ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第35話:熱戦の果てに

 熱戦は続く。魅音が手持ちのチップを全賭け(オールインと言うらしい)して他の面々の度肝を抜き、これに恐れをなした他のみんなは(俺含む)降りたのだが、その後、魅音が見せた手札はブタ中のブタであった。

 手札で役が出来ている訳でもない。場に出ているカードとの組み合わせで発展性もある訳ではない。

 そんなブタに全財産をつぎ込み、周りを引きずり降ろすとは流石は魅音だ。

 その他、レナと沙都子が一騎討ちを行ったものの、二人共手札はブタであり、徒手空拳の勝負を繰り広げていた事が分かったり、

 

「レナは場のカードと合わせて1のワンペアだよ!」

「ボクも場のカードと合わせて1のワンペアなのです!」

「この場合、どうなるんだ?」

「同じ役の強さの場合、もう一枚の手札の強さで決まるね」

 

 魅音の言葉に従い、レナと梨花ちゃんのもう一枚の手札を見る。レナが11で梨花ちゃんは9だった。

 

「この場合はレナの勝ちか」

「ごめんね、梨花ちゃん」

「みぃ……悔しいのです」

 

 同じ役同士での対決。しかし、もう一枚の手札が悪かった。普通に負けるより悔しいよな、これは。

 最初のようにそう都合良くストレート以上の役が上手い具合に揃う事もなかなかなくワンペア、ツーペアで勝負が決まる戦いが続く。

 そうしている内に沙都子、レナ、魅音と脱落していき、最終的に勝負は俺と梨花ちゃんの一騎討ちとなった。

 

「もうこうなったらチップ全賭けで勝負と行くか、梨花ちゃん」

「みぃ、望む所なのですよ。決着を着けるのです」

 

 俺の手札は13のペア。相当、強力な役だ。これで負けるというのはあまり考えられない。

 考えられないが、梨花ちゃんも全賭けの勝負に応じるからにはそれなり以上の手札だと推測される。後は天に采配を委ねる。勝負だ、梨花ちゃん。

 

「それじゃあ、二人共全賭けだね! お互い公開して! 一気に5枚めくるよ!」

 

 俺と梨花ちゃんは手札を公開する。

 俺の手札は13のペア。

 梨花ちゃんの手札は1のペア。

 くはぁ~、梨花ちゃん。ここに来て、手札に持てる中では最強の1のペアを引き当てるとは。大したものだ。

 だが、まだ勝負は決まっていない。1のペアは最強の手札ではあるが、最強の役ではないのだ。

 

「ボクは勝つのです。にぱー」

「それはどうかな。まだ分からないぜ」

 

 不敵な笑みで応える俺。

 そうして、魅音がカードの束から上からめくっていく。

 

 ハートの4、スペードの10、クラブの1!

 

「ボクの勝利がゆるぎないものになってしまったのですね。圭一には申し訳ありませんが」

 

 これで梨花ちゃんの役は1のスリーカード。ちっとやそっとではめくれない。だが、俺は自分の勝利を信じる。

 

「まだだぜ、梨花ちゃん。ここから俺は勝利を掴み取って見せる!」

 

 強気に言い放つ。梨花ちゃんも不敵な笑みで応える。ギャラリーのテンションも最高潮に達する。

 次のカードは……スペードの13!

 

「これで俺の手札も13のスリーカード……!」

「それでもまだボクの手札には及ばないのです」

 

 13のスリーカードと1のスリーカードでは当然、1の方が強い。まだ梨花ちゃんの手札をめくるには至っていない。しかし、まだ。最後の一枚が残っている。

 俺の手札と場のカードではストレートもフラッシュの可能性もない。4か10が出れば、フルハウスにはなり得るが、それだとやはり1を3枚持っている梨花ちゃんもフルハウスになり、その勝ちには変わりはない。今の役が、1のスリーカードである梨花ちゃんに勝利するにはカードの束の中に眠っている残り一枚の13を引き当てて、13のフォーカードにするしかない。その可能性は極めて低いだろう。だが、俺はその可能性に全てを賭ける。

 奇跡を起こして見せる。その思いで最後の一枚をめくる魅音の手に視線を集中させる。魅音がめくった最後のカード、それは――――。

 

 ハートの13!!

