チームハダルとそれにまつわる短編集 作:FlankerのFnキー
10/12追記
あ、西花のこと忘れてた…
その日がいつか来るということはもちろん分かっていた。が、その日は唐突にさらっとやって来た。
「まるで突然、言い渡された様な反応されてもね…むしろ、こうなったら必然でしょう?」
「えぇ…追放…ですか?」
「そうよ。」
俺は春雲 雪。ここ、日本ウマ娘トレーニングセンター学園の
「そんな、ひどい…!」
「ひどい、じゃない。」
「あのね春雲、すでに君の後輩が担当を持ってデビューまで済ませているのに、先輩の君がいつまでも見習いをしていられるわけないでしょう?」
そんな眉間をおさえながら、正論を言われたら何も言い返せない。
「…2ヶ月ぐらい前まで桐生院もいたじゃん。」
唯一の同期である、桐生院もリギルでつい最近まで見習いをやっていたのだが、彼女は卒業してしまい俺は置いてかれてしまった。置いてかれることを望んだのは俺だけども。
「元々、彼女はハッピーミークの担当になるまで、ここに居るという話だったから問題ないのよ。約束通り、今はハッピーミークの担当になっているからね。」
独立か……
確かにもうリギルのウマ娘、と言うよりはリギルの手癖はだいたい把握した。つまり、俺の目的を果たすための情報は手に入っている。なら、俺はここを抜けても問題がない。
「はぁ…そんな、心配そうな顔をしないで。」
「そんな顔してました?どちらかというと悪巧みの顔の間違いだと思います。」
「心配そうな顔だったわ。大丈夫よ、春雲が来る前は私1人でやって来たんだから。マルゼンも大丈夫だし、アルダンの事もしっかり見てあげられるわ。」
メジロアルダン。彼女は生まれつき体が弱く、ほとんどのレースを絶不調で走ってきた。俺はそんな彼女の姿が子供の頃に追いかけていたウマ娘の姿に重なり、彼女の事をよく気にしていた。
「そう…ですね。分かりました、出ていきます。」
「東条トレーナー、今までお世話になりました。」
お辞儀を一つ。
いつかは出ていくことは分かっていた。だから、チーム部屋だとかには俺の私物は一切置いていない。俺は身一つでいつでも出ていける。そのいつでもが今日だったのだ。
俺は東条ハナに背を向けて歩きだす。
この部屋を出れば、遂にリギルを抜けることになる。そう思うと確かに寂しいが俺の足は止まることなくドアの前にたどり着いた。
「マルゼンたちに何か別れだとか言わなくて良いの?」
「いいです。どうせ、ターフで会えます。その時は俺の潰したい敵ですけどね。」
「そう。やれるものならやって見せなさい。」
「マルゼン、アルダン、お前たちは言うこと無かったの?」
「黙って出てくのは雪くんなりのカッコつけだろうから、あたしは何も触れないであげてるのよ。」
「私は何か言って欲しかったです。でも、おハナさんも性格が悪いですね。」
「なんのことかしら?」
「今は5月後半、早い子なら既にメイクデビューも済ませています。この時期に担当のついていない速いウマ娘を探すのは大変だと思いますが?」
「あら、確かに。」
「別に春雲なら問題ないわ。春雲ならまだ誰も見つけていない原石を掘り出せるはずよ。ま、多少は苦労するでしょうけど。」
「おハナさんが悪い顔してます…!」
(楽しみにしてるわ。雪くんがあたしとの約束を果たす日を!)
独立してまもなく1週間。
担当探しはとても難航していた。時期的に未だにトレーナーがついていないウマ娘は大抵、強くないor強烈な気性難なウマ娘ばかりだ。ま、速い奴は気性難が多いから気性難のウマ娘もそこまで残ってる訳じゃない。
「せめて伸び代さえあればなぁ。」
世の中には大器晩成という言葉がある。俺なら、そういう周りから見て見落としがちなウマ娘でも見つけられるのだが、その大器晩成型のウマ娘も見つからない。
しかし、こうなると今期のレースはきっとつまらないモノになるだろう。
短距離にはサクラバクシンオーがいる。
マイルというかティアラならニシノフラワーが。
中長距離ならマチカネタンホイザ。
そして、ミホノブルボン。
実際、ミホノブルボンがどの距離に出てくるかはわからないが。まぁ、あのトレーナーに預けたから恐らく本人の希望通り中距離に出てくるはず。となると、
なので、俺が見つけるべきはミホノブルボンに対抗出来るウマ娘。残念ながらマチカネタンホイザは既に担当がついている。なら、他を当たるしかない。
で、今俺が何をしてるかと言うと1つの噂を頼りに学園近辺を徘徊している。いつものバイクで。
噂の内容はだいたいこんな感じだ。
『良い走りをするけど、選抜レースには出ないし、学園内で練習してるところを滅多に見ない。やる気が無いのかと思うと外でよく走っているのは見るウマ娘がいる。』
こんな噂だ。
俺はこのウマ娘の走りを見たことがないので、実際どれだけ走るかは未知数。だが、噂通り良い走りをするなら、恐らく彼女が俺の最後の希望。スカウトを狙うなら彼女だ。
というわけで少ない目撃情報を頼りにうろうろしているのだが、そんな状況で尋ね人が見つかるわけもなく、
「居ない…」
たまたま見つけた公園で力尽きていた。
「これで三連敗。唯一の成果はこの公園かな。」
この公園、ランニングコースが整備されていて持久走にもってこいな環境なのだ。芝コースじゃない、コーナーが多い、学園から遠いとネックが多い。コーナーはネックじゃないな、トレーニングに活かせる。
「曇ってきたし、もう帰るか。」
雨が降ってきたら厄介だしな。
ポツン
「ヤベ、降ってき
ザー
ザー
ザー
チャプっチャプっチャプッ!
ザーボトボトボトボト
……?
これは傘に雨が当たる音?
「……」
愛車にもたれ掛かるように倒れていた体をゆっくりと起こすと小学生くらいだろうか?恐らくそこそこ良いとこのお嬢さまっぽい栗毛の幼いウマ娘がそこにいた。
「君は…?」
「…その顔、似合いませんよ?」
栗毛のウマ娘はそれだけ呟くと俺の手を取り、その小さな身体からは想像が出来ないウマ娘らしいウマ力で公園の中に走り始めるのだった。
トレーナーのヒミツ
実は、機嫌がとても良い時の歩き方はハルウララにそっくり。