ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第40話:ハーレムの閉幕

 それから一週間。レナや魅音、沙都子に梨花ちゃんのお世話になり、日々を過ごした。

 みんな家事は平均以上には出来るようで、何不自由なく俺は両親の留守という時期を乗り越える事が出来た。最後の日には両親が帰って来た時にはみんながいたのであるが、それを見た親父はニヤリと笑った。

 

「はっはっは、圭一。いつの間にこんなハーレムを築いたんだ?」

 

 ハーレムとか。そんなんじゃないってのに。だが、みんなは一様に顔を赤くするのであった。おいおい、そんな反応したら変に取られるぞ。親父どころかお袋まで、

 

「女性関係のもつれで我が子が何かやらかさないか心配だわ」

 

 なんて言い出す始末。

 ……梨花ちゃんから聞いた話によれば俺が魅音にデリカシーのない事をしてしまったせいで惨劇に繋がってしまった世界もあるとの事なので俺は馬鹿言うなよ、と笑い飛ばす事も出来なかったのであるが。

 その日、みんなは夕方に帰る事にしたようだ。今日の晩飯はお袋が作ってくれるしな。

 

「それじゃあ、圭一くん。レナたちがいなくても体に気を付けてね。ちゃんと歯磨きしてね? お風呂では体と髪の毛をしっかり洗ってね」

「んな事分かってらぁ。レナは俺のお袋か」

「あはは。圭一くんの事が心配なんだよ」

 

 レナは楽し気に笑う。全く。俺はどれだけ信用がないんだ。ガサツで家事能力がないというのは、その通りであるのだが。

 

「そう思うんならレナが圭ちゃんの体を洗ってあげればいいんだよ」

 

 そこに魅音がからかいの言葉を挟む。これにレナは顔を真っ赤にした。

 

「は、はうぅぅ~。そんなの出来ないよ~」

「げふっ」

 

 何故かレナパンが繰り出され、俺が殴り倒される事になってしまった。魅音め。覚えていろ。

 

「まぁ、レナじゃないけど不摂生な生活を送っているとこの雛見沢での日々は乗り越えられないよ。気を付けてね」

「ああ、魅音。お前も受験勉強サボるんじゃねえぞ?」

「あ、あはは~。おじさんは天才だからね~。ちょっとサボっても取り返せるんだよ」

 

 本人はこう言っているが、短い期間とはいえ、魅音の家庭教師をした身としては魅音の学力には問題があると言わざるを得ない。そこまでハイレベルな高校を目指している訳ではないとはいえ、無事、本命の高校に受かってほしいものだと気を配ってしまう。

 

「それにしても圭一さんってホントに家事が出来ないのですわね」

「みぃ。圭一は困ったさんなのです」

 

 小学生二人にこう言われてしまっては情けない所の話ではない。俺はうーむ、と顔をしかめる。

 

「流石にこの一週間で俺も家事能力を身に着けようと思ったさ」

「そんな事、おっしゃいまして、お母さまが家事をやってくれる日々に戻ればすぐに決心も忘れ去るのでしょう?」

「んな事はないぞ」

 

 多分。両親が不在になる度にありがたみを知ってはそれを忘れるを繰り返している気も確かにするのだが。沙都子の言う通りに。これまでの世界において。

 

「まぁ、圭一が家事が出来なくてもボクが全部やってあげるのですよ」

「梨花ぁ、そう言って圭一さんを甘やかしていると本人のためになりませんわよ」

 

 沙都子は梨花ちゃんが冗談で言ったのだと思っているようだが、俺はドキリとした。

 梨花ちゃんは俺の事が好きなんだろうか……? これまでの事から鈍い俺でも流石にそうではないかと思ってはいるのだが、態度自体はレナや魅音と大して変わらないような気もしないでもない。レナや魅音まで俺の事が好きって事はないだろうしなぁ。

 じゃあ、やっぱり俺の事が好きな訳じゃないのか、梨花ちゃんも。ただ単に羽入の事や繰り返す世界の事を知っているから唯一の話し相手として見ているだけで別に俺に好意を抱いている訳ではないのか。

 分からん。梨花ちゃんにも言われている事だが、俺に女心を察しろなんて方が無理なんだ……。まぁ、繰り返すが、そのせいで惨劇を引き起こしてしまった世界もあるみたいなのでここ最近はこれでも女心を学ぼうと頑張っているつもりだ。

