ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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ベット、コール、フォールド、フロップ等の専門用語は圭一たちがまだこのゲームに不慣れという事で意図的に使用させておりません。
また、分かり易くするため一部ルールを簡略化してプレイしているという設定です。(ボタンなどポジションなし等)


第33話:ノーリミット・テキサス・ホールデム

 それから雛見沢分校に登校して沙都子も合流し、テーブルをくっつけて部活が始まった。

 夏休みなのに学校に来るなんて変な気分ではあったが、登校日でもないのに。

 

「さて、それじゃあ、チップはどうするんだ?」

 

 今日のポーカーは本格志向。ノーリミット……なんちゃらをやるに当たってチップの代わりとなる物は必要だろう。そう思っていると魅音が教室の物置から小箱を取り出し、そこに無数のチップが入っていた。

 色んなおもちゃを持っている魅音だからあまり驚きはしないが、本物のカジノで使わているような立派なチップだ。いや、本物のカジノなんて行った事ないけど。

 

「これでいいよね?」

「ふふふ、楽しみですわね。これは」

 

 魅音の問い掛けに沙都子が笑みを浮かべる。沙都子だけではない。部活メンバー全員が不敵な笑みを浮かべていた。

 

「これに勝てば圭一と……負けられないわね」

 

 あ、梨花ちゃんがいつもとは違う口調が思わずこぼれてしまっている。っていうか、俺と、何なんだろう?

 

「レナも今日は負けないよ!」

 

 レナもやる気充分か。勿論、俺としても負ける気はない。

 

「へっ、勝利の美酒を味わうのはこの前原圭一様だって事を教えてやるぜ!」

 

 俺も堂々と勝利宣言。ここで勢いで負けていたら負けだ。

 

「全員、やる気は充分だね。それじゃあ、トランプを配るよ。本来はディーラーが配るんだけど、ここはおじさんがやるね」

「イカサマとかするんじゃねえぞ!」

「勿論だよ、圭ちゃん。今回は真剣勝負だからね!」

 

 そして、魅音が新品のトランプをシャッフルして五人全員に二枚ずつ配る。俺は手元に来た札二枚を見て悩んだ。

 スペードの6とスペードの7だ。同じスペードでなおかつ、連番。フラッシュとストレートという強い役を狙える手札であると言えるが、この先、都合良く場に出てくれるかどうかを考えると少し怪しい。

 後で知った事だが、同じ絵柄で連番の手札はスーテッド・コネクターと呼ばれているらしい。俺が思った通り、ストレートとフラッシュを両睨みに出来る手札であるが、やはりギャンブル性は高いようだ。

 他の面々の顔を見る。流石に普段の部活で鍛えられているだけあり、皆、文字通り、ポーカーフェイス。誰も喜びも悲しみも顔に出してはいない。

 正式なルールでは場代を払うのも、乗るか降りるか決めるのも順番通りにやらないといけないらしいが、今回はそこら辺は無視してやる事にした。

 場代をまず払うのは全員。そこから乗るか、降りるか宣言するのは自由な順番という事だ。全員降りるとドローゲームにして場代も自らに戻って来るという事にした。

 とりあえず場代としてチップを一枚、机に出し俺が思案していると、

 

「みぃ、降りるのです」

 

 まず梨花ちゃんが降りた。手札があまり良くなかったのだろうか。降りたものの、降りた人が手札を公開するかどうかは自由意志に任せられているらしく、今回は梨花ちゃんは手札の二枚を伏せたままだった。

 それはつまり情報が入って来ないという事だ。

 

「レナも降りるね」

 

 レナも降りた。手札二枚は伏せられたまま。

 

「わたくしは賭けますわ。チップ二枚」

 

 沙都子は場代のチップ一枚に加えて、さらに二枚を場に出す。えーっと、こうなるとこっちもさらにチップを二枚出さないと勝負出来ないんだよな。

 既にレナと梨花ちゃんは勝負から降りている。残った俺と魅音は沙都子の顔色を注意深く伺う。チップを二枚賭けるのならそれなりにいい手札なのだろうか。だが、沙都子お得意のトラップでブタである可能性も考えられる。ここはどうするか。

 

「おじさんは降りるよ」

 

 魅音は降りた。後は俺一人か。こうなると俺まで降りてしまうと沙都子の場代タダ取りが発生してしまう。それは避けたい所だが、俺も手札にそこまで自信がある訳ではない。ペアでも来ていれば迷わず勝負に乗りたい所なのだが……。

 

「俺は応戦するぜ。チップ二枚だな」

 