 

「っしゃあ!」

 

 思わずガッツポーズを決める。これで俺の手は13のフォーカード。一応梨花ちゃんの手もフルハウスという事になるのだが、フォーカードとフルハウスではフォーカードの方が強さは上だ。数字では負けているが、役では勝っている。

 この勝負、俺の勝ちだ。

 

「悪いな、梨花ちゃん。これで俺が優勝だ!」

「みぃ……悔しいのです……! この局面で最後の13を引き当てるなんて……やっぱり圭一は奇跡を起こす男なのです……!」

 

 悔しそうにしつつもどこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。とにかく、これで俺の部活の優勝が決まった。

 

「はぅ……凄いね、圭一くん」

「物凄い強運です事……」

「違うな、沙都子。これは運じゃない必然だ!」

「全く、圭ちゃんには敵わないねぇ……まぁ、次の勝負では負けないけどね」

 

 他のみんなも俺を称賛(?)してくれる。なかなか熱い勝負であったが、それを制したのは俺だ。

 

「それじゃあ、罰ゲームなのです」

 

 梨花ちゃんの言葉でハッと我に返る。罰ゲーム。そういえば、罰ゲームか。今回は1位になった人が2位以下の人全員に罰を言い渡す事が出来るルールでやっていたんだっけ。

 そうなると俺はなんでも出来るという事になるが、それはそれで逆に迷ってしまうな。

 

「う~ん。みんなに何を言い付けてもいいんだよなぁ……」

「うわぁ、圭一がエッチなワンワンの目をしているのです。怖いのです」

「一体何を言い渡される事やら……」

 

 俺の言葉に梨花ちゃんと沙都子がからかい半分で反応する。レナと魅音も、

 

「圭一くん、お手柔らかにね……」

「おじさんたちの関係が崩れない程度にね」

 

 そんな事を言って来る始末である。言われなくてもそこまで無茶苦茶な要求はしねえよ! 俺も部活歴は一か月半と少しとはいえ、大体の程度は分かっているつもりだ。

 

「そうだな~、それじゃあ、これから一週間。みんなには俺にメイドさんとして仕えてもらうか」

「メイド……監督みたいな事言うねぇ、圭ちゃん」

「きっとエッチなお願いをするに決まっておりますわ!」

「しねぇよ! 普通に色々頼んだりするくらいだ!」

「圭一の普通は信用ならないのです」

 

 どこまで信用がないんだ、俺は。普段の変態的な言動が悪いのか、と思い返し、自省する。全く口はなんとやらだな。

 

「……それだと私が抜きんでる事にはならないわね……」

「ん? 何か言ったか、梨花ちゃん?」

「別に何でもないのですよ。にぱー」

 

 とりあえずみんなには俺のお世話をしてもらう事にしよう。ちょうど両親も留守にするっていうし、丁度良かったな。

 

「俺の家、両親がしばらく留守にするらしいんだ。それもあって、みんなに色々やってもらえると嬉しいな」

「圭一、それはボクがやるという話だったはずですよ?」

「ああ、そうなんだけど、梨花ちゃん一人だと大変だろ? みんなに協力してもらわなないとな」

 

 梨花ちゃんの事を気遣ったつもりだったのだが、梨花ちゃんは何故か不服そうな表情をする。

 

「圭一は女心が全く分かっていないのです……」

「圭一くんだからね。仕方がないよ、梨花ちゃん」

 

 おい、レナ。何が仕方がないんだ? 俺は困惑する。

 

「ま、ここはおじさんたちが一肌脱いで圭ちゃんのために尽くしてあげようじゃないの」

「全く。仕方がありませわね」

 

 罰ゲーム。だというのに魅音や沙都子はどことなく嬉しそうだ。どういう事だ?

 

「やっぱりライバルは多いわね……」

 

 梨花ちゃんがそんな事を呟く。何のライバルなのだろう。

 ともあれ、本日の部活はこれにて終幕。この前原圭一様の勝利だ。勝利の美酒っていうのはいつ味わってもいいものだな。お酒飲んだ事ないけど。

 俺は大満足で帰宅する事にし、各々、それぞれの家に帰って行った。さて、両親が留守にする間はみんなに食事を振る舞ってもらう事にするか。それも楽しみだな。

 

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