 

「今回は圭ちゃんが勝ったから罰ゲームとして仕えてあげたけど、次は逆に圭ちゃんをおじさんに仕えさせるから覚悟しておいてよね」

「ですが、魅音さん。圭一さんに人に仕えるなんて気の利いた真似が出来るのですか? 圭一さんに執事の真似事なんて無理でございましょう」

「圭一が紅茶を淹れてくれる。とても想像がつかないのです」

「っていうか、普通のお茶を淹れるのも圭一くんには難しそうだよね」

 

 みんなして勝手な事を言ってくれる。言われる通り、まともにお茶を淹れる事すら俺には出来なさそうなのが悲しい。

 

「馬鹿野郎! 俺が執事をやる事になったら超一流の執事をやってやる! お嬢様の思っている事を読み取り、望むがままの事をこなす。パーフェクト・バトラーをな!」

「ほう。言ったね、圭ちゃん」

 

 だが、ここでそれを認めるのは癪なのでこう言い返す。部活で負けてやる気などさらさらないが、もしそうなったとしても俺は完璧に役目をこなしてみせるさ。

 

「圭一さんの執事っぷりが楽しみですから、次の部活は本気で挑まないといけませんわね」

「今度は圭一にボクたちに尽くしてもらうのです」

「へっ、どっからでもかかって来やがれ! この天下無敵の前原圭一様に楽に勝てるとは思うなよ! 逆にまたお前らをメイドにしてウハウハしてやるぜ!」

 

 俺は声高にそう宣言する。勢いで勝っている方が勝つのが部活なのだ。このくらいの気持ちでは全然足りないくらいだ。もっと熱く、もっと燃え上がらなければ。赤い炎のように。

 

「……面白いじゃない、圭一。私も、本気でいかせてもらうわよ」

 

 梨花ちゃんが大人びた口調でポツリとそう言う。俺は梨花ちゃんにそういう一面があるのを知っているから聞き取れたが、他の面々は「今、誰か何か言った?」という風に首を傾げている。

 

「は! 部活歴最短のひよっこが言うねぇ! この元・部長、園崎魅音様がそんな勝手を許すとでも!」

「元が付くのが悲しいなぁ、魅音くん! 現・部長のこの圭一様に勝てると思うなよ!」

 

 魅音から部活の部長の座と学校の委員長の座を譲り受けてからまだそこまで経ってない上に夏休みに入ってしまってはその経験を積む機会も少なくなっているのだが、そんな理由で引けを取る訳にはいかない。現・部長として挑んで来る者は粉砕しなければならないのだ。

 

「なら次は私たちだけじゃなく、全校生徒を集めての大々的な部活だね!」

「それは面白いのです、魅ぃ」

「ですが、皆様にもご都合がありましょう? そうそう全員が集められるでしょうか?」

 

 魅音の提案に梨花ちゃんは頷くが、沙都子が懸念を示す。

 が、全校生徒を集めると言っても中学生以上の生徒は俺とレナと魅音だけなのだ。後は全員小学生。それで夏休みとあればフリーダムの極みだろう。時間などいくらでも作れるはずだ。

 全校生徒を集めての部活か。燃えて来るぜ。

 

「ははは! そりゃあ、いいなぁ、魅音。俺に挑んで来る奴らは全員、斬って捨ててやるぜ!」

「圭一くんに負けてられないね。レナも次こそは優勝だよ」

 

 レナもやる気を示す。控え目な性格に見えるレナであるが、こと部活とあれば貪欲に勝利を欲する事はこれまででよく分かっている。覚悟が決まるとどんな事でも実行する鋼の精神の持ち主であり、ある意味、何よりも恐ろしいかもしれない存在だ。

 

「……ふふふ、この世界はやっぱり面白い。6月の牢獄を突破した甲斐はあるわね」

 

 梨花ちゃんもそんな態度を見せて意欲を示す。先の見えない未知だからこそ、無限の可能性に溢れているという事である。それは恐怖する事なのかもしれないが、そこに希望も同じかそれ以上に存在している。

 俺たちは昭和58年の6月を突破し、その希望を掴む権利を手にしたのだ。ならば遠慮などしない。無限に、どこまでも俺たちの行く道を明るく照らし上げてやる。

 へっ、全く。次の部活が楽しみだぜ。

 

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