ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第34話:ノーリミット・テキサス・ホールデム2

 最後の一枚、それはハートの10であった。

 

「よしっ!」

「やりましたわ!」

 

 俺と沙都子が同時に叫ぶ。そして、お互いの顔を見る。俺はこれで6、7,8、9、10のストレートが完成したが、沙都子もこれで役が完成?

 勝利の予感は敗北の危機感に変わる。場にはハートが3枚出ている。もし沙都子の手札の二枚がハートならフラッシュが完成した事になる。

 フラッシュはストレートより一つ上の強さの役だ。それなら、俺はストレートでも太刀打ち出来ず、負ける。

 恐る恐る。俺は沙都子の表情を伺う。沙都子も俺が何らかの役を完成させた事を察したようでこちらを伺っている。

 見守る他の面々にも緊張が走る。そんな緊張を切り裂いて、

 

「それじゃあ、二人共、手札を公開して」

 

 魅音が手札の公開を促す。

 俺は手札のスペードの6とスペードの7を公開した。

 

「なん、ですって……!」

 

 沙都子がギョッと目を見開く。そして、自分の手札を公開した。

 

 クラブの1とダイヤの10。場のカードと合わせて1と10のツーペアが完成していた。

 それは強気になるのも当然か、と思う。最初の手札の時点で1という強いカードを手にしており、もう一枚も10と悪くない強さだ。色は揃っていないが。それに加えて最初の三枚が公開された時点で1のペアが出来上がっているのならその後、強気に賭け続けるのも納得だ。そして、ラストで10が出た時にはツーペア完成で勝利を確信した事だろう。だが。

 

「悪いな、沙都子。ストレートを完成させた俺の勝ちだ」

 

 俺はニヤリと笑って手札の6と7を見せ付けてやる。沙都子は悔しそうに唸る。

 

「圭一さんがロイヤルストレートフラッシュの話をした時点から圭一さんはストレート狙いである事は察せておりましたが、その可能性は低かったはず。それを完成させてしまうなんて……」

「へっ、俺は奇跡を起こす男なんだよ」

 

 上手い事、ストレートが完成したからこそこうして強気で言えるが、実際の所、ストレート完成の確率はかなり低かった。合理的に行くなら途中で撤退するのが手だろう。しかし、俺はストレートの完成を信じて今はまだブタに過ぎない手札で賭け続けた。

 

「流石なのです、圭一」

 

 梨花ちゃんがそう言って微笑む。ふっ、これくらいの奇跡は起こして見せないとな。

 こうして一戦目は沙都子以外のみんなから場代を、沙都子からは賭けられていた分のチップをごっそり頂き、俺が一気にリードを取る形になった。出だしとしては悪くない。

 

「はーい、それじゃあ、次行くよー」

 

 魅音が全員からカードを回収してシャッフルする。そうして、再び全員にカードを2枚ずつ配る。俺は自分の手札を見て、「おっ」と思った。

 ハートの5とダイヤの5だ。数字の上では弱いが既にペアが出来ている。これは行くしかないだろう。勿論、そんな事は顔に出さず、俺は周りの様子を伺う。

 やはりみんなポーカーフェイスで手の強さは読み辛い。しかし、手元にペアが既に出来ている中で、降りるのはあまりに弱気過ぎる。そんなのはこの前原圭一のプレイスタイルではない。

 

「俺から賭けるぜ、チップ1枚!」

 

 場代として既に出ているチップに加えて、さらに一枚追加する。沙都子からぶんどったチップで手元は潤っている。ここは果敢に攻める場面だ。

 

「みぃ、ボクも乗るのです。チップ1枚で応戦なのですよ」

 

 梨花ちゃんが乗って来た。梨花ちゃんの手札もいいのか。勿論、ブタでブラフで参戦して来ている可能性も否定出来ない。

 

「ここは退かせていただきますわ」

 

 沙都子は降りを選択。先の敗戦の傷跡もあるのだろう。続けて賭けるのはリスクが大きい場面だ。

 

「ここはおじさんも乗るよ。チップ1枚!」

 

 魅音は参戦表明。やはり手の強さは読み辛い。いい手が手札に来ているともとれるが、やはりブラフとも取れる。

 

「レナは降りるよ」

 

 レナは先に続いて二回連続で降りを選択。まだ出だしなので慎重に立ち回って行こうという事なのかもしれない。勿論、手札が話にならないブタの可能性もある。

 

