうのは言い過ぎだろうが、女性用の水着に比べればバリエーションに限りがあるのも事実だろう。

 

「大体、水着のお買い物に圭一さんも一緒について来るおつもりですの? わたくしとしては男性と一緒にそういった物を選ぶのはちょっと……」

「そ、そうだね、沙都子ちゃん。まるで恋人同士のデートみたいかな、かな」

 

 苦言を呈した沙都子にレナが同意する。確かに圭一と一緒に水着選びというのは少し恥ずかしいな。どの道、プールに行くんだから見られる事に変わりはないんだけど。

 

「なら、女性陣だけで行ってくれればいいじゃねえか。俺は水着を新調なんてしなくても別にいいよ」

 

 そんな訳で圭一もこう言い、水着の新調には私たちだけで行く事になった。仲間はずれにしているようだけど、少しホッとした思いがあるのも事実だ。

 とりあえず、私たちの夏休みの予定話し合いの第一回はそんな感じで幕を下ろすのであった。

 

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