ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第55話:かくれんぼ

 とりあえずかくれんぼで鬼になった俺と梨花ちゃんは教室でみんなが隠れるまでの時間を待つ事にした。窓の外を覗いて見るなどの反則はしない。そんなものは部活の公正な戦いを愛する精神に反する。

 

「頑張るわよ、圭一」

 

 俺と二人きりになったからか梨花ちゃんが素の口調を出して俺に声をかけて来る。

 

「ああ。鬼は一定時間までに全員見つけられないと罰ゲーム。不利な条件だとは思うけど、多少の不利で動じる部活メンバーじゃあ、いや、この前原圭一様じゃねえ」

「頼もしいわ」

 

 別にお袋にからかわれるように梨花ちゃんに気があるとか、そんな事はないのだが、男として人に頼られるのは悪い気はしない。ならば、その期待に応えられるだけの働きをしてみせなければ男児の恥。やってやろうじゃねえか!

 

「よし、時間だな。じゃあ、探しに行こうぜ」

「別れて探す?」

「いや、最初は一緒に行こう」

 

 俺がそう言うと梨花ちゃんはどこか上機嫌になったように思えた。あくまで俺にはそう見えたというだけだが。

 まず教室から出て廊下を見渡す。流石に廊下なんて隠れる場所もない所にいる程、みんな間抜けではないと分かってはいるが一応、見逃しがないように目を光らせる。

 

「流石に廊下にはいないわね」

 

 同じ事を思っていたのか、梨花ちゃんがそう呟く。

 

「まずは職員室から行くか」

 

 俺の提案に梨花ちゃんも頷いたので職員室から手を付ける事にした。職員室のドアを開ける。敏感な俺たち元祖・部活メンバーは気付いた。ここにいるな。何人か。

 

「ふむ……」

 

 梨花ちゃんに視線を送る。梨花ちゃんも視線でそれに応じて職員室の中で二手に別れて、事務机の下とかを見てみる。

 

「きゃあ~」

「見つかっちゃった~」

 

 年下の女の子たちが結構な数隠れていた。少しは頭を使ったようだが、まだまだ甘い。こんな分かりやすい場所にいるのは。

 

「はい。みんな。見つかったので教室に戻って待機しているのですよ。罰ゲームが待っているのです。にぱー」

 

 梨花ちゃんが笑みを浮かべて、女子たちに告げる。女子たちは気落ちした様子で職員室から出て行った。

 

「もう、ここには隠れている子はいなさそうね」

「ああ」

 

 当たり前だが、元祖・部活メンバーのレナ、魅音、沙都子がこんな分かりやすい所にはいない。俺たち元祖・部活メンバーに次ぐ実力を持つ大樹と傑もここにはいないだろう。

 俺と梨花ちゃんは別の場所を探す事にした。次は上の階か。

 

「うわー!」

「ははは、ここにいたか。みんな」

 

 そこには年下の男子たちが隠れていた。それを発見し、ニヤリと笑う。その後、保健室などを見てみればベッドの下やカーテンの中に隠れている生徒たちを発見する。ここまでは順調。しかし、まだ元祖・部活メンバーは一人も見つけられていない。

 

「後は……外ね」

「流石に学校の敷地外に出るのはルール違反だろうけど、校庭とか倉庫とかにはいそうだな」

 

 梨花ちゃんの言葉に俺は頷き、昇降口から外に出る。

 

「なんとなく倉庫には魅音がいそうな気がする」

「へぇ、その根拠は?」

 

 俺の言葉に梨花ちゃんが挑戦的な目を向けて来る。

 

「前に魅音から委員長の役目を譲り受けた時に仕事を説明してもらうので一緒に倉庫に入った事があるからな」

 

 そう遠くない記憶を思い返す。あの時は俺のミスであやうく粉塵爆発を起こしてしまう所だった。梨花ちゃんの言う惨劇の要素がない所で惨劇が起きたりしてしまったら梨花ちゃんにも失望と絶望をさせてしまっていた所だっただろう。

 

「へぇ……魅音と、ね」

 

 何故か不機嫌そうに梨花ちゃんはそう言う。む、なんか地雷踏んだか? 俺。

 

「ど、どうした、梨花ちゃん?」

「別になんでもないのですよ、にぱー」

「む、むぅ……」

 

 その口調に戻った時点で何かありそうなのは察したが怖くて訊けなかった。とにかく倉庫に行こう。

 

「よいしょっと……暗いな」

「電気を付けましょう」

 

 真っ昼間とはいえ、光の差し込む箇所の少ない倉庫の中は薄暗い。電気のスイッチの手をかける。

 さて、見た感じ、人のいる気配は感じられない。しかし、そこは天下無敵の元祖・部活メンバー。仮に隠れていたとしても気配を悟られたりはしないだろう。

 

「梨花ちゃん。見て回ろう」

「ええ」

 

 俺と梨花ちゃんの二人で倉庫をチェックする。そうしていると、

 

「いてっ!」

 

 天井からタライが降って来て俺の頭に命中した。これは、沙都子のトラップか!