「それじゃあ、おじさんと圭ちゃんと梨花ちゃんで勝負だね。三枚めくるよ」

 

 魅音がそう言って、トランプの束の上から三枚めくる。

 

 ハートの12、スペードの6、スペードの3だ。

 

(ふむ……)

 

 これは難しい。俺の今の手札にはワンペアが出来ているが、数字の力は弱いし、今出た三枚のカードとは組み合わせが出来ない。12という絵札が出たのは考慮すべき点だが、一枚だけだ。

 

「ボクはチップを2枚追加なのです」

 

 ここで梨花ちゃんが強気に動く。チップ2枚追加は自信がないと出来ない。つまり梨花ちゃんは自分の手札が強い。今場に出た三枚ともマッチしていると主張している事になるが、それもまたブラフかもしれない。

 なかなか読み合いが熱いじゃねえか。燃えて来るな。

 ここは撤退するべきかとも思うが、さっきも言ったが、俺は最初の一戦で沙都子からチップをぶんどっていて今、手元が一番潤沢なのは俺だ。ここで退くのは弱気過ぎる。

 

「付いて行くぜ、俺もチップ2枚追加だ」

 

 俺もさらに場上にチップを2枚転がす。さて、残る参戦者の魅音はどう動く……?

 

「んー、ツキがないねぇ、おじさんはここで撤退かな」

 

 魅音は降りた。これで二戦目は俺と梨花ちゃんの一騎討ちか。

 四枚目がめくられる。

 

 クラブの5!

 

 よし! これで俺は手札の5二枚と揃ってスリーカードになった! 一気に手札の強さが増した。ここは一気呵成に責め立てるタイミングだ!

 

「チップ2枚追加だ!」

「強気だね、圭一くん」

 

 俺の勢いにレナが苦笑いを漏らす。スリーカードが既に手札に揃っているのだ。強気にもなる。梨花ちゃんの手札がどんなものであれ、めくってやる。

 

「んー、なのです」

 

 ここで梨花ちゃんは悩む素振りを見せる。俺の強気な賭け方に弱気になったのか。ジッと二つの目が俺の心を読むように俺の方に向けられる。

 

「ここは、勝負所なのです」

 

 そう言い、チップ2枚を出しだす。応戦か。面白い。俺のスリーカードで迎え撃ってやる。

 

「魅音! 最後の一枚をめくってくれ!」

 

 俺は魅音に促す。魅音もゴクリ、と生唾を飲み込み、最後の一枚をめくる。

 最後の一枚は、

 

 スペードの11!

 

 俺の役に変化はない5のスリーカード。それでも充分過ぎるだけの強さを誇る役だ。

 

「悪いな、梨花ちゃん! 俺の手札は5が二枚! 5のスリーカードだ!」

 

 勝利を確信し、手札を見せ付ける。すると、梨花ちゃんにはニヤリと笑った。あ、やばい。直感的に察する。そうして、梨花ちゃんが見せた手札二枚は。

 

 スペードの10、スペードの8。

 

 手札としては強い手札ではない。10も8も中途半端な数字だ。勝負に出るには厳しい。最初にブタと判断してしまってもおかしくない手札。しかし。

 

「うぐぅ!」

 

 思わず悶絶する。場に出ているカードはハートの12、スペードの6、スペードの3、クラブの5……そして、スペードの11。つまりスペードが3枚場に出ていて、梨花ちゃんの手札の2枚もスペード。

 スペードのフラッシュが完成している。

 俺のスリーカードよりも遥かに強い役だ。

 

「くそー! 負けかー!」

 

 俺は二枚の5を机に叩き付ける。まさかスリーカードで攻めて粉砕されるとは思わなかった。

 

「っていうか、梨花ちゃん。そんな手札でよく強気に賭けに出たな……」

「梨花も肝が据わっておりますのね……」

 

 俺と沙都子が梨花ちゃんに感心とも呆れとも取れる声をかけると梨花ちゃんはにぱー、と笑った。

 

「圭一が先ほど奇跡を見せてくれたのでボクも奇跡を起こしてみたくなったのです」

「全く、やられたぜ……」

 

 つくづくしてやられた。最初に手札に5のペアが来た時点で俺は慢心してしまったようだ。既に勝った気になっていて、相手がそれ以上の手役を作って来る可能性を考えなかった。不覚……。

 

「でも、勝負はまだまだこれからなのです」

「ああ! まだまだ挽回してやるぜ!」

 

 それから俺たちは熱戦を続けるのであった。

 

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