 だが、俺は応戦を選択。ここでみすみす沙都子に場代をタダ渡しするのは避けたい。

 

「ふふふ、本当によろしいんですの? 圭一さん。わたくしの手は強いですわよ」

 

 応戦する俺を挑発するように沙都子が不敵に笑って見せる。本当に強い手を持っているのか、ブラフなのかはその表情からは察せれない。

 

「へっ、沙都子の方こそいいのか? 俺はロイヤルストレートフラッシュだって呼び込んじまう男だぜ」

「圭ちゃん。ポーカーの正式なルールではストレートフラッシュもロイヤルストレートフラッシュも強さに差はないんだよ?」

「え? そうなのか?」

 

 ストレートフラッシュの中でもスペード揃いなら最強じゃないのか? それは知らなかった。

 

「をーっほっほっ! 圭一さんはそんな事も知らないようでは手札も大した事はありませんわね。魅音さん。三枚のカードをめくって下さいませ!」

 

 俺のポカに強気になった沙都子が魅音を促す。俺と沙都子の賭け金が釣り有ったので、魅音がトランプの束の上から三枚のカードをめくり、場に表向きで出す。

 ハートの8、ハートの2、クラブの1だ。

 1が落ちたか。正式なポーカーのルールでは数字では1が最強。次いで13、12,11と絵札が続く。もし沙都子が何らかの1を手札に握っているのならペアの中では最強の役を既に手にした事になる。

 一方で俺はこの三枚でスペードが落ちなかった事で仮に残り二枚がスペードでも手札の二枚のスペードと合わせてもスペード4枚。

 フラッシュの可能性はなくなったものの8が落ちている。手札は6と7なのでストレートの目はある。

 悩みどころだ。

 

「さらにチップを一枚プラスしますわ」

 

 悩んでいると沙都子がさらに追加でチップを差し出す。この勝負からは降りないという事だ。やはり手札に1があるのか……? それならまず降りないだろう。

 それに対し、俺の手札はストレートの可能性があるとはいえ、その目も薄い。く、ここは退き時か……?

 

(いや、そんな弱気じゃダメだ!)

 

 俺は前原圭一だ! ここからストレートを完成させて沙都子の手札をめくってやる! 既に6、7、8までは来ている。後二つ数字が並べばストレート成立だ。

 

「乗るぜ。俺もチップ一枚プラス」

「あら、強気ですわね、圭一さん。今からでも撤退した方が被害は少ないのでは?」

「へっ、それはこっちの台詞だぜ」

 

 俺と沙都子の視線がぶつかり合い、火花を散らす。お互いに譲れない思いがぶつかり合う。正直、俺の今の手札はギャンブル性が高く心許ないのが本音だが、ここまで来たら退けない。

 

「また釣り合ったね。それじゃあ、もう一枚めくるよ」

 

 魅音がそう言い、さらに一枚のカードがめくられる。それは……。

 

 ダイヤの9!

 

 よし! と俺は内心で快哉を叫んだ。6、7,8、9と来た!

 次のラストカードで5か10が出ればストレート成立だ!

 

「チップ追加! 二枚出すぜ!」

 

 沙都子より先に俺は二枚のチップを追加で差し出す。これに沙都子は微かに顔をしかめた。

 

「随分と自信がおありのようで」

「へっ、沙都子。逃げるなら今の内だぜ?」

「ふふふ、わたくしも自信はありますのよ……チップ二枚。圭一さんに応戦しますわ」

 

 退き下がるかと思ったが沙都子は俺の勝負に乗って来て、チップの数を合わせて来る。

 レナ、魅音、梨花ちゃんはそんな俺たち二人の勝負の行方を固唾を飲んで見守る。

 正直、俺は少しビビっている。沙都子がこうも強気に賭けて来るという事は沙都子の手札にはなんらかのペアが出来ている可能性が高い。

 場に出たカードは8、2、1、9。この中のどれかの数字を持っていれば沙都子はペアを完成させている。ひょっとしたら二つ合致していてツーペアになっているかもしれない。

 それに対して俺の手札は後一枚でストレートが完成するとはいえ、未だ役は成立していない。分が悪い勝負なのは自覚するが、決して顔に出す事はない。

 勝負の行方は最後の一枚に委ねられた。

 

「魅音! 最後の一枚をめくってくれ!」

「お願いしますわ、魅音さん!」

 

 俺と沙都子は魅音の手に視線を向ける。その手がトランプの束の一番上からカードをめくる。

 最後の一枚。それは―――。

 

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