ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第21話:水着の買い物

 夏休みの予定話し合いの数日後、私たちは興宮の服屋に行き、水着を新調する事にした。

 当初の予定通り、女性陣……私と沙都子、レナと魅音だけで今回は圭一は置いてけぼりだ。少し可哀想に感じるが、新しい水着は実際にプールでのお披露目まで楽しみにしておいてもらう事にして今回は我慢してもらう事にしよう。

 

「みぃ、ボクはスクール水着くらいしか着た事がないのです」

「それは問題だねぇ。梨花ちゃんのためにもとっておきの水着をチョイスしないと」

 

 私の言葉に魅音が快活に答える。圭一の目を惹く事が出来るとっておきの水着を着てやろうという気はあった。

 勿論、レナたちも魅力的な水着姿を見せる事だろう。それに負ける訳にはいかない。

 水着コーナーに行き、色々と見て回る事にする。やっぱりビキニかしらね……まだ、私の体には少し早い気がするけど。

 

「梨花ちゃんや沙都子ちゃんにはワンピースタイプの水着がいいんじゃないかな、かな」

 

 レナが提案してくるのは露出度の少ない水着だ。私や沙都子の年齢を考えると下手に色気を出そうとしても多分、無駄な行動だろうからそのチョイスがそこまで間違っているとは思わない。思わないのだが。

 

「せっかくなのでビキニを着てみたいのです」

「大胆ですわね、梨花」

 

 私の主張に沙都子が反応する。ビキニタイプの水着は部活の罰ゲームでも着た事がないはずだ。ある意味、それ以上に凄いエンジェルモートの制服は着ているが、これなら圭一を魅了するのにも充分ではないかと思える。

 

「梨花ちゃんにはまだ早いんじゃない?」

「そういう魅ぃは自分はビキニを着るつもりなのです」

「そ、そ、そんな事はないって!」

 

 指摘すると露骨に魅音が慌てる。着るつもりだったな、これは。やはり魅音もまだまだ圭一を諦めてはいないらしい。これは私も負けてはいられない。

 

「全く。梨花は圭一さんに見られるという事を分かっておりますの?」

「圭一に見られるからだからこそなのですよ、沙都子」

「な、な、何を仰っておりますの!?」

 

 沙都子が素っ頓狂な声を上げる。沙都子は圭一を兄のように思ってはいても恋愛感情の類は抱いていないだろうからそれも当然だが、私としては今回のチャンスに圭一を魅了してやらないと困るのだ。

 

「レ、レナは圭一くんにあまり恥ずかしい姿は見られたくないかな、かな」

 

 顔を赤くしてレナがそう言う。この場に圭一がいる訳でもないのに既に水着姿を見られたかのような恥ずかしがりっぷりだ。

 

「ですが、誰の水着姿が圭一を一番、興奮させられるかの部活の勝負なのですよ」

「梨花ちゃん、アレ、本気だったんだ……」

 

 驚いたような声を魅音が漏らす。本気に思われていなかったのか。私のこの体で男の人を興奮させるなんて事はそもそも無理のある事だと思っていたのか。それも仕方がないかもしれないが。だからこそ、圭一を魅了させてやりたくなる。

 

「本気も本気、大マジなのです」

「そ、そのような事は圭一さんにサービスしすぎですわ」

 

 困惑の声を沙都子も漏らす。恥ずかしいのだろう。正直に言えば私も恥ずかしいが。繰り返す昭和58年の6月で圭一に水着を披露する機会なんて、部活の罰ゲームを除けばほとんどなかったからね……。そこにいきなりビキニ姿を晒すなんてのは精神年齢ではこの場の誰にも負けないと思っている私でも恥ずかしい。

 そんな気持ちを誤魔化すためか私はとある水着を手に取る。

 

「魅ぃ、これはどうなのですか?」

「え!?」

 

 素っ頓狂な声を魅音は上げる。私が手に取った水着は所謂、マイクロビキニというものだったからだ。当然、私や沙都子では着こなせないが、魅音やレナならギリギリ着こなせる。

 

「り、梨花ちゃん……流石のおじさんもそれはちょっと……」

「はぅぅ……エッチだよぉ」

 

 赤い顔で魅音とレナが呟く。私とて本気ではない。水着を元の場所に戻し、物色を続ける。のだが、ここでも新しい問題が浮かび上がった。

 

