ひぐらしのなく頃に圭梨   作:山屋

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第9話:おもちゃ屋さんにて

 結局、翌日は興宮の魅音の知り合いが経営しているおもちゃ屋さんにみんなで遊びに行く事になった。ここは繰り返す昭和58年の6月の中で何度も来た事があるお店だ。

 魅音も参加するようなのだが、高校受験の勉強は大丈夫なのだろうか? 休息期間、にしては少し長すぎるというか、羽目を外し過ぎているような……。

 

「これがガンプラだよ、梨花ちゃん」

 

 その当の魅音は圭一に何を吹き込まれたのか私にガンプラを紹介してくる。シャア専用ザクという名前の赤い……いやピンク色? ……の一つ目のロボットがパッケージには描かれている。手には特徴的な形状をした銃を持っている。どうやら男子向けの娯楽も多く好んでいる魅音はガンダムやらガンプラといったものにはそれなりに詳しいようだ。

 

「みぃ、これはこの箱の中に入っているものだけで描かれているロボットが作れるのですか?」

「あっはっは、梨花ちゃん。そりゃ無理ってもんだよ。接着剤でパーツをくっ付けないといけないし、塗装もしないといけないね」

「う~ん、難しそうだね」

 

 笑いながらの魅音の説明にレナが眉を寄せる。確かに少し面倒臭そうだ。

 

「そんな繊細そうな組み立てを圭一は出来るのですか?」

「出来ないに決まってますわ。圭一さんには」

「な、なんだとぉ!」

 

 私の疑問に沙都子が推測で答えて、圭一が抗議の声を上げる。が、多分、沙都子の推測は当たっているだろう。大雑把でがさつな圭一にパーツ一つ一つに接着剤を塗って、完成図通りに組み上げるなんて事が出来るとは到底思えない。ましてやそこから塗装をするなんてのはもってのほかだ。

 

「ぐ、確かに俺はプラモを組み上げるのは苦手だ……」

「ほら、やっぱりですわ」

 

 沙都子が勝ち誇った顔で圭一を見る。そういう細かい作業はトラップの達人の沙都子なら得意そうだな……。沙都子も女の子だからプラモデルのような男子が好む趣味を好むとは思えないけれど。

 

「畜生。接着剤なしで組み立てられて、塗装しなくてもキチンと色の付いたプラモが出ねえかなぁ」

「そんな凄いプラモデル出来る訳ないじゃん」

 

 愚痴交じりに圭一が言った言葉に魅音が突っ込みを入れる。確かにそんな凄いプラモデルが出れば誰でも組み立てられるようになるだろうけど。接着剤なしで組み立てられて、塗装もせずに色が付いているというのは難しいのではないだろうか。詳しくはないが、そんな精密なものを工場で作れるのだろうか。

 

「まぁ、ガンダムは続編が作られるって噂もあるね」

 

 そんな時、魅音が言い放つ。続編か。人気の出た作品にはありがちな事だろう。宇宙戦艦ヤマトも続編が何本も出ているし。

 

「映画は大ヒットしたらしいからな」

 

 この話題に圭一も乗る。

 

「仮に作られるとしたらどんな続編になるのか……いっそ登場人物をガラっと変えるのもいいかもしれねえが」

「何、言っているの、圭ちゃん。ヤマトの続編を見なよ。主人公もメインキャラもほとんど変わってないじゃない。ガンダムもそんな感じになるよ、きっと」

「そうかぁ? それだとなんか作品としての発展性というか、未来がない気がするけどなぁ」

「ヤマトは同じヤマトクルーで何本もやっているじゃない。ガンダムも多分、続編が出ても同じような感じになるよ」

 

 なんだか、圭一と魅音が素人にはよく分からないガンダムトークを交わしている。私は詳しくないので参加出来ないが、なんだかんだでやっぱりこの二人も仲がいいわね。

 べ、別に嫉妬なんてしていないけど、圭一が喜んでくれるのなら私もロボットアニメ見ようかな……。

 

「まぁまぁ、圭一くん、魅ぃちゃん。ガンダム談義はその辺にしてみんなで遊ぼうよ」

 

 レナがそう言って二人を促す。そうだぞ、圭一。今日はみんなで遊ぶ集まりだろう。

 

「そうだな」

「そうだね、ごめん。おじさんとした事が自分たちだけの世界に入っちゃったね」

 

 圭一と魅音は素直に謝罪し、みんなでどう遊ぼうかという話になる。

 

「やはりここは部活遠征では?」

 

 沙都子がそう提案する。この面子で遊びに来たのだからそうなるのは目に見えていた。

 

