ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第43話:エンジェルモートでの遭遇

 朝飯と昼飯を食べ終わり、しばらくしたら俺は親父と一緒にエンジェルモートに行く事にした。

 甘ったるいパフェなんて俺の口に合わないのではと最初は思っていたが、エンジェルモートのパフェは美味いの一言であり、このクソ暑い夏場ともあれば冷たいパフェをゆっくりスプーンですくって食べるのは最高の贅沢だ。やや値段が高めな事もあり、中学生の小遣いではそうそう通い詰め出来ないのだが、今回は親父が一緒という事で代金は親父持ちだ。

 楽しみだなぁ。勿論、店員さんの制服も含めて。あの店は多分、20年は時代を先取りしているな。

 そう思い興宮で魅音の親戚が経営しているというエンジェルモートに行き、扉を開けたのだが、「いらっしゃいませー」の店員さんの声を聞きながら席に案内される途中で、

 

「あ」

 

 見慣れた顔を見つけて思わず硬直する。レナと梨花ちゃんが二人して向かい合って座っていた。

 

「圭一くん!?」

「圭一?」

「レ、レナに梨花ちゃん……奇遇だな……」

 

 別にエンジェルモートはいかがわしい店ではない。そこに俺が着ている所を見られたからと言ってどうという事はないのだが、いや、いかがわしいのだろうか、店員さんのあの制服は……。とりあえず俺はレナと梨花ちゃんが座っている席を前に固まってしまう。そこに空気の読めない親父が喜色満面で割って入る。

 

「おお、これはレナちゃんに梨花ちゃんじゃないか。この間は息子が世話になったそうだねー。あ、店員さん。知り合いなんでこの席に座ります」

 

 そして、そのままレナと梨花ちゃんの座っている席に体を滑りこませる。こうなれば俺も一緒に座るしかなくなった。

 

「レナに梨花ちゃん。どうしてここに?」

「別にボクたちがどこにいようと勝手だと思うのですが」

「ま、まぁ、それはそうなんだけどさ……」

 

 ちょっと梨花ちゃんが怒っているように見えるのは気のせい、だよな。

 

「圭一くん。今日はレナの家で梨花ちゃんと一緒にいたんだけどね。美味しい物でも食べようかって話になって」

「なるほどな。それならここは打って付けだぜ」

 

 エンジェルモートは何も店員さんの衣装だけで売っている店ではない。出て来るパフェの数々は絶品の一言、このパフェの出来栄え一つとっても時代を超越していると思わせるぜ。

 なら、女同士でもここに来ようって話になってもおかしい話ではないか。

 

「はっはっは、それにしてもここの店員さんの制服はいいねぇ~」

 

 そんな状況なのに空気も読まずエロ親父全開の発言をする親父。頼むから自重してくれよ。

 

「みぃ、圭一のお父さんはエッチなのです」

「私は変態紳士なのさ」

「そ、そう言い切っちゃうんだ……」

 

 梨花ちゃんの指摘に胸を張って親父は答え、レナがドン引きしている。自重してくれ、親父(2回目)。

 

「ボクたちも部活の罰ゲームであの制服を着る時があるのですよ」

 

 そんな状況を何故か楽しむように梨花ちゃんが口にする。思えばこの店の制服がなんで雛見沢分校にもあるのか。魅音の伝手か。魅音の親戚が経営している店の制服なら魅音が手に入れられないはずはないよな。魅音の妹の詩音はこの店でバイトもしているんだし。

 

「なんだって! 圭一、なんでその事を私に言わなかったんだ!」

「言う必要ねえだろ! 別に!」

 

 部活の罰ゲームで破廉恥な格好に部活メンバーたちが(俺含め)なっている事は親父には黙っておいた方がいいだろう。絵のモデルになってくれ、と学校まで押しかけてきかねない。そして、不審者として通報されるのだ。

 

「あはは、圭一くんのお父さんは面白いねぇ」

「ちょっとだけ羨ましいのです」

 

 レナと梨花ちゃんはそんな事を言いながら笑う。いや、自分の家族じゃなければいいかもしれないけど、実際にこんな家族がいると色々と気苦労するぞ……。

 とはいえ、両親を亡くしている梨花ちゃんの前ではあまり不用意でデリカシーのない事は言えない気がした。親父が地雷を踏まない事を祈りつつ、俺と親父も注文をする。レナと梨花ちゃんは既にパフェを食べている所だった。

