ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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 ひぐらし令における圭一はあれですね。
 テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士におけるロイドとか。
 サモンナイト5における3主人公とか。
 ゲーム中のヒロインと誰ともくっつかないバッドエンドルート行ったギャルゲーの主人公と言うか。

 まぁ、元々圭梨のカップリングはマイナー街道一直線だったのでダメージは少ないです。
 公式のスタンスがどうであれ、変わらず圭梨街道を邁進していくつもりですのでリアルが多忙につき投稿ペースは遅いですが、お付き合いいただければ。

 ……実はひぐらし命の圭一と一穂のカップリングもいいんじゃないかとちょっと思っているのは内緒。




第51話:デートの終幕

 そろそろ日も暮れかけてきたので雛見沢に戻ろうかという話になり、私と圭一は興宮の町中を歩いていた。

 うざったいまでに蒸し暑い夏とはいえ、太陽が傾けば少しはマシにもなる。本当に少しだが。

 

「粘っこい暑さがない分、都会の夏よりはマシだけどなぁ」

 

 圭一はそんな事を言う。都会の暑さと田舎の暑さというのは性質が異なるものらしい。都会で夏を過ごした経験のない私には分からないが、圭一が言うのならそうなのだろう。

 あくまで都会に比べれば快適というだけで夏の暑さを喜ばしく思う程ではないようだが。

 そんな会話をしながら歩いていると後ろから声がかけられた。

 

「おんやぁ、前原さんに古手さんじゃないですかぁ」

 

 この腹に何を抱えているか分からない食わせ物の声は聞き違えるはずもない。私と圭一はほぼ同時に振り向いた。

 

「大石さん。こんにちは」

「みぃ、大石。こんにちはなのです」

 

 興宮署の刑事、大石がコンビを組んでいる熊谷と共に私たちの後ろにいつの間にかやって来ていた。

 

「お二人だけで外出ですかぁ? いつものお仲間はどうしたので」

「今日はボクたちだけなのですよ」

「ほう。それは、また。んっふっふっふっ」

 

 意味深な目で大石に見られる。邪推されてしまうか。いや、邪推でもないのか? 私にとっては今日の圭一との一日はデートのつもりなのだが、圭一の方がどうなのかという問題は依然、ある。

 

「大石さんの方こそどうしたんですか? 何か事件ですか?」

「刑事が歩いているからって事件が起きていると決めつけて欲しくはないですねぇ。まぁ、今回はアタリなんですが」

「やっぱり事件なんじゃないですか。殺人事件とか?」

 

 物騒な事を圭一が言う。大石は苦笑いした。

 

「そんなに頻繁に殺人事件なんて大きな事件が起きやしませんよ。ミステリー小説じゃないんですから」

「あるいは刑事もののドラマなのです」

「そうですねぇ。まぁ、強盗傷害事件の捜査ですよ。あちらの住宅の方に強盗が押し入りましてねぇ」

 

 私たちのような一般人に捜査情報をペラペラ喋るのはどうかと思うが、そこは大石も弁えているだろう。喋って許されるレベルの情報しか話さないに決まっている。この男は脇が甘い事はないのだ。

 

「それで捜査ですか。暑い中、大変ですね」

「まぁ、刑事は足で捜査が基本ですからねぇ。ミステリーの名探偵みたいにはいきませんよ。んっふっふ」

 

 圭一の労いの言葉に大石はいつもの笑い方で返す。

 

「私も今年で最後の務めになりますからねぇ。せいぜい残り僅かな現役期間で税金で働いてる分は尽くさないと」

「そういえばそうですね。大石さんは退職後の予定とかあるんですか?」

「そうですねぇ。退職金で北海道あたりに引っ越そうと思ってますねぇ」

 

 その事自体はどこかの世界で私は情報として聞いた事があった。大石が退職後に興宮を離れてしまう事は。

 警察官が退職してしまい警察官でなくなってしまうと、これ幸いと今までその警官に逮捕されたりした犯人が復讐に来る事もあるらしい。お礼参りと警官たちの間では呼ばれているそうだが、それを避けるために退職後の警官は今、大石が言っているように引っ越しをしたり、警備会社に再就職したりするようだ。

 特に大石はここ興宮の興宮署の刑事として務めて長い。この辺りを縄張りとしている園崎組とも何度もやりあった事もあるので退職した後はのん気にこの辺りに住んでいては枕を高くして眠る事も出来ないのだろう。

 

「ええ!? 大石さん、いなくなっちゃうんですか?」

 

 驚いた声を圭一は漏らす。圭一にしてみれば初めて聞く情報であろう。そして見知った人物が離れていく事は寂しいものがあるだろう。

 

「んっふっふ、何を言うんですか。悲しんでくれるのは嬉しいですが、私と前原さんの付き合いなんて少しだけでしょう?」

「そ、それもそうなんですけど……」

 

 大石から見れば圭一との付き合いはごくわずかでしかないだろうが、以前の世界の記憶を思い出し始めている圭一にしてみれば大石の体感以上に長い付き合いの認識であるに違いない。残念にも思うだろう。