「部活か。燃えるな。何で勝負するんだ?」

「うーん、このおもちゃ屋さんには色々あるからねぇ」

「買いもしないのにおもちゃを使って汚したりしないでくれよ。魅音ちゃん」

 

 圭一の言葉に魅音が応えるが、それを見守っていたおもちゃ屋の店主さんが苦笑いして告げる。思えばこれまでの世界でもこのおもちゃ屋で遊ぶ事は多くてもマトモにおもちゃを購入した事はあまりなかった気がする。圭一によるオークションのために大量のおもちゃを強奪……いや、提供してもらった事はあったと思うが。

 

「うーん、それじゃあ、トランプでもする?」

 

 レナが提案する。トランプなら学校でも出来るからあまりおもちゃ屋に来た意味がない気もする。

 

「いや、ここは人生ゲームだね。みんなでやろうよ」

「あれ? 魅音さん。人生ゲームなら学校にもありますわよ?」

「あれは何度もやっているからねぇ。人生ゲームも常に新しくなっているから最新のヤツで遊ぼうよ」

「だから魅音ちゃん。買いもしないのにそうそう使わないでくれってば……」

 

 苦笑いする店主さんに構わずみんなで人生ゲームをする事に決定する。アウトドアなような、インドアなような。

 五人で人生ゲームをやる事にして、五位の人は罰ゲーム。一位の人の言う事をなんでも聞くという事に決定した。

 

(これは私が一位で圭一が五位だと色々と美味しいわね……)

 

 そんな事を考えてしまう。しかし、ここ最近の圭一は部活で絶好調。ノリに乗っている。そんな圭一が最下位に落ちるなんて事が有り得るのだろうか。

 

(まぁ、部活だし、全身全霊で臨むだけよ)

 

 そう決意する。それが部活メンバーの心得というものだ。それからみんなで人生ゲームをやって一位はレナ。五位は魅音という結果に終わった。やっぱり魅音はここ最近、スランプ街道をまっしぐらのようね……。受験勉強が上手くいっていないのが原因かしら。

 

「うう。おじさんとした事がぁ……」

「どうした魅音。情けないぞ」

 

 そう言う圭一は二位に付けている。圭一が好調なのは変わりないようだ。

 

「ええい! こうなれば覚悟は決めた! レナ、煮るなり焼くなり、好きにしろー!」

「う~ん、そうだね~」

 

 魅音のやけくその声を聞きながらレナは考え込む。その末に言った。

 

「それじゃあ、魅ぃちゃんは圭一くんと一緒に来週の週末に喫茶店にでも遊びに行ってもらおうかな」

「え?」

「え?」

「え?」

 

 レナの言葉に三人が声を発する。魅音、圭一、私、だ。

 

「それはいいかもしれませんね。魅音さんも圭一さんと二人っきりの時間を過ごせばスランプなんて解消されるでしょう。レナさん、流石、気が利きますわね」

「えへへ……レナも圭一くんと魅ぃちゃんには仲良くしてほしいからね」

 

 優しい笑みを浮かべるレナであったが、ちょっと待って、という気持ちが私にはあった。圭一と魅音が二人っきりで喫茶店? それって、デートじゃない! いや、今まで図書館に二人で勉強に行っていたのもデートみたいなものだけれども。

 うーん。やっぱりレナや沙都子の間でも圭一と魅音はそういう関係だって認識なの? それは色々と困るのだが。いや、何が困るというのだ、私は。いや、でも。

 

「どうしたんですの、梨花? 汗をかいておりますわよ」

「み、みー、暑いから仕方がないのです」

「わたくしたちの家と違って、クーラーがガンガンに効いておりますけど……」

 

 沙都子の言う通り、おもちゃ屋の中にはクーラーが効いている。苦しい言い訳だったか。しかし、圭一と魅音が二人っきりでデートに行くというのを大人しく座視している訳にもいかない私であった。べ、別に二人の邪魔をしたいって訳じゃないんだけれども……。

 




 話の中でも取り上げていますが、Zガンダムの情報が出る前からガンダムの続編は噂されていましたが、当時は宇宙戦艦ヤマトの続編のように主要人物はほとんど変わらない、ありていに言ってしまえば主人公はアムロのままで1stのホワイトベースクルーが再集結して新しい敵に立ち向かう、というような内容になると思う人が多かったらしいですね。
 そんな中で主人公も主要人物もほぼ一新した内容のZガンダムは衝撃的だったとか。
 ただヤマト路線で続編を作っていたら今のようなガンダムシリーズの多種多様な発展も広がりもなかったでしょうね。
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