「ビキニの類はボクたちに合うサイズのものがないのです……」

「仕方がありませんわ、梨花。わたくしたちはまだ子供なのですから」

 

 認めたくはないが、あまり色気のある水着で今の私や沙都子に合うサイズの物は見当たらない。子供は子供らしく子供用水着でも着ていろという事なのか。レナや魅音なら選択の幅も広がるのだが。

 

「まぁ、梨花ちゃんや沙都子が妙に色気づく必要はないって」

「二人にはそういうのはまだ早いかな、かな」

 

 魅音とレナにこう言われるが屈辱的であった。百年の時を生きた魔女の私でも体は小学生。色気づく方がおかしいのか。何か抗弁したかったが、無理して大人びようとしていると思われるのが嫌で押し黙る。

 オーダーメイドで私たちのサイズに合うビキニを作って貰う事も出来るかもしれないが、それには時間がかかるだろうし、そんな事をしてもらえばとんでもないお金を要求されるのが目に見えているので止むを得ずビキニは諦める事にする。

 レナと魅音はやっぱりビキニでいくつもりなのかしら……。それだと圭一の目を惹くという点では大きく後れを取ってしまう。

 

「梨花ちゃんや沙都子は可愛らしい水着を着るといいんじゃない? それでも圭ちゃんをドキドキさせるには充分だよ」

「みぃ、そうなのですか?」

 

 男の人をドキドキさせるには色気のある水着を着ないといけないと思い込んでいたが、可愛らしいタイプで攻めるのもありなのか。そもそも今の私の体では色気のある水着を着ても色気は出ないだろうしね……。

 

「やっぱりワンピースタイプがいいんじゃないかな」

 

 レナはそう言って露出の少ない水着を勧めて来る。こういうのもありと言えばありなんでしょうけど。

 

「これで圭一を魅了出来ますか?」

「出来るんじゃないかな? 圭一くんもきっと可愛いって言ってくれるよ」

「可愛いと思われたいのとは少し違うのですが……」

 

 可愛いという感想は恋する相手にも向けられるものだろうが、ここで言う可愛いとは年下の子供、いやもっと言ってしまえば恋愛対象外の女の子に対して発せられるタイプの可愛いだろう。それは私の求めるものではない。

 とはいえ、今の私の体では無理をしても大人ぶっているだけになるのも事実である。

 

「早く大人になりたいのです……」

 

 結局、こう言うしかなく、レナと魅音がそれなりに色気のある水着を買ったのに対して、私と沙都子は可愛らしい水着を買って服屋を後にする事にした。

 

(レナも魅音もまだまだ圭一の事を狙っているって事ね。私も負ける訳にはいかないわね……)

 

 その思いを抱きながらみんなして自転車をこいで雛見沢まで戻る。舗装された道路が砂利道に変わると雛見沢に帰って来たのだと実感させられる。

 さて、あの水着で圭一の心を奪う事は出来るのだろうか。圭一は普段から変態的発言をしているが、妙な所では紳士である。子供に本気で欲情したり、手を出す真似はしないような気がする。中学生と小学生の恋愛なら許されるんじゃない? 許されないだろうか。

 ああ、やはり私がもう少し大人だったらなぁ。そうすれば胸を張って圭一を狙ってアピールする事も出来るというのに。

 私が大人になる頃にはレナや魅音とくっついたりしないでしょうね、圭一。

 

「梨花、何を悶々としておられますの?」

「みぃ、沙都子にはまだ早い話なのです」

「わたくしと梨花は同い年でしょう?」

 

 私の言葉に沙都子は首を傾げるが、沙都子にはまだ早い話だ。沙都子と私は親友であるが、それに加えて、私は何度も世界を繰り返してきた事もあり、保護者のような感覚を沙都子に抱いている事は否定しない。

 もし入江が本気で沙都子に手を出したりしようものなら、断固として沙都子を守らなければならないという思いはある。

 入江も圭一同様、普段から変態発言が目立つとはいえ、一線は弁えている紳士なのでそんな事はないでしょうけど。

 ともあれ、水着の買い物は終わった。後は実際にプールに遊びに行くだけだ。

 さて、圭一を一番、興奮させられるのは誰かしらね……。

 

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