 

「くそー、沙都子の奴! この借りは返すからな!」

「でもトラップがあるって事はここにいる可能性も高いわ」

 

 梨花ちゃんが分析する。何もない所にトラップだけ仕掛けておくのは考えにくいが逆にトラップがある場所に自分がいたら自分はここに隠れていると言っているようなもの。そんな短慮を元祖・部活メンバーが侵すだろうか。

 

「ふむ。富田に岡村ね」

「ふ、古手……」

「……それに前原さん」

 

 どうやら大樹と傑がいたようだ。梨花ちゃんに見られ、凍ってしまっている。

 

「二人共、ここに隠れていたのか」

「ほ、北条にここなら絶対に見つからないって言われて……」

「にぱー、二人は沙都子に利用されたのですよ。かわいそ、かわいそなのです」

 

 梨花ちゃんの推測通り、沙都子に見事にスケープゴートにされたのだろう。二人を見つけ、俺たちは倉庫から出る。これで残りは元祖・部活メンバーの三人。レナに魅音に沙都子だ。

 

「三人共どこにいるんだ……?」

 

 思わず俺はぼやいてしまう。とりあえず思い付く所は一通り見て回ったと思うのだが、どこにもいない。元祖・部活メンバーはそう甘くはないとは分かっていた事ではあるが。

 

「みぃ……」

 

 梨花ちゃんも頭を悩ませているようであった。このままでは俺と梨花ちゃんは二人揃って罰ゲームだ。

 

「このまま二人で罰ゲームってのは避けたいな」

「貴方と一緒ならそれもいいかもしれないけれどね」

「えっ?」

「……ふふっ、なんでもないわ」

 

 何か聞こえたような。気のせいだろうか。

 とにかく、三人を見つけなければ。記憶を辿って俺はふと思いつく。

 

「そうだ」

「どうしたの?」

「屋上、ってか屋根の上に行こう」

 

 俺はそう言って一旦、校内に戻り、階段を駆け登る。屋根の上。そこはかつての世界で俺とレナが戦った場所だ。梨花ちゃんもピンと来たのか俺に続く。屋根の上に昇り、そこには。

 

「あーあ。見つかっちゃったか」

「レナ、御用だぜ」

 

 レナの姿があった。なんとなくここにいる気がしたのだ。本当になんとなくだけど。

 

「私の負けだね。圭一くん、梨花ちゃん。でも、まだ魅ぃちゃんや沙都子ちゃんは見つけてないんでしょ?」

「……ああ」

「沙都子に関してはボクに心当たりがあるのです」

 

 そう言った梨花ちゃんの顔をえっ、と俺は見る。梨花ちゃんには自信があるようだった。

 下に行く梨花ちゃんに続くとなんと教室に戻ってしまった。そこには既に見つけられた子たちが集まっている。

 

「沙都子は、きっとここなのです」

 

 梨花ちゃんは掃除用具入れを開く。その中には確かに沙都子の姿が!

 

「な! 何故、ここが分かったんですの!?」

「ふふふ、ボクは沙都子の事はなんでもお見通しなのです」

 

 この教室にはみんなが隠れている間は俺と梨花ちゃんがいた。その時に沙都子にここに隠れる隙はなかったはずだ。その時は他の場所にいたのを俺たちが教室から出た隙にここに移ったのだろう。

 かくれんぼで一つの場所にずっといるのは悪手。そして、俺たちがいた教室に戻って来るなどなかなか思いつかない。沙都子はその盲点を突いたようだが、沙都子の事をよく知る梨花ちゃんからは逃れられなかったのだ。

 

「沙都子、梨花ちゃんが鬼だった事がお前の不幸だな」

「悔しいですわ……」

 

 沙都子は肩を落とす。これでラストは魅音ただ一人。

 

「魅音も同じ場所には隠れていないよな、多分」

「でしょうね」

 

 俺の言葉に梨花ちゃんが同意する。で、あれば常に動く相手を捉えないといけない。

 

「よし。ここは二手に別れて探そう」

「えっ……」

 

 いい提案だと思ったのだが、梨花ちゃんは少し表情を曇らせる。

 

「どうした、梨花ちゃん?」

「い、いえっ。確かにそれが有効ね。そうしましょう」

「ああ」

 

 俺たちの罰ゲームを避けるために、俺たちは全力で魅音を探す事にするのであった。

 

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