 

「いやぁ、レナちゃんか梨花ちゃんがウチの圭一と一緒になってくれれば私は大歓迎なんだがねぇ」

 

 パフェが運ばれて来るのを待っている間、水を飲んでいるといきなりの発言に俺は口に含んだ水を噴き出しそうになった。だから、何を言うのか、この親父は。

 

「は、はうぅぅぅ……」

「み、みぃ……」

 

 案の定、二人共、顔を赤くして固まってしまっている。

 

「ウチの圭一はちょっと勉強が出来るくらいで後は何も出来ないろくでなしだが、だからこそレナちゃんや梨花ちゃんのようにしっかりした娘に支えてもらえると安心出来るんだがねぇ」

 

 散々な事を言われている気がする。悪かったな、ろくでなしで。

 

「そんな事はないのですよ」

 

 そこに梨花ちゃんが異論をはさんだ。

 

「圭一はボクを助けてくれた……救ってくれたのです。ボクにとって圭一は救世主なのです。ろくでなしなんて事はないのです」

 

 その言葉に親父は呆然とした顔になる。俺もポカンとした顔をしている事だろう。そんなに大袈裟な事をした覚えはない。あの6月の戦いでは梨花ちゃんと一緒になって出来る限りの事はしたが、それも罪滅ぼしと恩返しだ。そこまで立派なもんじゃない。

 

「そうだね、圭一くんはお父さんが思っているよりもずっと凄い人です。一緒にいるレナたちにはそれが分かるんです」

 

 レナまで梨花ちゃんの言葉に乗っかり、そんな事を言う。よしてくれよ。そんなの体中がこそばゆくなってくるだろう。

 

「……はっはっはっ、慕われているんだな、圭一」

「……まぁ、ありがたい事に」

 

 しばらく沈黙していた親父だったが、やがて御機嫌そうに言って笑う。

 

「にぱー、圭一はボクたちのヒーローなのですよ」

「圭一くんがいるとみんな盛り上がるんです」

「お前ら褒め過ぎだっての。俺はそんなに大したもんじゃないって」

 

 流石に褒め過ぎだろう。俺はレナと梨花ちゃんを制して運ばれて来るパフェに手を付ける事にする。

 

「せっかくだ。レナちゃんと梨花ちゃんの代金も私が出そう」

「え? それは悪いですよ」

「何。普段、息子が世話になっている礼だ。それに将来の娘になるかもしれない二人だしね。はっはっはっ」

 

 上機嫌に笑う親父にまた赤くなるレナと梨花ちゃん。全く。この親父はそういう事を……。

 

「悪いな二人共。ウチの親父が勝手な事言って」

「ううん。別に構わないよ、圭一くん」

「圭一のお父さんは愉快な人なのです。この親にしてこの子あり、ですか」

 

 うーん。親父に似ていると言われてもあまり嬉しくないなぁ。親父の事を嫌っている訳じゃないんだけど。

 

「将を射んとする者はまずは馬を、とも言いますですし、まずは圭一のお父さんから狙っていくのです」

「り、梨花ちゃん、大胆な事言うね。はぅ~」

「いや、お前ら何言っているんだよ?」

 

 梨花ちゃんとレナが変な事を言う。二人共、親父の変なノリに乗せられて変な事、言ってないか?

 

「ふふふ、本当に娘として迎えられる日は近いかな、これは? その時は是非、私の絵のモデルに!」

「それだけは絶対にさせねえ!」

 

 どんな格好を二人に強いるのか知れたものじゃない。親父の絵のモデルにだけは絶対にさせてはならない。いや、俺が二人の内、どっちかとくっつくかとかは置いておいて。

 

「ボクならどんなモデルにもなってあげるのですよ」

「梨花ちゃん、口に気を付けた方がいいぞ……そんな事言って言質を取られると大変な事になるぞ……」

 

 ウチの親父の変態っぷりを完全には理解していないであろう梨花ちゃんが不用意な事を言ったのをたしなめる。マジで裸婦画のモデルにされるぞ。そんな事を言ったら。

 その後も会話は弾み(終始親父は上機嫌だった)思いも寄らぬ遭遇であったものの、俺たちはエンジェルモートで最高の味のパフェを堪能するのであった。

 

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