 大石は圭一や私にとって味方であったり敵であったりした相手だが、全てが終わった今では圭一は大石に好感を抱いているようであった。私は……少し時間が長すぎて、大石の事を好いているのか嫌っているのかは自分でも分からない。

 

「まぁ、北海道に行ってもたまには戻ってきますよ。ここにはおやっさんの墓もありますし、それにお二方の結婚式には駆け付けないといけませんしねぇ」

「な!?」

「みぃ!?」

 

 いきなり爆弾発言を投下した大石に圭一と私は揃って声を上げる。何をいきなり、この狸親父は……。

 

「ええ!? 前原さんって園崎家の方に婿入りするんじゃなかったんですか!?」

「熊ちゃん。その情報は古いですよ」

 

 何故か熊谷の方まで驚いている。とりあえずこの世界では圭一と魅音の関係は園崎家主導の大宴会などもあって色々と私にとっては不都合な形で村中に噂として広まってしまっているのだが、それを古い情報と大石が言うからには払拭され出しているのだろうか。それなら私にとっては嬉しい。

 

「大石さん。俺と梨花ちゃんはそういう関係じゃ……」

「おんやぁ? そうですか? 最新の情報では前原屋敷の坊主とオヤシロ様の生まれ変わりの梨花ちゃまが急接近している、と私は聞きましたがね」

 

 そういう噂が広まってくれれば色々と私にとっては好都合である。恥ずかしくもあるのだが。

 

「まぁ、若いお二人の事にこれ以上、何か言うのも年寄りの冷や水でしょう。私は今年で退職するのでこの興宮の平和を守るのも熊ちゃんのような若い衆に任せないといけませんね」

「大石さん。自分なんてもういい年こいたおっさんですよ。それに大石さんの後釜なんて務まりませんって」

 

 大石が不敵に笑って熊谷の方を見るが、熊谷は困ったように笑う。大石の陰に隠れがちだけど熊谷の方も一流の刑事だとは思うけどね。

 

「前原さんなんかどうですか? 前原さん、一つ、警察官を志しては?」

「ええっ!? 俺なんかには無理ですよ!」

 

 熊谷が圭一の方を見てそんな事を言う。圭一が警官か。正義感自体は強い方だし、勉強は出来るし、頭の回転は速い。案外向いているかもしれない。体力の方は要特訓としても。

 

「そうですねぇ。前原さんは警察官なんかよりもっとビッグな立場になると私も思います」

「そ、そんな事ないですって」

 

 警察官なんかよりビッグな立場か。例えば、

 

「みぃ~、例えば政治家さんなんかですか?」

「いや、梨花ちゃん。そんなのは俺には無理だって」

「前原さんのような方が政治家になってくださればこの国の政治もいい方向に進むと思いますがねぇ」

「変なおだて方はやめてくださいよ、大石さん」

 

 どこまで本気か分からない大石の言葉であったが、大石も熊谷も捜査中である。これ以上油は売っていられないらしく私たちに別れを告げると捜査に戻っていった。

 

「全く。俺が政治家なんて……」

「向いていると私は思うけどね、圭一」

「だからおだてないでくれよ、梨花ちゃんまで」

 

 私の方はそれなりに本気で言っているのだが。まずは政治家の秘書あたりから入って、そこからゆくゆくは自身も政治家に、なんて立身出世は圭一らしいと思う。

 まぁ、圭一の人生だ。圭一に自分の進路の選択は任せるが。

 

「……ふふ、今日も月が綺麗に出そうね」

「梨花ちゃん。前もそれ言ったけど、どういう意味なんだ? あの後、お袋に訊いたら、お袋は「あんたも隅に置けないわね」なんて言ってニヤニヤ笑うばかりで教えてくれなかったんだが……」

「自分で調べなさい。私のような子供じゃないんだから」

「ん~む。言葉とボタン一つでそれについて調べられるような機械があればなぁ」

 

 そんな凄い機械は想像も付かないわね。とりあえず圭一はどこまでも鈍感のようだ。頭の回転自体は速い癖にこういう所は本当にデリカシーがない。

 

「そういえば前の世界で鷹野さんが俺たちを皆殺しにする前にも月が綺麗とか言っていたような……梨花ちゃん、まさか、俺を殺す気じゃ!?」

「ばっ……なんでそういう事になるのよ!」

 

 本当にデリカシーのない男だ……。私が否定したのを聞いて圭一は少し安堵した様子を見せる。いや、本気で私が圭一を殺そうとしているとでも思ったのだろうか。

 まぁ、今日のデートは楽しかった。

 デートと思っているのは私の方だけかもしれないけど、圭一には楽しませてもらった。

 彼と一緒にいると本当に飽きが来ない。

 こんな感じに圭一との時間がもっと持てればいいんだけど、それは我儘かしら?

 私はそう思い、満足する気持ちで雛見沢への帰路を行こうとするのだった。

 

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